コンコン。
「テトさん居ますか?」
「開いてるよ」
テトの返事を聞くとドアがゆっくりと開き、双子と一人の女性が入ってきた。
「ヤッホー。テトちん。元気ぃ?」
一人の女性がテトに向かって勢いよく抱きついた。
「ばっ!お前急に抱きつくなよ」
「会いたかったよ~テトちん。寂しくて死んでしまいそうだったよー」
「お前はウサギか!そんなもんで死ぬわけないじゃないか!まったく…」
「えへへ」
「ところでミキ、調子はどうだ?」
「絶好調!と言いたいんだけど、ちょっと微妙かなぁ」
「神威やグミ博士の事か?」
「まぁね。それもあるんだけど、他にもいろいろとやっかいな事がふえてきてるんだよぉ」
「お前らだけで話を勝手に進めないでくれないか?そういうのは俺達にも知る権利があると思うぜ?」
二人の会話を中断するように、カイトがテトに向かって話し掛ける。
「あぁ、とりあえず先に自己紹介しておくよ。こちらはさっき話した『シルバーウイング』のミキ、僕の小さい頃からの友人だ」
「そしてこちらが『ミラーズゲート』の鏡音レン君と鏡音リンちゃん」
「鏡音リンよ。そしてこちらは弟のレン」
「よろしく」
「ネルから色々と聞いたよ。大変だとは思うが、頑張ってくれ、それに俺たちに出来る事があるなら遠慮せずに何でも言ってくれよ!」
「困ってる事があったらお互い様だね、私の事はお姉ちゃんだと思ってなんでも言ってね」
「ミク姉ちゃん?解ったわミク姉ちゃん!」
「わぁー、弟や妹が出来たみたいで凄い嬉しいわ!」
「ふーん。私の時は何も思ってなかったのね?」
「ち、違うわよ!ネルちゃんも妹のように思ってるわよ。でも私よりもハク姉がいるからそんな事言わなくても良いかなぁって…」
「まぁ、確かに私には義姉さんがいるから大丈夫っちゃあ大丈夫だけど、ミクみたいな普通のお姉さんが欲しいわ」
「それどういう意味?」
「義姉さん落ち着いて!」
ハクは腰のベルトから銃を取り、ネルに向け笑いかけた。
何だろうこの笑顔…。気のせいではない凄い殺気を感じ取れたのは皆も同じだろう。
ネルはハクを落ち着かせ、ハクが銃をおろす。
続いてズカズカと歩いてきたのはミキであった、一体何のだろうか?
「貴方がカイト君?テトちんからだいたいの話しは聞いてるわ。すっごーい本当にラグナシアじゃないの?本物だったんだぁ」
ミキはなにやらぶつぶつ言いながら、カイトをジロジロ下から上へと撫でるように見た。
あまりにもジロジロ見るのでカイトは少し気味悪がっていた、それを察しテトはミキを掴み強引に引き離す。
「こら、ミキ。よさないか。カイト、すまないね。こいつは昔から礼儀知らずの馬鹿だから…音は良い奴なんだよ」
「馬鹿っていうなぁ!馬鹿って言った方が馬鹿なんだぞ?」
「解ったから静かにしてくれないか?恥ずかしいだろ?」
「むぅー」
ミキはほっぺたを膨らまし、テトを見る。
そのやり取りを邪魔すかのように、リンが声を上げる。
「ねぇ?二人の会話を邪魔して悪いんだけどさ今日は会議じゃないの?」
「そうだったな。自己紹介は後にしてまずは会議だ。皆席に着いてくれ」
カイトが手を叩きながら黒板に向かって歩いていく、皆はカイトに言われたとおりに席に着いた。
「皆席に着いたな?今回の作戦の指揮を取らせてもらう党首のカイトだ。よろしく」
「よろしくね~」
「じゃあ、まずは敵の配置についてだが…ネル。状況を」
「はい。敵の数は約百万ぐらいで、敵は主にメイコ、デル、キヨテルをリーダーとした三分隊を中心とした編成です。また、敵の兵器については現在私の部下が調査中との事で、詳細が解り次第追って連絡します」
「ということだ。テト、レン、ミキ。お前らの部隊を出せるだけ出したとしても数はどれだけになる?」
「私達のギルド、街の有志や自警団、その他諸々合わせても四十万は限界だと思います」
「待て、さっきの戦闘で疲弊してる奴らもいる。そいつらを無理に戦わす訳にはいかない」
「負傷者の数が凄いので、計算し直すと、三十万ぐらいじゃないかな?」
「戦闘?さっきどこかで戦闘があったの?」
「サイハテ村付近で蛇のような巨大なモンスターが発見されたので、迎撃しに行ったんだけど…」
「戦力が違いすぎて撤退してきたんだよ。あれはいったい何だ?」
「話しから推測するとヒュドラじゃないかなぁ?ほぼ、神威が放ったと考えても良いと思うよ」
「私もそう思いますわ。神威の能力は良く解らないけど、何が起こってもおかしくない今の状況ならそう考えるのは妥当じゃないかしら?」
「じゃあ、神威と戦うのは圧倒的にこちらが不利じゃないの?」
「ミク、落ち着け。俺達は戦争をするわけじゃないんだ。神威を止めるだけ。少ない戦力でも何とかなるさ」
「しかし、アタシ達に勝算はあるんですか?」
「無いと言うわけじゃない、ただ俺はグミ博士とやらが創る兵器を止めれば勝算はあると思う。それに兵器が出来るまで奴は動かないなら俺達から仕掛ける!つまり奇襲作戦だ」
「奇襲は良い案だと思います、ですがあのメンバー相手にどう戦うのですか?」
「そうだわ。あの歴戦の勇者に私達がかなうはずがありませんわ」
「まずは皆の武器を強化したいと思う。ミキ!出来るか?」
「材料さえあれば可能です」
「ちょっと待て。僕達が武器を強化したところであの人達には到底及ばないぞ?」
「リツ、ちなみにこの間戦ったアポロンとあいつらとの差はどれぐらいだ?」
「ネルからの資料によるとメイコがアポロンと同等かそれより微かに上で、残りの二人はアポロンと大差ありませんわ」
「テト、忘れたか?俺達はあのアポロンを倒したんだぜ?あの伝説のドラゴンを…。もちろん俺達の力は弱い、だが皆で協力して勝てたんだ、今回も皆と協力すれば勝てるさ」
「確かにそうですが、僕達が分隊を攻撃すればこちらががら空きになります。どうするんですか?」
「俺達が全員で分隊一つを攻撃するわけないだろ?二~三人の少人数で各分隊を叩く!そうすれば敵の力を分散させる事が出来る。一つに集中攻撃するとすぐに援軍が来て不利になっちまうだろ?」
「その意見には賛成だが、メンバーはどうするんですか?」
「アタシは兄さんを止めたいです!」
「私もキヨテルを止めたいです!」
「僕も師匠を…メイコを止めたいです!」
各々が皆を止めたいという想いをカイトにぶつけた、カイトはそれを受け止め、首を縦に振る。
「解った、じゃあハクはデルをルカはキヨテルをテトはメイコを攻略のリーダーにする!各メンバーはお前らが連れていきたい奴を連れていけば良い。メンバーの選出は任せた」
「了解!」
「問題は神威を止める本体だ、分隊攻略メンバーに選ばれなかった者は自動的にこちらになる。皆、よろしく頼む!」
カイトの激励が終わり、皆の私語が続く中、ネルの携帯が鳴った。
ピリリリリリ!

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【第3章~命の重さ(5)~】失われし世界と運命の歌姫~Diva of Destiny and The Lost World~

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投稿日:2010/06/27 22:09:04

文字数:2,829文字

カテゴリ:小説

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