タグ「オリジナル」のついた投稿作品一覧(76)
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僕は行く、桜の向こうへ
花明かり
桜の色
星の降る夜
桜の下に埋まっているのは
冬の死体か 僕自身なのか
話したくても 話せやしなくて
自分のことが大嫌いな月の下で
春が連れてきたんだ
鼓動がうるさいんだ...僕は行く、桜の向こうへ
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「世界よ、腐れ」と僕は言った
翼があると嘯いて
君に背中 見せずに
蝋の細工で誤魔化した
すぐに溶けるとわかっていて
鎖すら腐る世界で
君とワルツを踊ろう
咎め立てする人なんて
もういない
僕の言葉は嘘ばかり...「世界よ、腐れ」と僕は言った
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ラティメリア
ラティ 僕のことは忘れて
顔を上げてほしいんだ
いつかまた会いに来るから
その日まで さようなら
馬酔木になって 蠍になって
魚になって 海を泳いで
人に生まれて 人を愛して
幾度死んで 生まれて
また死んで...ラティメリア
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ガラスの銃弾は朝を告げる(改題)
夜明け前 薄らぐ星の帯
どこか錆びついて軋めくものは何?
君のさよならはあまりに唐突で
僕の退屈をどこかに連れ去った
夜を終えた街並みは
朝を始める前に
わずか一秒だけ夢を見る
高く響け銃声
この夜空を切り裂いて...ガラスの銃弾は朝を告げる
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都合のいい恋を始めましょう
およそ太陽に届かぬわたし
地べたを這いずって 泥を啜るの
熟れた果実から溢れたしずく
骨身に徹えるほど 芳しくある
テストの点も 既読無視も SNSも忘れて
月の下で踊りたいと ただ憧れた
曖昧に濁して
微笑みながらかわして
逃げ道を作って...都合のいい恋を始めましょう
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春には雪が解けるから
幼いころ巻いたぜんまいが切れても
僕たちは歩き続けるだけ
君の細い背中を思い出すたび
心臓が左によれていくんだ
おてて繋いで逃げ出して
夢で見た場所へ行きたいんだ
会いに行こう いつでも
暁迫る朝も 星降り注ぐ夜でも
君となら行けるよ...春には雪が解けるから
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ブライトソング
絶望の先が奈落でも
それでも信じたいよ 希望の歌を
途切れた言葉は鏡合わせ
重ねて届けたいよ 君の元まで
きっともう間に合わない
想いは届かない なんて
悲しいこと言うなよ 世界は繋がってる
行こう 空の向こうまで
その気になれば星だって降らせるさ...ブライトソング
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夏に囚われている
いま あの日の空 夏の香が蘇る
目映いほど狂おしい蝉時雨
離れた手に気付くたび また繋いで
レールの上 いつまでも歩き続けた
誰かが言う 無駄だ 諦めろと
誰かが言う 意味も価値もないと
そうかもしれない
意味などきっとなくて
あの日々は遠く 遠く...夏に囚われている
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星を繋ぐ
月のない空の下
手を伸ばし 背伸びして
瑠璃色の手紙 明日に届け
羽根のように 音のように
軽やかな日々は過ぎて行く
星を指でなぞるように
天球に描く僕だけの地図
見えないもの 見たくなかったものも
この胸にすべて仕舞い込んで...星を繋ぐ
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嘘つきのダンスフロア
終わらない花弁に くちびるを捧げた
生きたくって 生きたくって 息ができない
壊れない仮面が 素顔のように微笑む
苦しくって 苦しくって 空を仰いだ
口からこぼれる金の砂
虚飾で織り上げたロングドレス
嘘つきだから月に手を伸ばす
自己嫌悪だらけのダンスフロア
...嘘つきのダンスフロア
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明日の先の未来へ
美しい物語なんて僕らには似合わない
筋書き通りなんてつまらないだろう
昨日と明日なら、僕は明日を選ぶ
たとえそれが過酷を強いるものでも
いつか僕らが夢見た
あの懐かしい未来へと
荒野を歩いていく
朝日に映え、露草はきらめいて
南の風、オルガンは何色?...明日の先の未来へ
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ノックノック
心煙る夜明け
今日も明日も何もわからずに
うつむいて歩いた
水溜まり越しの空は花緑青
世界の水圧に
僕の心は耐えられない
世界の水圧に
僕の扉は固く閉ざされて
ノックノック ノックノック...ノックノック
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日曜日のモノローグ
明日の調べを
明日の心を
枕元に用意して眠る
夜明けに銀を
夢路に花を
たくさんの"もしも"にさよならを
もし僕らが友達だったなら
割ったりんごの片方を君にあげよう
蜜の入った部分は僕のもの...日曜日のモノローグ
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ヘニー・ペニーは悔やまない
世界に告ぐ 掃き溜めの内側から
愛を貫いた人魚姫は泡となった
世界に告ぐ 有象無象の言葉で
ナイフを打ち捨てた決意の重さと尊さを
それでも私は書き足そう
とても、とても、陳腐なハッピーエンド
綺麗なものばかり見ていたい
汚いものだけ溢れている
臭いものに...ヘニー・ペニーは悔やまない
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十三番目のチャイカ
昨日の影に跪く
人間の群れ
佇むチャイカ
明日の記憶に傅く
子供の瞳
わたしはチャイカ
六秒後に晴れた空を
キャンバスごと水に浸して
火曜日に捨てた...十三番目のチャイカ
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メビウシスタ
幼い頃に
庭の土に埋めた種は
思春期を迎え
僕の背丈を追い越した
成人し
庭の木が実をつける頃には
僕の傍に
誰もいなかった
孤独から...メビウシスタ
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明日の続きが今ならば
明日の続きが今ならば
君に声をかけられるだろうか
明日にはいなくなってしまう
微笑む君の横顔に
明日の続きが今ならば
君の手を取って言えるだろうか
スとキとデとスの四文字を
喉につかえたこの想いを
僕はいつだって、後悔ばかりしてる...明日の続きが今ならば
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琥珀揺れる幻燈
いつか重ねていた
青いフィルム
夕暮れの明滅
影の切り取り線に
裁ちバサミをいくつ突き立てよう
君は苦しむだろう
かつて僕がそうであったように
君は苦しむだろう
世界が音で満たされてからも...琥珀揺れる幻燈
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水素色の手紙 -rewrite-
木漏れ日の加速度から
透明な空の答えを導いて
いつか、届けばいい
水素と同じ色の手紙
涙のように甘い果実には
解けない秘密があると
歪んだふしにくちづけしては
囁き返していた
碧い小瓶を空に透かして...水素色の手紙 -rewrite-
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空想ロケッツ
二秒後の彗星は
時計に甘く溶けて
放課後の隅っこで
トカゲの影を伸ばした
教科書のきれはしに
記された数式が
まばたきのまたたきに
白へと落ちてしまった
恋に似た重力は...空想ロケッツ
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はグルまコンプレックス
歩く、歩く、放課後の道
白線の上
はみださぬよう
落ちぬように
歩く、歩く、横一列で
足並み揃え
見えない目に
怯えながら
隙間ない テセレーション...はグルまコンプレックス
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ツナガルロマネチカ
君と僕の手のひらを
重ね合わせるために
繰り返そう
1/nの君を見つけ出すために
錆びた部屋を抜け出した太陽が
プラスチックの毛布にくるまって眠る
歯車から垂れ落ちた血液を
瞳のない猫が舐め取った
君の心理に潜むハンプトン・メイズは...ツナガルロマネチカ
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モノクロメランコリア
君を嫌いになったわけじゃないんだ
好きという気持ちだけ 置き忘れたまま
いつの間にか周囲は 鮮やかになって
モノクロの僕はただ ひとりぼっちで
歩く ただそれだけでひどく疲れて
空の色なんてもう ずっと見ていない
誰か僕のこころに麻酔を打ったの?
誰が僕の世界に...モノクロメランコリア
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雪のために花が散るなら
「ごめんね」を寄せ集めた
僕らは路地裏を歩く
無実の画用紙は
もう
彼方を行く光
「ありがとう」と言えるのなら
それが幻だったとしても
穏やかな午後は
まだ...雪のために花が散るなら
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リチウム
1グラムの遺伝子は
佇む世界の背中に
果てなき海の果てを予感して
幼子をあやすように歌う
例えば僕が死んだら
誰かと添い遂げてほしい
君に幸せになってほしいだなんて
見え透いた嘘ばかりだ
悲しいことがたくさんあって...リチウム
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ヒトトセ
私は、駅のホームの端
誰も気がつかない場所で
小さなベンチに腰掛けて
ずっとあなたを待っている
お気に入りの小説
鍵の形をしたしおり
使い込んだブックカバー
いつか、あなたに渡すための手紙
私は、駅のホームの端...ヒトトセ
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星の海におやすみ
明日を夢見た僕は
きっと辿り着けない
斜めの夏
君に会いたいと気がついた
砕けたラングドシャは
舌に苦みを残して
ほんの小さな
仕返しは終わりを告げた
おやすみ、さびしいこころ...星の海におやすみ
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それでも僕は君の手を握るだろう
君の温度でやけどをした手のひらが痛んでも
触れ合うことをやめない僕たちだから
この世界から雨が消えたとして
仔猫はギターを弾くだろうか
わたがしの雲
甘い星空に
こんぺいとう、ひとつ浮かべて
明日までならきっと届くはず
僕の言葉を夜に刻んで...それでも僕は君の手を握るだろう
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私という連続体
《ルカ》
コンビニへ行くよりも
手軽に奇跡を起こせるとしたら
なにを願うだろう
幼いころの私なら
お菓子でいっぱいのブーツなんて
欲しがったかもしれない
《ユキ》
流れ星を見るだけで...私という連続体
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さかしまの天球儀
満月のロウが溶け出して
君と同じ温度になった
水晶の砂のなかで燃える炎は
あどけない蠍の火
無我夢中で駆け出していた
夜の帳が怖くて
ひとりきりでは眠れない夜に
追い立てられて
耳触りのいい言葉ばかり...さかしまの天球儀