――――――――――#12

 本当は、軍隊というのがどういうものか、見てみたかったのだ。

 本当は、ボクから何もかもを奪った「VOCALOID」を復讐しに来たのだ。

 本当は、初音ミクを倒しにきたのだ。全てを奪った「VOCALOID」に、復讐を。

 今まで隠し通してきた。いや、問題にすらされてなかったのかもしれない。

 たまたま「VOCALOID」と張り合えたから、ボクはすごい力を手に入れた気がした。

 ちょっと複雑だけれども、間違いなくボクにとっては本物の家族なのだ。だったのだ。

 血の繋がりなんか関係ない、本当の家族だったのだ。

 レンはたった一ヶ月もしないうちに、クリフトニアの兵士として戦う決意をした自分を少し軽蔑している。それでも、本物の軍隊というものが、いかに人間のやる事として当たり前であるか、本当に思い知らされた。

 本当は、無意識で強い相手に屈したのを認めたくないのかもしれない。それでも、このエルメルトで見た軍人はみんな勇気があって、エルグラスが滅ぶ前に知っていた軍人よりも、ずっと優しくて強い。

 もしかしたら、またボクは翻すのかもしれない。裏切るかもしれない。その時はどんな決意をするだろう?けれども、ボクは今この瞬間に、戦いたい、助けたい、そう思う気持ちを一番大事だと、そう思う。

 レンは建物の群れを掻い潜り、目的の場所についた。ここに、あの女の子がいる。ボクが無慈悲に呪った敵の捕虜がいる。ここで待っていれば、すぐに。

 KASANETETO――――――――――「VOCALOID」。
 KASANETETO――――――――――さあ、おもいをかさねてと、あかいみちびきは、あさやけのらせんにひびく。
 ――――――――――まわる、せかい。
 KASANETETO――――――――――おどる、つきも、たいようも、かぜも。ほしと、わらいながら。
 KASANETETO――――――――――ところで、あなたのおなまえは?
 ――――――――――ボクのなまえは。
 KASANETETO――――――――――さあ、おどりましょう。おなまえは?
 KAGAMINERENN――――――――――かがみね、れん。

 ホルスターから、銃を引き抜く。ワルサーP99という、玩具みたいな見た目の銃だが、ネルがレンに整備の仕方を教えながらやたら目を輝かせていたので、多分良い銃なのだろう。

 構える。

 KAGAMINERENN――――――――――でたらめにむけたじゅうでも、たましいのじゅうだんよまっすぐのびろ。

 撃つ。と同時に、テトの数メートル前で火花が散った。

 『いいかー。攻響兵の中には銃での格闘戦に慣れてる奴もいる。特に重音テトみたいな奴だと直撃でも弾き飛ばすから、時間稼ぎ用だと思っとけ』

 KASANETETO――――――――――土星は鉛色の星。火星は戦いの星。金星は踊りの星。 
 KAGAMINERENN――――――――――な
 KASANETETO――――――――――さあ、おどりましょう。かがみねれん。

 気付くと、ワルサーP99が弾き飛ばされて、目の前に重音テトがいた。持っている拳銃でレンの手ごと銃を叩き飛ばしたのだ。古めかしいリボルバーだが、口径がレンのワルサーP99より少し大きい。

 「なんで律儀に狙いをつけるのかな。銃が可哀想」

 額を銃口で突かれた。それだけで、レンは思いっきり吹っ飛ばされた。立ち上がろうとした時に、もう一撃くらって、そのまま気を失った。

 「はい制圧完了。無抵抗な相手を殺しても差し障りがあるので、まあ寝てなよ」

 本当は、思った以上に精密な射撃で焦ったが、ネルなどが見れば大体何があったかわかるだろう。

 「ガキ相手に激戦、じゃあ名が廃るのでね。また今度会おう」

 重音テトが颯爽と建物に入っていき、レンはそのまま取り残された。

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機動攻響兵「VOCALOID」 3章#12

激戦に次ぐ激戦。誰もテトを止められないのか!?

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投稿日:2013/01/22 01:10:19

文字数:1,626文字

カテゴリ:小説

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