Dear ...
あの日のあなたに会いに、浴衣に着替えています。
少し寂しいですが、ひとりで出かけます。
――暗闇がもしこの世から消えてしまったら、私はどこで泣いたらいいんだろう……。
誰に宛てるでもなく書き始めた手紙が、涙でにじむ。
ひらひら夏の空、夜空に恋花火。
浮かぶのはあなたの物憂げな顔。
きらきら夢の中、あなたが笑ってる。
刹那の輝きを持った幻が、離れてくれない。
あの人との時が永遠に続いてくれたらよかったのに。
私は溢れる涙を拭うと、巾着を手にしてあなたと過ごした夏祭りに思いを馳せた。
祭りの笛太鼓の音色が近づいてくると、手を叩いてはしゃいでいたあなた。
そんなあなたを驚かそうと、お面をかぶってそっと後ろからイタズラを仕掛けたこともあったね。
……ねぇ、太陽にもし光が無かったらこんな風にいつまでも哀しみ胸に焼きつけずに、この夏も越せたのかな。
あの輝きを見ると、あなたの鮮やかな金色を思い出すの。
こうしてペンを手にしてから、気がつくと咲き出していた去年と同じ打ち上げ花火。
私の部屋の窓からも、よく見えるの。
席を立って窓辺へ近づいた。
浮かぶはやっぱりあなたの物憂げな顔。
きらきら夢の中、あなたが笑ってる。
刹那の輝きを持った幻が、離れてくれない。
ダメだ、と首を振ると私は部屋を飛び出す。
サンダルをはいて走る、夜の街。
コンビニに飛び込んで、花火セットを買った。
急いで家に帰ると後ろで大きく鳴る音をかき消すように、私は家の庭で一人花火に火をつける。
こうしていれば、あの大輪の華も気にならない。
だって今、こうして遊んでいるから花火の音がするんでしょう?
にぎやかな小さな花火が終わる頃、気がつけば大きな花火も終わっていた。
花火セットに残すところ、線香花火。
私はマッチを擦って、それに火を灯した。
ちょこんと座り込んで、じぃっと視線向ける。
ちかちか。
優しく暖かで、頼りなく切ない光。
ぱらぱら。
地面に落ちる……火の粉たち。
控えめなその子たちが、私のかわりに泣いてくれてるみたいだな、と思った。
つられるよう……ぱたり、と数滴の雨粒が地面を濡らす。
何かと思って夜空を見上げれば、雲一つないような満点の星。
……そうか。
膝を抱え込んでいた左手で、目元を拭った。
案の定……私の水滴。
また、ぱたり、何かが落ちる音。
視線を落とすと、線香花火の灯りが地面に吸い込まれていくのが見えた。
――もう届かない人。
それを思い知らされたようで、一気に想いがこみ上げてきた。
はらはら、夏の恋。
ここでこうしてきれいに散らしてしまおうか。
もう二度と咲かないように、こうしてここに消えていった灯りとともに埋めてしまおうか。
あぁ……やっぱりダメ。
そんなことはできない。
このまま時が過ぎていけば……あなたの記憶は潮騒のように、満ちては引いて、引いては満ちてを繰り返して…。
そうして少しずつ自然にまかせて流れ消えていくまで、あなたを私の中に残してもいいよね?
出会えたこの喜び、さよならの切なさ。
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