第六話 ―環状線を走り抜けて―


「あの…」
「なんだい?ハルちゃん」
「さっきから近いです…」
「そうかい?僕はこれがベs…『ゴッ』

メイコが煙草で後頭部を殴った。

「近い。離れな。ハルが困ってるじゃない」
「俺は紳士的にお近づきに…」
「どこが紳士的なのよ」
「メイコさん。私、気づいたんですけど」
「何に気づいたの?ミク」
「カイトさんは変態という名の紳士ですよ」
「なるほど」

カイト以外の全員が深くうなずいた。

「ところで、君たちは何で旅をしているんだ?」
「それはですね…」

レンがこの旅の経緯をすべて話した。

「そういうことだったのか…」
「相当聞きこまないと分からないかもしれないわね…」
「ハルちゃんが思い出してくれればいいんですけれどね…」

一気に静かになってしまった。

「え、えーと、レン?今ってどこ?」
「え?あ、あぁ…と。この辺」
「結構街も減ってきたと思ったら、武蔵に近づいてきてたんだ」
「でも、あと2,3日はかかるんじゃないか?今までの進み具合的に」

「ハルの目撃情報は今まであったの?」
「ないんです。とりあえず北の方へ歩いてきていますが、手掛かりがつかめるかどうか…」

――実は。

ミクは言おうとしたが、やめた。
もし、言ったとしても馬鹿にされるだけかもしれない。「そんなわけがない」と。

「ミク姉?どうしたの?」
「え、何でもないよ。ただ、考え事してただけ…」
「ふーん」

リンは納得がいってないような、興味がないような返事をした。

「ハルちゃん、以前君と会ったことが気がするのは僕だけk…」
「そうだと思います」
(ミク姉と若干似てきたかもな…。ハルさん)
「はるちゃん…。クールすぎるんじゃないか…?」
「あんた、ハルと面識があるの?」
「何処でお会いになったかお覚えですか?」
「どこかで…さ。でも、会ったことは確実にあると思う」
「いつかはお覚えですか?」
「だいぶ前だと思う」
「かなり怪しい記憶ですね」

ルカが痛いところをつく。

「ま、まあ…。とにかく、ハルちゃんとは面識がある」

珍しくカイトが真顔なので、本気ならしい。

「そうだ!結局おまんじゅう食べられなかったから、どこかで食べようよ!」
「そうだね!ミク姉よく覚えてたね」

いろいろごたごたがあって、結局朝食も食べていないので、お腹も空いている。

「あそことかはいかがですか?」
「なんか、良さげな感じね」
「僕はいつでもハルちゃんの意見に賛成d…『ゴンッ』
(カイトさんって一日でどんだけ殴られるんだ…)

お茶屋に入る。

「い、いらっしゃいませ…」

とても髪が長くて下で一つにまとめた女性が、うつむいてもじもじしている。
あきらかに接客業向きではない。

「珀(ハク)!もう少し愛想よくできないの?」
「はひっ!?が、楽子(がくこ)さん…。わ、私、練習したんですけど…」

奥から紫色の長い髪の毛を上で一つにまとめている女性が出てきた。

「全然前と変わってないわよ」
「いいですよ。どうせわたしなんk…「あのー」

「今、開店していますか?」

レンが基本的すぎる質問をする。

「あ、すみません。ご注文どうぞ」

がくこが応答する。

「よもぎ饅頭を2つと、豆大福が2つと、苺大福g…「すみません、ネギ飴って売っていますか?」
「ミク姉!俺、注文してんだけど!!」
「ごめんごめん」
「すみません…。当店にはございません」
(普通はねえよ…)
「もう一回最初から言いますね。よもぎ饅頭を2つと、豆大福が2つと、苺大福が2つで」
「よもぎ饅頭を2つと、豆大福が2つと、苺大福が2つ。以上でよろしいですか?」
「はい」
「では少々お待ちください」

2人の女性は奥へ入っていった。

「怒られてた子、絶対接客に向いていないわね」
「ルカさんに接客の仕方教えてもらったら?」
「笑顔が一番大事ですね」
「ねえねえルカさん」
「どうしたの?リンちゃん」
「帰り際にオランダ語でさっきの人に言ってみて」
「分かった」

「お…、お待たせしました。よもぎ饅頭を2つと、豆大福が2つと、苺大福が2つです…」

リンが受け取った。

「Is het meest belangrijk om te glimlachen.」
「…?」

何を言われているのか分からないようだったが、6人は店を後にした。

「何であの人は接客業をしているんだ…」
「両親の店でとかじゃない?」
「なるほど。そういう話ならわかる」
「でもでも、もじもじしてた人、美人だったよね!」
「そうね。リンちゃんは、人のいいところを見つけるのが上手ね」
「そうだな。ハルちゃんの方が美人だけどな!」
(しまった…)
「あ…、ありがとうございます……」



こんなやり取りをしているうちに、日は暮れていく。
武蔵まであと少しだ。






次回に続きます。







ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

千本桜 ~脱走姫様~ 第六話

がくぽが出てきていないのに先にがくこ登場。


明らかにカイトがハルさんから嫌われてますねw

今回はあまり進歩がない話です。
というか、準備回です。


千本桜
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15630734

本家様

閲覧数:432

投稿日:2012/05/04 21:31:36

文字数:2,043文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    準備回って大事ww
    そして、後で思わぬところでつながったりするからいいよねww

    武蔵……あれ?江戸って……あれ?w
    ま、まぁいいやww 私、あまり旧国名わからないしww (江戸ってどこだろう…)

    2012/05/30 01:19:41

    • june

      june

      江戸も一応武蔵の中にありますが、江戸だけ独立していた的なw

      すみません、アバウトでwww

      ちなみに武装は東京?埼玉のことですよw

      2012/07/31 22:17:33

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