タグ「鏡音レン」のついた投稿作品一覧(85)
-
「綺麗だね、蓮君。」
未来先輩は待ち合わせてから終始ご機嫌だった。場所は大通り公園、イルミネーションが深く積もった純白の雪に反射して幻想的な光景を作り出している。そうですね、と答えてみるが正直、僕には余裕がなかった。何しろデートなんて初めての経験なのだ。時折今頃苦労しているだろう妹のことが頭をよ...South Nroth Story 特別編 ―冬の出来事― パート3
-
「寒いね、蓮君。」
寒いと言いながら随分と上機嫌な様子で、未来先輩はそう言った。
「そう、ですね。」
どうしてこうなったのだろう。
そう考えずにはいられない。デートに誘ったのはつい先日。いや、それ以前にも色々前振りがあったのだけれど。
きっかけ、というか。あれは九月の頭、先輩の誕生日をう...South Nroth Story 特別編 ―冬の出来事― パート2
-
ごう、とエンジンが鳴った。
どうやら下降を開始したらしい。気流に突っ込んだのか、びりびりとした振動に俺はそれまでの午睡を中断させられることになった。ぼんやりと瞳を開けて、視線を景色へと移す。だが、見えるものはただ一面の灰色の雲ばかり。どうやら先ほどの揺れは雪雲に突入した衝撃によるものであるらしい...South Nroth Story 特別編 ―冬の出来事― パート1
-
South North Story 特別編
秋口の出来事
北海道大学のキャンパスは、流石旧帝大というだけあって、相当に広い。
リンとリーン、二人の妹と別れてから、一月余りの時間が過ぎていた。夏季休暇はとっくに終わり、後期授業の履修届など、何かと忙しい秋口のことである。
そして鏡蓮は、教務課へと...South Nroth Story 特別編 ―秋口の出来事―
-
カイトとみんなと新年会!
-
第三章 決起 パート13
「リン、どうしたの?」
応接間を出て、揺れる両脚を引きずるように歩き出したリンに向かって声をかけた人物がいる。厨房で昼食の手伝いをしていたハクであった。
「ん・・なんでもない・・。」
力なく、リンはハクに向かってそう答えた。
「なんでも無くはないわ、リン。とても疲...ハーツストーリー 53
-
第四章 始まりの場所 パート6
「この銃・・。」
見覚えがある?それは当然だった。ステンレス製の銃身に漆黒のラバーグリップ。そして何より、銃筒に刻まれたSMITH&WESSONの刻印。リーンが生まれるよりも以前から自宅に安置されている、リーンにとっての守り神のような銃。新品の輝きを誇っている以外...小説版 South North Story 55
-
第四章 始まりの場所 パート5
そろそろ、到着する時間だな。
レンは不意にそれまで読み込んでいた冊子から視線を上げてカフェの壁に吊るされている時計を視界に納めるとそのように考えた。時刻は二時少し前を示している。そろそろ向かわなければ、とレンは考え、冷め切ったコーヒーの残りを一気に飲み干した。ブラ...小説版 South North Story 54
-
第四章 始まりの場所 パート2
刀傷の男に向かって謝礼金を支払い終えたレンは、まるで何事も無かったかのような足取りでその小屋を後にすると、海沿いの寂れた路上に駐車しておいた乗用車に再び乗り込んだ。カモメが鳴いている。どこかで聞いたことがあるような声だったが、そう感じたのは海岸の寂れ具合が丁度リンが...小説版 South_North_Story 51
-
今日のおやつはブリオッシュよ 『ハルジオン』挿絵第四弾
-
第四章 始まりの場所 パート1
意識が途絶えた後、どれほどの時間が経過したのかまるで分からない。そもそも時間という概念が存在しえない場所に僕はいたのかも知れない。だけど、僕は再び瞳を開いた。目に映るのは見慣れない銀色の器具と、無機質な白色に包まれた天井の色。天国にしては味気が無さ過ぎるし、地獄にし...小説版 South_North_Story 50
-
第三章 東京 パート5
とりあえず、練習室に戻るか。
鏡との通話を終えた寺本はそう判断すると、部室棟の中央部分に用意されている階段を地下に向けて歩き出した。少なくとも今日と明日はリンとリーンの二人をどこかに宿泊させなければならない。流石に男性の自宅に泊める訳には行かないが、と考えながら寺本が練習...小説版 South North Story 45
-
第三章 東京 パート4
「今、レンは何処にいるの?」
暫くしてからリーンから受け取ったハンカチで涙を拭き終えたリンは、一つ深呼吸をするとようやく落ち着きを取り戻した様子で寺本に向かってそう言った。レンがこの世界にいる。あたしはレンにもう一度逢える。そう考えただけで心臓が飛び跳ねそうなくらい高鳴っ...小説版 South North Story 44
-
第三章 東京 パート3
「藤田は?」
いつもの部室、普段から活動している部室棟地下二階の音楽練習室で、沼田英司の僅かに苛立ったような声が響いた。予定していた集合時間を迎えて、唯一姿を見せていない人物が藤田であったのである。
「そろそろ来ると思いますが。」
呆れたような口調でそう答えたのは寺本...小説版 South North Story 43
-
第十章 悪ノ娘ト召使 パート11
「時間だ。」
迎えに訪れたのは屈強な兵士だった。その兵装からして青の国の兵士だろう、と判断したレンが素直に立ち上がると、兵士がレンの両腕を拘束した。そして、兵士達に押し出される様にレンは牢獄から歩み出した。脚が、僅かに震えていることを自覚する。恐れているのか、と...ハルジオン63 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
-
第十章 悪ノ娘ト召使 パート9
寒いな。
吐き出す息が白くなっていることに気がついたレンは、思わずその様に考え、あてがわれた古い毛布を身体に巻きつける様に抱きしめた。ここは牢獄。黄の国の王宮の前面にそびえ立つ囚人用の牢獄塔であった。リン女王として捕えられてから、どれくらいの日数が経過したのか。景...ハルジオン61 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
-
第十章 悪ノ娘ト召使 パート7
戦の音が止んだわ。
私室の窓から戦闘の様子を眺めていたリンは、唐突に静まった周囲の空気を確かめるように耳をそばだてた。先程、メイコらしい赤髪の剣士が王宮玄関へと侵入して行く姿が見えたが、もうすぐここにも反乱軍がやってくるのだろうか、と考える。どうしてこんなことに...ハルジオン59 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
-
第十章 悪ノ娘ト召使 パート6
メイコの反乱が勃発した時、守備に残っていた人物がレンで無ければどうなっていたか。歴史にもしも、はあり得ないが、もしも、を想像して考察することが未来の人類に共通する癖として存在する様子である。この時、レンはロックバード伯爵が言い残した言葉を忠実に実行していた。即ち、メ...ハルジオン58 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
-
第十章 悪ノ娘ト召使 パート5
黄の国王立軍が青の国の軍の迎撃の為に王宮を出立してから、四日ほどが経過した。
その頃、反乱の準備を完成させ、後は蜂起するタイミングを待つばかりであったメイコは黄の国城下町の一角、南西地区にある地下倉庫を仮の拠点として最終の確認をアレクと共に行っていたのである。その...ハルジオン57 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
-
第十章 悪ノ娘ト召使 パート3
魔術の気配がするわ。
十名ほどの兵士達と共にメイコの自宅を取り囲んだルカは、自宅に向けて声をかけた直後に魔術の波動を感じ、喉が枯れるような感覚に陥った。そのまま、右手を扉に向けて翳す。この気配はワープの魔術の波動であるはず。だとすれば、この場所にはもう人間は存在し...ハルジオン55 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
-
第十章 悪ノ娘ト召使 パート2
これで、今日の仕事は終わりだな。
一つの商家を襲ったレンは、まるで日常業務を終えた直後の様に軽い調子でそう考えるとバスタードソードを鞘に収めた。最近、略奪に慣れ過ぎているのかもしれない、とレンは思ったが、それに対する感慨は不思議と何も湧かなかった。ここで奪った財宝...ハルジオン54 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
-
第九章 陰謀 パート5
レンが商人からの略奪を終え、ロックバード伯爵の私室へと戻ったとき、それぞれの仕事を終えたらしいロックバード伯爵とガクポが少し疲れた表情をしてレンを迎え入れてくれた。疲労というより心労だろう、とレンが考えていると、ロックバード伯爵が話すことも億劫だと言う様な口調でレンに向かっ...ハルジオン49 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
-
第九章 陰謀 パート4
僕の担当は南東地区か。
三十名ほどの兵士を連れて城下町へと向かったレンは努めて無機質にそう考えると、騎乗している馬の手綱を少しだけ緩めた。最近、良いか悪いかの思考を敢えてしないようにしている。リン女王が望むことを全て叶える以外の目的は今の自分に見出すことはできなかったし、...ハルジオン48 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
-
第九章 陰謀 パート3
いい加減、限界だな。
国庫の残りを確認していたロックバード伯爵は、文官から手渡された帳簿を一読してからその様なことを考えた。アキテーヌ伯爵の処刑以降、空席となった内務大臣の業務は自然とロックバード伯爵が執り行うことになっていたのである。リン女王から明確な指示があった訳で...ハルジオン47 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
-
第八章 残された者達 パート4
レン達が帰還した、という報告を受けて、一番喜んだ人物は誰よりもリン女王であっただろう。聞けば、ミク女王を殺したのはレンだという。あたしの召使は、今回もあたしが望む成果を上げてくれたらしい、と考え、そして一人微笑みを見せてからリンは立ちあがった。それまで帰還をして来る...ハルジオン43 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
-
第八章 残された者達 パート3
響いたのは、悲鳴。
メイコの目の前で、アレクが、レンが、そして黄の国の兵士達が民衆達を殺戮して行った。アレクが赤騎士団とレンを率いて緑の国の内壁城門へと駈け出して行った時、メイコは何故か涙を零した。待って、アレク。そう放った言葉は無情にもアレクには届かず、そのまま...ハルジオン42 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
-
第七章 戦争 パート15
どうして、笑ったのだろう。
謁見室の扉が開き、そして現れたレンの姿を眺めながら、ミクはつい、その様なことを考えた。私の望み通りの人物が現れたからだろうか。そうかも知れない、と考えて、ミクはその形の良い唇を開いた。
「待っていたわ、レン。」
その言葉に、レンは戸惑う。...ハルジオン39 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
-
第七章 戦争 パート14
一方で、アレク率いる赤騎士団とレンは、民衆を蹴散らした後、予定通りに内壁正門へと到達していたのである。ロックバード伯爵の予想通り、軍の主力はこの場所に集まっていたらしい。城壁の上から撃ち降ろされる、まるで猛吹雪の様な火縄銃の攻撃を受けてその数を減らしながらも、赤騎士団は開...ハルジオン38 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
-
第七章 戦争 パート13
城門が破られた時、メイコと共に突撃の準備を終えていたレンは思いつめたように唇を少し、噛みしめた。不思議な感覚だった。城門が破られれば、数で圧倒する黄の国の勝利はほぼ確定されたようなものだった。なのに、何も感情が湧きおこらない。理由はレンには分かり切っていた。黄の国の勝利と...ハルジオン37 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
-
第七章 戦争 パート12
黄の国の軍隊が緑の国の王宮を包囲したのは、ミク女王の予測通り、その日の午後を迎えてからのことであった。黄の国総勢二万五千に対して、緑の国の残存兵力は三千程度であったと言われている。数だけを見れば黄の国の圧倒的な有利ではあったが、それでもロックバード伯爵は油断をする気分には...ハルジオン36 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】