ボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてPの「野良犬疾走日和」を、
なんとコラボで書けることになった。「野良犬疾走日和」をモチーフにしていますが、
ボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてP本人とはまったく関係ございません。
パラレル設定・カイメイ風味です、苦手な方は注意!

コラボ相手はかの心情描写の魔術師、+KKさんです!

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【独自解釈】 野良犬疾走日和 【紅猫編#03】



 雨の降りしきる音に、抹茶をたてる音が、風流だと、私は思う。たちたちと心地よく地に落ちる雨に、しゅくしゅくと茶をたてる茶筅の摩擦音が、心を静める。
 るかさんとの茶は、稽古事のように形式ばったものではない。それこそ、作法の途中から唐突にはじまり、唐突に終わることだってあるし、作法なんかほとんど無視して、茶をたてながら雑談をすることすらある。適当なのだ。けれど、あくまで適当であってでたらめではないところが、るかさんの好ましいところだと思う。
「今日は湿気が多いわね」
「そうですね」
「お茶も落ち着いているみたいですわ――どうぞ」
「いただきます」
 そうして、るかさんが適当にも丁寧にたてたお茶というのは、風味は殺されておらず、しかしふつうのお教室や茶会などでは味わえない、独特の口当たりなのだ。
「今日のお茶が、いちばん好みかもしれないです」
「それはよかったわ。雨のおかげかしらね」
 わたくし雨は得意でないのですけれど、と、るかさんはゆるく微笑んだ。
「そうですか? 私は好きですよ、雨」
「あら、雨は疎ましく思うのが世の常のようですわよ?」
「それならば、相合傘を好ましく思う者たちは、雨をどう思っているのでしょうね」
 茶を啜りながら言うと、るかさんは目を丸くした。
「……めいこは詩的な表現が得意ですわね」
「そりゃあ、長らくの文で鍛えられていますから」
 奔放な感性で文を書く彼をうらやましいと思って、私は、できるだけその純粋な感性に添うような、きれいな表現で文を書こうと思っているのだ。それに、相合傘のくだりは――雨といわれて、思い出されるものもある。
「めいこには雨にかんして、何か素敵な思い出がありそうね」
 茶を吹きかけて、とっさに飲み込み、勢いつきすぎてげほげほと咳き込んでしまった。はしたない、とか、お作法を、とか、即座に訂正を求める茶道の先生よりも、何もなかった風に涼しげな顔をして私を見ているるかさんの方が、ちょっと……こたえる。
 なにか反論してやろうと思うのだが、いい言葉が出てこなくて、口を尖らせてるかさんを見るに留める。
「めいこ、顔が赤いですわよ」
「気のせいですっ」
 でも、それが気のせいではないことは、私がいちばん良く分かっている。

 雨と言って思い出される記憶は、だいたい、けぶった夏の雨の日だ。その日、私は――私たちは、ひどい夕立にあっていた。
「めーちゃん、だいじょうぶ?」
「うん……」
 雨宿りのために入った空き家の軒下は、屋根が今にも崩れそうで、子どもながらに不安を煽られた。しかし、ここで臆していてはいけない、と、妙な正義感で唇を引き結んでいたのを覚えている。
 ちょうど夕立のそのとき、私の腕の中には、赤毛の猫がいた。いつも遊んでいる瀬戸物屋さんの隣の空き地に捨てられていた仔猫だった。にゃあにゃあ鳴いているその仔を見つけたのは彼だった。探せども探せども母猫の姿は見えなくて、どうしようどうしようとふたりで頭を悩ませていた矢先の夕立。空き地には雨をしのげるような場所はなく、すぐそばの空き家の軒下に入るころには、既に私も彼も仔猫もみんな、ずぶぬれだった。
「かいと、ねこさん、ふるえているわ」
「ぬれちゃったからかな。なにかでふいてあげなくちゃ」
 とは言うものの、お互いの着物は水が滴るほど雨を吸っていて、拭くものも何もなかった。
 ふと、かいとが空き家の中を覗きこみ、あ、と口を開いた。
「なにかあるかもしれない、さがしてくる!」
「え、まって、かいと……!」
 かいとは私の声に耳も貸さず、薄暗い空き家の中に入って行ってしまった。たてつけが甘くなっているだろうその扉の向こうに、かいとと一緒に行くことが、そのときはなぜかできなかった。
 その頃、私は雨が嫌いだった。雨は私を弱気にさせた。雨が降ると、大抵外でしか一緒に遊べないかいとに、会えなくなるのが嫌だった。だから、雨が私たちを隔てる壁のようなものに思えて、それが怖かったのかも知れない。
 かいとを待つ間は、とても長い時間に思えた。実際は、それほど経っていなかったのだろうけれど、私は仔猫を抱きしめたまま、言いようのない不安に――ともすれば雨の中に泣きながら走りだしていきそうなほどの恐ろしさに――耐えていた。
「めーちゃん!」
 そして、背後から掛けられた声にとても安心したのだった。
「ねこちゃんこれでふいてあげて!」
 そういって、空き家の持ち主が置いたままだったのであろう、そして元は手拭いだったのであろう布きれをもちだしてきたかいとは、頬やら服やらほとんど全身が煤と埃にまみれていた。
 それがまるで顔に描かれた模様のようで、私は笑った。かいとは、不思議そうな顔をしていた。
「かいと、おかおがよごれているわよ」
 ええっと言って袖で拭おうとしても、煤が変な方向にのびるだけで、滑稽さは一層増していく。その顔に大笑いしながら仔猫を拭いていると、憮然とした表情で、めーちゃんわらわないでよう、と、抗議されたのを覚えている。
 そうして、雨がこのまま止まなければいいのに、と、思ったのだ。

 ふと、縁側から声がかかった。
「奥様、失礼いたします。咲音様のお使いの方がいらっしゃいました」
「あら、お迎えのようですわね、めいこ」
 るかさんが、すぐに行くとお伝えなさい、と、女中に指示をすると、軽く一礼して、その女の子は小走りに駆けて行った。
「……今日は何の用事もなかったはずだけれど」
「使いの者が来るということは、火急の用なのかもしれませんね」
 たしかに、私がここにきている時に、迎えの者が来たことはない。よっぽど急ぎの用か、重要な用事なのかもしれない。るかさんは、穏やかながらも早く行きなさいなと私を急かし、私もできるだけすばやく荷物を抱えた。雨足は、先ほどより強くなっているようだ。
「玄関まで送りますわ」
「ああ、それはお構いなく。るかさんまで濡れてしまうわ」
「……そうね、それでは、失礼だけれどここで。またいらっしゃいね、めいこ」
「はい、また来ます!」
 傘を用意しようとしていたるかさんを制して、私はるかさんに暇を告げて、玄関の方へと向かった。

 玄関に車が止まっているのが見える。私の家からさほど遠くないるかさんの家に車でくるなんて、よほどの用なのか、と、内心で焦りが生じた。まさか、屋敷で何かあったのだろうか。そういえば、母は昨日から気分がすぐれないと言っていた。今日はお医者にかかりに行ったはずだが、大きな病だったのだろうか。
 急いで、玄関に近づいていくと、しかし、そこにいたのは家の使用人ではなく、私は思わず顔をしかめた。
「やあ、めいこ」
「……こんにちは。神威の方はご挨拶もろくにできないのかしら」
「相変わらず手厳しい。まあ、そんなところも可愛らしいのだけれどね」
 玄関で待っていたのは、あの忌々しい紫の男だった。歯の浮くようなセリフと共に、にこやかに笑いかけてくる。この男の妄言には付き合いきれない、と思う。
 あたりを見回したが、家の者の気配はない(先ほど見えた車も、家のものではなくこの男のものだ)。まさか――できるかぎり男を視界に入れず、私はあたりを見回しながら言う。
「……咲音の家の使いの者はどこにいるのかしら」
「ここにいますよ、めいこお譲様」
「あなたみたいなひと、ウチの使用人にはいなかったわ」
 そう言うと、その男はあからさまに肩を竦めた。
 どうやら本気で、私を迎えにきた「使いの者」というのはこの男らしい。冗談じゃない。自称しているのか家の者から頼まれたのかは定かではないが、どっちにしても不愉快だ。こうなれば歩いて帰ってやる、と、車を引く馬の横をさっさと通り過ぎようと歩を進めた。
「さて、おしゃべりはこのくらいしにて、めいこ。お屋敷でお父上がお待ちかねだよ」
「……父さまが?」
 後ろから掛けられた声に立ち止まる。母に呼ばれる用事は数あれど、父に呼ばれる用事などそれほどない。まさか、本当になにか大事があったのだろうか。それなら――不本意だが、本当に急ぐ用なら、車に頼った方が得策だ。
「雨に濡れて帰るのもいやだろう、さあ、車へどうぞ、めいこ」
 驚くほど優雅に、嫌になるくらい恭しく言う男の手は敢えて取らず、私は車に乗り込んだ。
 胸の辺りがざわざわする。虫の報せというのかしら、こういうの。視線の先の雨が、いっそう重くなったように見えた。

 家に戻ると、客間には父と、私を迎えにきた男の父という人が膝を突き合わせていた。父の隣に座るよう促され、私は腰を下ろす。すると早速、という風に父が話を切り出した。
「さて、結納の日取りだけれども」
 ……今、なんと?
 私は、その一言に凍りつく。ちょっと待って、という言葉すら、喉の奥から出てこなかった。
「互いの都合もありますし、少し間は空きますが――」
 父の声が聞こえるが、内容は脳まで届いていない。
 何? 結納と言った? 結納って、婚約のことよね? なぜこんなに唐突に。
 いや――唐突ではなかったのかも知れない。私が意図して耳に入れていなかった会話の内容や、尋常でないほどの神威家の人間の来訪頻度、そして、私が件の家に入ることで、咲音の家にもたらされるであろう利益。それを考えれば、いまこの話が出ていても不思議じゃないのだ。
 ああ、でも、認めたくない。こんな、こんな――

 おおきくなったら、けっこんしようね。

 幼いかの人の声が耳元で聞こえた気がして、私は唇を噛みしめる。
 まさか、こんなかたちで、彼との約束が破られてしまう日が来るなんて――ううん、予測できたことだったわ。
 ただ、認めたくなかった現実を、こうして目の前に突きつけられて、何もできない自分が歯がゆかった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

【独自解釈】 野良犬疾走日和 【紅猫編#03】

ボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてPの「野良犬疾走日和」を、書こうとおもったら、
なんとコラボで書けることになった。コラボ相手の大物っぷりにぷるぷるしてます。

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めいこさん、突然の話にぎりぎりするの巻。

打ち合わせのメールが、日に日に自重と恥じらいを失っていきます。全部私のせい。
最近なんか、とくに酷い! ピアプロには出せないネタ満載です! たのしいd(蹴

雨宿りの話は、ちょうど雨降りのときに書いてました。
ほんとに雨の日のお茶が、風味を違ったものになるかはわかりません(ぁ
お茶とか習ったことないです。結構調べて書きましたが、どっかおかしいとことか
あれば、教えていただけるとうれしいです!
というか、時代背景の反映が……たいへんです……!(自分から言いだしておいて!

でも、たすけさんに励まされながらがんばってます!

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かいと視点の【青犬編】はたすけさんこと+KKさんが担当してらっしゃいます!
+KKさんのページはこちら⇒http://piapro.jp/slow_story

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つづくよ!

閲覧数:732

投稿日:2009/08/05 22:21:32

文字数:4,224文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • つんばる

    つんばる

    ご意見・ご感想

    コメントありがとうございますー!

    によによしていただけてうれしいです、書いてる本人も(そしておそらくたすけさんも)書きながら
    かいとくんとめいこさんの幼少時代はによによによに(ry)してます!
    神威の性格設定というか、印象イメージはほとんどたすけさんからいただいてるんですよ(笑

    いえいえ、紅猫は引き立て役です! たすけさんの青犬あってこそ成り立ってるので!
    真に尊敬すべきはたすけさんです、あのひとほんとすごいいいひと……! だいすき!(ここで
    ここからはたすけさんちのかいとくんに何とかしてもらわなきゃならん部分ですが、こちらも
    まだまだ気を抜かずがんばりたいとおもいますー!

    2009/08/11 22:52:16

  • 桜宮 小春

    桜宮 小春

    ご意見・ご感想

    によによによによ…
    あ、すみません、桜宮です。あまりに2人が…によによによn(ry

    ゆ、結納…だと…?!
    いや、神威さんが悪いとまでは言いませんけど…え、結納?!
    わあああ兄さーん!

    …ごめんなさい、長いことはなれてたせいで、テンションがおかしくなってしまっているようです←
    つんばるさんの紅猫編も、+KKさんの青犬編も、ドキドキが止まりません!
    やっぱりお2人ともすごいなぁ…尊敬です。
    2人がどうなってしまうのかとても楽しみです!
    続きも頑張って下さい!
    では。

    2009/08/11 21:07:45

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