優しい傷跡 第08話「エラー、崩れ出す音」

投稿日:2008/11/22 19:55:09 | 文字数:2,018文字 | 閲覧数:1,221 | カテゴリ:小説 | 全2バージョン

ライセンス:

【登場人物】
増田雪子
帯人
咲音メイコ

【コメ】
ついに帯人君の本領発揮ww

帯人君のイラスト巡りが最近の趣味です。
もう200枚近くあったような気がします。
これってなに気にすごいですよね…。

前のページへ
1
/1
次のページへ
TEXT
 

この状況を説明するのに小一時間。
帯人を別室に押し込んで、メイコ姉さんにこれまでのことを話した。
傷だらけで倒れていたこと。
それを拾ったこと。
帯人のマスターになったこと。
そしたら、ものすごく懐かれてしまったこと。
すべてを話し終えると、メイコ姉さんは頭を抱えているようだ。

「つまり、雪子はあっちの趣味はないってことよね?」

(あっち、とはおそらくボーカロイドへの過剰な愛情のことだろう。
 この前、最近はそういう事例が後を絶たないんだと言っていたから)

「ないですよッ!」

そう笑ってみせると、彼女は苦笑していた。

「意外だった?」

「そりゃあね。正直、私は反対よ。ものすごーっく、ね」

「あ!だめ!絶対に帯人を廃棄しないで!!」

「ん?どうしたのよ。必死な顔して。そんなことするわけないでしょ?」

よかった。
私は胸をなで下ろした。
でも、やっぱりメイコ姉さんの表情は曇っていた。

「最近、嫌な事件がよく起こるでしょう?」

「…マスターを殺してしまう、ボーカロイドの暴力事件のこと?」

「そう。製造元を調べ上げても、原因はまったくわからなかった。
 今のところ、ボーカロイドのシステムの《エラー》だということしか
 わかっていないの」

「だから、心配なの?」

メイコ姉さんはうなずいた。
そして、彼女はヒマワリみたいと微笑んだ。

「だって、あの人に言われたんだもの。あなたをお願いって」

おじさんのことだ…。

私は目を伏したまま、「ごめんなさい」と言った。
そしたら、彼女はぽんっと私の頭をなでた。

「なに謝ってんのよ。あなたはマスターでしょ?
 マスターなら、しっかりしなさい」

「はい…」

うつむく私を見て、メイコは静かに言う。

「…本当のこと言うとね、《エラー》っていうのはどのボーカロイドに
 起こってもおかしくないことなの。
 だから、あの帯人君がいつどうなったって、変なことじゃない」

「…」

出会ったばかりのころの記憶が、頭をよぎる。
握られたアイスピックを突きつけられた、あの恐怖感。
あれは、あれはもしかして……《エラー》だったの?

「でも、もしそうなったら、すぐに連絡をちょうだい。
 一秒で駆けつけてあげるから」

そう言って、メイコは私の頭をわしゃわしゃと荒くなでた。
その言葉が嬉しくて、私はしばらく頭をなでてもらっていた。
まるでお母さんみたい。
なんて言ったら、きっと殴られちゃうだろうな。

心のなかで、ちょっとだけ笑った。






帯人は別室で、ひとりぼっちだった。
椅子に座り、ただボーッと一時間くらい外を眺めていた。
窓から見える景色は、とてもきれいだった。
こんなに世界はきれいだったんだなと、改めて思った。

ふと、先日会った赤毛の少女のことを思い出した。

彼女は僕と似ていた。
なにが似ていたのか、よくわからないけれど、あえて言うならばおそらく―。

まとう空気。

なんて表現すればいいかわからない。
この言葉がたぶん一番近いだろう。彼女と僕は雰囲気が似ていた。

僕の目には、彼女が今にも泣きそうに見えた。
寂しそうに見えた。迷っているように見えた。苦しそうに見えた。
彼女にも僕という存在が、そんな風に見えていたんだろうか。

《人殺し。あなたとオソロイね》

彼女の言葉が脳裏によみがえる。すごく気分が悪くなった。
頭の回線がくすぶっているような気がする。

ああ、すごく嫌な気分だ。

帯人は椅子から立ち上がり、二人のいる部屋へむかった。
話しが終わっていなくても割り込んでしまおう。
メイコさんという人が、マスターとばっかり一緒にいるなんてずるいから。

帯人は扉を開けようとした。
しかし、その手はドアノブを握る前に停止する。
扉のむこうから、声が聞こえた。


「…本当のこと言うとね、《エラー》っていうのはどのボーカロイドに
 起こってもおかしくないことなの。
 だから、あの帯人君がいつどうなったって、変なことじゃない」


メイコさんの声だ。

《エラー》…?
《エラー》ってなに?
《エラー》ってどういうこと?

ねえ、教えてよ。

ねえ、
ねえ、ねえ、
ねえ、ねえ、ねえ、
ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、
ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、
ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、
ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、
ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、
ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ますたー、―。


赤い少女の、あの虚ろな瞳が頭に浮かんだ。
光のない、何を考えているのかまったくわからない、あの瞳。
不気味なあの瞳…。

ああ、なんとなくわかった気がする。



《 人 殺 シ 。 ア な タ と オ ソ ロ イ ね 》



ああ、なんとなくわかった気がした。

【お休み中】

===========================================

「優しい傷跡」は三部作ですが、三部の途中で書けなくなりました。
続きは書けませんが、そこまでのお話は残しておくつもりです。
二次創作やら派生やらは、一言いただければ基本okです。
これからは何となく書いた歌詞を載っけていくつもりです。
よろしくお願いします。

帯人・がくぽ・ミクオ・欲音ルコが大好きです。

下から飛べますよ♪

===========================================

優しい傷跡
http://piapro.jp/content/7q5hqtkfhff7gpll

優しい傷跡 番外編
http://piapro.jp/content/prenayotf2qetyrj

優しい傷跡-魔法の音楽時計-
http://piapro.jp/content/p6xkwgja3thb4jvs

優しい傷跡-君のために僕がいる- (中断)
http://piapro.jp/content/3itb7ja54w5dp7y1

もっと見る

作品へのコメント0

ピアプロにログインして作品にコメントをしましょう!

新規登録|ログイン

もっと見る

▲TOP