【独自解釈】 野良犬疾走日和 【紅猫編#25】

投稿日:2009/12/22 15:24:19 | 文字数:5,599文字 | 閲覧数:675 | カテゴリ:小説 | 全3バージョン

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ボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてPの「野良犬疾走日和」を、書こうとおもったら、
なんとコラボで書けることになった。コラボ相手の大物っぷりにぷるぷるしてます。

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めいこさん、かいとくんと未来に向かって疾走するの巻。

長かったような短かったようなコラボも、ここでいったん終幕です!
今回はホント、たくさん貴重な経験をさせていただきました!

素敵な曲を世に送り出して下さったボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてP、
めーちゃんとかいとのセリフをまさかの音声化してくださった西の風さん、
作品を読んで下さったみなさま、こっそり応援して下さったみなさま、
そして、誰より何より、いろんなワガママを聞いて一緒に作品づくりしてくれた
ぷけさんこと+KKさん、ほんとうにありがとうございました!

青犬編の最終話も、よろしくお願いします!

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原曲:野良犬疾走日和/ボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてP
http://www.nicovideo.jp/watch/nm4342917

音声化の実行犯(笑)でぷけさんの嫁、西の風さんのページはこちら
http://piapro.jp/nightraid

かいと視点の【青犬編】はぷけさんこと+KKさんが担当してらっしゃいます!
+KKさんのページはこちら⇒http://piapro.jp/slow_story

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おや、前のバージョンになにかあるようだ。

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ボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてPの「野良犬疾走日和」を、
なんとコラボで書けることになった。「野良犬疾走日和」をモチーフにしていますが、
ボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてP本人とはまったく関係ございません。
パラレル設定・カイメイ風味です、苦手な方は注意!

コラボ相手はかの心情描写の魔術師、+KKさんです!

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【独自解釈】 野良犬疾走日和 【紅猫編#25】



 遠くから、ぼう、と、煙を吐くような汽笛が聞こえた。そろそろ汽車が着くのだろう。
「よかった、間にあいそうだ」
 かいとは、ほっとしたような表情で、まだ汽車の着いていない駅を見つめている。駅が見えてきた、といっても、道が開けたくらいの話なので、駅まではまだもうすこし距離がある。だから、まだ走ったままではあるけれど。
 きっと、るかさんのことだ、汽車が駅に着く時間も考慮に入れて計画を練ったことだろう。さっきの紫の男との遭遇も予想の範囲内だったからこそ、ああして私たちの間に立つことができたのだと、今ならわかる。私たちがここにきちんと着けるようにしてくれたのだ。
「るかさんのおかげね」
 うん、とひとつ頷いて、かいとも頬を綻ばせた。どうやら同じことを思っていたらしい。
 そういえば、ずうっと気になっていたのに、かいととるかさんがどのようにして知り合ったのか訊けずじまいだった。あの興業団の人たちとのことは話してもらったけれど、肝心のるかさんとの話は聞いていない。
 ねえ、と、声をかけようとして
「――見つけたぞ、めいこ!」
 ひとごみを掻き分けるようにして耳に届いた声は、あの紫の男の声だった。
 なんだか、ことごとく邪魔されている気がする。
「げ、しつこいなあ……!」
 その声はかいとにも聞こえたらしく、驚きと呆れと困惑がいっしょくたになったような顔で後ろを振り向いた。思わず私もちらりと後ろを見る……って、車で追ってくるなんて反則じゃないの! いや、正々堂々とした勝負でもなんでもないのだから、反則どころかきまりもないのだけれど。それでもやっぱり毒づいてしまうのは、もう仕方がない。ここまできて邪魔されたくもないじゃない!
「ほんとにしつこいわね! しつこい男は嫌われるわよっ!」
 車に乗った男まで聞こえるように、大声で叫ぶ。
「それって、ずっとめいこのこと諦められなかった俺も当てはまるんだけど……」
「あ……」
 そうかも、とか、失言だったかも、と、思ってしまって、一瞬だったけれど間ができた。慌てて繕おうにも上手い言葉が出て来なくて、結局なにも考えないまま口を開く。
「そ、そこは流しなさいよ!」
「流しなさいと言われても!!」
 ぎゃあぎゃあとやりとりしている間にも、車は近づいてくる。
 時間も時間だし、大通りだから人通りも多くなってきている。なんとか人の波のおかげで距離は縮まっていないが、相手は車なのだから、すぐに追いついてくるだろう。なんとか逃げ切らないと。
 気を急いて足を先に延ばして――草履の底ではなく、足の指が、じかに地を踏んだ。
「痛っ」
「めいこ!?」
 小石か何かを踏んづけたような鋭い痛みが、じんわりと指に残る。さいわい足袋に穴はない(と思う、たぶん。よく見ていないけど)。でも、その草履の鼻緒は、いつかと同じように、いっそ見事なまでにぶつりと切れていた。
 なんでこんな時に!
 慌てて草履を拾ったけれど、このままでは走れない。顔を上げると、汽車が着実に駅へと近付いて行くのが見えた。同時に、後方から聞こえてくる車輪のまわる音が、やけに耳について――まずい、追いつかれてしまう!

「――めいこ、へんなとこ触ったらごめん!」
「え? ふあ……!」

 本日三度目の、身体が浮く感覚。この短期間に、ずいぶん慣れてしまった腕のぬくもりが私を包む。さっさと私を横抱きにしたかいとは、私の重みなんかものともしない風に走り始めた。
「ちょっとかいと……!」
「うんわかってる、ちゃんと逃げ切るから文句も殴るのも後にして!」
 確かに気にしてほしいとは思ったけれど、へんなところで律儀に宣言しなくてもいいのに……じゃなくて! そういうことじゃなくて! ここ往来なのにそんなこと言って、聞いた人が何事かと思うじゃない! それに、こんな広い通りでこんな風にだっこされるなんて、本当に恥ずかしい。ああ、顔から火が出そう。
「ばか……」
 でも、不思議と、口で言うほどいやじゃないのだ――なんて言ったら、あなたはどんな顔をするだろう。
 きゅ、と、その服にしがみつくと、私の肩を抱く力が、すこしだけ強くなった。
「――止まれそこの妙ちきりんな格好した誘拐犯!」
 ……なんだか雰囲気もだいなしなひとことが聞こえてきたわね!
 思わずぐっとかいとの首に腕をまわして、かいとの肩越しに叫ぶ。
「誘拐なんて人聞きの悪いこと言わないでよ、この狐やろう!」
「きつね……ッ? めいこ、言葉づかいには気をつけろと言われなかったか!」
「それはあんたの方でしょ、妙ちきりんとか誘拐とか、大声で言ってんじゃないわよ!」
「立派な誘拐だろうが!」
「何言ってんの、ぜんぜんちがうわよ!」
 そりゃあ、やりかたは少し強引だったかもしれないけれど。突飛なことをしでかしたかもしれないけれど。でも、それでも、それをおこなったのがかいとだ、というところに、意味がある。

「私が望んでこのひとと一緒に行くんだから! 邪魔しないでよ!」

 わん、と、同意するようなひと声が、足元から上がった。
 びっくりしてかいとの足元に視線を送ると、そこにいたのは、黒い仔犬だった。耳の立ち具合や、利発そうな鼻先に、既視感を覚える。かいとに並走するように体いっぱいで走るその犬と、目が合った。
「しぐれ……!」
 間違いない、しぐれだ。毛が黒いから一瞬なにかと思ったけれど、この仔犬のこの仕草、この顔つき、体格、間違いなくしぐれのそれだ。よく見れば、しぐれの毛色がところどころ不自然にまだらになっている。黒炭か何かで塗られたのだろうか、それとも、しぐれが灰でもかぶって遊んだとか?
「しぐれ、あなた何でそんな黒く……」
「め、めいこ、腕っ……腕はなして苦しい……!」
 かいとの苦しそうな声にはっとして、かいとにしがみつくように絡めた腕をほどく。かいとの顔色が、走っているのに妙に青くなっている。
「ご、ごめんなさい!」
 慌てた謝罪への返事は、すこしだけ苦しそうな笑みだけだった。そうよね、抱えて走ってもらっているのに、首に手をかけていては苦しかったはずよね……今、人生ではじめておとなしくしなさいと言われ続けた身を反省したわ。
 それにしても、と、かいとに負けず劣らずの俊足を見せるしぐれを見下ろしながら、思う。それにしても、私を抱えながらも、首をしめられながらも、かいとの走る速度が全く落ちていないというのはどういうことなのだろう。さっき紫の男に向かって叫んでいたときも、車との距離がいくらか近くなっている気がしたけれど、それでもほとんど縮まっていないのに驚いた。
 いつの間にこんなにたくましくなったんだろう。そう思うと、胸の奥がきゅっと鳴った。

 蒸気を吹き上げる音を響かせながら、汽車が駅に吸い込まれるように入って行く。ほどなく、ぶしゅうううう、と、大きく溜め息をついたような音を立てて、駅の構内に停止したのが見えた。
「このままあの汽車に乗るから!」
「このままって……このまま!?」
「このまま!」
 このままって、私抱きかかえられたまま!? そう言いたかったけれど、無心で走っているかいとの、必死な表情を見て口を噤む。直接口にされていないけれど、「めいこは走れないでしょ」と言われた気がしたし、それはたしかにそのとおりだった。
 かいとがやっと駅の階段に足をかけ、走っていた勢いをそのままに駈けあがる。
「めいこ!」
 後ろから追いかけてくる男の声が遠い。かいとの肩越しに後ろを見ると、車は駅の脇に停まっていて、紫の男は車を降りるところだった。――まだ追いかけてくるつもりかしら!
 そうしてひとこと捨て台詞でも吐いてやろうかと思ったのだけれど、どうやら様子がへんだ。男は、一向に追ってくる気配のないまま、駅の階段の下で叫んでいる。
「めいこ、本当にそれでいいのか!」
 いいのか、なんて、わかりきっている。

「――いいもなにも、本望よ!」

 何年経っていても、どれだけ離れていても、こんなに想い合っていたんだもの。やっとこの手に触れる距離まで縮まったんだもの。もう絶対に離したりなんかしないんだから。
 聞こえているか聞こえていないかわからない。でも、精一杯のきもちを込めて叫んだ。
 誰へのあてこすりなんかじゃない、これは、包み隠さない私の本心。
「そこの野良犬の小僧!」
 野良犬の小僧、という呼び名に、段飛ばしで階段を上がっていたかいとの足が鈍る。しかし、立ち止まらないまま、かいとは一度だけ階段の下を見下ろした。階段の上から紫の男を見下ろすかいとの表情は、逆光になって伺えなかった。遅れてついてきたしぐれは、不思議そうにかいとと紫の男に、交互に視線を彷徨わせている。
 かいとが振り返った時間は、ほんの一瞬だったかもしれないし、もうすこし長かったかもしれない。
「――まもなく、汽車が発車いたします。お乗りの方は、お急ぎください」
 間延びしたような拡声器の声に、私たちははっとして、汽車の方を向く。客車のまわりを確認した車掌が、列車の最後尾の客車へと、鷹揚に乗り込んでいく。
「かいと……!」
 踵を返したかいとは、返事もしないまますぐに駈けだした。改札をものすごい速さで走り抜け(駅員の制止の声すら今は遠い)、発車準備をしている列車に突っ込む勢いで走る。発車の汽笛が鳴り、汽車の車輪の部分からは、しゅ、しゅ、と、白い蒸気が吐き出されはじめた。
 ああ、どうか、間に合いますように――!
 私がそう願う間もなく、私たちは、客車の中に滑り込んだ。

 発車とほとんど時を同じくして乗り込んだ列車はすいていた。なんという脚力だろうか、と感嘆する間もなく、その脚力を発揮した当の本人(と、本犬?)は、列車の床にへたりこんでぐったりしていた。
 ぎりぎりで飛び込んできた私たちに驚きながらも、車掌は切符を切る鋏を取り出して言った。
「おふたりさま、切符を拝見」
 ああ、さっきの駅員の制止の声はこれだったのね。そこですこしだけ険しい顔になった車掌と、目が合う。無賃乗車する気はないのだけれど……しかたがない。切符を買わなかったのは事実だ。
「ごめんなさい、急いでいたもので……おとな2枚、いただけます?」
 改めて、駅で切符を買わずに乗車してしまったことを詫びながら、つとめてにこやかに言うと、車掌の顔がうっすらと緩んだ。
「いいですよ。どちらまで?」
 そういえば、ゆっくりしたい、とだけは言ったけれど、具体的にどこに行くのかきめていなかった。どうしましょうかいと、と、相談しようとして、やめた。ぜえぜえと肩で息をしているかいとの頬を、回復の早いしぐれが舐めている。いま喋らせるのは酷だろう。
「……とりあえず、5駅分ほど」
「はい、少々お待ちください」
 持っていた巾着から小銭を取り出し(振り落とされていなかったのは奇跡に近いと思う)、車掌に渡すと、「ちょうどですね、どうも」と、2人分のきっぷを渡された。車内の巡回に戻った車掌を見送って、床に腰をおろしたままのかいとに声をかける。
「かいと、だいじょうぶ?」
「……だ、大丈夫そうに……見える?」
 たしかに、大丈夫そうには見えない。わかりきったことを訊いてしまった自分に、苦笑をもらす。
「とりあえず、きちんと椅子に座りましょう?」
 ふらりとよろけるかいとを支えて、椅子に座る。あの距離をあの速度で走っていたのだ、足が立たなくなっても無理はない。足を投げ出した格好のかいとの左隣にちょこんと座って、右に座るかいとを見る。
「ありがとう」
「え?」
「約束、守ってくれて」
 ほんとうに、感謝してもしきれないわ。万感の思いを込めて私が言うと、一瞬きょとんとしたかいとは、汗の伝う頬を拭って、それから真剣な顔で、言った。
「違うよ、めいこ。二人いてこそ果たせる約束だったんだ。めいこが俺についてこなかったら、結局だめになってたんだから」
 約束は、ふたりでするものだ、と言った、幼いころの自分たちを思い出した。あんなに儚い約束だったのに、このひとは、こんなにも大事そうにそれを語る。それがとても嬉しくて、もしかして夢なんじゃないかと思ってしまう。いや、夢であってもらってはこまるけれど。でも、こうして現実になっているのが、なんだかおかしくなってしまって、どちらからともなく笑い出した。
 ひとしきり笑ってから、しぐれをひと撫でして、かいとが口を開く。
「めいこ」
「ん?」
「これから、よろしくね」
 空色の瞳が、私を見据える。差し出されたかいとの左手、一本だけ立ったその小指。
 夢じゃないのね、ほんとうに。
 ふたりの小指を絡まったのを、かいとの足元で行儀よくしていたしぐれが、こころなしか嬉しそうな瞳で見ていた。


 その未来にあるのが手も伸ばせない景色だとしても、このひととなら、どこまでも駈けていける。先の見えない未来だって、手をつないでいれば怖がらずにゆける。
 だって、その未来は、暗雲のせいで見えないんじゃなくて、太陽のあふれる光がまぶしくて、目がくらむくらいまぶしくて、それで見えていないだけなんだから。

つんばるといいます。世の中のすみっこでしがないモノカキやってます。
MEIKOがすきです。KAITOがすきです。カイメイがすきです。

写真素材はサイズ・色調その他、改変自由のフリー素材です。お好きにどうぞ。
なにかが誰かの琴線に触れたらさいわいです。

⇒ブログ:http://phantomlake.blog58.fc2.com/
⇒メール:croak-crash【あっとまーく】hotmail.co.jp

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作品へのコメント1

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    ご意見・感想

    こんにちは。お疲れ様です。
    ついに、最後のお話がきてしまいましたね。

    めいこさんが、追いかけてきたがっくんに啖呵切るところに心震えました。
    めいこさんはやっぱり格好良くないとね!!
    最後の未来について語る視線が、青犬かいとくんと紅猫めいこさんの性格の違いが出ていて、面白いなぁ。とにやにやしてしまいました。

    兎にも角にも。
    素敵なお話をありがとうございました!そしてお疲れ様です!

    2009/12/22 10:10:43 From  sunny_m

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    メッセージのお返し

    コメントありがとうございますー!

    うちのめいこさんは啖呵切ってなんぼな子なので、最後までこんな感じでした(笑
    気に入っていただけたみたいで嬉しいです!
    めいこさんとかいとくんの違いは、書き手が違うからこそ効果が出たんだと思います。
    これぞコラボの醍醐味! みたいな感じで、書きながら自分もドキドキしてました(笑

    ではでは、ここまで読んでくださってありがとうございましたー!

    2009/12/22 15:35:04 つんばる

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