カイトくんバー 番外編の番外編『粉雪と氷』

投稿者: usericonkanpyoさん

投稿日:2019/11/28 21:24:52 | 文字数:4,299文字 | 閲覧数:85 | カテゴリ:小説

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本編は「メイコちゃんカフェ」シリーズなのですが、番外編を書いて下さる悠樹さんの「カイト君バー」シリーズ、それが魅力的でしたので唐突ですが、私も設定を使わせて頂きました。

このシリーズではいつもお騒がせキャラ設定のルカちゃんですが、ちょっとセンチメンタルな夜を描いてみました。

ルカちゃんにはワインがきっと似合う!

メイコちゃんカフェ・別館『カイトくんバー』
 https://piapro.jp/t/dpsU

イコちゃんカフェ・別館『カイトくんバー』②
https://piapro.jp/t/nGcu

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カイト君バー 番外編『雪と氷』

とある雪国の―――
とある街の―――
小さなバーを営むカイトの
とある日常です。

 北の街は白いシーツがふわりと被さる様な雪が降り、例年より少しだけ早目の冬を迎えていた。
 柔らかな新雪は踏むと心地よさそうだが油断は出来ない。何故なら冷え込んだ夜に雪は、その下に鏡の様な氷を隠しているからだ。
 分かっているのだが現地民でもついつい足を滑らせてしまう……。
 そんな夜の物語。

 バーの店主であるカイトは、階段で雪が吹き溜まった下に広がる氷を削っていた。
 もちろん訪れたお客さんが足を滑らせないようにだ。この様な仕事はビルの管理人に任せておけば良いのだが、管理人も頻繁に除雪などしてくれない。せいぜい一日に1~2度だ。なので気が付けばビルに店を構える人が、何となく気が付いた順番でこの様な事をしている。
 
 以前、バーの常連客である骨董屋の女主人が言った。
『ちょっと! あの階段滑ってアブナイ‼ 滑ってお尻ぶつけたらどうするのよ‼」 
 カイトは自分に言われても……などと思ったがいつも「気づかなくてすみません」と無難な返事をする事にしている。真冬にピンヒールを履くこの女性にも問題あると思うのだが、一言を言い返せば3倍になって言い返してくるからだ。
 
 桃色の長い髪、細身なのにグラマラスなボディーの持ち主であるその女性は、黙っていれば物凄い美女なのだが性格は図々しく何かと一人で賑やかなのだ。
 
 それでも、お近づきになりたい男子諸君は彼女に『私の奢りです』と言いながら彼女にワインやカクテルを奢ろうとする。もちろん彼女は喜んで遠慮なくパカパカ喉に流して行く。
 男性は彼女が酔うのを待っているのだが、そうはいかず。まだまだ酒豪の彼女は飲めそうだ。カイトは坦々と男性の伝票にワインの追加を記して行く。
 
 カイトは一応、男性に分かる様に「おや? やっと1本分空きましたね。いつもならもっと早いのに」と空瓶を掲げる。それを見ると彼女の手強さにようやく気付き男性の表情も固まる。そうすると彼女はこう言うのだ。
『ん、もう一本……いや今夜はまだまだ飲めちゃいそう!』
 そこそこ名のある赤をワイングラスで回し躍らせる彼女の笑顔は悪魔的だ。
 男性は懐の財布を吸い尽くされない内に、いつのまにか会計を済ませて店からすごすごと出て行くのだった。その後ろ姿、いと哀れである。

 階段の氷を割っていたカイトが上を見上げると、例の悪魔……いや桃色の髪の女性がカイトを見つめていた。星が白く遠く滲む夜空。頬を桃色に染めて白い吐息が夜に溶けて行く。
 いつも大人びた表情をしていた筈なのに、今夜の彼女はいつもより幼く見えた。カイトは手を止めて彼女に言う。

「やあ、こんばんわ」
「……こんばんわ」
「今夜も寒いね」
「……滑らない? 階段」
「今なら大丈夫」

 桃色の髪の女性、ルカはゆっくりと階段を下りた。
 
 古びたビルの半地下にあるそのバーは、決して広い店ではないがとても落ち着いた雰囲気を醸している。木目が擦れたカウンター、古いが座り心地の良い椅子。店内で静かに奏でられるBGMは転がる様なリズムのジャズピアノ。古めかしい内装だが、バックバーにはタンブラーグラスや琥珀色のボトルが出番を待ちながらキラキラと輝いている。
 
 本日は彼女以外ノーゲスト。トレンチコートを壁に掛けると、左から二番目の席をキープ。その席は彼女のお気に入りらしい。ルカは長い溜息を零しながら椅子に座る。
 
 彼女が何も言わない時は、必ずワインなのだ。そういう決まり事がいつのまにかこの店では決まっていた。そしてワインの種類は問わない。カイトが選んだワインを文句も言わず飲む。今夜もそういう日らしい。彼女はメニューに目もくれず只、待っていた。
 
 カイトはルカの赤らんだ頬が寒さのせいではない事に気づいていた。ここに来る前にどこかで酒を飲んだのだろう。それもかなりの量。
「ふむ……」

 カイトは少し考えて、彼女に言った。
「ちょっと外に出て身体が冷えたよ。ひとまずホットワインなんか一緒にどう? もちろん奢りだよ」
「……うん、そうね。それご馳走になろうかな」
「少々お待ちを」

 小鍋にワインを注ぎ、火をかける。少量のショウガと黒胡椒、スターアニスを入れ鍋を回す。シナモンを足し、最後に蜂蜜を少し。
 耐熱ガラスのカップに注ぎ、ルカの前に差し出した。
 赤いワインからは暖かそうな湯気が立ち、ワインの香りが広がる。
 
 乾杯もせずに2人はホットワインを啜った。暖かさと優しい甘さ。身体を温めるスパイシーさが、ひとまず会話を許さなかった。
 概ね飲み終わった頃、ちょうどBGMが鳴りやむ。カイトが違う音楽を選ぼうとした時、ルカがようやく話し始めた。

「……あの娘、頑固でさ。酔わせて本音を聞き出そうとしたんだけど、私が先にまいっちゃった」
「ひょっとして、メイコの事かい?」
 頷くルカ。何の話をしていたかは分からないが、ルカが先に参ったという言葉で誰か分かる。
「日本酒は当分―――飲みたくない」
 
 ルカも酒が強い。飲み比べしたらカイトが負けた事がある。
 
 しかしそれ以上の蟒蛇がメイコなのだ。細身の彼女のどこに酒が入るのか? カイトはいつも3人で飲む時に考えていた。そして毎回考えている内に先に酔いつぶれる。意識を失う寸前、カイトは思うのだ。『……そうか! 胸だ。きっと2人のアルコールはあの大き目な胸に溜るのだ。きっとそうだ―――』などと馬鹿な事をまどろみながら心の中で呟き、そして意識が途切れてしまうのだった。
 
 いつもカイトや客をからかうルカなのだが、今夜は様子がおかしい。何故ならいつもより言葉が少ないからだ。カイトは少し困る。これでは只の美女ではないか。
 
 カウンターに大きな胸を乗せ、ルカは虚ろな視線をカイトに送る。酔いで顔を赤らめて、湿った瞳を向ける美女。その雰囲気にカイトは『これは何かのワナかイタズラに違いない』と背筋を正す。いつもからかわれている性なのだから仕方ない。
 
 それでも様子がいつもと違う。カイトは酔い覚ましの為、もう少し時間を置いてからと考えていたが、ルカの前にワイングラスを置き赤を注ぐ。
 
 カウンターに座る美女の前にワインが無いのはバーマンとして罪であるからだ。
 
 ルカはワイングラスを揺らし、ワインを回す。グラスの中で香りが開く。
 
 一口、二口。彼女の喉が葡萄の酸味で湿った頃、再び話し始めた。

「……最近、メイコと会ったの?」
「いや、すれ違いばかりでね。この間はメイコの店にコーヒー豆を取りに行ったら白いリボンの子が留守番していてさ。電話やメールでは連絡出来てるんだけど」   
 
 不思議にもカイトとメイコはすれ違いが多い。その後も用事がありメイコがこの店に来てくれた時もカイトは買い出しで、その代わりにいたのが留守を頼んでいた黄色い頭の男の子であった。

「ふうん―――」
「……あはは、こういう事もあるんだね」
 カイトが少し困った表情で答えた。ルカはじっとカイトを見つめる。

「それってさ……きっと運命(タイミング)なのよ。私にとっては機会(チャンス)なのかしらね」
 
 ルカはワインを回し、言葉の意味を探る隙をカイトに与えず、彼女は潤んだ表情で言葉を続けた。
「メイコのコト―――どう思っているの?」
 
 その言葉の後、カイトの脳裏にメイコの姿が浮かんだ。自分にとって彼女はどんな存在なのだろうか? そしてそんな事をどうして尋ねたのか?
 
 ルカの顔を見つめるとその顔は先程、階段の上で彼を見つめていた表情と同じだった。
 不安混じりで幼ささを隠し切れない彼女の本当の顔。
 
 大人びたルージュも、アクセサリーも、良く似合っているのだがそれは少しだけ残した彼女の幼さを隠すものだったのだ。戸惑う少女の様な瞳を覗かせて、カイトの心がワインの様に揺れる。

「私……今夜なら口が滑っちゃうかもしれない」
 
 氷を隠す粉雪は、彼女の大人びた表情を隠す化粧なのかもしれない。
 
 その粉雪は容易く払うことが出来るのだが、その下に隠された氷は、とても脆い。
 
 カイトはグラスを拭きながら、心を静めた。BGMは止まったままで、雪の降る音が聞こえそうな程、その時間は無音だった。

「俺は―――」
 
 言葉を決めたカイト。ルカはグラスを持つ指にわずかだが力が入る―――。
 
 その時、景気よくドアがどかーっと開いた。
「こんばんわーマスター‼ チューハイ……じゃなかったジン・フィズちょーだいっ☆」 
 
 その客は最近よく訪れる緑色の髪の髪をしたガラス職人見習いのグミであった。
「い、いらっしゃい。ははは……」
 変な緊張感から解き放たれカイトは安堵した。その一方ルカは、何やらその勢いで酔いも一気にどこかへ飛んで行ったようで、更に気恥ずかしさからカウンターに突っ伏した。
 
 ルカから椅子二つ分空けてグミが座る。グミは二つ隣の席のルカをまじまじと見つめる。
「あれれ? ボク……このお姉さんと会った事あったかも―――?」
 
 ルカは二つ空けた椅子をずいっと彼女の隣に遠慮なく移動した。

 そして同じようにマジマジとグミの顔を見つめて言った。
「何処であったか知らないけれどまあいいわ。この店で、この私の隣に座ったが最後よ! そんなチューハイみたいなお酒なんて止めて、私とこの店のワインを飲み干すのよ!」
「え? え~~? ボク、ワインなんて飲んだ事ないですよぉ~~」
「それは良い機会! ちょっとカイト。さっき開けたボトル、ここに置きなさい‼ そしてアナタも今夜一緒に飲みなさいっ‼」
「ええ~~~!?」

 かくして、ルカはいつもの調子に戻り、グミもカイトもワインを空け続けた。結局3本程空けてしまったのだが、一番最初にダウンしたのがやはりカイト。
 
 まどろみの中、ルカとグミは大いに盛り上がりながらワインを流し込んで行く。よく見ればグミも中々立派な胸をしているようで『そうか……やはり女性は胸にアルコールを溜めるものなのだ』などと不謹慎な事を考えつつ意識を失うのであった。

 ゆっくりと降る粉雪は、冷えた夜に氷なる。
 そして、その上に再び粉雪が積もり、氷を隠す。
 この街で、この季節は、そんな事をずっと繰り返すのだ。
 
―おわり― 

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