タグ:茜コントラスト
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14
私が呆然とつぶやいてしまった言葉に、その男の人はぴくりとして動きを止める。
『……え?』
その人が反応するなんて思ってなくて、私は思わず声を上げる。そんな私の声は、呼ばれるなんて思ってなかったって感じの男の人の声と重なった。
その人が振り返る。
思い出より高くなった身長。
思い出より...茜コントラスト 14 ※2次創作
周雷文吾
13
「位置について、よーい」
パァンッ。
私は――高校二年生になった私は――その音とともに勢いよく走り出した。
学校からは離れたところにある、大きな競技場の四百メートルトラック。インターハイの地区予選大会だった。
トラックを四周弱する千五百メートル走は、カーブがあるせいでスタート位置はそれ...茜コントラスト 13 ※2次創作
周雷文吾
12
そのあとのことっていうのは、もしかしたら余談みたいなものになってしまうのかもしれない。
朝方近くまで泣いていた私は、カゼをひいて学校を休んだ。気持ち的にも、しばらく学校になんて行きたくなかった。
一週間くらい休んで、私はやっと学校に行くようになった。
悠のいない学校は色あせてて、なんに...茜コントラスト 12 ※2次創作
周雷文吾
11
自分の部屋に帰ってきて悠からの手紙を読み終えると、私は涙を流していた。
その日、どうやって家まで帰ってきたのかも、私はあんまりよくおぼえてない。
あのときは、美術室の入り口で座り込んだまま全然立ち上がることもできなくて、美術部のみんなにはすごい迷惑をかけちゃったと思う。
記憶はあいまい...茜コントラスト 11 ※2次創作
周雷文吾
10
『未来へ。
こんなお別れになってしまって、本当にごめんなさい。未来は……怒ってる、よね。
未来がこれを読んでいるとき、きっと僕はもう飛行機に乗っていると思う。父親の転勤で海外に引っ越すってこと、先生はもう伝えてくれたのかな。
引っ越しのこと、本当は、一緒に帰るようになるずいぶん前から決ま...茜コントラスト 10 ※2次創作
周雷文吾
9
その翌日、朝練を終えた私は憂うつな気分で教室に向かった。
どうしよう。
嫌われちゃったよね。
謝らなきゃ。
仲直りしたい。
でも……どうやって?
避けられたりしないかな。
そんな不安で、私は押しつぶされそうだった。
……けれど、その不安すらたいした問題じゃなかったなんて、このと...茜コントラスト 9 ※2次創作
周雷文吾
8
「……」
「悠、どうしたの?」
「う、ううん……なんでも、ないよ」
お互いに名前を呼びあうようになって数日。はじめのうちは気恥ずかしかったけれど、それだけたつと私たちは普通に名前で呼べるようになってた。
けれど、だいたいそれとおんなじくらいのタイミングで、悠はよく暗い顔をするようになった。
...茜コントラスト 8 ※2次創作
周雷文吾
7
そうして、めいっぱい走ったあとに悠と一緒に帰るのも、とっても幸せなひとときだった。
「ね」
「なあに?」
「私、汗臭くない?」
「え、そうかな。考えもしなかったから、そんなことないと思うけど」
「そう? いっつも汗だくになるまで走ってるから、ちょっと気になっちゃって。部室ってシャワー室もないし...茜コントラスト 7 ※2次創作
周雷文吾
6
それから、グラウンドのトラックを走るのがすっごく楽しかった。
傾きはじめる夕日を横目に、私が校舎を見上げると、いつも通り美術室の窓が開いていて、そこから悠の姿が見えた。
「ふふっ」
荒い呼吸の合間をぬって、ほほえみがこぼれてしまう。
悠と帰るようになって数日、私の中距離走のタイムはすごく...茜コントラスト 6 ※2次創作
周雷文吾
5
「なんだ……初音さんだったのかぁ」
「ごめん浅野くん……。あの、集中してるみたいだったから、邪魔しちゃ悪いと思って……。えと、その……怒った?」
ちょっと不安になってそう聞いてみると、悠は苦笑しながら「ううん、怒ってないよ」と首を横に振った。
「そっか。よかった」
ほっとして、私も笑顔がこぼ...茜コントラスト 5 ※2次創作
周雷文吾
4
放課後。
その日はグラウンドのトラックが使えなかったから、陸上部のみんなはグラウンドのすみっこのほうで筋力トレーニングや短距離、走り幅跳びなんかをやっていた。
私は、トレーニングのメニューをこなしたあとは、何人かの中距離走の部員と一緒に学校の敷地の外を周回するようにして走っていた。
今の...茜コントラスト 4 ※2次創作
周雷文吾
3
その翌朝。
私はいつも通りに朝練に出ていた。
ウォーミングアップをして、軽く走る。
その日の朝練は、あんまり集中できなかった。
「美術室からだと、グラウンドがよく見えるから……」
悠のそんなセリフが頭から離れなくて、私はつい校舎を見上げてみてしまう。
でも、そのときの私にはそもそも美...茜コントラスト 3 ※2次創作
周雷文吾
2
いったいどこから話したらちょうどいいんだろう。
やっぱり、彼と初めて話したときのことからかな。
中学二年の夏の日、部活の帰り道。あの日の夕日に照らされた白い校舎は、鮮やかな茜色に染まっていた。
その背後の空は深い青のままで、そのコントラストがとてもきれいだったのをおぼえている。
そのこ...茜コントラスト 2 ※2次創作
周雷文吾
茜コントラスト ※二次創作
1
「ラスト一周でーす!」
そんな後輩の声を聞き流しながら、私は荒い息をついてトラックを駆ける。
学校のグラウンドにあるトラックは競技場のそれより小さくて、一周三百メートルだ。千五百メートル走だと五周することになる。高校トップレベルなら四分二十秒台、インターハイに出る...茜コントラスト 1 ※2次創作
周雷文吾