「星を売る店・上海屋」にやってきた、ニコビレの紙魚子さん。

「ここ、座ってもいいですか？」
りりィさんの質問を聞いて、彼女は、売り場のカウンターの横にある椅子に腰掛けた。

「月光企画、についてですか？いま、あそこ、どこかと組んでやっているんですか」
メガネの縁をちょっと上げて、興味ありそうに聞く紙魚子さん。

「ええ。いま、ミクさんの作られてる“はっちゅーね”と、コラボレーションをしてるみたいです」
「へえ、ミクさんの商品と？」
「ええ、それは、“リンリン・はっちゅーね”っていう、リンちゃんも加わってる新商品なんですって」
りりィさんは説明した。


●あいつがからんでるのかな…

紙魚子さんは、意味ありげに聞きかえした。
「あのー、それで、リンちゃんに、何かあったんでしょう？」

りりィさんは目を丸くした。
「あら、よく分かりましたね。実は、そうなんですよ」
彼女は紙魚子さんに、このところ、リンちゃんの行方がいま、よく分からないこと、などを説明した。

「じゃあ、今回もあいつがからんでるのかなあ？ その“リンリン・はっちゅーね”に関わってる、月光企画の人は、誰ですか？」
椅子から身を乗り出すようにして、彼女は尋ねる。

「いいえ、そこまでは私も」
りりィさんの返事に、紙魚子さんはちょっと残念そうに、でもうなずいて言った。
「多分、ベニスズメか、それともオサカモトさんでしょうね」

「ベニスズメ？」
不思議な響きに、また目を丸くしてりりィさんは聞き返す。
「ええ。月光企画のアーチストなんです。“紅天蛾（べにすずめ）”。もちろん、呼び名、というかペンネーム、ハンドルネームですけれど」

紙魚子さんはまた、メガネの縁を上げた。彼女は真剣になって喋ると、メガネがずり落ちてきてしまうのだ。


●コラボしてるのは、吸血鬼？

「月光企画という会社には、変わった人が多いんです。いま言った紅スズメとか、それからプロデューサーのオサカモト・ミウさんという人もいますね」
「ああ、その人かもしれません、今回の“はっちゅーね”に関わってるのは」
りりィさんは答えた。

「そうですか。でも、両方、関わってるかもしれませんね。リンちゃん、無事ならいいですけど。」
「無事？」
りりィさんは、カウンター越しに、身を乗り出した。リンちゃんのことが気になったのだ。

紙魚子さんは続けた。
「その、紅スズメという人。またのあだ名を“吸血鬼”ともいうのですよ」(ノ゜⊿゜)ノ