青い髪と目をした、見目麗しい、歌うアンドロイド。 商品コード27720、機体名KAITO。 彼がやってきてからはやくも三日がたっていたが、近所の人にアンドロイドだと疑われることはなく、寧ろあちこち散歩して回るカイトの姿を見て「いい男捕まえてきたのね!」なんて羨ましがられることもしばしば。
 
そういう場合には大抵 「幼馴染の従兄弟の友達の兄貴のホームステイ先の息子が交換留学生としてやってきていたのだけれど滞在先の家族の娘が彼氏の妹とトラブルになって滞在しているにいられなくて仕方なく兄貴の友達の従兄弟の幼馴染という関係を頼りにやって来た男だ」 と説明している。間違いなく全員が聞き返す気力が失い、深く追求せずへえそうと生返事をしてくれるのでこの嘘は大いに役立っている。
 
長い大嘘の後で、私的に日がな一日プラプラしてる男が恋人なぞいくら見目がよくても御免だが、と言うと、いいじゃないヒモでもあの笑顔があれば、なんて言い返された。 確かにカイトの笑顔はアンドロイドとは思えない、甘い穏やかさが宿っている。見た目が精巧ということ以上に、その笑顔が周囲にアンドロイドと考えさせないのだろう。 私だってそうだ。時々、カイトが「一緒にいると厄介な不正ボーカロイド」だということを忘れている自分に気づき愕然とする。
 
 
―――まあそれでもいいかななんて考えてしまうのはやはり甘いのだろうか。
 
 
* *
 
 
「カイト。あんたに重要な任務を与える。一緒に来て」
「え?」
 
(ボーカロイドのくせに生意気にも)アイスを貪っていたカイトはきょとんと目を丸くした。とけかかったアイスの最後の一口が呆けてるうちにぼたんと地面に落下した。「ああっ、」といかにも切なげな声をあげたカイトを無視して腕を掴み、彼の胸に買い物カゴを押し付ける。
 
「アイスくらい買ってあげるわよ、いい働きしてくれたらね」
「…え、ええと、任務って…?」
「安売りなのよ今日は。砂糖が一キロ八十円、卵は九十円、全部お一人様一つ限り! レジの端と端を三度行き来して六個ずつゲットするわようふふのふ。シーマスのところから強奪してきた変装グッズ、忘れずに持ってね。私はいいけどあんたは第一印象強いんだから」
 
特売日は戦争なのだ、早い者勝ちなのだ、セコいとかズルいとか言ってられない。砂糖と卵なんていくらあっても困らないのだから。普段やる気の無い瞳にも赤々と燃える炎が宿る。 その迫力にカイトは圧倒され、無言で頷いた。べたつくアイスの棒をお守りか何かみたいに握り締めたまま。
 
 
 
 
To Be Next .

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

天使は歌わない 06

こんにちは、雨鳴です。
カイトと親交深める編をお送りしております。
カイト=愛すべき弄られキャラという方程式が頭に染み付いてしまってるので
かっこよさげなカイトはラストくらいにしか見られないやもしれません。
…うん、ラストぐらいは。

今まで投稿した話をまとめた倉庫です。
内容はピアプロさんにアップしたものとほとんど同じです。
随時更新しますので、どうぞご利用ください。
http://www.geocities.jp/yoruko930/angel/index.html

読んでいただいてありがとうございました!

閲覧数:385

投稿日:2009/07/28 13:01:38

文字数:1,093文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

  • 関連動画0

  • 雨鳴

    雨鳴

    その他

    こんにちは、雨鳴です。
    今回も読んでいただいてありがとうございます。
    何かもうアイス出さねば落ち着かなくて!(笑)
    これで安心して次に取り掛かれそうです。

    2009/07/29 10:33:38

  • ヘルケロ

    ヘルケロ

    ご意見・ご感想

    ヘルフィヨトルです
    楽しくよませていただきました。
    やっぱりアイスは出てくるんですねwwww
    というか特売に燃えるのにアイスを買ってあげる余裕はあるのでしょうか?(笑

    2009/07/28 14:47:44

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