「おお…。まさにそなたらが運命の歌姫。この失われし世界を救う救世主なのか?」
「話しが飛びすぎて良く解んねぇよ。ゲイル、あんた契約したらいつでもこんな感じで喋れるんだろ?」
「そうだな、こんな所で立ち話する内容でもない。レン、契約の指輪をこちらに」
指輪をつけたレンはゲイルの前に立ち、ゲイルと契約を交わす。
「我、風の聖霊ゲイルと共に運命を共にする事を誓う。ゲイルよ、我が主の為に力を貸すことを誓うか?」
「某は誓う、主と共に運命を共にする事を!」
ゲイルの返事が終わるとレンがまばゆい光りに包まれた。少し地面から浮き上がった後、何事もなかったように地面に降りた。
振りかえって笑顔でポーズを決めるレン。
「うしっ!契約完了だぜ!」
「おめでとうレン君、格好よかったよ」
「レン、契約ってどんな感じなんだ?」
「言葉では上手く言えないかな?でも、聖霊は主が死んだら聖霊も消滅する。だからお互い信じなあわなきゃ契約なんて出来ないんだ」
「ペットみたいなもんか」
「某をペットと一緒にするでない!聖霊の力でお前を切り刻んでも良いんじゃぞ?」
「わ、悪かったよ…」
カイトがゲイルに謝ると、急に空が暗くなった。
「急に空が…?」
「そうか、そなたの感じた波長は奴の事じゃったか…」
「奴?」
「某と、同じ神に近いもの…龍じゃよ。龍は神の使いじゃからな」
「降りてくるぞ?」
「神様からの挑戦状か…こいつを倒せと言うのか。神はつくづく自分以外を下に見ているものじゃの」
「アポロンにそっくり?」
「アポロンを知っておるのか?」
「知ってるも何も嘆きの山で俺達はそいつを倒したぜ?」
「なっ!アポロンを…?」
「友達だったか?」
「そういう訳じゃないが、アポロンは太陽の化身、強さもトップクラスじゃからちょっと信じられなくてな…」
「なんだ、これがあいつより弱いなら余裕じゃねぇか。皆行くぞ!」
カイトが剣を抜き、龍に対して戦闘態勢を取るが、ミクやハクがカイトの前に立ちふさがり、カイトを止めた。アポロンより弱いというのを聞いて、気が変わったのだろうか?
皆がカイトの前に立ち塞がり、武器を取り龍に向かって交互にそれぞれの言った。
「人間だってやれば出来るって事をあなたに教えてあげるわっ!」
「安心してください!カイトさん。アタシ達が全力で貴方を守ります!」
「貴方は私達の大将よ?貴方が倒れたら話しにならないわ」
「安心しなカイト、お前が王様なら俺達はそれを守る盾だ!」
「盾だけじゃ、もの足りないから剣も欲しいよね?」
「玉座は私達が用意するわ」
「だから玉座に座って…」
「俺達を信じてくれよ!」
緑色の色をした龍はゆっくりと皆の前に降り立った。
「さぁ、来いよ!神の使いだろうが、俺達の大将には指一本触れさせないぜ!」
全員が口を揃えて龍に挑発する。
ピリピリした冷たい空気に龍の咆哮が響く。
それを合図に皆は龍に向かって飛び掛かった。
「【滅殺割砕撃】!」
まず初撃を決めたのはネルだった。ネルの重い打撃が頭に入る。
思い切り鉄槌を振りかざし、頭を殴打したはずだが、あまりにも硬い強度にネルの攻撃は弾かれた。
「硬っ!何こいつ?硬すぎじゃないの?」
「こいつ…アルデバランか?龍の中でも一番の強度を誇ると言われる…」
「アルデバラン…?そんなに硬いならこれはどうですか?【エクスプロージョン・キャノン】」
ハクは背中の大砲のような小型兵器でアルデバランに向けて放った。
アルデバランは放たれた弾を爪で切り裂くと衝撃で辺りに爆撃が放たれ、アルデバランの爪は瞬く間にボロボロになった。
「ゲイル!あんたも手伝え!それとも同胞を我が手で葬る覚悟はねぇのか?」
「馬鹿にするな!人間との格の違いを見せてあげようじゃないか。レン、そなたの魔力を某に注いでくれ」
「任せろ!ゲイル。俺達の力を見せてやれ!」
「腹に風穴を開けてやろうぞ【テンペスト】!」
「あんな大魔法を詠唱無しだなんて…?さすが聖霊ね」
ゲイルの一撃がアルデバランに直撃し、アルデバランは空中に舞い上がった。
「チャンスだわ!ルコ、私を上に放り投げなさい!」
リツはルコに向かって全力疾走をし、ルコの構えた手の平に足を乗せるとルコは力いっぱいにリツを空中に放り上げる。
「オラァ!行けっ!」
「いくら硬い皮膚でも私の槍と重力を計算すれば…【槍刺激突】!」
リツの槍が風を切り、勢いよく落下しアルデバランの腹を突くが、アルデバランの強度はあまりにも強くリツの攻撃は虚しく失敗に終わった。
「なんて硬さですの?私の槍に貫けないものがあるなんて…」
「他に柔らかい所があるはずだ!諦めずに探そうぜ!」
初めての屈辱を受けたリツを慰めようと肩を叩く。
リツは相当悔しかったのか、その眼には涙が滲んでいた。
「ルコ…」
「泣いてんじゃねぇよ。失敗なんて誰にもあるんだ気に病む事はねぇさ」
「泣いてないわ!さぁ、まずはあの邪魔な尻尾を切り落としてやりましょうか」
そういうと、リツとルコはアルデバランの尻尾に向かって走っていった。
「某の魔法でも傷がつかぬとは、さすがじゃ…」
「感心してる場合じゃないだろ?同じ所に何回もやれば傷が知れないかも知れないだろ?」
「全く、とんでもない主だ。しかし、人間と共闘とは悪くないの!」
ゲイルが同じ場所に攻撃する。何発当てただろうか。ゲイルのその一発に違う一発が混ざった。
「…?」
「魔法を使えるのは貴女だけじゃないのよ?まぁ、聖霊様に劣りますけどね」
「某は…ディーバ?」
「その名前好きじゃないの。今はルカって言う素敵な名前があるのよ」
「ルカ、そなたのあり余る魔力なら奴に傷をつけれるはずじゃ!なぜ力を最大まで使わぬ?」
その言葉に少し不安な顔を見せるルカ。
「制御出来るかどうか不安なのよ。神威の時は魔力を使い切って大変だったんだから」
「ルカ姉ちゃん!ルカ姉ちゃんはあの時よりも進歩してるはず!自分を信じてやってみてよ!いざとなったら俺達の魔力をルカ姉ちゃんに注ぎ込むから!」
「レン…。解ったわ、一か八かに賭けるけど私の全魔力を使ってあいつを倒してみせるわ!ゲイル、サポート出来るかしら?」
「某は人間に使われてばかりじゃの…」
「貴女の事を信用して言ってるのよ?」
ルカは横目でゲイルに合図すると呪文の詠唱を始めた。
「皆頑張って…今回は自分を信じて、仲間を信じて歌ってみよう。私にそんな力があるなら…」
リン「ミク姉、私も一緒に歌って良いかな?」
「うん。一緒に歌おう!歌に想いを込めて!」
ミクとリンは声を揃えて、歌い出した。
その歌声はまるで天使の歌声のようで皆の心を癒した。
「何か力が溢れて来るような気がします。…もしかして?」
ハクは鞄から銃のパーツを取り出し、鼻歌を歌いながらそれを組み立てた。
「これならきっと…【スラッシュ・レール・ショット】!」
ハクの巨大なスナイパーライフルの銃口から放たれた弾は今まで傷つく事無かった身体に傷をつけ、腕から羽へと貫通しアルデバランは苦痛の咆哮をあげる。
「まさかミク達の歌が私達に力を?そんな事…でも、試してみる価値はありそうね。いくよ!渾身の一撃!【豪覇砕】!」
ネルの力いっぱいに振った鉄槌がアルデバランの腹部を思い切りへこました。
アルデバランは堪らず口から鮮血を吹く。
「嘘っ?やっぱりミク達の影響?」
ルカはこの好機を逃す訳もなく、一人詠唱を始めた。
「皆離れて!…古より伝わりしは煉獄の焔。我が前に一片の塵も残さず焼き尽くせ!これに耐えられるかしら?ウフフ…【エンシェント・フレイム】!」
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Kurosawa Satsuki
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