タグ「オリジナル」のついた投稿作品一覧(76)
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ワインカプセル
壊れかけた時計は短針を恥じて
自らゴミ捨て場を目指す
角砂糖の意味さえ失われたまま
マドラーは空気を掻き混ぜた
押しのけられたピースは旅に出たまま
いつしか取って代わられていく
後悔さえ断じて昂ぶる惑い
無声映画は続いていく
いつか大人になる...ワインカプセル
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僕の君の心臓
その少女は
あとわずかの命でした
心臓が罅割れていて
治すことはできません
窓の向こうの
少年はいつも
目が合うと
微笑みかけてくれて
少女は彼に...僕の君の心臓
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両手いっぱいの花束よりも
あさっての向こう
昨日の先を指し示す猫は
失うことなど恐れはしない
君の持つ傘は
開くだけで雨が降り止んだから
一度だって音を奏でなかった
明日をなくしたままで
ランプは部屋を照らし出す
屋根裏を行く僕たちの...両手いっぱいの花束よりも
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ムーンヰーター
夜を蝕む月と暁
稜線を裂いて卵は割れた
殻に穿たれた真円から
覗き込む眼を覚えているか
夢に消えた猫の願いは
星霜を繰り返す夜を包む
錫の杯から溢れた言葉
藍色の糸は空を紡ぐ
月の端に指を掛けた...ムーンヰーター
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20130730.txt
あした目が見えなくなるとして
最後に何を見たいだろうか?
僕はそれを考えるたびに
あした決めようと 目を閉じてしまう
見ていたいものなんて
うまれたばかりの仔猫が
首をかしげるところ くらいしかない僕だから
君の泣き顔なんて 覚えていたくはない
無理に浮か...20130730.txt
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君は言葉を喋れない
つぼみに似た口元は
灰色の溜め息だけを そっとこぼす
あめふり 傘から落ちた
水滴が奏でるような声は もう聞けない
なにが君を 責め立てたのかは知らない
それでもまた 君が口を開くならば
君のかわりに歌おう
調子外れで構わないなら
君のかわりに叫ぼう...君は言葉を喋れない
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プロローグの終わりに
マフラーを上げて うつむきながら歩いた
冷えたりんごのような 頬を見せたくなくて
たった一言で こんなにも心惑う
靴紐の汚れとか 気にしてしまう
はじまりはいつも真っ白で
おわりはいつか唐突に
あなたの言葉はきっと
明日を告げる鐘の音色
胸のなか響き渡って...プロローグの終わりに
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世界リセット
この世界は君に 優しくはなかったよね
だから特に驚きはしなかった
この世界は少し 色を失ってしまったけど
代わり映えもしなかった
涙を流すだけで君が戻るなら
僕はどうすべきなのか戸惑ってしまうよ
世界のリセットボタンを
世界リセットを
押してしまおうかな...世界リセット
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五畳半のせかい
きみがぼくを 拾った日のこと
きみならきっと 覚えているだろう
錆びた色の 空から降り注ぐ
水の雫 絶え間のない音
きみはぼくを その大きな手で
抱き上げると そっとほおずりして
濡れないよう ぼくをふところに
包み込んで 走り出したんだ
ぼくはあの日からずっと...五畳半のせかい
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世界の終わりと、愛を告げる、ウタ
二個目の太陽が 大きくなるにつれ
人々は街から消えて行った
公園の隅で かすかに揺れている
ブランコを ただ見つめていた
携帯ラジオから 垂れ流されている
色のない ただのポップ・ソング
音のない街を 希望で染め上げる
そんなこと できるはずもなく...世界の終わりと、愛を告げる、ウタ
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バッドラック・ガンバルガール
時計をふと見てみたら
4だけがズラリと並んでいたり
静電気に驚いて
お釣りを床にバラ撒いてしまったり
飛び乗ったエレベーターが
「これ以上はムリ!」と悲鳴を上げたり
車を避けた先で
リッパな犬のフンが待ち受けていたり
神様が今日はやめとけって言ってるのか...バッドラック・ガンバルガール
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1/60000000
汗が滲み出た手のひらを拭い
息の乱れを隠すこともできず
指を震わせて引いたトリガーが
丸いスコープの中で花を咲かす
この指先で摘み取った
滴るような花弁の重さに
黒い銃口をこめかみに
押し当ててはただ涙を流す
銃弾の雨が敵と味方の 隔てなく降り注ぎ...1/60000000
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世界拡大解釈
縛られた幻想と 出来過ぎた理想と
見せられた真実は ただ風にさらわれ
完全な観測に 含まれた矛盾を
モノクロの数学者が 嫌らしく嘲笑う
綻びかけた深夜の街を
ただ風のように駆け抜ける
背中に迫る青の粒子に
すべてのものが崩れ落ちていく
世界から溢れ出した解釈が...世界拡大解釈
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マリオネトラレ
私を貫いて
見下した視線で貫いて
私を罵って
赤い赤い舌で罵って
私を憐れんで
ただ言葉だけで憐れんで
私に見せつけて
今の恋人を見せつけて
もう少し あと少し...マリオネトラレ
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世界少年に捧ぐセカイ
白い画用紙を ただ塗りつぶした
それだけで開く 無数の世界への扉
原色の森 月の裏側
空の深海 未来へと続く
この白い部屋を 否定するように
埋め尽くされた 色鮮やかな君の世界
その入り口は 閉ざされていて
覗きこむことしかできないけれど
君のユメに終わりが告...世界少年に捧ぐセカイ
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十八歳になったあなたへ
(ルカ)
舞い落ちる 紅葉みたいに小さな手で
私のゆびを 必死でつかむあなたに
何でもいい ただ何かを遺せるならば
それは素敵なことだと思ったの
すぐにあなたを置き去りにして
遠くへと行ってしまう私だから
伝えたいと思っていた すべてのことを
少しでも言葉にし...十八歳になったあなたへ
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ルーブ・ゴールドバーグの旋律
数詞の彼方 繰り返された小さな旋律が
作り上げたあの空は 初めて見るけど
どこか懐かしい形をしていた
青いビー玉 破れた絵本 指先の傷跡
どれかひとつ欠けても 私の「今」には
決して辿り着けはしないから
まぶたを閉じて 祈るだけでは
きっと届くことはない...ルーブ・ゴールドバーグの旋律
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ベツレヘムの雪
雪の降らない街に
クリスマスツリーの星と同じ名前の
男が一人住んでいました
男は貧しくて 今日を生きるために
誰かの明日を 奪わなければなりません
クリスマスが近付いて
冬の支度をはじめる頃
奪ってばかりの男は
雪が見たくなりました...ベツレヘムの雪
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三日後に死ぬ僕から
あなたが手紙を読む前に 僕は死んでいるでしょう
三日後 それは決して避けられない未来なのです
僕とてそれを望んでいるわけではありません
部屋の広さと 指の震えと 孤独を 嘘と呼べますか?
幾度となく書いた筈の字が上手く書けません
黒いインクが紫ににじんで
目に映るも...三日後に死ぬ僕から
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模造ハートビート
肺を突き破る 白い衝動
濡れたアカシアが 風に震える
歪み ひび割れた 赤い真円が
紙を抜け出して 螺旋を描く
巡る 巡る
何度も 何度でも
ねじを拾い集める 壊れるまで
まとわりつく大気が部品を削ぎ落として
耐え抜いたものと失われてしまったもの...模造ハートビート
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架【空】夢 -かくうそらゆめ-
相槌に 赤い糸を引かれて
空想に 想う空は開いた
右腕を 夢見た受精卵は
モノクロの 背景にひとつ点を打つ
回り道 動かない時計 くるくる回る少女の影
砂を詰め込んだぬいぐるみに 宝石を仕舞いこんで
にじむ朝焼けの前で 破り捨てた季節の花弁が
息を白く...架【空】夢 -かくうそらゆめ-
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傾く夏の原子
マーマレードの空仰いで
とけていく魚は蜂になったから
やわらかな秒針は
やわらかな時を刻んでいく
二束三文の空模様
耳のない猫が風になったから
懐中時計はほら
とけて たれて 青に落っこちていく
オールトの雲に鍵をかけて...傾く夏の原子
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Little Garden
雨上がりの朝は 水たまりに足を浸して
月の昇る夜には 両手を広げて
この小さな庭で あなたが花を咲かせる瞬間を
ずっと待ってるから
部屋の隅で膝を抱えて 励ましの言葉さえ
穿った捉え方をして ゴミ箱に投げ捨てた
それでも世界の全てから 拒絶されていることが
...Little Garden
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ガール・ブアイソガール
一人だけで帰るには 長すぎる田舎道
手提げカバンが重くて 何回も持ち替えた
私を追い抜いていく 二人ぶんの笑い声
手を繋いで駆けていく 長い影を見つめて
顔が怖いのかな?
笑ってみようかな?
鏡を見たら 頬が引きつって
作り笑いがみえみえで
「ありがとう」って...ガール・ブアイソガール
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比翼片鳥水に入り
振り返るほど艶やかな
朱色に濡れた唇と
乙女のように散らされた
頬の紅葉に爪立てて
二度と見られぬ顔にしてくれと
二度と離れぬ証を立ててくれと
指先に触れた刃が零した
赤く 熱い血の潮を飲ませ
耳元で 俺の物だと囁き...比翼片鳥水に入り
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ドリーマーズ・ランドへようこそ!
意識の トンネルに 響きはじめる懐かしい騒音
心臓の 高鳴りを 抑えきれず出口へと走り出す
視界を 染めあげる カラフルに滲んだ無数の光
360度 メルヘンで埋め尽くす大パノラマ!
幼い 自分と すれ違ったような気がして
振り返って 手を伸ばしても ...ドリーマーズ・ランドへようこそ!
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クロスフェード
夕陽に続く道を見つけて 足早に僕の手を引いたり
祭の気配に気を逸らせ 下足場で裾を踏みつけたり
一枚の毛布にくるまって 一晩中星を眺めたり
濡れたからもういいと笑って 水溜りの上ではしゃいだり
君の笑い顔が 少しでも曇るのが怖くて
最後のページを めくる手を止めたまま
...クロスフェード
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世界卵
沙漠に 埋もれていた
歪んだ 黒い卵
手にした その瞬間に
罅割れ 機械仕掛けの神を弑逆した
無数の歯車が時を 指数的に逆行する
世界が収束に向かい 0次元に凝集する
それが 砂礫の一粒となり
劫を 経て殻を形作る
沙漠に 埋もれていた...世界卵
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ワールズエンドワイルズ
皮膚の下で蠢く 無数の蟲が
爪を剥がして外へ 這い出して行く
原色に染め上げた ビルの谷間を
理由も思い出せず 走り抜けて
やがて見えてきたものはゼロとイチの狭間の世界
歪みねじくれた境界面を滑り落ちる衝動
一次元の骨子(フレームワーク)が軋みを上げて崩れ
...ワールズエンドワイルズ
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侵蝕フェルミオン
ディスプレイの映し出す砂嵐が
予見されたオワリの ハジマリを示す
落ち窪んだ空に穿たれた穴は
ただ深く、暗く、黒く、皮肉にも美しく
量子化された死骸の山の
頂上に辿り着いたとしても、その先は何処を目指せばいい?
偶奇(パリティビット)の津波が 理性を構築する
無感情...侵蝕フェルミオン