命の危機に瀕した私の前に突然現れ、テイを麻酔弾で撃ち抜き、助けてくれた謎の女性。





私が驚いている最中、彼女はアンリと名乗り、こちらをじっと見つめて笑みを浮かべた。
そしてこう言ったのだった。





¨真実を知り、運命を変えたければ、私と共に来い¨と。





すると誰かがこちらに向かって走ってきたのだった。
私はアンリから横に目をやった。










リツ「…遅かったか。しかも新手がいるようね。」


アンリ「…来たな。久しぶりだなシンデレラボーイ?」


リツ「これは…まさかアナタは!?」


アンリ「さあ行け白ネズミ君。キミにはまだ話したい事が山ほどあるが、ここで連中の餌食になってもらったら私の収穫が無くなってしまうからな。」


ハク「しかし…!」


アンリ「それとも、またそこのヤンデレガールにナイフプレイをしてもらいたいのかい?お勧めはしないが。」


ハク「それは…」


アンリ「私もこのボーイと色々話す事があるんでね。この場を無事凌ぐ事ができたら後でまた会おう。」


ハク「…分かったわ。ありがとう。」










私は走り出した。
助けてくれたアンリに感謝しつつ、テイの姿に少しだけ目をやってから。





アンリが何故私を救ってくれたのかが分からなかった。
過去に面識も無いし、接触した覚えもないのに。私はそれがとても気になって仕方無かった。





束の間の安堵感。
でも安心はできない。まだ何も終わっていない。ここを脱出する為にも早く屋上を目指さないと。





テイ…
今日私が見たのは、本当に貴方だったの…?





いずれにしても、私達はまた会うことになりそうね…そんな予感がする。





その時は必ず、真相をこの身で問いただす。
このテイは本物か否か。









ハク「はあっ…はあっ…」


警備員A「…おい待て!止まるんだ!」


警備員B「例の侵入者だ、捕まえろ!」





私は幾つもの廊下や階段を走り抜けた。もうすぐで屋上に辿り着くはず。


追う警備員も増えてくる。だけどここで止まるわけにはいかない。


私は腰に1つだけあった閃光手榴弾を手に取った。
追われたままでは脱出できないと、そう考えて警備員達に目掛けて投げた。





ハク「…それっ!」


警備員A「爆弾だ!」


警備員B「ふ、伏せろーっ!!」





¨バンッ!¨





警備員C「う…うああっ…!」


警備員D「目が、目が……」


ハク「…暫くの間、フラッシュの眩みを楽しんで。」





警備員達は真っ正面から閃光を浴びて倒れた。
これで厄介な追っ手は振り切った。


最上階まで残り数階。
私は思わず少しだけほっと息をついた。


すると私のヘッドホンに突然無線が飛び込んできた。










アンリ¨ハク、聞こえるか?¨


ハク「…アンリ?」


アンリ¨そうだ、お互い無事だったようだな。もうすぐでキミは屋上に辿り着くだろう。だがな…¨


ハク「…何か問題でも?」


アンリ¨そうだ。キミのヘッドセットに、私の入手したNLI社無線の解読コードを送ろう。受信する周波数をそれに設定するんだ。¨


ハク「分かったわ。」










NLI社司令部¨アルファ2、社内警備員から侵入者の位置情報が送信されてきた。侵入者は常に移動している為に正確では無いが、大体の位置は分かった。そちらに捜索を求む。¨


アルファ隊長¨了解。スティーブとベルメール、後方支援にリトルバードを送り込む。¨


NLI社司令部¨既に複数の別部隊が奴に潰されている。油断するな、オーバー。¨


アルファ隊長¨了解、司令部。準備ができ次第、侵入者を排除する。アルファ2、アウト。¨





ハク「リトルバード…?」


アンリ¨連中がご愛用の攻撃ヘリの事だ。早くしないとここの私設部隊が突入してきて、そのヘリに蜂の巣にされるぞ。¨


ハク「急がないと…!」





すると何処からか微かにヘリコプターのプロペラ音が聞こえてきた。
音は次第に大きくなってくる。


私はゆっくりと窓際に近づき外を見た。
向こうから何機かのヘリコプターが低速飛行でやってきた。


それと同時に再び無線が飛び込んできた。





ヘリパイロット¨リトルバード、所定位置についた。エコー3・4をファストロープで突入させる。¨


エコー隊長¨全員ロープを装着、いつでも降下できる。¨


NLI社司令部¨了解、アルファ・デルタ・エコーチームも所定位置に待機。そのまま指示を待て。¨


ヘリパイロット¨風が少し強まっている。このまま長期間の維持飛行は避けたい。早急に頼む。¨


デルタ隊長¨別部隊が遅れているのか?こちらはもう突入の準備はできているぞ。¨


NLI社司令部¨残りのスナイパー班が到着するまで指示を待て。¨





ハク「…これは本当に時間が無いわね。」










¨カチャッ¨










守乃サコ「何だよこれ、炭酸がきついじゃないか…いでっ!?」


亞北ネル「このバカサコ!お前の準備が整わないと他の部隊は身動きが取れないのよ!」


サコ「ああ…それじゃあもう、みんなにOKサイン出しといて下さいよ。ウチはこのコーラを一杯やってからゆっくりと…いだーっ!?」


ネル「アホサコ!コーラ飲んでる暇があったら早くスナイピングのセットをしなさいよ!」


サコ「慌てないで下さいよネルの姉貴?相手はただのネズミなんですから。罠を置いて獣を這わせて、じっくり攻め立てれば良いんですよ。」


ネル「…だけどそれが餌にもかからない賢いネズミだったら?イタチさえも噛みかねない凶暴さを持っていたら?」


サコ「その時はですね、ウチならどうするかと言うと……」










¨カチャッ¨










サコ「分からん!」


ネル「分からんのかい!!」





NLI社司令部¨ハンター1、配置についたか?他のスナイパー班の体勢は整っている。これ以上の待機は全員に支障をきたす。¨


ネル「狙撃員の1人が準備に手間取っている。後もう少しだけ…」





サコ「もうできてます。」


ネル「はよ言えーっ!!」


サコ「いでぇーっ!!」










ハク「…もたもたしてられない、早く移動しないと!」


アンリ¨そろそろ覚悟しろ。連中が突入してくるぞ!¨


ハク「!」





NLI社司令部¨リトルバード、即応体制が整った。エコーチームを降下させろ。¨


ヘリパイロット¨了解、エコーチームを降下させる。¨


NLI社司令部¨アルファ・デルタ、突入して侵入者を無力化しろ。ターゲットの生死は問わない。現時刻をもって突入を許可する。¨


デルタ隊長¨了解、突入するぞ!¨


アルファ隊長¨突入、突入!¨


エコー隊長¨行け行けーっ!!¨










上空のヘリから一気に私設部隊が降下してきた。
それと同時に廊下の奥の扉が少し開いたのが見えた。


こちらに何かが飛んでくる……閃光手榴弾!?





¨パキーン¨





ハク「目が…見えないっ…!」


デルタ隊長「いたぞ、廊下の突き当たりの角だ!」


アルファ隊長「攻撃態勢に入れ!」





¨バリン!バリン!¨





エコー隊長「エコーチーム、窓から突入した!侵入者の掃討を開始する!」


NLI社司令部¨エコーチーム、了解した。総員狩りを始めろ。¨


ハク「…に、逃げないと…!」





敵は大挙として殴り込んできた。数が多い。
恐らく20人以上はいるだろう。


私設部隊のライトとサイトレーザーが廊下のあちこちを照らして飛び交っている。


隊員達はこちらへ徐々に近づいてくる。
…こっちの位置はもうばれている?





アルファ隊長「敵影を発見した、攻撃を開始する!撃て!」





¨ダダダダダ!¨





ハク「…くっ!」





¨ヒューン¨





今まさに私の頭上をマシンガンの弾が掠めた。
敵は容赦なく銃撃を加えてくる。


人数も場所も火力もかなり不利だ。戦っても勝ち目は無い。
でも逃げようにも進めば突撃してくる敵、退いても窓際で突入してくる敵。


落ち着くんだ私…考えなさい……
だけど時間なんて無い。敵は今にも目の前にやってくる……





¨バン!バン!¨





私設部隊員A「…うおっ!」


私設部隊員B「ああっ…!被弾した…!」


私設部隊員C「敵だ!迎え撃て!」





¨バン、バン、バン!¨





私設部隊員B「うっ…!」


私設部隊員C「ああっ…!」


私設部隊員D「…うああっ!」


私設部隊員E「新たな敵と遭遇!隊員が複数やられた、応援をよこ…」





¨バン!¨





私設部隊員F「があ…っ…!」


アルファ隊長「…引けっ!全員体勢を立て直せ!」





敵が退いていく。
どうしたのだろう、私は何もしてないのに。





アンリ「…全く、これではキミから目を離す事はできないな。」


ハク「…アンリ!」


アンリ「この借り、脱出した後にたっぷり払ってもらわないとな。」


ハク「…それはちょっと困るわ。」










ベルメール「何なんだあの侵入者…強すぎる……」


???「…後方待機は戦いに参加できず警戒するだけ、本当に退屈だよな?」


ベルメール「誰だ!」


ルコ「いい反応だ…悪くない。」


ベルメール「ああ…貴方でしたか、欲音執行長?」


ルコ「随分と手こずっているようだな。相手が悪かったね。」


ベルメール「ええ、既にこちらの被害は甚大で……欲音執行長も加勢して下さるのですか?」


ルコ「ああ、勿論さ。」


ベルメール「それは心強い、隊長達は手が放せないので私にできる事があれば何でも…」


ルコ「その言葉が聞きたかった。」


ベルメール「…は?」


ルコ「私に協力してくれると言うなら貸してくれよ、¨その体¨をさ。」





ルコのマッドアイがベルメールを鋭く見つめ、大きく光った。
するとベルメールは跪いて苦しみだした。





ベルメール「何を…う、うわあっ…!」


ルコ「ふっふっふっ…」


ベルメール「た…助けて…!あぁ…頭が…!!」


ルコ「この体…さっきのヤツより使えそうだ…ますます気に入ったぞ。」


ベルメール「…うわああああああ!!」


アルファ隊長¨ベルメール、問題が起きた。侵入者に突入部隊が潰された。今すぐ加勢に来い…ベルメール?応答しろ!¨





沈黙。ベルメールは応答しない。





アルファ隊長¨…ベルメール、応答しろ!繰り返す、応答するんだ!¨


ベルメール「はあっ……」


アルファ隊長¨…ベルメール、大丈夫か?¨


ベルメール「…問題ありません。無線の不調のようでした。」


アルファ隊長¨そうか、なら良いんだが…こちらでかなりの人数が侵入者にやられた。今すぐ増援に来てくれ。¨


ベルメール「了解、直ちに向かいます。」


アルファ隊長¨頼むぞ。¨


ベルメール「…ふふっ、思った以上に使いやすい体だ。これで今度こそ、あの侵入者に引導を引き渡してやる。」





ベルメールの目は赤く光り、ライフルを手に走り出した。










ハク「…撤退したようね。」


アンリ「あれは撤退じゃない、態勢の立て直しだ。またすぐにやって来る。」





ベルメール「…いたか。」





アンリ「ほら見ろ…にしても単身で突撃してくるなんて実に馬鹿な奴だ……ん?」


ハク「今度は私がやるわ。」


アンリ「…待て!そいつは何かおかしい!」






アンリはそう言ったが、私は既に銃の引き金を引いていた。
まっしぐらに突撃してくるなんて、一体どんな捨て身精神を持っているんだと思いながら。


…かわされた?
当たらない…弾が一発も当たらない!?


テイのようにナイフで弾丸を弾き落とすどころか、私の撃った弾を全て回避しているのだ。


たちまちその隊員は猛スピードで私に迫った。もう目の前に近づこうとしたその時だった。


私はその隊員と目があった。
ヘルメットの奥に見えた目は、赤く真紅に光っていた。





そしてその一瞬で悟った。これは作戦前のマスターから情報提供されていた¨例の能力者¨によって操られているボーカロイドの特徴だと。





(前バージョンに続く)





ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

「VOCALOID HEARTS」~第18話・慣れない痛み~

ピアプロの皆さん、お久しぶりです!
今日は聖なる夜にメリークリスマス!…ってもうとっくに過ぎてる!?←

もう1ヶ月くらい更新してなかったんですが、その間にテストがあったり、冬休みに入ってからもずっと部活があったり、しかも腸炎性のウィルスに感染して地獄を見たり…色々波乱の12月でしたw


そんな中、12月27日はリンレン双子の誕生日だという事で祝福を!


カイト「リンちゃんとレン君、今年で何歳になったのかな?」

リンレン「14さーい!」

カイト「全然変わってねぇじゃねーか!」

メイコ「祝福になってねぇw」


今回で計4話になった弱音ハクのダークサイド編が完結しました!
それでここまでのボカロハーツを前半として区切りたいと思います。

次回は再びMART編に戻ります!カイトと共にリンの里帰りでルカ姉さんとの再開、そして遂に理事会のBV計画が次の段階へ…?


すみません、今回は何故か3ページ分に渡る長編になってしまいました…
最後まで読んで下さった皆さん、本当にありがとうございました!!

びんさん、重ね重ねコラボでまた厄介な設定を設けるような事をしてしまって申し訳ありません…


因みに19話の執筆の前にやりたかったボカロ曲の自己解釈ができていなかったので、それを書きたいなって思ってます。
それが今年最後の作品になるか来年の初作品になるかワクワク(?)ですw


今年を振り返って、ピアプロでの活動も皆さんに支えて頂いたお陰で頑張る事ができました!
来年もボカロハーツの完結や番外編の執筆、そしてピアプロの皆さんの作品の拝見や応援をさせて頂きたいと思います!


それでは良いお年を~!


※訂正
これまでのボカロハーツのストーリーは3月末までの時間軸になってますが、15話の段階で「4月の中頃」と書いてしまっていました。
いきなり時間が進んだなオイ!

閲覧数:987

投稿日:2011/12/30 08:52:30

文字数:5,238文字

カテゴリ:小説

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  • 瓶底眼鏡

    瓶底眼鏡

    ご意見・ご感想

    お邪魔です!年末年始は忙しいなどと言い訳し何もしてなかった不届き者です!!更新気付かず済みませんでした!!
    ついにブレインサッカーがそのベールを脱ぎましたね!!赤い目になるという事ですか!!了解です!!
    後、サッカー……よし、頑張ろう!!
    ああ……早く更新しないと……

    2012/01/05 22:05:44

    • オレアリア

      オレアリア

      びんさん今晩は!
      いつもメッセージを下さってありがとうございます!!

      いえいえ、もうここに更新に気づくのに最強に鈍感な奴が←
      他の皆さんと同じく、超返信が遅れてしまい本当に申し訳ありません…(汗)

      はい!大分前になりますが、びんさんと打ち合わせさせて頂いた時にお話したルコのブレインサッカーの能力を登場させました!
      あらゆるボーカロイドの意識を支配して、誰にでも成り変われるといったものなんですが、また設定の方でお願いします!

      ネルハクのサッカーについても…ああーっ!またしても変な設定を作ってしまいました…←
      もう色々すみません…

      そんなこんなですが、びんさん2012年もどうか宜しくお願い致します!

      2012/01/12 21:11:31

  • ミル

    ミル

    ご意見・ご感想

    オセロットさん、こんばんは!お久しぶりですね、今回の長編の完成お疲れ様です!

    いよいよハク編も完結したんですね。アンリと協力のバトルシーンがとてもかっこよかったです!
    ハクさんもとんでもない狙撃で敵を倒して、アンリも見事な格闘術で恐いもの無し…いやもうアンリさんはチートですねww
    そんな中でサコが1人だけ空気読んでないのがツボりましたwww

    しかしハクは友達2人も敵になってしまうとは…本当に恵まれないですね。

    次回からこの物語もいよいよ後半に入るんですね!リンの里帰り編、楽しみにしてます!
    オセロットさん、よいお年を!

    2011/12/30 18:08:06

    • オレアリア

      オレアリア

      ミルさん今晩は!
      重ね重ね、いつもメッセージとブックマーク本当にありがとうございます!

      ハク&アンリの協力プレイはトリプルエーやネルでも適わない、チートタッグになりましたw
      そんなアンリの正体は…もしかしたらバレてるかもしれませ(ry

      サコは1人空気が読めない人なので、良かったら応援してやって下さいw

      今回18話でいよいよハク編も終わって、ボカロハーツもここで一区切りして後半に入っていきます。
      次回からのストーリーはリンの里帰り編になりますが、また良かったら見てやって下さい!
      2012年も宜しくお願いしますね!

      2012/01/12 20:44:09

  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    こんにちは!

    読み応えたっぷりで、息もつかせぬ展開のアクション!

    ”ブレインサッカー”は怖いですね~。多分どんな攻撃より怖いと思います。クグツされたら、もうどうしようもないですから。某ドラキュラゲームなどでこういうのがあったけど、”時間限定、機能限定”という補正措置がされてました。

    今回で一区切りですが、最後の展開は凄かったですね~。それとエキストラの”警備員”のセリフ”目が、目が”は、某有名冒険アニメ映画の大佐を思いだしてしまいました。あんな感じで悶絶していたのかなぁ、と。

    ではでは~

    P.S 今年もあと2日、忙しすぎて大きな風邪を引いている私。年末年始は静かに過ごす事になりそうです。今年も楽しい作品で楽しませていただき、まことに有り難うございます。来年も宜しくお願いいたします。それでは、良いお年を。

    2011/12/30 14:55:29

    • オレアリア

      オレアリア

      enarinさん今晩は!
      今回は2011年最後の投稿になりましたが、メッセージありがとうございました!

      この18話でハク編を終わらせたいのもあって詰め込んだ結果、長編になってしまいましたが読んで頂いてありがとうございました!

      ブレインサッカーは訳すると「脳を喰らう者」になるんですが、そう言えば確かに某ドラキュラゲームにも相手を乗っ取るような能力があったなぁと思い出しました。
      意識を支配されたらどうしようもないですから、ピストルより怖いものかもしれませんね…

      警備員の目が…というのも某有名アニメの名悪役大佐を脳裏によぎらせながら書いてましたww

      年末なのに体調を崩されたのは辛いですね…お大事になさって下さい!

      こちらもenarinさんの小説に影響を受けて、今日まで楽しく小説を書いてくる事ができました。本当にありがとうございます!
      2012年もどうか宜しくお願い致します!

      2012/01/12 20:34:03

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