「ど、どうも…」
こころなしか、そうっと開けられたような扉の陰から、おずおずとのぞき込む顔は、レン君だった。
「おや、いらっしゃい」
吉さんが声をかける。
「へっへぇ、来ちゃいました」
頭をかいて、そっと入ってくるレン君。
夜の時間、「カフェ・つんでれ」は、バーのスタイルで営業している。
いまは、夜の8時半。
レン君は、バイト先のゆくりさんの店の、お得意さんに届け物をしたあと、この「カフェ・つんでれ」に寄ってみたのだ。
「へえ、夜は、昼間の喫茶店とはフンイキが違いますね」
ムードのある証明に照らされた、カウンターの後ろのお酒の並ぶ棚を見て、彼は言った。
「なんだぁ、吉さん。バーテンダー姿、すっごくキマッてますね。かっこいいなあ」
「そうかな?ありがとう」
レン君に言われて、こんどは吉さんが、頭をかいた。
「ホント、大人のお店ってカンジ。ボクまでちょっと大人になったみたいですね。吉さんはイケメンぽいし」
「おやおや、褒めてくれるのはうれしいけど、お酒は出せませんよ」
吉さんは、そういって笑った。
●ジンジャー・エールでいいや…
「あら、レン君」
カウンターの隅から、聞き覚えのある声がした。
「あれえ、モモさん。久しぶりですね」
にこにこと近づいてくるのは、シックな服に身を包んだ、モモちゃんだった。
「何にいたしましょう?」
笑いをこらえるように、彼女は聞く。
「うん、では、ソルティ・ドッグを。…なーんて、言ってみたいなあ。へへへ」
レン君はいたずらそうに言った。
「ジンジャー・エールでいいや。でも、モモさん、ここで働いてるの?」
「そうなの。夜の時間に人手が足りなくてね。アニキのお手伝いよ」
バーテンの吉さんの妹が、モモちゃんなのだ。
「ふーん、そうなの。そうそう、昼間のメイドさんは、咲弥さんという人でしたよね」
「そうなんだよ」
吉さんが、カウンターの中でジンジャー・エールに氷を入れながら、口をはさむ。
「なんか、彼女、若い男の子にものすごい人気なんだよ。で、繁盛するんで、昼間は毎日出てもらってるんだ」
●夜にも来やすいな!
「そうなのよ」
ジンジャー・エールを入れたグラスを、レン君の前に置きながら、モモちゃんが言った。
「夜も彼女に頼んじゃ、悪いしネ。それでワタシが手伝ってるってわけなの」
「そうなんですか。でも、やさしいモモさんがいるなら、ボクも夜に来やすくて、いいな。」
「おだてても、アルコールは出しませんよ」
厳しく言って、片目をつぶる妹の言葉に、吉さんは吹き出して、肩をすくめた。
「もう、バイトの方は慣れた?」
「ええ、だいぶ慣れました」
そうモモちゃんに答えて、レン君は、カウンターの目の前にある人形の頭をとんとんと叩いた。
お酒なんか飲まなくても、こんなゆったりした雰囲気の店に来れば、バイトの疲れも吹き飛ぶなあ…
彼は、そう思った。(/ ̄ー ̄)/
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