「ねぇ、レン、なに見てんの?」
リンちゃんが、うしろから覗きこむ。
「うぇっ、いや、ちょっとね」
急に自分の部屋に入ってきた、妹をにらみながら、レンくんはあわてて答えた。
レンくんの机の上には、小さな半透明のキャンドル入れがあった。
四角いその入れ物の中に、キャンドルが灯されている。
「兄ちゃん、キャンドルなんて好きなんだ」
リンちゃんは言った。
「いや、その...。これは、今日買ったんだけどさ」
レンくんは、キャンドル入れを見つめた。
「これに、僕の心が映る、って言われたんだ」
「ひぇ?」
リンちゃんは驚いたように言う。
「これに、心が映るの?レンの?」
●いつも雑貨なんて買わないのに...
「うん。でも、何も映らないや。ただのテレビの形の、箱だね」
レンくんは、しょんぼりして答える。
「それ、どこで買ったの?」
「うん。“上海屋”さんていう雑貨店なんだけど。ちょっと変な店なんだ」
彼は説明する。
「店長の女の人がね、僕の心が映るって言うんだ」
「ふぅん」
リンちゃんの目が、キラッと輝いた。
「兄ちゃん、いつも雑貨なんて買わないのに、どしたのかなー、って思ったよ」
「うん。リンはこういうの、好きだけどな。あ、そういえば」
「ん?」
レンくんは、店長の女性の言葉を思い出して、言った。
「こんど、リンもぜひ連れてきてね、って、店長の人が言ってたっけ」
「へえ!そう。そうなの」
リンちゃんは、ちょっと嬉しそうだった。
●なんか映ったみたい!
レンくんは、ゆらりとゆれるキャンドルとキャンドル入れを、しばらく見つめていた。
「うーん。やっぱり、何も映らないや」
そういって、炎を吹き消そうとした。
その時。
「あ、いま、その箱に、なんか映ったみたい」
リンちゃんがつぶやいた。
「ええっ!なに、何が映った?」
驚いて振り向くレンくん。
「なんかね、レンが、不思議なお店の中で、不思議な女の人と、お話をしていたよ」
「ほ、ほんとう?」
彼は大声で言った。
「やっぱ、映った。コレ、ココロテレビだよ! 未来も映るって、言ってたんだ!」
●レンくんの心が映るのは?
その頃。
造形作家のぱみゅちゃんが、ギャラリー「ゆうひ」で、
近くはじまる、個展の準備をしていた。
さっき、「上海屋」で買ったインテリアを、並べているのだ。
一緒に飾りつけをしていた、オーナーのモモちゃんが聞いた。
「ふうん、その店長さんは、レンくんの心が、その雑貨に映る...なんて言ったの?」
「そうなんですよ」
彼女の問いに、ぱみゅちゃんはうなずいた。
「ただの、キャンドル入れに見えたんだけどなぁ」
モモちゃんは聞いた。
「ね、その店長さん、レンくんに何か聞いていた?」
ぱみゅちゃんは、ちょっと思い出しながら言った。
「う~ん、そうそう、“アナタは雑貨が好き?”って聞いてた」
「そしたら?」
「“ぼくじゃなくて、妹が好きです”って。レンくんは言ってたっけ」
モモちゃんは、にっこり笑って言った。
「それでわかった」
「ね、ぱみゅちゃん。その、“ココロテレビ”っていうのはね」
モモちゃんは言った。
「レンくんの心が、リンちゃんに映ります、っていう意味なのよ、きっと」(-_-)
(Part4に続く)
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ご意見・ご感想
日枝学
ご意見・ご感想
読みました! リンとレンのやり取りが心温まりますね。キャンドル入れの中でゆれるキャンドルの炎の描写の一文が、同時に二人の心とこの作品の印象にぴったり重なりあったように思いました。
最後の一文の意味、どういうことか気になります。良かったです! 続き、楽しみにしています!
2011/08/22 00:48:16
tamaonion
日枝学さん
読んでくれて、ありがとうございます!
レンくんとリンちゃんのやりとりは、人によって様々に描けますよね。
細かい心の機微や、やりとりも興味深いですけど、
こんなふうに、まったりで話させるのも、楽しいと思ってます
ぜひ、また印象を聞かせてください!
2011/08/23 22:59:40