どういうこと?

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「……で、どうしてこうなった」
 バスから降りて最初に見たのは、初音先生が転んでいる光景だった。別に初音先生がよく転ぶのはいつものことなのだが、右足の靴が無くなっている。どういう転び方をしたんだろう。
「どうしたんですか、初音先生」
 神威先生が呆れながら問いかける。
「いえ、大丈夫です。何も起こってません」
「よしグミ、説明しろ」
「初音先生は、バスを降りて石につまずいて転んで、そのまま七回ぐらい前のめりに転がって、そこの木に衝突した反動で、右足の靴があの森に飛んでいきマシター」
 いったいどうしたらそんな転び方になるのだろう。ドジっ娘恐るべし。
「緑川さんっ! そして神威先生、少しは心配してもいいじゃないんですか!?」
「なんかそういう気分なんです」
「ひどっ!」
 さすが神威先生、初音先生をスルーしたい気持ちがビシバシ伝わってくるよ。一緒にいたら巻き添えを喰らったりするからですね、わかります!
「どうしよう……靴が……」
「見てください、誰かの靴を拾いましたァ!」
「学園長――――――ッ!?」
 学園長が靴(おそらく初音先生のものと思われる)を手に持って登場。私たちと同世代くらいの銀髪少女の容姿のため、傍目から見れば同級生のように見えているんだろう。
「なんで森に行ってたんですか!? 危ないでしょ!」
「いや、軽~く熊を倒してこようと思ったらさ、回復の泉の女神様に会ってさ」
「なんでいんの!? そもそもアンタ熊と戦おうとしたんですか、絶対に戦っちゃダメだって教わらなかったんですか?」
「で、夜も遅くて道がわからなくなるといけないから、女神様が泊まってけって言ってさ」
「どう考えても泉に泊まることはできませんよね?」
「でも怖かったから断ったら、女神様が攻撃してきてさ」
「女神様何してんの!?」
「とりあえずチョークを女神様の額めがけてぶん投げて、ようやく逃げることができたんだよー」
「で、帰ってくる途中に飛んできた靴を拾ったと?」
「イエース!」
 なんで始音先生(いつのまに)は学園長と漫才をしてるんだろう。しかも、最後ツッコミ放棄してるし。
 あと学園長って一応すごい人なんだよね? 始業式とかは典型的な校長あるあるみたいな話をするくせに、なんでこんなにハチャメチャなの?
「まあ、学園長のハチャメチャは置いといて。初音先生、そろそろ立ってくださいよ」
「あ、す、すみませんっ」
 あわてて立ち上がる初音先生を見て、レン君が呟いた。
「そういえば、初音先生はどうしてドジっ娘なんだ?」
「え? そう言われても」
「初音先生は、『完璧』を望んでいないのか?」
 『完璧』その単語を聞いた瞬間、初音先生の顔が曇った。
「……望んでなんかいないし、いいことなんてないよ、『完璧』なんてものにはね」
 初音先生の雰囲気が変わった。先ほどまでのほのぼのとしたようなものではない。まるで、全てのものに興味がなくなってしまった科学者のように。だが、それも一瞬で終わり、すぐにいつもの初音先生に戻った。
「……君達は、『完璧』といわれる人間の苦悩を解っていないだろう。周囲から向けられる期待に押しつぶされそうになり、恨まれ、嫉妬され、孤独に怯え、助けを求める『天才』の苦悩を。そこにいる初音先生も、その一人だ」
「ちょ、ちょっと待ってください学園長。私は『完璧』じゃありません……」
「確かに、君は『完璧』じゃない。『今の君』は、ね」
「私は、小さい頃からずっとこんな感じでしたけど……」
「言っただろう、『今の君』と。忘れたなら、じっくりと自分の胸に聞いておくことだ。そうだな、君は…『十四年間の人生』を振り返ってみろ」
「私の人生は、十四年間なんかじゃ……」
 学園長は初音先生から視線を外し、私達に向けた。
「人間は、誰でも苦悩を抱えている。『完璧』という言葉は、簡単に使ってはいけない。そうだろう、緑川さん?」
「………」
「鏡音二人は、大切な人を守ってみることだ。始音先生、自分を信じろ。咲音さん、自分の体質の意味を考えてみろ。そして……」
 最後に、視線を私と神威先生に向ける。
「巡音さん、神威先生。二人は、想い人を信じて耳を澄ませろ。セカイはすばらしい音で溢れている。そうすれば『もう一人の自分』に出会えるはずだから」
 学園長の……結月ゆかりの言葉は、どんな意味を持っているのだろう? 耳を澄ませる? もう一人の自分? というか、彼女は私と彼の関係を知っているのか?
「ふっ。まぁ、今はそれだけ言っておく。いずれ君達はわかるから。さぁ、こんな話は終わりにしよう。合宿所へ移るぞ、疲れたからな」
 学園長は、ゆっくりと歩いていった。
「……神威先生」
「どうした? 巡音」
「学園長の言葉の意味、わかる時が来るのでしょうか?」
「あの学園長の言うことだ。そのうちわかると思う」
「あと、体のほうは大丈夫なんですか?」
「今回は発作の前兆もないし、大丈夫。さ、行くぞ」
 学園長の言葉の意味はわからない。でも、もしその言葉の意味がわかったら、きっと……。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【がくルカ】memory【12】

2012/07/02 投稿
「言葉」

ゆかりさん初登場回ですね。
少し改稿しました!


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次:memory13 https://piapro.jp/t/v7Qn

閲覧数:1,842

投稿日:2022/01/10 01:56:09

文字数:2,117文字

カテゴリ:小説

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  • Turndog~ターンドッグ~

    Turndog~ターンドッグ~

    ご意見・ご感想

    ゆかり学園長…あなたは一体何者なのですか…?
    ミステリアスとシリアスとギャグを合わせてつなぎを入れてこね合わせたようなそんな不思議な感じにミーの心はズッキュンバッキュンドッキュンバッキュn(recog化ww

    ミクさん、あなたも不思議です。
    グミちゃんは言わずもがな。
    そして前半のスーパーギャグ展開と後半のアルティメットミステリアス&シリアス展開に心が撃ち抜かれ鐘を鳴らす…。

    『ゴォォォォン…』(除夜の鐘かwww

    うむむ、笑えて深い。なんだか『悪ノ娘と無限戦術』を思い出すようなテンションチェンジ。
    今度教えてくださいよ。ギャグ苦手だから気が滅入るんですよwwwうちの子たち殺伐としてるからww

    2012/07/02 23:07:46

    • ゆるりー

      ゆるりー

      何者でしょう…いつかゆかりさんの過去についても触れますので。
      そんなハチャメチャなゆかりさんですが、実は凄い人だったり(考えてないけど)、状況に応じて裏表の切り替えを真面目にしたr(((字数オーバーです、またのご利用をお待ちしております((何!?
      小さな背丈と可愛い声にミーの心はズッキュ(ry

      まとめると全員不思議ですねww
      そんなにミステリアスでしたっけ?
      除夜の鐘www
      「悪ノ王女?」ですか…w
      いえ、頭に浮かんだ単語をそのまま打ってるだけなんですがw
      今思ったんですけど、我が家のボカロ達はなんでもやってますねww

      2012/07/03 01:33:22

  • 雪りんご*イン率低下

    雪りんご*イン率低下

    ご意見・ご感想

    「女神)オーッホッホッホ、ブクマは貰ったWa「ゆかり)くらえ! 必殺☆チョーク額投げ!」「(チョークが女神の額で砕ける音)」「女神)ぐはっ! チョベリバ(バタッ)」「ゆかり)正義は勝つ」

    ゆかりさん強すぎますw
    そして思った。
    ゆかりさんががくルカ以外に言った言葉……そのうちゆるが書くと思われる他のオリジナルに関係するよね!? 「希望の手紙」とか「うんぬんかんぬん(←)」とか。

    2012/07/02 22:24:41

    • ゆるりー

      ゆるりー

      チョベリバwww
      ゆかりさん本当に強すぎです(いろんな意味で)www

      関係する予定だよ。
      予定表見てくれてありがとう!!
      え?と、「希望の手紙」と…あと2つはなんだったかな…((忘れるな
      「希望の手紙」以外は仮タイトルだから、私にもわからないんだよね((キミ作者だよな?w
      うんぬんかんぬんwww

      ブクマ&いつもコメありがとう!!
      …なんか誰かがこっち転がってきた!?ってちょ、初音先生!?止まってくださ待ってくだチョベリバ!!((((

      2012/07/03 01:15:22

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