「「ただいまー」」
ルカとグミが帰ってきたとき。
目の前には、ワインの真っ赤なシミが広がっていた。
「血!?」
「事件!?」
「「大変だー!」」
グミとルカは、一目散に逃げ出した。
救急車を呼ぶことも、警察を呼ぶことも忘れていた。
「んーそろそろかな~……」
カイトは時計を見上げた。
手に持っているのは、メイコが残した建物の写真。
「こんなのねぇ? 簡単だって。めーちゃん」
鞄に入っているのは、解毒剤。
カイトは、グミとルカの家を目指した。
歩いていると、二人の少女がカイトに激突した。
カイトはぎょっとしてその二人を見た。
「そんなに慌てて……どうしたの?」
グミとルカは真っ青な顔で首を横に振った。
もう何も答えたくないとでも言うように。
そして、カイトは二人が走って来た方角を見てああ、と頷いた。
「つまり、あれだね。家に女の子の死体が転がってた。違う?」
二人は大慌てで頷いた。
何で知っているの、とか疑問を抱いている暇はなかった。
「そっか。僕はその人を探しに来たんだ。家に入ってもいいかな?」
二人はもう何も考えずに頷いた。
「その代わり、僕の家……あ、マンションのうちの一部屋なんだけど、そこでしばらく暮らしてもらってもいい?」
ほっとしたように、グミとルカが笑う。
カイトは後で案内するからと、二人を近くのカフェで待たせた。
ダイニングに入る。
カイトは、想像どおりの光景が広がっていることに笑った。
「やっぱりな」
それから、ゆっくりとミクに近づく。
「12時ぴったりまで、後3分……」
カイトは時計を確認すると、薄く笑った。
「ほら。飲め」
解毒剤をミクの口に押し込もうとするが、入らない。
カイトはゆっくりとため息をついた。
これも、仕事の一種だ。
解毒剤を口に含み、ミクに優しく口づけする。
「12時まで、あと1分……」
ミクが、こくりと解毒剤を飲み込んだ。
カイトが安堵のため息をついたところで、ミクはゆっくりと目を覚ました。
「あれ……? 私、今まで……? メイコさんとお酒を飲んでいて……? あれ、カイトさんが何でここに……?」
ぼーっとした頭の中、ミクは必死で思い出した。
それから、突然何かをひらめいたような顔になる。
「メイコさんがくれたお酒に……毒が……!」
それを聞いたカイトはミクに向かってにっこりと笑った。
「話があるんだ。外に行こうか」
ミクが返事をする前に、カイトはミクを外に連れ出した。
「あ……カイトさん、助けてくれてありがとうございました!」
「んー? 別に君を助けようと思ってたわけじゃないけどね。ゲームの一つ」
そしてカイトは、自分の知っている限りの、起こったことを一つ一つ話しはじめた。
ミクの顔が、だんだん青ざめていくのがわかった。
「ごめんね? 利用して」
「……り、利用って……そんな、ゲームの為に、」
「僕の娯楽の一つなんだよ。諦めて」
「……人の命まで、」
「死なないのがわかっているからさ。だって、僕が死なせないもん」
「そんな、私……関係ないのに」
「関係ない人を利用して楽しむか、利益を得るのが人間ってもんじゃない?」
ミクは恐ろしさで目を見開いた。
「あ……なんて……」
「酷い人? うんそうだね。知ってるよ」
カイトはにっこりと笑った。
今や、ミクの顔は土気色になっていた。
声すら出ない。
「だからね……めーちゃんを通報したら、どうなるか……わかってるよね?」
ひやりとするような低音。
「……あ、」
「僕を酷い人と呼ぶならそれでもいいよ。その酷い人の恨みは買わない方がいいんじゃないかなぁ」
「な、……」
「ね? 君の代わりはいくらでもいるけど、僕にとってめーちゃん以上に面白い人はまだいないんだから」
カイトはくすくすと笑い出した。
ミクが震えながら立ちすくんでいるのをちらりと見やる。
「じゃ、僕行くから」
そして歩き出したところで、ふと振り返った。
「その顔、写メってめーちゃんに送りたかったなぁ」
またおかしそうに笑うと、ミクにじゃあね、と手を振った。
「……僕の完敗だよ、めーちゃん」
「あら、やっぱりそうかしら? 警察のお世話にならなくてよかったわ」
メイコはカイトに笑いかけた。
カイトが悔しそうに眉をひそめる。
「そこまで思惑どおりだったとはね」
「予想しなかった? そうでしょうね。まだまだよ、カイトは」
メイコには、カイトがミクに釘を刺すところまで予想がついていたのだ。
だから全く警察の心配をしなかったとも言える。
「……次は、勝ってやるんだ」
「そんな宣言しちゃっていいの?」
「いいんだよ。あ……そういえば、あの後一度見に行ってみたんだ」
「どうだった?」
「見事に逃げられたよ、あのお馬鹿な姫さんには」
メイコとカイトは、笑い合った。
……そう、これこそが、現代のおとぎ話の一つ、『白雪姫』。
お姫様は人間社会に復帰することができず、歌手をやめたとだけファンには伝えられた。
実際には二人の小人達が残して行った家に一人で閉じこもっている。
鍵は必要なかった。誰もこんなところに踏み込んでこないのだから。
二人の小人達は、王子様に特別に招待された家で、もう事件のことなど忘れて幸せに暮らしている。
鏡の双子は未だに、お姫様の分身と女王様で板挟み。
女王様と王様は二人ともまだ歌手として活躍しており、評判も上々。
事件のことを知らない人がほとんどなのだから当たり前だろう。
王子様と二人は結託して、真相をひた隠しにしている。
だが。……覚えていて欲しい。
この世は、必ずしもハッピーエンドとは限らないことを。
おとぎ話は、永遠に終わらない。
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