ブックマークした作品
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これは夢だ。
早々に彼がそう確信した理由は他でもない。宮殿の廊下に、本来ならばいるはずもないものがいたからだ。
加えて、窓ガラスも割れているというのに他の侍従達が騒ぎ立てている様子は無い。
目の前の事柄全てがあまりにも不自然だ。夢なのだろう。今、彼の前にいるこの「熊」は。
地を這うような低い...イレギュラーはアカシックレコードの夢を見るか?
たるみや
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好奇心は猫をも殺すなんてよく言うが、幼い頃の私の好奇心は、猫の死体に打ち壊された。
なんのことはない、町外れに人だかりが出来ていたから近付いただけだ。
私と同じくらいの年頃の女の子や男の子が輪になって何かを見ており、私も気になって覗き込んだ。
そこには──猫の死体があった。
大きな鳥に襲われたのだろ...ネコの屍
たるみや
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自宅にも井戸端会議にも居らず、
おそらくと目処をたてていた第3の場所…居酒屋へとシャルテットは足を運んだ。
「あぁ、やっぱりッスね」
座ったままでも窓から外の景色を眺める位置に茶色の髪の女性はいた。
グラスには赤い液体が入っており、チビチビと飲んでいたようだ。
空きビンは見あたらない。
「夕方前から...居酒屋にて
ogacchi
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「んもおおおおお!!!!!」
ある日の昼間、修道院内のキッチンから突如響いた。ちなみに、これは牛の鳴き声なんかではない。あまりにもムカついた私の断末魔だ。(そもそもキッチンに牛なんかいたらそっちの方が大惨事だが)
「リン?!どうしたの?!」
私の叫び声を聞いたであろう友人が血相変えてやって来た。...Brioche
MaKi
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年をとった。
肖像画を描けなくなったのはいつからだろうか。
──否。描けなくなっていた、と気付いたのはいつだったか、と考えるのが正しいかもしれない。
若い頃は絵を沢山描いていたし、画家を目指していたこともあった。
しかし、母と画家ニコライ=トールによりその夢を絶たれてからは絵筆を持つことも無...とある画家の肖像
たるみや
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ギィ、と扉の開く音。
「お久しぶりね」と笑う魔道師は、最後に会ったあの日から何一つ変わっていなかった。
私が母に連れられ、彼女に初めて会ったとき、彼女は自らを「悠久の魔道師」と名乗った。悠久の時を生きる、不老の魔道師だと。
……正直、あまり信じていなかった。それも当然だろう。いくら両親の友人とはいえ...とある修道女と魔道師
いんく
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ルシフェニア王国から離れた場所に位置する“千年樹の森”。修道院での仕事を終えた私は、誰にも告げずこの場所へとやって来た。
森の中にある大きな千年樹と、以前よりも少しだけ伸びた苗木。どこも変わりない様子に、私はほっと胸を撫で下ろした。
クラリスの話によると、この苗木の正体は、大地神エルドの後継者で...悪ノ娘と魔道士ノ弟子
MaKi
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リリアンヌは気まぐれだ。だから使用人たちは往々にして彼女に翻弄されることになる。今、僕もまた彼女の気まぐれに振り回されていた。
「剣術でわらわが負けたことは一度もない。アレン、いくらお主でもわらわには敵わぬじゃろう。」
僕はただニッコリと愛想笑いを浮かべて静かに頷く。誰も君相手に本気出せるわけな...夕焼けとはんぶんこ
カンラン
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遠くから私を呼ぶ声が近付いてくる。
すごい勢いで。
一瞬誰か分からなかったが、「カイル兄様~!!」とドレスの重さを感じさせないくらいの速さでやってきたのはリリアンヌだった。よくあのドレスで走っていて転ばないものだなと感心しつつ、王女がそんなことをしてはいけないよと窘める。その言葉を受けしゅんと...夢の中でなら
雪夢
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「やはり引き受けてくれると思ってましたわ」
「まあ、友人の娘の頼みだ。断る理由がない」
エルフェゴート国の小さな町の小さな喫茶店。画家である青髪の男は小さく微笑み、目の前にいる小さい小説家に問う。
「挿絵か……君の世界観を壊さずに描けるか不安だが、やってみよう」
「まあ! かつて一つの国を変えた人...悪魔の絵を描く
真宏
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「リリアンヌ!」
呼んだ声。
「 !」
しかし、もう彼女の声は聞こえない。
差し込んだ黄金の鍵。その瞬間僕らは一瞬にして弾け飛び、ついさっきまで隣にいたリリアンヌも光に包まれてしまった。
やっと巡り合えた。ずっとずっと君を追いかけてきた。だからか、これで良かったんだという想いと、もっと一緒に居...悪ノ娘→総てが終わり、始まった世界
kojiisono
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私の名前はネイ=フタピエ。『悪ノ娘』リリアンヌ=ルシフェン=ドートゥリシュに仕えるメイド……というのは仮の姿。
その正体はリリアンヌに悪魔を取り憑かせ、悪政による内部崩壊を引き起こすために送り込まれた工作員であり、知られざるマーロン国第十三王女である。
無事王女付きのメイドとして王宮の中枢に潜...工作員の試練
むぎちゃ
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時計塔の針の音が響いている。規則正しく鼓膜を穿つそれは、まるで心臓の鼓動のようだ。
マーロン王国ブラッドプール地方北部、キャッスル・オブ・ヘッジホッグ。その中心にある巨大な時計塔の針音は、その風体にふさわしい程大きく、城をぐるりと囲うように建てられた城壁の上にまで届いている。
針の音に合わせるように...逆さの塔に名を刻む
たるみや
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ーこれは、勝手な大人達によって離され、立場を違え、そのせいで道を間違えた少女とその少女を守ろうとして処刑されてしまった少年の御伽噺。
緑の娘を殺させたのは間違いだったのか…ふとそんな思考に陥る。
しかもそれに気付いたのはアレンー双子だった召使いを失ってからだった。
『あら、おやつの時間だわ』と言いな...悪の華は双子に願う
奏雨
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「……やっぱり、ここにいたのね、リン」
視線の先には、リンと呼ばれた修道女が立っていた。夕闇に映える金の髪がまぶしい。砂にしゃがみ込んだリンは、服が濡れることを厭わず、ぼーっと水平線の彼方を見つめている。
夕の赤に輝いた、一筋の頬の輝き。
それは、幻か。
「……あぁ、クラリスか」
声で判断し...茜空ノ修道女
Stella
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「はあ…気持ち悪い…。」
胃の中のものがぐるぐるとかき回され、昇ってくるような途方もない不快感に襲われる。理由は考えるまでもない。ここに来るまでに乗ってきた馬車のせいだ。ルシフェニアから、ここ、エルフェゴートまでの道はそこまで綺麗に整備されてるわけじゃない。道はでこぼこだらけだし、そこらに小石が転...馬車と君には敵わない
カンラン
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「エルフェゴートへ?」
「そう、少し用事をね。お願いするわ」
「分かった」
「お土産に、エルフェゴートの名産品トラウベンがあれば嬉しいわね」
「ふあぁぁ」
あくびをするリリアンヌが、視界の端に見えた。
あーあ、退屈な会議ねぇ。形だけで、意味なんてない。リリアンヌじゃなくても、あくびが出るわ。
「ふぁ...化ケ物ノ襲来
亮也
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「アレン、お主はキスをしたことがあるか?」
3時のおやつの時間に流れていた穏やかな雰囲気は、リリアンヌの一言で霧散した。
「ど、どうしてそのようなことをお聞きになられるのですか?」
そう聞くと、リリアンヌは少しふくれた。
「わらわの質問が先じゃ!」
「申し訳ありません…私はない、ですね…」
リリアン...王女と召使と思春期
ナユ
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「カイル兄様が遊びに来るぞ!」
まさに喜色満面といった笑みを浮かべるリリアンヌ。
「よかったですね、リリアンヌ様」
アレンは穏やかな表情でそれに応える。純粋な祝福と、これでしばらくは上機嫌でいてくれるだろう、というほんの少しの安堵も込めて。
「遊びに、ではなくお仕事なのでは……」
「何か言ったか...Lucifenia's taiRoL!?
織奈
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「リリアンヌ様?どこへ行かれたのですか?」
僕は先程突然リリアンヌに呼び出された。そのためリリアンヌの部屋へ向かったが、そこには彼女はいなかった。
待っていれば来るだろうと思っていたが、数十分経ってもリリアンヌが部屋に来る気配はなかったため、今僕は城中を捜し回っている。
全ての階を回ったつもりだが、...回想、そして後悔
macaron
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アレン 〜ルシフェニア王宮内「リリアンヌの部屋」にて〜
「いよいよ明日じゃ!準備ができていくのを見ておると、胸が踊るのう‼︎」
満面の笑みのリリアンヌ。いつになく、上機嫌だ。それも当然。明日は、リリアンヌの誕生日。彼女を祝って、盛大な舞踏会が行われるのだから。
つい先程、3時の鐘が鳴り、リリアンヌは...アノ日ノ記憶
亮也
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「『イモケンピ』が食べたいのじゃ!」
そう、リリアンヌ王女が言い出してから1時間。僕、『アレン=アヴァドニア』は途方にくれていた。
午後3時、おやつの時間には、使用人の誰かがリリアンヌ王女におやつを作る決まりになっている。今日は僕の番だ。リリアンヌ王女はブリオッシュが大好きだから、先日ミカエラが...君のワガママ
持平勇賢(りゅうせいとうP)
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僕は、知識量には自信がある。
当然といえば当然だ。8年前の「あの事件」まで、僕はこの国の王となるべく育てられたのだから。
さすがに王宮の大人たち──特に、数百年も生きてる某魔導師には敵わないけれど、同年代の中では知識がある方だと思う。
歴史、文学、語学、数学、政治学、地理、宗教──我ながら、よくもま...星と歯車とオモイデ
わらすぼ
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