「へえ? ルカさんが子供にねえ……どうなってるのか調べてみたいなぁ……」
「もう少し落ち着いたら調べさせたげるわよ、ネル」
「ネルお姉ちゃん……あんまりいじられたくないよ……」
「う゛っ!!? う……なんて破壊力……このあたしが良心の呵責に苛まれるなんて……」
『改造専門店 ネルネル・ネルネ』のカウンターで、メイコとネル、そしてルカが漫才のようなやり取りを繰り広げている。
その様子を、外からリンとレンが呆れ顔で覗いていた。
「……安定のネルだね」
「うん……でも、こういうことに関しちゃネルは天才だから、適任じゃないk」
「黙レン」
「ちょリンうまいこと言ったつもりk痛い痛い痛い痛い!!」
リンに立関節を極められるレン。
そんなゆるい空気の中、カイトとグミは遥か遠方を少し緊張した目で見つめていた。
「……案外メイコさんが真っ先に気付くかなって思ってたけど、カイトさんも気づいたんだね」
「さりげなく酷いこと言うねグミちゃん……一応これでも音波に対する感受性はめーちゃんより僕の方が強いんだよ?」
「まぁなんにせよ……さっきのは見間違いじゃないよね」
「ああ……山の方向……音が―――――『跳ねた』ね」
その山の方向では―――――
「すりゃあああああああああああああああっ!!!!」
気合いのこもった声と共に、リュウトの豪腕が地面を割った。
だがその豪腕が本来潰そうとしていた『標的』は―――――リュウトの後ろに回り込み、鋭い踵落しを彼の右腕に打ち込んでいた。
「ぐぅ……!」
「遅いよっ!今の私をそのぐらいでとらえ切れるとでも―――――」
「私もいることをっ……忘れるなぁっ!!!!」
ミクの後ろにいろはが現れ、『コーラス・スピーカー』も使ってミクの体を羽交い絞めにする。
しかし次の瞬間―――――
「『Vivid・Shield』!!」
「……ギャン!!?」
いろはとミクの背中の間に、淡い紫の光の盾が出現する。『Vivid』の特性を持ったその盾は、いろはを思い切り跳ね飛ばした。
弧を描いて地面に着地するいろは。そこに向かって―――――
「『Light・Stick』!!」
音速をこえる金色の光の棍棒が矢のように襲い掛かる。紙一重で躱し、『ダイナミック・フォノンバスター』からカウンターで音波が放たれる。
ミクはそれを『Soft』で受け流し、リュウトへと向かわせた。
「う……っ!?」
予想外の攻撃法に、体勢を崩すリュウト。
敵の隙はミクにとって―――――ネギと同等の大好物だ。
「『Solid・sword』!!」
瞬時に両手から『Solid』の刃を生成し、リュウトに向かって投げつける。
回転しながら飛んでいく刃は―――――リュウトの翼を、いとも簡単に切り落とした。
「ぐぅ!!」
「リュウっ!!?」
『よそ見したら―――――』
はっとしたいろはが後ろを振り向くと―――――そこには黒紫色の光の『杖』を持ったミクがいた。漆黒の髪が揺れ、紅い眼光がいろはを捕らえる―――――
「危ないよっ!! 『Dark・Wand』!!」
杖が唸りを上げ、いろはをしたたかに叩いた。途端に杖は砕け、響き渡る『Dark』の音色。
いろはは苦悶の表情でふらふらと倒れ込んだ。
気づけばミクはすでに高空へと上昇し、高みから二人を見下ろしている。
(強い……まさかここまでとはっ……!!)
(あの力を手に入れて昨日の今日だというのに……これほどまでに完璧に使いこなしているなんて……!!)
……だが、ミクはこの程度で考えを止めるほど、好奇心の無い少女ではなかった。
(……使いやすい! どの音波も……!! これなら……もしかしたら、『アレ』ができるんじゃない……!?)
「……よっし!! 試してみるか……!!」
すぅ……と息を一つ大きく吸って、きっと下の二人を睨んだミク。
口を開いて―――――『和音』を放った。
「『Light&Solid ソニック・ブレード』っ!!!!」
ミクの髪と眼が金色に。―――――そして腰回りのメカニカルパーツのライトの色が灰緑色になった瞬間。
ミクの姿がふっと消え―――――
《―――――ギィィンッ!!!》
鋭い音と共に、地面が大きく抉り取られた。
『うっ!!?』
いろはとリュウトが驚いている間にも、地面は猛スピードで切り裂かれていく。
そして――――
「ぐああ!!?」
「リュウ!?」
リュウトの右腕が切り落とされる。噴き出す鮮血はすぐに止まり、見る間に元通りの腕が再生されるが―――――リュウトの顔には冷汗が浮かんだ。
「このスピード、この斬れ味……まさか……『Light』と『Solid』を同時に使っている……のか!?」
「な……何よそれっ!?」
いろはが悲痛な声を上げるが、その後ろから衝撃波の破壊音が迫る。
「!! いろはちゃん伏せて!! 『サウンドフレア』!!」
「ふぇ!?」
慌てていろはが伏せると、その上をリュウトが吐き出した炎の渦が突き抜けていった。
その炎に衝撃波が触るか触らないかぐらいのところで、急激に金色の光が上方へと飛んでいった。
そしてその光が止まった瞬間―――――現れたミクのメカニカルパーツのライトの色は、黒く変わっていた。
「『Light&Dark 邪音結界』!!」
再びミクの姿が消える。―――――次の瞬間、まさに四方八方から『Dark』が鳴り響いた。
共鳴を起こし増幅された『Dark』が、二人の耳に叩き込まれた。
「やあああああああああっ!!!!?」
「な……『Light』で加速してっ……全方位からほぼ同時に『Dark』をっ……!?」
苦しみながらリュウトは確信した。ミクは今、2種類の音波を組み合わせ、より効果的に能力を使うことに成功している。それはいろはと似ているようで、いろはを遥かに超えたハイスペックな能力だ。
何故なら―――――別々の機器から発するいろはの音波と違い、ミクの『声』は一つの喉から放たれる『和音』。音波の馴染みがまるで違う。
「くそっ!! ……『サウンドフレア』!!」
やけくその様に放ったサウンドフレア。しかしその炎は―――――偶然にも音速で飛び回っていたミクに直撃してしまった。
「きゃああ!!」
「あ……よし!!」
炎が直撃したミクの右腕は焼け落ちてしまっていた。ここが好機―――――そう見たリュウトは立ち上がって襲い掛かろうとする。
が―――――――――――
「『Soft&Sweet 再生の子守唄』……!」
柔らかな音が響いて―――――リュウトが間を詰める一瞬の間に、ミクの右腕は再生した。
「なっ!!?」
「フォームが乱れてるよ……!」
金色の髪と、紫の光を輝かせながら拳を固めたミクが、にやりと笑って。
「『Light&Vivid リフレクトナックル』!!
一発拳をリュウトに打ち込んだ。『Light』による音速と、『Vivid』による反発力が相まって、リュウトの体は凄まじいスピードで後方の岩に打ち付けられた。
「ぐぅ……」
「リュウ!! ……わっ」
「いろはちゃん!!?」
いろはが不意に地面に倒れ込むように伏せた。その背後からやってきたのは―――――金色に輝くミク! 猛スピードでリュウトに襲い掛かる!!
「……っ!!」
咄嗟に岩から離れるが、逃げようとする先々に回り込まれ、したたかな一撃を加えられた。
(く……なんて応用力だ! 2種類の音波の能力を最大限に生かす組み合わせ方をしている!! 昨日手に入れたばかりの能力だろ……!?)
だが―――――リュウトにはそれよりも恐ろしいものがあった。
(……だが何よりも怖いのはこの……威圧感っ!!)
―――――ミクには何とも言えぬ威圧感があった。
相対するだけで気圧されるような、凄まじい威圧感。
その笑顔は鋭くてもあくまで明るいのに、伝わる威圧感はまるで怒り狂う猛獣と対峙するかのよう。
(……そういや、研究所を出る前、あいつらが言ってたっけ……)
リュウトが思い出したのは、研究所の『作りの親』の醜い声だった―――――
『おい、リュウト。仮に奴等と一対一で戦うことになった場合、初音ミクだけは避けろ』
『……はい?』
『聞こえなかったのか? 初音ミクだけは一対一で戦うなと言っているのだ』
『……なぜです? 確かにミクさんは』
『初音ミクだ』
『……確かに初音ミクは6種類の音波を操り、それぞれの威力も申し分ないと聞きました。ですが、一対一で戦うともなれば、もっと恐ろしい相手もいるのではないですか? 純粋なパワーならメイコのほうが圧倒的、そして巡音ルカの『心透視』は一対一ならば最大感度で使えるでしょうし、その万能性にも優れています。何より今現在、唯一潜在音波を会得しているカイトこそ最も恐れるべきでは……?』
『貴様の言っていることに大きな間違いはないが、その程度のことは貴様に与えたバイタリティでどうにかなるレベルだ。……だが初音ミクだけは違う。奴は大きな確率変動を起こす唯一無二の力を持っている』
『唯一無二の……力?』
『応用力だ。奴は……物事に柔軟に対応できる高度な応用力を持っている』
『応用力……』
『先ほど巡音ルカの万能性について触れていたな? 確かに『心透視』の万能性は目を見張るものがあるが、所詮は技自体の能力だ。だが初音ミクの応用力は、いわば『奴自身』の万能性と言ったところか。我々はヴォカロ町にいたころ、奴のその柔軟な対応にいつも驚かされた……新しいことを学べばわずか十数分で完璧に会得し、それを応用して更に新しいことを覚え、それを更に応用していく……奴は基礎を覚えること、そしてそれらを組み合わせ新しいことを行うことに長けている』
『………!』
『やっとわかったか、ボンクラめが……そうだ。奴は自らの音波術でさえも、自在な使い方をすることで新しい攻撃を生み出すことができる。奴がもしも潜在音波を会得するようなことがあれば……ありえぬと信じたいが、様々な音波を組み合わせて、新しい音波を生み出すなどということが起こりかねぬ!!』
『……ぬぅ……』
『……そしてもう一つ。奴には不思議な存在感がある』
『……存在感?』
『奴はその場にいるだけで仲間を引き付け、呼び寄せる。奴は相手を敵視するだけで相手に凄まじい威圧感を覚えさせる。その恐ろしいほどの存在感こそが、奴の最大の武器だ』
『……』
『覚えておけ、リュウト。悔しいが……我々も認めざるを得んのだ……』
―――――初音ミクはまさに、VOCALOIDの女王だ―――――
(この高い戦闘力……ずば抜けた応用力……そしてこの対面しただけで感じる威圧感!! やっと僕にもわかった……これが……………!!)
―――――VOCALOIDの女王、初音ミクの真の力……!!―――――
「『Sweet&Dark セイレーン・ソング』!!」
はっと我に返るリュウトの耳に、甘く、暗い歌声が忍び込んできた。
「う……あ!?」
途端に体に力が入らなくなり、意識が朦朧とする。
桃色の髪を揺らし黒い光を放つ『女王』の、幻惑の歌だ。
「あなたたちの体の自由はこれで奪った。しばらくは耳に残り続ける歌声に、あなたたちの脳は虜にされる……」
はっとして隣を見ると、いろはは既に目が虚ろだった。完全に幻惑の歌に魅了され、正気を失っている。
「いろはちゃんっ……ダメだ……耳をふさげっ……!!」
「もう手遅れよ。あなたたちはもう、自分で自分を制することはできない……」
ミクの髪色とメカニカルパーツの色が金色に代わり、その手に黄金の棍棒が現れる。
「しばらく眠ってもらうわ。その間にいろはの良心回路をネルに起動してもらうから。安心して……眠ってなさい!!」
地面が砕けるほど強く踏み込んだミクの棍棒がリュウトといろはに迫る―――――!!!
――――――――――その時。
――――――――――ドクン――――――――――
「……えっ!?」
突然にして―――――力なくミクが倒れ込んだ。
―――――何……何が起こったの……? 体が……動かない……?―――――
―――――誰か……誰か助けて―――――
――――――――――ルカ姉……――――――――――
仔猫と竜と子ルカの暴走 Ⅳ~Queen of VOCALOID・HATSUNE MIKU~
キャーミクサーン!
↓
ギャーミクサーン!?
こんにちはTurndogです。
女王、初音ミク。
その一言に尽きます。
私はルカさんこそ至高と考えていますが、
そのルカさんが世に出ることができるようになった土台を作ったミクさんこそ、女王の名を関するにふさわしいとも考えています。
まぁルカさんは神だけどな!(おい
結論:Append&Extendマジチート。
唯チートすぎる能力って……必ず制限がかけられますよね。
そんなわけでミクさん急にダウン!!
一体何が!?
あと『黙レン』は個人的にお気に入り。
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