タグ「和風」のついた投稿作品一覧(46)
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第七十五話 あいたかった、君へ。
誰かを失くした気がする。
雪を見るとその誰かが心に蘇ってきてくれそうな気がする。
会いたい。
でもだれかがわからない。
こんなにも愛しいのに。
そう思い始めてからもう十一度目の雪が降っている。
江戸の町は長い冬を迎えていた。
私は小さいころに無くなった両...ノンブラッディ
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第六十一話 謎
「全ては―――レン―――あなたの為よ。……わかるわね……?」
「はい」
私は全てを飲み込んで、そう答えた。
あとは全て私に託されたんだ。
私がこれからする選択で、全てが決まる。
「すみません、ちょっといいですか?」
ずっと大人しく聞いていたぐみが話に割って入った。...ノンブラッディ
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第五十八話 謎
「ルカを助ける方法なら、あるわよ。魔界へ還せばいいの。そうすれば魔力が回復して元通り元気にな」
「ちょっちょっと待ってください!!」
いきなりそんな話を始めた咲屋さんを、私は思わずとめた。
「まだ何も解決していません。おかみさんが何をしようとしていたのか……さっきの物は、かい...ノンブラッディ
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第五十七話 満月の夜に
「……なるほどな。そういうことかよ、まったく」
かいとが溜息をついた。
皆話を聞いた後の何とも言えないこの気持を溜息にしたかったが我慢していたのに。
「すみません。でも、もうれんやみなさんを殺したいとは思っちゃいません。ミクの気持ちが、わかった気がしますから……」
お...ノンブラッディ
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第五十二話 目的
「……っく……」
あたしが目を覚ますと、そこにはレンとおりんと、そのほか数名とともに、どこかの客間にいた。
だいぶ長く人間界に住んでいるが、ここは来たことがない。
「だから、あたしはおりんを助けに行こうと思って、レンを見送った後荒れ屋敷に戻ったんだけど、なんだかそっからおぼえ...ノンブラッディ
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第五十一話 全て
私たちが寿々屋へ戻ると、時すでに遅し、おかみさんは息をしていなかった。
前の少しふくよかな優しい雰囲気は感じられない、凛とした長い桃色の髪を畳になびかせ、眠ったように。
「お……っかさ、ん……?」
おりんさんは、急いで駆けよった。
雪は――いつの間にか降りやん...ノンブラッディ
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第五十話 あの人の意思
「ねえ、そんな顔しないで? 私頑張ったの――あなたのこと……まもろうとして……」
おりんさんは私を抱きしめながら悲痛に訴えてきた。
今にも泣きそうな顔して、今にも零れそうな涙を溜めて、今にも壊れそうに身体を震わせて。
「ねえ……おっかさんが言ってた、私人間じゃないの……...ノンブラッディ
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第四十九話 こんなことしてほしくなかったのに
「おりんさん……そこに倒れているのは……おとて、さん……ですよね……?」
「わからない。だって、私が守りたいって思ったら、おとてさん、紅い髪になって……血を……吐いて……」
どうして?
おりんさんは、人間だ。
どうして?
どうしてこんな、こんな...ノンブラッディ
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第四十八話 あの人のおもいで
「っ……あぁぁ……は……はぁ……」
突然私を襲った激しい頭痛。
そして私の中に流れ込んできたのは、おそらくおかみさんの記憶だ。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
いろいろとわかったが、今一番最初に考えないといけないのは、おりんさんだ。
彼女はおかみさんの子だ。
しか...ノンブラッディ
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第四十七話 愛ゆえに
生まれた子を、『おりん』と名付けた。
七つまでは神の子といわれる此の江戸の世で、おりんは病などに一切かからずに、すくすくと育っていった。
ここ数年かで変わったことと言えば、メイコがこの世界に少しだけやってきたこと。
メイコは私が放棄した研修で好成績を収め、今や学園の副学園長...ノンブラッディ
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第四十六話 大事なもの
私とお依亜さんのことを、気づくものは誰一人としていなかった。
そして、祝言をあげ、忙しく本格的に我久屋で働きだした。
奉公人のるか。その存在を知っている者はこの世界に一人としていない。
魔界の掟を破ってまで、こちらを選んだ。
両親、種族、親友、たくさんの者を裏切っ...ノンブラッディ
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第四十五話 彼女の明日
お依亜さんから、少しずつぬくもりが消えていく。
それを私は見守るしかできない。
できるだけ苦しまず、楽に。
それが私がしてあげられる、ただ一つのこと。
「馬鹿だと思うでしょう……?」
こんなときでも、お依亜さんは笑っていた。
悲しそうに笑っていた。
「でも、あの人も...ノンブラッディ
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第四十四話 選択
かたり。
微かな音をさせながら、私は真夜中に部屋へ入った。
私ども奉公人の部屋ではない。
若旦那の許婚の、お依亜さんのへやである。
「……ごめんなさい……」
あれから、二日たった。
私は考えに考え、私がお依亜さんを殺せば、若旦那を陥れることができると気がついた。
許婚を亡...ノンブラッディ
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第四十三話 あなたを殺して、私は
「私を、殺して」
そう言ってきた。
少し暖かい、夕暮れだった。
お依亜さんは、涙をいっぱいに溜めて、そう私に懇願してきた。
彼女が死ぬ理由など、なにもない。
若旦那との縁談は、本決まりになって、幸せなはずなんだ。
それなのに、どうして彼女はいま、こんな泣き...ノンブラッディ
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第四十二話 気がついたのは
はやく、しないと。
早くしないと時間切れになってしまう。
もう研修が始まって二週間が経った。
本来の予定ではもう帰っているはずだったのに。
どうして……どうして、あの若旦那を陥れることができないんだろう。
何度も取り込もうとした。
洗脳しようともした、感情をなくそ...ノンブラッディ
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第四十一話 許婚
若旦那を陥れることは、私の想像を遥かに超え、困難を極めた。
なんといっても、一店主して次代を担うとは思えないほどの、能天気。
金子の管理は番頭に任せきり、注文をすぐに忘れる。
陥れるのは持って来いの人材なのに、我久屋へ奉公に来て七日が経っていた。
なぜこんな者が、若旦那になる...ノンブラッディ
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第四十話 我久屋
我久屋の若旦那は、あれこれ私に話してくれた。
こんなただ今日から奉公するだけの、見ず知らずの娘に、こんなに色々話していいのか。
それは、心の奥に秘めておくことにしよう。
「……あら、若旦那。お客様ですか?」
唐紙が開く音とともに、鈴を転がすような澄んだきれいな声が聞こえた。
...ノンブラッディ
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第三十九話 若旦那
私に研修として言い渡された場所は、≪人間界≫の≪江戸時代≫というところらしい。
さまざまな文献や資料を参考にして、生活習慣、言葉づかい、礼儀作法、文化、どれもこれも完璧にしてきた。
これで私が人間ではない、もはや≪悪魔≫であるとは、誰にもわかる筈がない。
重苦しい下界へ...ノンブラッディ
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第三十二話 守りたかった
おとてはつい四半時前くらいと同じ、不気味な笑みをその頬に浮かべていた。
“――殺される――?”
たぶんぐみも、おりんさんも、同じような感情を持っているだろう。
目の前のこのおなごに、ひとたまりもないほどに木っ端微塵にされるかもしれない。
今にも震えて、泣き出して...ノンブラッディ
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第三十一話 いまのきみは
ひと通り話し終えた後、私たちのいる荒れ屋敷は一段としんとしていた。
「……これが、私の話です……。私のことを呆れたとか、怖いなんて思ったなら、今すぐここから去った方がいいですよ。おりんさん」
おりんさんは、私の目をじっと見ている。
ぐみはさっきまでずっと固く目を瞑っ...ノンブラッディ
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第十八話 昨日のことが昔の様で、もう。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
...ノンブラッディ
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第十七話 過去から
あの事を、あの人を、あの過去を―――おとてさんは―――。
「なんだいなんだい。しらばっくれるんじゃないよ。言ったね? あたしは、知ってるんだ――この意味、わかるよねえ?」
わかるもなにも。
わかる以前の問題で分かっている。
何しろその事件は、私が起こしたも同然だから。
...ノンブラッディ
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第十六話 あなたのこと
重苦しい沈黙の中を、三人で歩く。
おりんさんは下を向いたまま、私にぴたりと寄り添って、話しかけづらい。
おとてはまっすぐ前を向いて歩いているから、これもまた話しかけづらい。
「あのう、おとて……」
「なんだい」
この御仁はこういう話し方なのだろう。
機嫌が悪かったか、...ノンブラッディ
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第十五話 私の
人気のない荒れ屋敷一帯で、おりんさんは私の胸で泣いていた。
「おっかさんは――、私は――、っ……れんは――――何者っなの……っ?」
とうとう話さなければならないらしい。
おりんさんはもうすでに私も自分もおかみさんも、ただの人ではないと知っている。
自分が何者か分からない恐怖は...ノンブラッディ
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第十四話 おとずれ
いつも通りに日々は流れて、店仕舞をした。
もうじき夕餉の刻限だ。
私はこれもいつも通りの足取りで、廊下を進んでいた。
―――そして、突然だった。
「おい!!!出てこい化け物!!!!!!」
下品な怒鳴り声と共に、ものすごい音が店表から響いた。
「えっ、な、何事っ!...ノンブラッディ
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第十三話 雪の噂話
「おりんさん、品物は並べ終えましたよ」
私がそう笑いかけると、おりんさんは優しく、にこりと笑った。
「もうじき昼餉よ」
季節は、冬になった。
ここへきて二度目の冬だ。
やっぱり、何回経験してもこの寒さには慣れない。
あの後、私が何者であるか、おかみさんは何者である...ノンブラッディ
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第十二話 思い出の記憶
一度目をあけると、そこは真っ白だった。
私はここに来たことがある。
『レン』
誰かが呼んでいる。
けれども、まぶたが再び重くなってゆく。
だめだ、目を閉じてしまってはだめだ。
もう、その声を聞けないかもしれない。
もう少し、もう少しの間でいいから、私の名前を呼んでほ...ノンブラッディ
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第十話 彼の真意
レンのもとへ行こうか行かまいか、迷っていた。
何かお土産でも買っていこうか。
そんな呑気に考えていて、今、レンに何が起こっているなどと、考えても見なかった。
―――どんっ、と誰かがあたしにぶつかった。
「すみません……」
と、下向きに謝るその少年は、どう見てもレンだった。...ノンブラッディ
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残香
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第九話 吸血鬼の少年
とうとう前が見えなくなってきた。
出来るだけ人気の少ない場所を通っているが、見えない以上、ここがどこかは分からない。
「……うっ、ぐぅ…………っ…あぁ…………」
もう足も動かなくなってきた。
―――どん
と、誰かにぶつかった。
顔をみられては、元も子もないと思い、顔を...ノンブラッディ
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