玩具屋カイくんの販売日誌(174) 「シグナル」のライブで盛り上がる! > ブクマでつながった作品

玩具屋カイくんの販売日誌(174) 「シグナル」のライブで盛り上がる!

わーっ、と歓声が上がって、ステージの上ではリンちゃんが息を弾ませ、ニッコリと笑う。
「じゃあ、次の曲行くよ!」

最前列の観客が、イエイ!と叫んで答える。
ライブハウス「マルクト」は、大入り満員の盛況。

ステージでは、リンちゃんが率いるガールズロックバンド「シグナル」が演奏中だ。

「ちょっと、曲の前に説明ね。次の曲はね、ちょっと面白い曲なんだ」
リンちゃんは、立ててあるマイクに口を近づけて言った。
「みんな、知ってるかな?いま、ちょっと面白い人形があってさ、それを歌った曲なんだ」

観客から、「Yeah! テト・ドール!」という声が上がる。
リンちゃんは親指をたててグッド!の仕草をした。
「そう!やっぱ、わかってるね!いま、人気の人形がモデルの歌だよ」

彼女は、ステージの方を指差した。
「あたしたちの次に、ステージのラストで演奏してくれる、コヨミさんが作った曲なんだ。“彼女はデビル”!行くよ」

ギターがグイィンとイントロのフレーズをはじき出した。

会場内は轟音と大歓声に包まれた。


●みんな見に来てるなあ

「ふぅん。こうして見ると、なかなかカッコイイね。あいつ」
ライブハウスの後ろの方で、ステージを見て、ぼそっとつぶやいたのは、レン君だ。

いつもは生意気な妹だが、確かに演奏やパフォーマンスは、人を惹きつけるものがある。
彼はそう思った。

「あ!」
リズムを取りながら、ふと斜め前を見た彼は、そこに、りりィさんがいるのを見つけた。
彼女もやはり、リズムをとってステージを見ている。

久しぶりのリンちゃんの「シグナル」のステージに、知り合いの人が、けっこう来ているようだった。

「♪彼女はDevil、彼女はDevil!」
リンちゃんの歌と、サナギちゃんのギターが軽快に飛ばしている。

「おや?」
曲のリズムに乗りながら、レン君は観客の最前列で、別の女の人を見つけた。
片手に人形を持って、飛び跳ねるようにして、踊る人。
知り合いの、霧雨さんだった。

「あれ、霧雨さんも来てるよ。みんな来てるなあ。ん?手に持ってるのは…」

彼女が手に持って振っているのは、あの“はっちゅーね”だった。


●ステージだけは、いいですね…

「♪天使と悪魔は紙一重、君はいつでも忍びよる! 君はDevil angelさ!!」
ザン!とエンディングのフレーズが鳴って、演奏が終わる。会場内はすごい歓声に包まれた。

「うわあ、すげえ盛り上がりだなあ」
口を開けて見ていたレン君の横に、いつの間にか、りりィさんがきていた。

「こんにちは。レン君も来てたの?」
「あっ、こんにちは、りりィさん!」
「妹さん、とてもカッコいいわね」

「い、いや、どうも。あいつ、ステージだけは、いいですね」
レン君は笑って、うなずいた。

りりィさんもうなずいて、ステージの方を見る。
すると、最前列で「イエー」といいながら、霧雨さんが片手で、“はっちゅーね”を差し上げている。
「あらら、彼女もノっちゃっているわね」
りりィさんが笑って言った。

演奏を終えた「シグナル」の面々は、汗を拭いながら、笑顔で手を振る。

すると、霧雨さんの手にした人形が、ステージに向かって、結構大きな声でこう言った。
「かっこいいなあ。グッドジョブ!」
リンちゃんや、バンドのメンバーは、その声には気づかなかったが、
観客の多くが、しゃべる人形の方を見た。ちょっと、ザワザワとした声も起きた。

レン君はそれを見て、思った。
「こんなとこでも、しゃべるのかあ。あの人形さんは…」ヾ(・・ )

(次回に続く)

ふだん喧嘩ばかりの身内でも、違う場所で見るといいところが見えたりするものですよね。

投稿日時 : 2012/11/11 15:33    投稿者 :tamaonion

ヘルプブクマでつながった作品とは?

「VOCALOID HEARTS」~第29話・電撃無双~

 もしも亞北ネルという女が、世界のモデル界を魅了するプロポーション抜群の超絶金髪美少女アンドロイドアイドル、なんて存在だったら、どれだけ良かったか…想像していたら、アホらしくなってくる。
 そんな妄想じみたことを考える私は、毎日のように街の警備や要人警護とかの仕事をしている。でも、それは普通の警察活動を行う組織とは少し違って、一都市の軍事防衛を兼ねた「軍警察」とでも言えるか。この軍警察は、通称「AMP」と呼ばれているんだけど、東京の湾内にある大きなアンドロイドの居住区っていうか、特別行政地区っていうか…ああ、も~ややこしい! とにかく、そーいうところを汗水流して守ってるワケ。
 私はAMPの第1師団長・リリィさん直属の部下になるまで、必死になりながら、のしあがっていった。訓練学校を出て下っ端から始まった負けず嫌いな性格の私は、とことん仕事に力を注ぎ、片手間に肉体を鍛え続けた。でも私はそれに物足りず、自分の体を痛めつけてでも、更に体を強化するために研究機関に依頼して自らモルモットになった。その盲目に追い求めた力の代償は、とても大きかったけどね。
 私は戦闘アンドロイドとして、諸々の武器をぶら下げ、時とあれば戦いもやる。すべては、私が愛するAMPが守る街のために。そんな信念があるから、毎日が大変でもこの仕事はイヤじゃない。けど、もっと女らしい仕事がやりたかったなって、今更だけど思ってしまう時がある。心境の変化、ってヤツかな。
「はいは~い、AMPで~す。下がって下がって」

オレアリアさん

オレアリアさん

2013/12/24 20:03

「VOCALOID HEARTS」~第28話・東奔西走する記者~

(…どうしたもんかなぁ)
 家族どうしで職業が違うってのは、別に珍しくとも何ともない。だけど俺は無名の新聞記者、妹は世間で話題のアイドル。こうも差があると、何だか自分が平凡で惨めに感じられる。
 俺は今、リニアに乗って博多から東京に戻っている。この乗り物は、まるで疾風のような速さで走っている。到着に2時間もかからないのに、車内はまったくと言っていいほど揺れていない。これだけすごいと、鈍行列車のような揺られながら移動している感じが、恋しくなるんじゃないか。
 時刻は朝方。博多で妹の喜びそうな土産も買ってやったし、後は最後の取材を終わらせるだけだ。その取材先は、東京の都心に本部があるという「MART」。最近メディアに取り上げられることの多い、アンドロイドの支援団体だ。自分は直接関わったことはないが、妹もMARTに一時期世話になったことがあったらしい。そんなわけで俺も新聞社も、この「MART」という組織に興味が沸いていた。よくないウワサも、一部では流れているようだが…
¨今日も、JTC高速鉄道を御利用いただきまして、誠にありがとうございます。間もなく東京、東京に到着いたします。お降りの際には…¨

オレアリアさん

オレアリアさん

2014/08/28 13:24

「VOCALOID HEARTS」~第22話・狙われた少女~

「連続暗殺事件…物騒な世の中」
 唄音ウタことデフォ子。MARTで支援を受けて社会復帰を果たしたウタは、小さな広告店でうだつの上がらない毎日を送っていた。基本的にやることといえば、街中で昼前から夕方まで延々とティッシュ配り。彼女は正直、そんな仕事に満足はしていなかった。クールで無気力、それでいて人前に晒すことのないサディエストさを持った彼女にとっては、余計に。
 しかしここまできて、ようやくまともな職を掴んだウタは、再びカイトの世話になるわけにはいかないと思い、贅沢は言えなかった。そうして今日も変わらず長く感じる昼休憩の合間に、自分のデスクに弁当を広げて新聞を読んでいた。15歳にはあまり見られない光景だが、カイトに「日頃から新聞を読め」と言われていたので、その習慣が身についているようだ。テレビ番組覧の裏には、連日この¨暗殺事件¨について大きく報道されていた。
 ¨立て続けに起こる暗殺事件。そして昨日未明、30代と見られる男性が都内のマンションで倒れているのを近隣住人が発見した。警察によると男性は腹部に銃撃を受けており、現在懸命な治療が行われている。男性の身元は現在確認中であるが、アンドロイド平和統括理事会の重役であるとみられ、理事会も独自に調査を開始している。警察は殺人未遂の容疑で、以前の事件と同一犯である可能性もあるとみて捜査を進める方針だ。¨
「…寝よ」

オレアリアさん

オレアリアさん

2015/11/06 18:09

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