白くけぶる朝靄の向こう側に、青い空が見えた。オレンジ色の太陽光線が目を刺す。ぼやけた意識の中で、ゴミが山となった場所で足が動かなくなり気を失ったのだと思い出した。
気を失ってからどれぐらいが経っただろうか。たしか、気を失ったとき太陽は丁度頭の真上にあった。痛いくらい攻撃的な眩さからしてこの太陽はきっと午後じゃなくて午前のやつだ。じゃあ少なくとも12時間は経ってるのか。いや18時間位?あれ、24時間?
眩しくて目を眇めながら光を遮ろうと手を伸ばそうとして、体がぴくりとも動かないことに気がついた。
そりゃそうだ。ずっとまともなモノを食べてないのだから、体に力が入らなくて当然。けれどそういえばまともでないモノならば食べたっけ。あれはやばかった。あれのせいで腹を下して余計に体力を奪われた。
なんだかとても可笑しくなり、くつくつと、喉で笑い、しかし突発的に発生した笑いの波はすぐに去ってゆく。
このまま死ぬのだろうか。
そんな事を思って目を閉じた。全く実感は湧かないのだけど、死ぬのだろう。死ぬのが怖くて逃げ出した結末がこれ。けれど自分で選んだ道なのだからまあ仕方が無い。そう諦めて目を閉じた。が、閉じたまぶたを突き抜けてオレンジ色の光が目の中に入ってくる。
ああ、煩い。
「おい、あんた、生きてるのか。」
ああ、煩い太陽の音だな。そんな事を思っていたら、右側の目に影が落ちた。ああ、煩いとやっと分かってくれたのか。
「もう死んでるんじゃない?でもこいつ、何にも持ってなさそうだね。」
さっきの太陽よりもほんの少しだけ、高い音。そして左側の目に影が落ちる。ああ違う太陽が喋っているのか。太陽ってのは一つじゃないんだな。
「こら、あんたたち。何をやってんの。その死体が変な病気持ちだったらどうすんのよ。」
明るい、赤い声が咲いた。相変わらず、頭上には影が差したままだけど、胸の中に赤い花が咲いたような声だ。
そうか、きっと太陽の親玉だ。きっと。
それにしても太陽たちは酷いなぁ。と、再び笑いの波が襲ってきた。
俺はまだ死んでないし、病気持ちでもないよ。まぁ、何も持っていない。ってところは当たっているけどね。
そう思って、カイトはゆっくりと瞼をこじ開けた。
オレンジ色の太陽の逆光の中、薄汚いなりをした黄色い髪の毛の同じ顔をした双子の子供が2人、左右を挟むようにして、じぃっとこちらを見つめていた。
「お。生きかえった。」
「生きてたのか。残念。」
そう、目を開けたカイトに双子はそれぞれ声を上げる。その声は右側と左側にいた筈の太陽の声。ああ、太陽ではなく人の子だったか。と、カイトが朦朧とした意識で考えていると、双子の向こう側から再び赤い声が響いた。
「何?生きてたの?」
そう声の主は言ってひょい、とカイトの顔を覗き込んできた。
じっと、強い眼差しがカイトを射竦める。怒気とも殺気とも違う、強い眼差し。言うならば獣の瞳のような、弱肉強食の覆うことの無い、荒削りな原始的な情動。
瞬間、条件反射的にカイトは強く、睨み返した。駈けろ。と本能が囁く。駈けろ駈けろ。と。慣性で足を動かそうと手を伸ばそうとしてやっぱり動かないことに再び気がついた。ああ、駈ける事ができない。弱みを見つけられたらきっと食われてしまう。せめて視線だけは負ないように、と相手を睨みつけた。
ふ、と相手が微笑んだ。きっと、睨み睨まれていたのはほんのわずかな瞬間。
微笑まれて、カイトは相手がただの女だということに気がついた。それは、本当に普通の女性だった。茶色の髪を短く切り、双子と同様に彼女も薄汚い着物に身を包んでいた。本当に、どこにでもいそうな、女だった。
この女の人は一体何?とカイトが今度は探るようにじっと相手を見つめていると、女性は、名前は?と問いかけてきた。
「名前は、何?」
「、、、カイ、ト。」
かすれた声が、からからに干からびた唇から零れ落ちる。
「カイト。ね。カイト。カイト。いい名前だわ。」
そう女性はカイトの名を転がすように、その形の良い唇の上に乗せた。
そういえば、自分はこんな名前だった。と女性に呼ばれてカイトは実感した。久しく名前など呼ばれることはなく、あまり嬉しくない通り名でばかり呼ばれていたから、なんだかとても新鮮だった。そう、自分はカイトだった。名を呼ばれたことで、人としての何かを思い出したような気がした。
まじまじと、女性はカイトのことを見つめ、もう一度カイト。と名を呼んだ。
「カイト。」
「はい。」
何故か子供が行儀正しく返事するような、そんなカイトの返事の仕方に女性はぷっ、と吹き出した。
「名前も聞いちゃったし。あー、まぁしょうがない。拾うか。」
そう女性は言って手を伸ばした。ざらざらと荒れた指先がカイトの額に触れる。何をされるのだろう。と思っていたら、くしゃくしゃ。と乱暴に頭をなでられた。
「こいつ、役に立つ?」
「なんかひょろひょろしてるよ。」
そう双子が両側から言うが、女性は大丈夫よ。と朗らかに笑った。
「大丈夫。こいつ、いい面構えしてるわ。」
そう言って女性はまるで大輪の花開くような笑顔でカイトの頭をくしゃくしゃと撫でた。
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