タグ「初音ミク」のついた投稿作品一覧(109)
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こちらは“BUMP OF CHICKEN feat. HATSUNE MIKU「ray」” を原曲として書いた二次創作です。
そして後編部分です。
ミクもミクのマスターもバンドのメンバーも、原曲を奏でる彼らをモチーフにはしていますが、すべて私の妄想です。正しくは、ミクさんもバンプも好きすぎてこ...未来飛行・後編
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こちらは“BUMP OF CHICKEN feat. HATSUNE MIKU「ray」” を原曲として書いた二次創作です。
ミクもミクのマスターもバンドのメンバーも、原曲を奏でる彼らをモチーフにはしていますが、すべて私の妄想です。正しくは、ミクさんもバンプも好きすぎてこの楽曲にかなり興奮して勝...未来飛行・前編
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ふつり、とかそけき音を立てて、蜘蛛の糸は切れてしまった。指先にかかっていた負荷が一瞬にしてなくなってしまった。その淡い喪失に、かの人は唇をかんだ。
「救うことが、できなかった」
そう小さく呟いた声には、つぶやいた本人すら気づかぬ程度の赤い色彩が滲んでいた。
ここは、美しい衣を纏い良い匂いで満ち耳...天と地をつなぐイト~蜘蛛糸モノポリー~
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目を覚ましたとき、真っ先に目に入ったのは真っ赤な空だった。
まるで世界が終わってしまうような不安を与える赤く染まった色に目を覚ましたばかりの私は手を伸ばし、そして手を伸ばしきる前、透明樹脂の冷たい感触が指に触れた。意識がはっきりと覚醒していく。自分を囲むのは狭い空間。まるで棺桶のような冷凍睡眠装...あなたと私だけの歌【終末ボカロ企画・pixvより】
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教会の脇に広がっていたのは、墓地だった。
芝生が敷き詰められ木々が所々に植えられた緑豊かな墓地には、いくつもの墓石が整然と並んでいる。等間隔に並ぶ墓石の合間を少女はゆっくりと進み、そして、ひとつの墓石の前で足を止めた。
まだ新しいその墓石に彫られた名を、少女は手を伸ばしてそっと撫でる。
その様...蒼の街・7~Blue savant syndrome~
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難しいことはわからない、病名は聞いたけれど長ったらしくて覚える気にもならなかった。ただ私はもうすぐ死ぬのだということだけは確かだった。
少しずつ減っていく体重。棒のような手足。艶のなくなってきた皮膚。死ぬってこういう事なんだな、と日々を追うごとに衰えてきた自分を鏡に写すたびに、...蒼の街・6~Blue savant syndrome~
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時刻どおりに列車はA―へたどり着く前に停車場で停った。予定通り30分停車をするとの内容のアナウンスが車内に響き、ほかの乗客たちは乗り換えのためか、はたまた時間つぶしのためか、列車を降りていく。
「どうする?」
そうサハラがハツネに声をかけると、少し降りてみる。との返事が返ってきた。コ...蒼の街・5~Blue savant syndrome~
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夏が終わり、秋がやってきた。夏の終わりに私たちはひとつ歳をとった。ひとつ歳をとったということはひとつ大人になったということだ。けれど、大人というにはまだ私たちは幼くて、何もできなくて、世界に対して無力だった。
大人になっても無力である事象はたくさんあるとは思うけれど。
涼しい風が...蒼の街・4~Blue savant syndrome~
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ひとりきりで部屋で眠っていると退屈してしまう。
ここ数日だるいのが続いていて微熱が続いていたのだけど、それを放っておいたのがいけなかったみたいだ。母さんに連れられて病院へ行き、いつも通りなんだかよくわからない検査を一通り受けて、いつもの風邪だから安静にしていなさいと言われて大人...蒼の街・3~Blue savant syndrome~
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父さんが家を出ていくことになった。ずっと前から続いていた両親の諍い。予感はあったから、悲しくはなかった。むしろお疲れ様です。と思ってしまうあたり、私は可愛げのない娘だと思う。
父さんと一緒に新たな街へ引っ越すか、母さんとこのままここで一緒に暮らしていくか。その選択を迫られたと...蒼の街・2~Blue savant syndrome~
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ひび割れた音のスピーカーから出発のアナウンスが聞こえてきた。古い重厚なレンガ造りの大きな駅舎。朝の通勤通学のピークが過ぎた時刻。人ごみは幾分和らいでいたが、それでも大きな街のターミナル駅ではいろんな人が行き交っていた。紳士淑女、金持ちの老人に物乞いの子供。各種多様な人々が入り混じり、...蒼の街・1 ~Blue savant syndrome~
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沢山の事を、知った。
ただここにいるだけで満ちる想い。触れることのできない相手が与えてくれた鮮やかなひかり。ずっと続けばいいと願った深夜のお喋り。言葉にできない音。嗚咽を落としてしまうほどの痛み。どうしても越えられない目の前を遮る透明な壁。
ずっとこのままでいいと、歌うことを捨てたのに、それで...微熱の音・17~初音ミクの消失~
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「なに。何これ。もしかして、おまえはそのために今日来たのか?」
マスターが泣きそうな声で自分の横に立つ友人に声をかけた。その言葉に、こくりとマスターの友人は頷いた。その返答に、じゃあ帰れ。とマスターは不意に怒りを爆発させた。
「なんなんだこれ、なんなんだよ。俺は知らない。俺は許さない」
怒り狂うマス...微熱の音・16~初音ミクの消失~
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画面の外は雨だった。春と夏の間にやってくる季節。じめじめとして外出もままならないと人は雨の季節を嫌うけれど。私にとっては大好きな季節だった。
だって、出かけるのが億劫という事はずっと家に居るという事。家に居るという事は、ずっとマスターは私の傍にいてくれるという事だから。ずっとずっと雨が降り続けば...微熱の音・15~初音ミクの消失~
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小岩井の家の庭に、桜の木があるんだってさ。ミク一緒に見に行かないか?マスターのその言葉に私はこくんと頷いた。本来ならば人工知能を持つ私は電子の海を渡って「ミク」の家に行くのが早い。けれど、崩壊が進んだ私には海はもう渡れなかった。その代わりに、マスターは携帯電話に私を移して連れて行く。と言ってくれた...
微熱の音・14~初音ミクの消失~
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帰ってきた瞬間に、なんだか態度がよそよそしいと思った。
おかえりなさい。と画面のこちら側から私が声をかけると、ただいま、と言いながらマスターは鞄を下ろした。あれ。と思う程度の微かなよそよそしい態度だった。声のトーンがいつもよりも平坦だ、とか、いつもほとんど投げ捨てる勢いの鞄を、今日はそっと床に下...微熱の音・13~初音ミクの消失~
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世界が甘い香りで満ちているような時期の事だった。電子の世界の中でもチョコレートは存在するし、2月14日はバレンタインデーという意識だってきちんとある。ボーカロイドにとっては更にKAITOの誕生日という意味がそこに足されるけれど。
バレンタインが過ぎてからしばらくしたある日。ここを訪れた「ミク...微熱の音・12~初音ミクの消失~
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全ての始まりである女性メイコ、幾多もの声を持つカイト、倍の可能性を秘めるリン・レン、外つ国の言葉を操るルカ。他にもいくつものボーカロイドは存在している。
そのなかで私は一番の歌姫。史上最強のボーカロイド、初音ミク。
それなのに。歌うたいなのに、歌えなくなっても幸せなのって、おかし...微熱の音・11~初音ミクの消失~
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「結論を言うと、お前のとこのミクはアンインストールした方が良いよ」
それから数日経ったある日。マスターの友人がやって来て、私のことを一通り診た後、そう言った。
「記憶の容量が一杯になっていて、そのせいで歌う機能に支障が出ているんだ。普通は記憶の整理を自動的に行う筈なんだけど、このミクはそれができてい...微熱の音・10~初音ミクの消失~
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誰に向けている媚びなのか。誰に向けている甘えなのか。誰を思って落とした雫なのか。そんなの、分かってる。自分でも分かっている。
この狂いがやってきた源、胸の内にある思いの中心。そこにあるモノの名前も、その理由も。そして、どうすれば狂いが無くなるのかも。
どうすればいいのか分かっているくせに。
「...微熱の音・9~初音ミクの消失~
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カウントの後に溢れだす電子音の洪水。真夜中の遊園地。闇の中、回転木馬の脇、色とりどりの電飾に浮かび上がるのはピエロ。だぼだぼの靴をひきずって。泣いてる癖に笑って。重力に縛られながら軽やかにステップを踏んで。ふわふわと夢を詰め込んだ風船を沢山の人に配る道化師。
私は少し離れたところで風船を手に歌う...微熱の音・8~初音ミクの消失~
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マスターが買ってくれたのは花の髪飾りだった。淡い色のリボンやレースが幾重にも重なって造られた花は、可憐で清楚な印象ながらもどこか落ち着いた雰囲気。なんとなく、可愛らしい雰囲気のものをマスターは選ぶのかな。と思っていた私は、包みの中から出てきた髪飾りに一瞬目を丸くした。
「あれ、気に入らなかった?」...微熱の音・7~初音ミクの消失~
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「なんか、ミクに怒られんのは嫌だな、俺」
「別に怒っていませんよ」
「その口調は明らかに怒っていますけど」
そう言って、ごめん。とマスターはちょっとぶっきら棒な口調で謝ってきた。
「怒らせたいわけじゃないんだ。ただ、もう少し先まで隠しておきたかったというか」
もごもごと口の中で呟いて、マスターは、な...微熱の音・6~初音ミクの消失~
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「ばあちゃん、あげはちゃんたちが来たぞ」
画面の向こうからマスターの友人であり、「ミク」のマスターの孫がそう声をかけてきたのが聞こえてきた。その言葉に画面脇にある時計に視線を向けた。
「じゃあちょっと買い物に行ってくるわね。今日は誰が付いてくるのだっけ?」
「レン君だよ、マスター」
「そっちも花火大...微熱の音・5~初音ミクの消失~
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柔らかな風に揺れる花は、涼やかな風にそよぐ草原に。淡い陽光に満ちた空気は、蒼い夜明け前の色に。無邪気な少女の声は一途な少年の声へ。徐々に広がる白い漂白の朝に向けて、色とりどりの世界へ、そっけなく手を伸ばす。
ピアノが主体だった「ミク」の曲を、ドラムとエレキギターの音でマスターは再構成した。荒削り...微熱の音・4~初音ミクの消失~
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本日の目的である「ミク」の歌は、華やかなピアノの音を摘んで花束を作っていくような、素朴な可愛らしい曲だった。そして無邪気に花を手折るのは甘い女の子の声。心底楽しげに歌を歌う「ミク」の曲を記憶しながら、私の頬は自然とほころんでいた。
この「ミク」も、自分の思う通りの音をマスターから与えられている。...・微熱の音・3~初音ミクの消失~
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ボーカロイド史上最強の歌姫、初音ミク。
使い勝手の良さ、ネームバリュー、キャラクター性。ボカロを試しに買ってみようかなという人から、歌姫を手に入れたいと思う人まで、幅広い層が私を手に取り、購入し、使用する。
人から隠された電脳世界に存在している初音ミクのネットワークもまた、ボーカロイド界の中で...微熱の音・2~初音ミクの消失~
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歌えなくなっても、あなたに私は必要?
またふられちゃったよ。画面の向こう側で情けなく笑うマスターに、またですか?と私はため息まじりで言った。
「また、女の子に『何考えているか分からない』とか言われたんでしょ」
「お、さすが。よく分かるなぁ」
私の言葉に、はは、と笑うマスターに私は盛大な溜息を吐き...Master・微熱の音・1~初音ミクの消失~
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メインは白身の魚のグリルで、ラタトゥイユとじゃがいものグラタンが添えられていた。ぱりぱりと綺麗に焼かれた魚にナスやズッキーニなどをトマトで煮込んだ野菜がさっぱりと食欲を刺激する。そしてホワイトソースとチーズが絡んだじゃがいもが甘く優しい。
女の子は料理を口に運び、その美味しさにうっとりと眼を細め...夜の底の食堂・2~月光食堂~
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水の中に沈み込む様な感覚があった。こぽこぽと、と耳元で空気の泡が音を立てて水面へと浮上していく音が響く。その音を聞きながらゆっくりゆっくりと、女の子は水の底へと沈みこんで行った。
水の中なのに、息苦しい事は無くほんのりと暖かい。水がその輪郭を崩し、女の子の輪郭を飲みこみ浸食していく時、少しだけひ...夜の底の食堂・1~月光食堂~