今は十二月。寒いので体調をくずしやすい時期。雪も降りだす。
あれから、私は変わったのだろうか? 授業を受ける態度とかは変わってないし、かと言って孤独になったわけでもないし。ただ一つ変わったと言えば、胸あたりにある、ほっこりとした暖かい気持ちかな? でも、この小さなモヤモヤはなんなのだろう。
十月の、あの出来事から二ヶ月。私たちは、他から見ると変わっていないのかもしれない。実際は、あの出来事から私とあの人の関係は変わったんだけど。まぁそんなことはどうでもいいか。
この時期に私の手はもの凄く冷たくなる。手袋をしてもあまり効果が無いように思える。ずっとこたつでぬくぬくしていても、手だけはあまり温かくならない。困ったものだ。
しかも私は、一応病気になりやすかったりする。毎年と言っていいほど風邪をひくし。さらに、今年から一人暮らしなので一緒に居てくれる人が居ない。昔からの友達もほとんどは違う高校に行ってしまったという悲劇。
冬、病気で弱っているなかで一人。これほど寂しいこともない。
さて、よくわからない長話は終わりにして。今日も元気に高校に向かう。
「はくしっ! うぅぅ……」
そう……元気……に……。やっぱり元気じゃないかも。いくら冬用の制服とはいえ、寒いのには変わりはない。
階段を上り、教室の扉をガラッと開ける。なんで隙間風が入り込んでくるのか。そして運が悪いことに私の席は窓側。ついてない。毎日がとても寒い。
「おはよう、ルカ。なんでため息ついてるの?」
がたんと私の前の席に座ったのは、親友であるメイコだ。いろいろと頼りになる。私の、高校での唯一の友達。そして唯一、私とあの人の関係を知る人でもある。
「いや、なんで隙間風が入り込むんだろうって思って」
「そりゃ、この高校って古いし。ここ旧校舎だし、しかも窓際じゃ余計に寒いわな」
「メイコも窓際でしょ、私の前の席なんだし」
「私は、体が弱いあんたを心配してるの」
「それはどうも」
メイコは病気になることがあんまり無いらしい。いいなぁ、羨ましい。
「そういえば、うちのクラスを代表する馬鹿三人ってまた問題起こしたらしいね……」
「うん。確か、停学処分を受けて問題起こして……何回も問題おこしてるから、退学になったんだよね……」
「よくこの高校に、あんな馬鹿が進学できたね……」
「だね……」
私達が通うこの高校は、地元でもレベルが高い。(私はそこで学年トップをとったこともあるが)一応、進学校らしい。そんなレベルが高い高校でそんな危険なバカが居たら、大体は退学とか停学だ。
「ところでさぁルカ」
「何」
メイコが話題を変えてきた。
「最近はどう?」
「は?」
「だからぁ、最近はあの人とどんなかんじ? ってきいてんの」
「は、はぁっ!?」
どうしていきなりそんなこと!
「何どうしたのその顔。なんかあったの?」
「べ、別にぃ」
「あったね?」
メイコは言い出したらとまらない。
「別になんにもないって!」
「でもその顔……絶対何かあったっしょ」
「別に神威先生とはなんとも……!」
「俺が何?」
「うわあ!?」
後ろに一つに結んだ髪。凛とした声。整った顔。そう、この人は、最近コンタクトに挑戦したけどやっぱり面倒で眼鏡に戻したらしい、神威先生登場。気配が無かったよ!
「いつからいたんですか?」
「隙間風の話題のときからずっと聞いてたけど」
「嘘だっ」
そんなに前からいたの!?
「で、俺がなんだって?」
「あ、ルカは今先生とどんなかんじなのかなーって思って」
「メイコっ!!」
なんで言うの!? しかもなんでニヤニヤしながら!? 別に期待するようなことは一ミリも起きていないけど。
「それは」
「なんでもないから! 先生何もないですよね!?」
「そんなにまでして隠したいのかー。先生、何かあったでしょ? これ」
「え? ……本当に何も無かったけど?」
「じゃ、なんで隠すの?」
「さあ?」
だって、この不安は……絶対にネチネチと突かれ続ける不安に違いない。きっとそうだ。
*
それから、一週間ぐらい経っただろうか。この気持ちは、ずっと晴れることはない。ココロ予報は、『晴れる』と予測。実際は外れて『曇り』。いまにも『雨』が降り出しそうな、そんなかんじの『曇り』だった。
三時間目の授業のこと。この時の科目は『日本史』。担当教師は始音先生。正直に言って、私の苦手科目。『世界史』なら得意なんだけどな。
だからこそ、勉強は頑張らなくちゃいけなかった。そんな大事な授業なのに、私の身にはあることがおきた。
頭はクラクラし、視界は霞んでいる。
なんとかノートをとろうとするも、シャープペンシルを握る手に力が入らない。咳は止まらなく、左手で抑えると手には血が着いていた。……一瞬驚いたけど、血は唇が切れただけのようだ。
体が中に浮いたと思った次の瞬間、私は床に倒れていた。ガタンと倒れる椅子。誰かの叫ぶ声。暗くなっていく視界。意識は遠ざかる――
*
目が覚めたとき、視界に入ったのは見慣れない天井。ここはどこだろうと起き上がると、頭に激痛が走った。
「痛っ……」
とりあえずわかるのは、私はどこかのベットで寝ていた。本当にここはどこだろう。というか、なんで私はここにいて……?
ふらつく頭を抑えながら立ち上がる。そして壁に手をつきながら扉の窓を覗き込む。プレートの表記は『保健室』。あぁ、そういうことか。
大人しくベットに戻る……までの体力が続かず、近くのソファに倒れこむ。なんだろう。すごくクラクラする。
とりあえずわかったことは、ここは学校の保健室。あの時私は倒れて、誰かが私をここまで連れてきたんだ。でも誰が? というか、今は何時?
壁にかかっている時計をぼやけている目で確認すると、そこには四時四十八分と表示されていた。……ちょっと待って?
私が倒れたのは、確か三時間目。推測すると、午前十一時ぐらい。今は午後四時四十八分。ようするに、私は、六時間くらい意識を失っていた、ということ? 昼寝の域超えてません? 久々の休日を疲れすぎて睡眠に費やす社会人のようだな、私。でも体調悪いから仕方ないか。だめだ。まだクラクラする。
ふと左の手のひらを見てみると、そこには乾いた血の跡。そっか。あの時、咳をして切れた唇を抑えた時の血か。思い返せば喉も痛む。そんなに咳してたんだ。
「うぅ、ゲホゲホッ」
止まらない。辛い。とても喉が痛い。とりあえず、手は洗おうと思い頑張ってフラつく体で立ち上がり、保健室内の水道に向かう。手についている血の跡を念入りに洗ったあと、(凄く冷たい)なんとなく備え付けられている鏡を見てみる。そこに写っていたのは――頭に包帯が巻かれた私。
ふと見ると、右腕にも包帯が巻かれていた。ケガでもしたんだろうか? いつしたんだろう? 倒れたときかな。
とにかく辛い。また近くのソファに倒れる。今、放課後だよね? 私はきちんと帰れるの?
そんな感じで考えていると、ガラッと扉を開ける音がした。誰だろう。
「……巡音?」
この声。そうだ、きっとこの声は。
近づいてくる足音。今、私は起き上がる気力もない。でも、声だけでその人物は推測できた。
「……神威、先生」
「すまないな。抜け出そうとしたんだが、皆がうるさくてな……」
皆がうるさい? なんのことだろうか。あちこちが痛むからか、よくわからない。それに、いったいなんなのだろう。この不安は。
「そう、ですか」
あー、もうとにかく辛い。それしか言っていない気がするけど、事実なのだから仕方がない。頭はクラクラするし腕は痛いし喉も痛いし。もう意味不明。
なんで私は倒れたんだろう? そんなに体調が悪いのだろうか? 体調不良のオンパレードなのなら、熱はあるのだろうか? 体温計を取る気力もない。息をするので精一杯だ。
しかも何この沈黙。前はこんなこと、なかったのに。
あぁ、そうか。この不安の理由は……私が少し、孤独を感じているからなんだ。そしてその孤独を感じる理由も、気づいた。その感情が、体に負担をかけていたのかもしれない。
でも、不安を感じる理由がわかっても。理由がわかったって、不安自体は消えない。
その不安を消すために。孤独の理由を知るために。あの人に、聞かなければいけない。
私は、口を開いた。
【がくルカ】memory【1】
2011/12/12 投稿
「疑問」
「私の初恋と白衣の彼」の続編です。
改稿にあたり、内容を少し変更しました。
プロローグ「私の初恋と白衣の彼」
ルカside https://piapro.jp/t/dZC0
神威side http://piapro.jp/t/Gh88
番外編「Plus memory」
第一話 https://piapro.jp/t/Dxrq
時系列
プロローグ→Plus memory1→この話
次:memory2 https://piapro.jp/t/pR59
コメント3
関連動画0
ブクマつながり
もっと見るほら、やっぱりそうなんでしょ?
----------
しばらく沈黙が続いていた。私は頭が痛かったり腕が痛かったりで喋るのは辛いし。神威先生はというと、なぜか表情が曇っていた。それは、この前からだろうか。それと共に、私は……。
その沈黙を破り、私は一つの疑問を口にした。
「どうして……」
「え?...【がくルカ】memory【2】
ゆるりー
どういうこと?
----------
「……で、どうしてこうなった」
バスから降りて最初に見たのは、初音先生が転んでいる光景だった。別に初音先生がよく転ぶのはいつものことなのだが、右足の靴が無くなっている。どういう転び方をしたんだろう。
「どうしたんですか、初音先生」
神威先生が呆れながら問い...【がくルカ】memory【12】
ゆるりー
ねぇ、信じてもいい?
----------
「――ッ」
ちょっと待ってよ、嘘でしょ? こんなの、理解できないよ。だって、だって。こんなの、台本にはなかったはずで。
突然、天井から、何かが落ちてきた。あれは何? 何か黒くて硬い物。もし当たれば、絶対に怪我をする。擦り傷とか切り傷とか、そういう軽い...【がくルカ】memory【21】
ゆるりー
その理由を教えて
----------
見てしまった。
彼女が彼に何かを叫び、彼は逃げ出した。その際、彼の表情は恐怖を宿していたことを。彼が苦しそうに、左胸を押さえていたことを。
その瞬間、自分は悟ってしまった。彼は、何かを思い出した。
そして、『起きてほしくないこと』が起きている、と――...【がくルカ】memory【9】
ゆるりー
少しでも長く。
----------
それは、十二月二十四日のこと。世間では、この日はクリスマス・イブだ。本当は、私はこの日は一人で過ごす予定だった。そのはずだったんだけど。
それは昼、一人で動画サイトを見ている時だった。近くに置いてあったケータイが鳴った。
「え? こんな日に誰だろう」
ケ...【がくルカ】memory【4】
ゆるりー
あなたにとって、彼女はどんな存在?
----------
「―――といって、ここは……」
二-Bの教室に響くのは、神威先生の声、チョーク、シャーペンを動かす音。いたって普通の光景だ。
私のノートは、言葉で埋め尽くされて真っ黒だ。他の教科とかもそうだけど、日本史とこの古文だけは、ノートを解読する...【がくルカ】memory【7】
ゆるりー
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想
Turndog~ターンドッグ~
ご意見・ご感想
ひょこっ。
時を超え主を変え姿を変え♪憤怒の器の軌道を探すようにテキストの記録を遡ってmemoryの始まりを「あれ!?あれ!?みつからない!!?」なんて3分ほど探したTurndogですwww
要するに対象物を絞っても見落とすという愚行をやっていたわけですねwwwええ、笑ってください、もう。
馬鹿にされる準備はできている。
ゆるりーさんに命じられるなら、僕は土星だって割って見せるさ!(誰かさんの真似www
コホン、前置き長くなりましてすみません。
ルカさあああああん!!!?よ、よし!倒れたルカさんは俺が保健室まで手取り足とr(変態
い、いや!それよりも大事なことがあるだろう!!
こっ、高校生のルカさんとか想像しただけで…ぐほあ鼻血が間欠せっ(バターん!!)
がくルカは書く人によってはめちゃめちゃこーふんするwwwこれは…イイ…!!
…え、自分が書いたら?いやいや自分は何書いてもバトりますから無理ですwww普通のギャグを書いてもめーちゃんが火を吹くんでwww(詳しくは自分のコラボでの小説をご覧ください)
2012/04/09 01:08:00
ゆるりー
茶番ww
3分ww
笑いませんよ。よくあることですし…
逆に自分が落ち込む準備はできている!←
どっかの変態科学者さんですね、わかりry
ちょw
実際、倒れたルカさんはカイトが保健室に連れて行った…っていう設定なんですけどw
自分が書くと、高校設定のがくルカが多い気がする。
って倒れた――!!よし、ルカさんとめーちゃん!出番d
「私、病み上がりな「三階の窓から飛び降りて無傷だった人が頑張らなきゃ」んですけど」
「私もめんどく「時速60?で走る人も頑張ってよ」さい」
こーふんしてらっしゃる方がww
「おうら―――――――――!!待たんかいドロボ―――――――――――――――――――!!!!!」
2012/04/09 12:08:55
ジェニファー酒井さん
ご意見・ご感想
病弱なルカちゃんてっ
こんなに美味しい設定が他に有りますかッ!?
そして先生×生徒!
は、鼻血が・・・
2828とうはうはが止まりませぬ。
ブクマしてっちゃうんだからねッ//←
2011/12/20 13:55:44
ゆるりー
ジェニファー酒井さん、メッセージありがとうございます。
美味しい設定ですかw
ありがとうございますw
そしてがっくんが看病してたら萌えると思うんd((
咲耶さんに影響されたんですけどねw
鼻血大丈夫ですか!?←
2828とうはうは!?止まりませんかw
ブクマありがとうございます!
ツンデレですねわかります←
2011/12/20 17:36:42
雪りんご*イン率低下
ご意見・ご感想
ぽるかステキです(*´∇`*)
tk2828が止まりませんww
2011/12/12 21:56:22
ゆるりー
ピエロ少女さん、メッセージありがとうございます。
ぽルカさえあれば何もいらn(((嘘です
とまりませんかww
一応これ続きます。
2011/12/13 16:00:43