「よし、じゃあ『ピースフリー』のマークが着いた何かを全員身につけよう。」
「それは良い考えですわ」
踊るようなステップでミクは皆の前に出ると、手を後ろに組んで皆に向かって笑顔で聞いた。
「ねぇ、皆。小物とかにするんだったら私に言ってね。私、裁縫とか大得意なんだ♪」
「へぇ、意外だな。じゃあ、ミク、マーク入りの手袋を頼む。新しいの欲しかったんだが良い機会だからお前に任せるよ」
「全員分はさすがに覚えられないから、紙にどんなのが良いか書いて渡してくれる?」
皆が各々に紙に書いていく。それをカイトは最後に確認するとミクに渡した。
「さすがミクだな。良いお嫁さんになるよ」
「ば、馬鹿っ!変な事言わないでよ!か、カイトは何か決めたの?」
「この服の背中にでかくマークの刺繍を頼むよ。リーダーに任命されたからリーダーらしくしないとな」
「何かちょっと違うような気がするんですけど…」
「あぁ、そうだ。テト、会議はどうすんだ?」
「さっき他のギルドに連絡を入れたから、しばらくしたら代表の者が来ると思うよ」
「何処のギルドが来るの?」
「あぁ、『シルバーウイング』と『ミラーゲート』だよ」
「ギルド4強の2つじゃないの?すっごい…」
「なんだそれ?」
「『シルバーウイング』は主に開発がメインのギルドで兵器から武器まで、何でも作るのよ。私達が着ている服も『シルバーウイング』製よ」
「特にグミ博士の開発技術は凄かったわ、残念ながら《1stBrake》事件に巻き込まれて命を落としてしまったの。確か今はグミ博士の弟子であるミキが党首のはずよ」
「もうひとつのは?」
「『ミラーゲート』は魔法がメインのギルドです。皆《1stBrake》により突然魔法が使えるような人達ばかりなのでルカみたいな協力な魔法使いは居ないけど、《1stBrake》以降結成されたギルドでは最強ですよ。特に党首の鏡音姉弟は世界で唯一召喚を使える人なのよ。しかも16という若さで党首なんだから少し尊敬するわ」
「召喚…?」
「召喚と言うのは大地に司る聖霊と契約してその力を借りる事ができるのよ」
「良く解んねぇけど、凄いのか?」
「凄いってところじゃないわよ。本来聖霊は人間の前には姿を見せないのよ、中には狂暴な聖霊も居るんだから。それに水の聖霊の力を借りれば大洪水や津波を起こせるんだからね!使いようによっちゃ世界最強かもしれないわよ」
「ネル、詳しいんだな」
ハ「ネルは党首の鏡音レンさんにベタ惚れですからね」
「わーっ!ちょっ!義姉さん、バラさないでよ!」
慌てるネルを見ると皆は深いため息をひとつついた。
「心配しなくても、バレてるから」
「えっ?皆知ってたの?」
「あんなストーカーじみた行為とかをしてたら簡単に解りますわ」
「す、ストーカーじゃないんだからっ!ただ後を追いかけてただけで…」
「それをストーカーって言うんだよ…」
「なぁ、聖霊ってどんなのが居るんだ?」
「レン君から聞いた話だと水の聖霊【スプラッシュ】火の聖霊【ブレイズ】風の聖霊【ゲイル】地の聖霊【ガイア】が居るんだってさ。実際に見たのはこの4体で、他にも色々いるらしいわよ」
「それ全部と契約してんのか?」
「まさかぁ。レン君は、地、水。姉のリンは火、風とお互い反対属性じゃないと契約出来ないみたいだよ」
「あの二人は二人で一つですからね」
「運命共同体か…。皮肉だよな。二人とも同じ運命だなんて…」
カイトの急な意味深な言葉にしばらく重い空気が流れたが、そんな空気をの中、リツが唇を噛みしめて壁にもたれて一人呟いた。
「確かに、少し嫌ですわね。いくら双子とは言え、片方が死ねば両方死ぬなんて理不尽ですわよね」
「そうですわね。産まれた時に呪いがかかってると言っても。可哀相過ぎますわ」
「呪い…?」
その言葉にすぐさまネルが解説する。
「あそこの家系は、双子が産まれたらどっちか殺さないといけないらしいの、異性なら男が殺され、同性なら弟や妹が殺されるの。サイハテ村はそういう所だからね、怪奇現象やら呪いやらが凄いんだよ」
「でも二人とも生きてるよな?」
「レン君の母は、なかなか子宝に恵まれなくてね。やっと産まれた子供を殺したく無いから必死で双子を守ったのよ。悪魔の子だからとか何とか言って村の人総出で鏡音一家を探したの。それで見つかっちゃったんだけど、レン君の母は本来子供が受けるはずの村の人からのリンチや酷い仕打ちを子供の為に全部代わりに受けたのよ。そして最期に二人を魔法みたいなので村の外に出したんだってさ」
その話が終ると皆はその事を想像していたのか、涙を流していた。
「良い話よね…。母の愛って泣けるわ」
「本当ですわ。私には母上が居ませんから母の愛ってよく解りませんけど、きっと我が子を守るためなら己の命を投げ出すのでしょうね」
「あれ?皆泣いてる?ところで外に出したのは解ったんだけど、呪いの話が出てないよな?」
「あぁ、続きだけどね。サイハテ村には村に出たら呪いがかかるって言い伝えがあってね。村の神様が怒って二人に呪いをかけるらしいんだけど…。まぁ、最初は本人も嘘と思ったんだけど。信じるようになったのはレン君が遊びに行って、帰って来るときに怪我をしたの。でね、その時リンは家でお留守番してたらしいんだけど、レン君が帰って来た時に同じ場所にリンも怪我してたの。それが毎回に起こるからレン君も不信に思って、お互いが正面に立ってレン君が試しに手の平に傷をつけたの。そしたらリンの手の平にも傷がついたのよ。それ以来二人は呪いを信じ、何をするにも一緒らしいよ」
「ネル、お前レンの事やけに詳しいよな…」
「そりゃ、レン君ラブだもんね」
カイトの発言に間髪いれずに突っ込みを入れるハク、それに動揺するネルは本当の姉妹のような感じがした。
「ちょっ!!義姉さん!!」
「テトさん。やっぱりあいつ違う意味で危ないですね」
「一途過ぎる…。怖いくらいに…」
「盲目ですわね…」
「馬鹿なだけじゃないのかしら?」
「皆して私を虐めないでよっ!!」
「よしよし、ネル、私はネルの味方だからね」
「ミク…。べっ、別に嬉しくなんかないんだからね!!勘違いしないでよ!!」
「はいはい」
照れるネルの頭を撫でるミク。ミクがネルを抱擁していると、ノックが聞こえた
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