玩具屋カイくんの販売日誌(174) 「シグナル」のライブで盛り上がる!
投稿日:2012/11/11 15:33:56 | 文字数:1,498文字 | 閲覧数:211 | カテゴリ:小説
ふだん喧嘩ばかりの身内でも、違う場所で見るといいところが見えたりするものですよね。
わーっ、と歓声が上がって、ステージの上ではリンちゃんが息を弾ませ、ニッコリと笑う。
「じゃあ、次の曲行くよ!」
最前列の観客が、イエイ!と叫んで答える。
ライブハウス「マルクト」は、大入り満員の盛況。
ステージでは、リンちゃんが率いるガールズロックバンド「シグナル」が演奏中だ。
「ちょっと、曲の前に説明ね。次の曲はね、ちょっと面白い曲なんだ」
リンちゃんは、立ててあるマイクに口を近づけて言った。
「みんな、知ってるかな?いま、ちょっと面白い人形があってさ、それを歌った曲なんだ」
観客から、「Yeah! テト・ドール!」という声が上がる。
リンちゃんは親指をたててグッド!の仕草をした。
「そう!やっぱ、わかってるね!いま、人気の人形がモデルの歌だよ」
彼女は、ステージの方を指差した。
「あたしたちの次に、ステージのラストで演奏してくれる、コヨミさんが作った曲なんだ。“彼女はデビル”!行くよ」
ギターがグイィンとイントロのフレーズをはじき出した。
会場内は轟音と大歓声に包まれた。
●みんな見に来てるなあ
「ふぅん。こうして見ると、なかなかカッコイイね。あいつ」
ライブハウスの後ろの方で、ステージを見て、ぼそっとつぶやいたのは、レン君だ。
いつもは生意気な妹だが、確かに演奏やパフォーマンスは、人を惹きつけるものがある。
彼はそう思った。
「あ!」
リズムを取りながら、ふと斜め前を見た彼は、そこに、りりィさんがいるのを見つけた。
彼女もやはり、リズムをとってステージを見ている。
久しぶりのリンちゃんの「シグナル」のステージに、知り合いの人が、けっこう来ているようだった。
「♪彼女はDevil、彼女はDevil!」
リンちゃんの歌と、サナギちゃんのギターが軽快に飛ばしている。
「おや?」
曲のリズムに乗りながら、レン君は観客の最前列で、別の女の人を見つけた。
片手に人形を持って、飛び跳ねるようにして、踊る人。
知り合いの、霧雨さんだった。
「あれ、霧雨さんも来てるよ。みんな来てるなあ。ん?手に持ってるのは…」
彼女が手に持って振っているのは、あの“はっちゅーね”だった。
●ステージだけは、いいですね…
「♪天使と悪魔は紙一重、君はいつでも忍びよる! 君はDevil angelさ!!」
ザン!とエンディングのフレーズが鳴って、演奏が終わる。会場内はすごい歓声に包まれた。
「うわあ、すげえ盛り上がりだなあ」
口を開けて見ていたレン君の横に、いつの間にか、りりィさんがきていた。
「こんにちは。レン君も来てたの?」
「あっ、こんにちは、りりィさん!」
「妹さん、とてもカッコいいわね」
「い、いや、どうも。あいつ、ステージだけは、いいですね」
レン君は笑って、うなずいた。
りりィさんもうなずいて、ステージの方を見る。
すると、最前列で「イエー」といいながら、霧雨さんが片手で、“はっちゅーね”を差し上げている。
「あらら、彼女もノっちゃっているわね」
りりィさんが笑って言った。
演奏を終えた「シグナル」の面々は、汗を拭いながら、笑顔で手を振る。
すると、霧雨さんの手にした人形が、ステージに向かって、結構大きな声でこう言った。
「かっこいいなあ。グッドジョブ!」
リンちゃんや、バンドのメンバーは、その声には気づかなかったが、
観客の多くが、しゃべる人形の方を見た。ちょっと、ザワザワとした声も起きた。
レン君はそれを見て、思った。
「こんなとこでも、しゃべるのかあ。あの人形さんは…」ヾ(・・ )
(次回に続く)
作品へのコメント1
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ご意見・感想
今晩は! 早速拝読させて戴きました。
リンちゃんノリノリのライブステージでしたね~♪ さすがです! そして不思議なはっちゅーね人形さんも、やはり不思議な事が起こって、ちょっと観客席はざわざわ。
バンド名”シグナル”と聞くと、最上級のリン廃P様で有名な”Dios/シグナルP”さんを思い出してしまいます。
そしてはっちゅーねさんのこれからが楽しみです!
ではでは~♪
P.S めっちゃ寒くなってます。是非ともご自愛下さいませ。2012/11/12 21:14:37 From enarin
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メッセージのお返し
enarinさん、感想有難うございます。
>バンド名”シグナル”と聞くと、最上級のリン廃P様で有名な”Dios/シグナルP”さんを思い出してしまいます。
バレましたね(笑) 元ネタはそこです。
>そしてはっちゅーねさんのこれからが楽しみです!
そうですね。書いているうちに「コロボックル」とか「人類は衰退しました」みたいにファンタジーにしようか、とも思いましたが、このお話ではやはり「現実」路線で行くことにしています。
また、ぜひ感想を聞かせてください!2012/11/12 22:24:57
tamaonion
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玩具屋カイくんの販売日誌(168) “はっちゅーね”をめぐる人たち
ここは、ゆくりさんのお店、「ゆっくり」の売り場。
お茶が飲めるコーナーで、リンちゃんとレンくんが、仲よくケンカをしている。
「人の姿を写真にとって、勝手にブログに上げるなよな!」
キャンペーンの天使の姿のまま、怒るレンくんに、リンちゃんは涼しい顔で言う。
「いいじゃん。天使のテト・ドールの宣伝にもなるしさ」
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「あのね、ジローラモ・れおんさんって、チャッカリしてるので、業界では有名な人なのよ」
りりィさんは、レンくんの携帯の画像をのぞき込んで、言った。
彼女のお店、「星を売る店・上海屋」で、レンくんがお茶を飲んでいる。
そこに、妹のリンちゃんからメールが届いたのだ。
レンくんが聞く。
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「元気?ルカちゃんのとこの商品、相変わらず、いい調子ね」
「テトのとこの、テト・ドールも可愛いよね」
仲良く話す2人。
じっさいには、テトさんの方がかなり年配なのだが、タメ口を聞く間柄だ。
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それを見て、テトさんは思わず、コヨミ君に声をかけた。
「ねぇ、どうしたの? もめ事はよくないですよ」
フッと我に返ったように、コヨミ君は彼女の方を見た。
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演奏が、全て終わったライブハウス。ホールの中はまだ、ザワザワとしている。
「楽屋に行ってみましょうか」
りりィさんは、レンくんに言った。
「ええ、そうですね」
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玩具屋カイくんの販売日誌(187) 困ったヤツの目的は?
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ちょっと不思議な雰囲気の、りりィさんのお店「星を売る店・上海屋」
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「いつも、美味しいね。ルコちゃんの淹れるのって」
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玩具屋カイくんの販売日誌(178) おっかけファン一掃作戦 (その2)
ライブハウス「マルクト」の楽屋前で。
楽屋にいるリンちゃん目当てにおしかけた、おっかけの少年たち。
その前に、廊下のイスに置かれた“はっちゅーね”の人形がある。
廊下の向こうから、霧雨さんが走ってきた。
「いっけない。これ、忘れちゃった。大変大変」
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「じゃあ、ちょっと彼らを外に連れ去ってくるわネ!」
霧雨さんは、そう言って立ち上がった。
「大丈夫?」
そわそわしていたリンちゃんは、心配そうに彼女の顔を見た。
「私がこの部屋を出ていこうか?」
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玩具屋カイくんの販売日誌(183) リンちゃん ボディーガード発動!?
「だんだん、お客さんが増えてきたかしら」
ブースの前に出て、テトさんはコヨミ君に言う。
「そうですね。午後になって、出足が良くなったんでしょう」
コヨミ君はうなずいた。
東京ビックサイトで開かれている「雑貨&コミック・フェア」。
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玩具屋カイくんの販売日誌(181) はっちゅーねに負けるな!テトドール (レイムさんのオカルト理論・3)
美容雑貨のお店「アディエマス」で。
ルカさんと、たこルカちゃんを前に、レイムさんがとうとうと喋っている。
お話の内容はお得意の、オカルト&コンピュータの理論だ。
「いろんな情報が、縦横無尽に行き交って、蓄積されてる世界。それが、ネットの世界でしょ」
レイムさんは、棚から「はっちゅーね人形」を抱きおろした。
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