タグ「MEIKO」のついた投稿作品一覧(48)
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見下ろした窓の下、赤い髪飾りが通り過ぎて行った。
それは十代半ばくらいの浴衣姿の少女だった。路地裏の小道を一人、からころと下駄の足音を立てながら進んでいく。近所で行われる夏祭りに向かうのだろう。下駄履きに慣れていないのか、そのおぼつかない音色がなんだか可愛らしい。
恋人との待ち合わせだろう。浴衣の...偽恋歌
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!!注意!!
題名にもあるとおり、刀剣乱舞の世界観でのお話です。
がっつりがっつり出張ってます。
興味が無かったり世界観が混ざってしまうのが好きでない方。
申し訳ありません。お目汚しの前にお戻りください。
それでも大丈夫!という方。
前のバージョンでお進みください。
【ボカロ】あかいみちしるべ【刀剣乱舞】
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今でこそ小岩井家のボーカロイドたちといえば大人数の大家族といった体だが、最初からそうだったわけではない。
ミク一人きりだったところにメイコが来て二人きりで秋をすごし、冬の気配がカイトを連れてきた。春の風と共にリンとレンが来て、生い茂る葉が蒼い影を落とす頃がくぽが迎えられ、梅雨の雲間から青空が見え...Master番外 着物くるくる・1
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2014年6月某日の某お祭りに名刺裏SSとしてくっつけたものたちです。
千年の独奏歌についての解釈(というか妄想?)がTL上で流れまくった某4月の出来事に触発されて、文字書きお仲間の藍流さんと千年祭と称して6月の某イベント時に配る名刺の裏側に独奏歌のSSをつけよう!!という企みをしまして。
……とい...V3のお姉ちゃんがやってきた日 ―名刺裏SS・はずれくじ―
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「うん、大丈夫、気にしないで。分かってる。忙しいのは仕方のないことよ、ママ。」
それじゃあね、と電話を切った幼いマスターが小さなため息をひとつ、ついた。
何かあったのか、と問い掛けるよりも先に、そのため息のトーンで分かる。それでも、とメイコは声をかけた。
「マスター、どうかしましたか?」
「クリス...クリスマスケーキ
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提出用の書類を手に、メイコは「塔」の渡り廊下を歩いていた。
「塔」の名の通り、その建物はいくつもの塔で構成されている。一番広く巨大なのは中央にある研究者用の塔で、次いで居住区としている塔。その二つの大きな塔から派生するように大小の塔がその周辺にそびえ立ち、その間を渡り廊下が繋いでいる。
これだ...明け方の日【シェアワールド】 響奏曲【異世界】
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さて、と來果がアイスを選び終えて、レジへと向かうのを見送り。じゃあ私はマスターにコンビニ限定のケーキを買って帰ろうかしら。とメイコがプリンやゼリーなどが並ぶ棚を眺めていると、不意に横から細い子供の腕が延びてきた。
「私、これが食べたいわ」
そう言ってその子供が手に取ったのは、上にほろほろのクラムが...― チーズケーキと少女・10 ―
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カイトと來果のようには、自分たちはどうしてもなれない。離れていても距離を感じさせないような彼らと違って、自分とマスターはどれだけ近くにいてもその間には越えられない距離があるから。
マスターは自分の言葉を受け入れてくれなかったし。自分も又、こうして逃げてしまった。
「けど、ここのコンビニでメイコさ...― チーズケーキと少女・9 ―
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「それは、大きなお世話というものよ、メイコ。」
突き放すようにそう言い放ち、マスターは再び真っ直ぐにメイコを見つめてきた。
「ピアノを弾く事は、私にとって好きとか嫌いとか、そういう事じゃないわ」
まるで聞き分けのない子供を諭すようにマスターは言った。
悔しい、腹立たしい、何か言い返したい。けれど...― チーズケーキと少女・8 ―
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メイコがマンションに帰ると、ピアノの音が部屋の中に満ちていた。
超絶技巧の音の洪水。ただの騒音になってしまう境目ぎりぎりいっぱいまで施された装飾音。正確なリズム、正しい位置に収まった音階。正確無比な、ただそれだけのピアノの音。
そっとピアノが置かれた部屋を覗くと、大きなグランドピアノと対照的な小...― チーズケーキと少女・7 ―
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お前ら爆発してしまえ。と、思わなくは無い光景だけれども。
けれど、お互いが好きなのがよく分かるその様子は微笑ましくも眩しい。お互いを大切に慈しみ、幸せを繋いで冠にしていくような。その様子に、うらやましいな。と思わずメイコは呟いた。
「いいわね、羨ましい」
微かな、心の隙間から落ちた小さな弱い音...― チーズケーキと少女・6 ―
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「え、あの、今の笑うところ?」
「笑う所じゃないかしら」
なんとか笑うのを我慢しようとするのだが、堪え切れずに零れ落ちた笑みが、ほろほろと零れ落ちていく。
「いや、なんていうか。さすがというか。初対面でそんな事言われると思っていなかったというか、てか、それ素で言ってるの?」
笑いの発作を何とか抑えな...― チーズケーキと少女・5 ―
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次の日。昼を少し過ぎたくらいの時間にメイコが再び図書館を訪れると、來果の言葉通り閲覧用の席に腰かけて本を読んでいるカイトがいた。青い髪に長い裾の上着。そしてマフラー。まさしくカイトである。初めて見る自分以外のボーカロイドに嬉しくなって、メイコはほんの少し歩調を速めてそっとその傍に近寄った。
近づ...― チーズケーキと少女・4 ―
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「あの…なにか、お探しですか?」
柔らかな、人懐こい笑顔を連想させる声だった。
声をかけられてメイコが振り向くと、そこには小柄な女性が立っていた。柔らかそうな髪をふわりと肩の辺りで揺らして。知性の宿る穏やかな微笑みを浮かべたその女性はこの図書館の職員なのだろう。
「何か、本をお探しですか?」
「あ...― チーズケーキと少女・3 ―
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マスターは確かに音楽的才能はあるけれども、それ以外はいたって普通の小学生なので、昼間は当然のことながら学校に行く。暮らすマンションから少し離れた場所にある私立の小学校。マスターの両親の知人が理事をしているというその私立の学園ならば色々と融通がきくのだという。
毎朝、時間になるとマスターはかっちり...― チーズケーキと少女・2 ―
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連なる音が響いていた。正確なリズム、正しい位置に収まる音階、測ったように等分に力を増すクレッシェンド、数値通りのピアニシモ。
正確無比な、ただそれだけのピアノの音がマンションの一室を満たしていた。技術だけで考えたらとんでもなく才能ある人物だと伺える演奏。けれど、ただそれだけの演奏。味もそっけもな...― チーズケーキと少女・1 ―
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溢れ返る想いがある。何かを伝えたい、けれどその手段が分からない。どうすればいいのか分からない。どうしようもできない。目の前で起こっている事象に対してなすすべもなく、ただ見つめることしかできない。
けれど、だからこそ。無力だからこそ。「次」を拓くために私はあがきもがくように、手を伸ばし前を見て、何...重なる音 【シェアワールド】響奏曲【異世界×現代】
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狂った魔獣が吼えた。大音量の咆哮が森の中の空気を、木々の枝を、逃げる子供の鼓膜を、震わす。肌で感じる魔物の気配に逃げながら子供は悲鳴を上げた。恐怖で走っている足がもつれる、かくんと力が抜ける、水の中に沈み込んだように周囲が重くなる。
そしてそのまま、まるで地面に滑り込む様な勢いで、ざん、と子供は倒...少し昔の話 【シェアワールド】響奏曲【異世界側】
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この作品は、以前書いた、カフェの話の番外編的な話です。
一連のカフェを舞台にした話を読んでいないと、ちょっと分かりにくいかもしれません。
それでも良いよ。または、読んだことあるよ。という方は前のバージョンからどうぞ。
Cafe・ただのいたずら
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明日になったらマスターはいつものように笑顔で、おはよう。と言うのだろう。そして、いつものように私たちにいろんな音を与えてくれるのだろう。
明日になったら自分はいつものように皆のおねえちゃんで、マスターの音に乗せて歌を歌って、分担の家事をこなして、ミクやリンとお喋りしたり、レンを茶化したり、カイト...糖質ゼロの甘さ・5
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「マスターのおにぎり。美味しそうでした。おれ、うまく握れなかったんです。」
今度は一体何を言いたいのか。
突然脈絡のない事を言い出したカイトに、マスターとメイコはきょとんとした表情で顔を見合わせた。カイトは何が言いたいのかよく分からない。と首をかしげる二人にカイトは更に言葉を紡いだ。
「あげはちゃ...糖質ゼロの甘さ・4
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パソコンの光に照らされたマスターの顔には数多くのしわが刻まれて、弾力の感じられない肌は色も悪い。優しげな眼差しはいつもと同じだけれど、微かに微笑む口元には寂しい色が含まれている。
長い年月を重ねた人の、老人の気配がそこにあった。
マスターの年を考えたら、老人。と認識するのは当然のことで。だけど...糖質ゼロの甘さ・3
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「あれ、メーちゃん。」
どこかとぼけた調子のその声の主はカイトだった。メイコと同様に部屋着姿で、半そでのTシャツにジャージという限りなくゆるい格好に、何故かやっぱりトレードマークのマフラーを巻いている。
いつ見てもやっぱり変な格好。と思いつつメイコが見つめていると、どうしたの?とカイトが問いかけて...糖質ゼロの甘さ・2
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※一個前に投稿した、「たとえば、の話」の続きのような話です。
一応、こちらのみでも理解できる内容にはなっていると思います。
読んだ事あるよ、もしくはそれでも良いよ。という方、どうぞ※
今日はなんだか色んなことがあったな。
夜、メイコは自室で寝る前のストレッチをしながらゆっくりと一日の出来事を思いか...Master・糖質ゼロの甘さ・1
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開店時間のほんの少し前に森はコックコートに着替えて髪をひとつにまとめて、厨房に立っていた。
「おはようございます。」
先に作業をしていたスタッフの女の子のあいさつに、森もおはようございます。と声をかけながら、手を洗った。
先に作業していた女の子は最近入ったばかりの専門学生だった。短い前髪に小柄な...Cafe・ロータス・イーター 1
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照明の光度を落とした薄暗い店内。テーブルの上には、それを補うように置かれたキャンドルの炎がゆらゆらと柔らかく揺れている。座るメイコの前に、カイトがロールケーキを運んできた。
綺麗な丸でなく、楕円形に巻かれていて、クリームも少し固そうで、デコレーションも不揃いで、上に乗った果物は歪にカットされてい...給料3か月分の贈り物・4
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カイトからの連絡が携帯に何度か入ったが、今日は無理だと思った。ショックは一日に一つで充分。それ以上は耐えられない。ちゃんとカイトから話を聞くのは、明日にしよう。
そんな事を思いながら部屋の中、床の上に座り込んでちいさくなっているメイコの耳に、キンコン、とチャイムの音が届いた。壁の時計を見ると夜9...給料3か月分の贈り物・3
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がさがさとスーパーの袋の音を立ててメイコは早足で道を歩く。日が落ちるのが早くなった薄墨を流したような空のした、両脇に雑貨屋やカフェや和菓子屋やらが並ぶ通りを過ぎる。住宅街に差し掛かり一本わき道に入って直ぐのアパートの、3階の自分の部屋にたどり着いた。
荷物を置いて上着を脱いで、機械的に買ってきた...給料3か月分の贈り物・2
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夜8時30分頃。テーブルの上、マナーモードにしてある携帯がぶるぶる震えているのを、しかし電話に出る事はせず留守電に切り替わるのを、メイコは床に座り込んだまま横目で眺めていた。
しばらくして点滅する光と共に、不在着信・一件。という表示がディスプレイに映し出された。そこにきてようやくメイコは携帯を手...Cafe・給料3か月分の贈り物・1
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列車が減速をしはじめた。間もなく停車をすることを機械音声が伝えてきた。
「どうする?」
と、メイコが窓の外を窺いながら言った。
行く先にはこじんまりとした停車場があるのみで、周囲には水辺が広がり、ぽつぽつとあちらこちらに水上の家屋が並んでいた。
「この辺りは大きな街ではないみたいだけど。一度降りよ...QBK・19~野良犬疾走日和~
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