「ヴェルディが…いきなり死んだ?いったいどういう事だ?」
「見て!嘘…何よあれ…」
ミクが見たものは身の丈30mはあるであろう巨大な龍であった。
テトも血相を変えてカイト達に注意を促す。
「おい、皆下がれ。奴はかなり危険だ…」
「テト…?あいつそんなにヤバいのか?」
「ヤバいも何も、あいつは龍だぞ?そもそも僕ら人間が敵う相手じゃない。誰も相手が出来ないから賞金もかからない…当然、僕や神威、本気のルカだって勝てない相手だ」
「テトさん…でもあいつ様子がおかしいです。本来こいつらはこんな所に来たりしないはずです」
「解ってるさ。神威の影響かもしれん。しかし相手が悪すぎるな…ルコ。お前はギルドの奴らに連絡を取れ!緊急事態だ!」
「ですが…テトさんはどうするんですか?」
「僕は此処でこいつと戦って奴の気を逸らす!」
「駄目です!危険過ぎます!いくらテトさんでも龍相手に…」
「ルコ!ギルドの鉄則を忘れたか?」
「はっ!民間人の避難を最優先とし、民間人の安全を命に代えても守り抜くべし」
「お前のすべき事が解るだろう?カイト達をさっきの場所まで連れていけ!早く!」
「テト!俺とミクは二人でちゃんと戻れる!だからルコの気持ちを解ってあげてくれ。テトだって一人より二人の方が良いだろう?」
「そうですよ!私達を…仲間を信じてください!鎮魂花を取ってハク姉達を助けた後に必ず来ます!」
「お前ら…」
「すまないね…カイト、これが最後の頼みになるかもしれないから聞いてくれるか?」
「縁起でもないことを言うなよ!」
「僕だって言いたくないよ!こいつ相手じゃ正直怖いんだ…。僕達の事を仲間と思ってるなら仲間を信じて僕の頼みを聞いてくれ!」
「解った…」
「ちょっ…カイト?」
カイトは身を乗り出すミクを睨んだ。
「黙っててくれないか?テト、お前の頼みは何だ?」
「あいつらを助けた後、僕達のギルドに行ってお前の剣の事を調べると良い。場所はハクに聞けば解るはず」
そういうとテトはポケットから鍵を取り出し、カイトに投げた。
「どうして…?いや、余計な事は良い。テトー!!俺からも一つ約束良いか!」
「何だ?」
「生きて会おうぜ!」
テトは返事をせずに親指を立てて頷いた。
そしてテトは手の平から異空間のようなものを創り、巨大な剣を取り出した。
テトの合図を見るとカイトも親指を立て、鎮魂花のあった場所へと向かう。
「ルコ…。死ぬ気で行くぞ!」
「もちろんです、行きますよ!テトさん!」
「その前にリツに連絡を取る、少し奴の気を引いててくれ」
ルコは頷き、龍の背中に飛び乗った。
「龍だろうが何だろうがテトさんを攻撃する奴は俺が許さねぇ!さぁ、かかって来やがれ!」
テトは頭に着けていたインカムで通信する。
「あーあー。こちらテト、リツ、聞こえるか?」
「聞こえていますよー。テト様大変なんです!ダリア村に神威の部下と思われる連中が襲撃してきました!!今、医療用車に二人を乗せて、そちらに向かっています」
「何だと?こっちはまずい!危険だ!」
「え?どうかしたんですか?」
「どうしたもこうしたも龍が居るんだ!理由は解らんが龍が居るから危ない!」
「あら?それは大変ですね。でも、今更引き返せません!とりあえずそちらに向かいます!!」
「待て!」
「龍相手なら人数が多い方が良いじゃないですか?今からこいつら蹴散らしてそちらに向かいます!」
「…了解」
リツはアクセルを強く踏み込み、後ろから追ってくる神威の残党を轢くと、嘆きの山へと向かっていった。
一方カイト達は…
「はぁはぁ…。カイト、早く摘んで帰りましょテトさん達も心配だし…」
「あぁ、そうだな」
カイトは鎮魂花を手に取りリュックに入れた。
その時…物凄い勢いで車が突っ込んで来たのだ。
「わっ!な…なんだ?」
「車…?しかもピースフリーのマーク?」
扉を開けてリツが出てきた、ハクとルカを抱き抱えて。
「貴方がカイト君?鎮魂花はある?」
「あるけど…お前いったい誰だ?」
「私は波音リツ、ピースフリーの医療班よ」
そう言うとリツはカイトから鎮魂花を受け取り、薬を調合し始めた。
「さて、出来た。これを飲ませればすぐに良くなるわ」
「んん…。あれ?ここは?」
「良いタイミングで起きたわね。ルカ」
「リツ?って事は…鎮魂花が手に入ったの?」
「うん、今お薬にしてハク姉に飲ました所よ、もうすぐ目を覚ますわ」
「皆、ハクが目を覚ます時は笑顔でお帰りって言って欲しいの。ハクが気を失う前に、次に目が覚める時は皆の笑顔が見たいって言ってたから」
「おっ。目を覚ますぞ」
「うぅ…」
「お帰りなさい」
「皆…?アタシ生きてるの?」
ハクが驚いた顔であたりを見渡すとルカがハクに抱きついた。
「良かったわハク!貴女ちゃんと生きてるのよ!」
「ルカ?また泣いてるの?」
涙をふくルカに続いてミクもハクに抱きつく。
「うぅ…。ハク姉…会いたかった…」
「ちょっ…ミクまでどうしたんですか?ちょ…苦しいですよ!」
「ハハハ、良かった良かった」
「そうだテトさんやルコさんを助けないと!」
「何かあったの?」
二人は今の状況を皆に説明した。
「行きますよ、カイトさん。今度はアタシ達が助けましょう!」
ハクが車に戻り装備を整える。ルカやリツも車から装備を取り出した。
「当たり前じゃないの?テトにはちゃんとお礼しなきゃいけないし」
「私もお供します。この、槍で貫いてやりますわ!もちろん回復も任せてくださいな」
「物騒な武器だな。まぁ、何よりこれだけ居れば何とかなるだろう。行くぞ!」
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