ハクがぐんぐんとスピードを上げ、先を走っていたカイトと並ぶ。
「よお、ハクじゃねぇか。すっかり様になってるじゃねぇか。ん?ネル、どうした?」
「義姉さんが酒を飲んで運転してるから…」
「まさか…?」
「そのまさかなのよ。ハクったら急に性格が変わっちゃって…」
皆のやり取りの中、ハクはバイクにかけてあった鞄からメガホンを取り出してリツに向かって叫んだ。
「おいリツ!ゆっくり走ってんじゃねぇよ!後ろが込んでるぞ!アハハ」
「ハク…おもしろいこと言うじゃない。人が乗ってるから安全運転で走ってたけど…もう頭きた!皆しっかり掴まってるのよ!」
「キャッ」
リツはハクの挑発に乗りギアを上げアクセルを踏み込んだ。
ハクはニヤリと笑いカイトにも挑発する。
「おもしれぇ!ハク!お前には負けねぇぞ!」
「カイト止めないか!お前の運転じゃ無理だ!」
「テトさんの言う通りにしろ!お前にはまだ早い!」
「やってみなきゃ解んねぇだろ!それにナメられたままじゃ…いられねぇんだよっ!」
カイトは挑発に乗り、どんどんスピードを上げ、ハク達を離して行った。
「義姉さん!お願い止めて!」
「そうよハク!危ないから止めてよ!」
「だーめ。行くわよ!」
ハクも負けずとスピードを上げる。後ろの二人は必死でバイクにしがみつくのが精一杯だ。
「どう?これだけ出せば後ろの単車組はついて来れないわよね?」
ふとバックミラーで後方を確認するがカイト達の姿は無かった、ちらっと横を見るとカイト達が走っていた。
カイトはリツと目が合うと片手を離し親指を立てウインクした。
「カイトさん?いくらなんでも早過ぎですわ?」
「リツ、こっちにはハク姉が!」
「なんですって!私とした事が…油断してましたわ」
またもやスピードを上げるリツ、さすがに危ないと思ったのか、ミクは近くにあった雑誌を丸めてリツの頭を叩いた。
「いい加減にしてよ!私達の事もちゃんと考えてよね!」
「痛っ!痛いって!解った、解ったから止めなさいよ!」
同様にルカも鞄から何かを取り出しハクの頭を強打した。
「ウフフ。いい加減にしないとこれで頭カチ割るわよ?」
「ちょっ!ルカさん!言葉が矛盾してるんですけど…って!あぁー!義姉さんが気絶してる!ブレーキブレーキ!あぁ、もう私が運転するわ!」
ネルはハクを飛び越えてジャンプし、ハクの代わりにハンドルを操作する。
「あら?強く殴り過ぎたかしら?」
「はぁ…。言葉が出ないわ…」
そしてカイト達も、同じように色んな意味で危なかった。
「カイトいい加減にしろ!テトさんに何かあったらどうすんだ?」
「心配すんなって、ちゃんと出来てるだろ?」
「君は実に馬鹿だなぁ。って…前!前見ろ馬鹿!」
「うぉっ!危ねっ!」
前方の倒れていた木を急ハンドルで避けるカイト。
「全く…見ちゃおれんな。カイト、俺と代われ」
「嫌だね」
「そうか…」
ゴンッ!
鈍い音がカイトの意識を奪う。
どうやらルコはポケットに入っていたカチカチのアイスでカイトを殴ったらしい。
バナナでも釘は打てるというが。どれくらい凍らしたら人が気絶するぐらいの強度になるのだろうか…
その話しはさておき。暴走した馬鹿達を止め、無事安全運転で目的地に着いた一行は、早くも異変に気づいていた。
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