タグ「鏡音レン」のついた投稿作品一覧(85)
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第七章 戦争 パート10
ここが最後の防衛線になるはずだけど。
翌日、インスブルグの街中に陣を構えたネルはそう考えながら、黄の国の軍の到来を待つことにした。計算では黄の国の軍は昨日中にインスブルグの町に入るはずだった。それが到来しなかったのは街中での夜襲を警戒した為だろうか。では、正々堂々と日中...ハルジオン34 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第七章 戦争 パート7
その頃、レンは混乱を続ける戦場の中で一人、メイコの姿を探して駆けまわっていた。緊急を伝える銅鑼の音で飛び起きたまでは良かったが、赤騎士団とは少し離れた場所に宿舎を構えていたレンがメイコと合流できた訳もなく、とにかく直属の百名程度の歩兵部隊と共に乱戦の中に飛び込むことし...ハルジオン31 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第七章 戦争 パート7
緑の国の軍勢がミルドガルド山地から撤退したのはそれから三十分程経過した後の事であった。乱戦不利とみたネルが早々に軍を引いたのである。敵将ながら天晴と感じたのはおそらくメイコだけではなかったであろう。引き際のタイミングも撤退方法も完璧と表現するべきものであり、赤騎士団を始め...ハルジオン30 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第七章 戦争 パート6
さて、どう戦おうか。
ミク女王の執務室から退出し、青の国への出立の準備へと向かったグミとも別れた後、ネルは自身の私室へと戻るとその様なことを考えた。そのまま、窓際に立てかけてある緑の国の全図を取り出して私室の中央に用意されている長机の上に広げる。長机とほぼ同じ大きさの地図...ハルジオン29 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第七章 戦争 パート5
黄の国の軍勢が来襲。
その報告が緑の国のミク女王に届けられたのはそれから三日後のことであった。私室でいつもの様にハクが淹れた紅茶を嗜んでいたミク女王は、ミク女王直属の親衛隊であるウェッジからもたらされた報告に思わずティーカップを手から滑り落とし、床に落下した白磁のそれ...ハルジオン28 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第七章 戦争 パート4
「内務大臣が来たの?」
リンがアキテーヌ伯爵の来訪を女官から告げられた時、リンは自身の私室で普段と同じように城下町の様子を眺めている時分のことであった。急用だと言っている様子だが、一体何事だろうか。煩わしい、とリンは考えたが、内務大臣の直々の来訪を蔑ろにする訳にもいかない...ハルジオン27 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第七章 戦争 パート3
緑の国の侵攻軍、総勢三万の兵士達が土埃を巻き上げながら黄の国の王宮を出立したのは翌日の早朝のことであった。その中には当然レンの姿も見える。バスタードソードを腰に装着して騎馬を行うレンは、どうしようもなく心が痛むことを自覚した。つい二日ほど前に戻って来たオデッサ街道を再び歩ん...ハルジオン26 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第七章 戦争 パート2
どれくらいの時間が過ぎたのだろう。時間の感覚は既にリンの身体から失われていた。どうやら今あたしは黄の国の王宮、自分の私室の寝台に横たわっているらしいという認識だけはあったが、一体パール湖からどのようにしてここまで帰還したのか、皆目見当がつかない。あの時パール湖湖畔で最後に許...ハルジオン25 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第七章 戦争 パート1
盆の間に開催される遊覧会が終わると、ミルドガルド大陸は駆け足で秋が訪れる。平原を流れる風は途端に肌寒いものとなり、実りの時期を迎えた作物は夏の間にふんだんに吸収した養分をその果実に凝縮し始めるのだ。その秋風が吹きすさぶ中を帰還した黄の国の一行はしかし、実りの秋を迎えたと言う...ハルジオン24 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第六章 遊覧会 パート7
細波の声と、木々を揺らす風の音だけが耳を打つ。周囲に人はいない。いるのは一人、カイト王だけであった。闇夜の為に湖畔を見通すことは出来なかったが、湖に映る月明かりを見ながら暫くの間カイト王は余った時間を過ごすことにしたのである。そろそろ、ミク女王が来てもおかしくない時間では...ハルジオン23 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第六章 遊覧会 パート6
その後晩餐会はつつがなく進行した。ミク女王も単なる一時的な離席だったらしく、騒ぎが起こってから数十分後には再びその姿を晩餐会会場へと現しており、僅かに不安を感じていた一同を大いに安堵させた。一体何をしていたのかをミクは一切話さなかったが、その件に関しては大した話題にもなら...ハルジオン22 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第六章 遊覧会 パート6
「アク殿、どちらまで向かわれる。」
リン達と離れ、一番巨大な王族専用の別荘から抜け出したガクポは、前をひたすらに歩むアクの背中に向けてそう声をかけた。近場で会話をするのかと考えていたが、アクは湖の湖畔までひたすらに歩くと、そこで方角を変えて湖畔に沿って歩き出したのである...ハルジオン21 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第六章 遊覧会 パート5
翌日、午前中の時間を使ってリン女王以下の黄の国の一行はオデッサ街道の支線であるパール湖街道を行進することになった。風光明媚なパール湖に到達する為に緑の国がパール湖周辺を覆う森を切り開いて造った街道であるから、その周りは深い森に覆われている。さんさんとその枝葉を伸ばす木々の...ハルジオン⑳ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第六章 遊覧会 パート3
返答期限が迫ってきている。
奇しくも同じ日に、遊覧会への準備を進めていたミク女王はそう考えて深い溜息をついた。場所は緑の国の王宮、巨大な屋敷と表現される建築物の三階にあるミクの執務室である。返答期限とは勿論、カイト王に対する返答であった。この件についてはグミと何度も協議...ハルジオン⑱ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第六章 遊覧会 パート2
レンと別れたメイコが赤い鎧姿のままで向かった先は父親であるアキテーヌ伯爵の執務室であった。黄の国の重鎮であるアキテーヌ伯爵は王宮の第三層にその私室と執務室を与えられている。第三層の大理石造りの廊下に軽い音程で反響する靴音を鳴らしながらアキテーヌ伯爵の執務室の目の前に到達し...ハルジオン⑰ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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第六章 遊覧会 パート1
長い雨の一日であった。昨年全く吹かなかった季節風は今年ようやく職務を思い出したのか、十分な湿気を伴って黄の国を覆い、そして大量の雨を黄の国にもたらして行った。その雨の降る黄の国の城下町の一角を、騎士の一団が闊歩している。メイコ率いる赤騎士団の警備隊であった。雨天ということ...ハルジオン⑯ 【小説版 悪ノ娘・白ノ娘】
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ハルジオン⑥ 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
第二章 魔術師ルカ パート3
何よ、ルカまで!ルカとの謁見を数分で切り上げたリンは、大股で私室へと入室するとそのままベットに飛び込んだ。そのまま枕に顔をうずめて、軽く歯ぎしりをする。少し視線を逸らせると、一本丸太から作成された幅三メートルはあるだろう大きな机...ハルジオン⑥ 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
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ハルジオン⑤ 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
第二章 魔術師ルカ パート2
「ルカ様!」
ルカがガクポを連れて王宮に到達すると、出迎えに来ていたレンが大きく手を振りながら笑顔を見せた。
相変わらず、元気みたいね。
ルカはそう考えながらレンに対して軽く手を振り返し、こう答えた。
「久しぶりね、レ...ハルジオン⑤ 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
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ハルジオン④ 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
第二章 魔術師ルカ
農耕技術が発達していないこの時代、農作業は天候との戦いであり、運任せであり、神頼みであった。平年通りの気候に恵まれればそれなりの収穫が見込めるが、気候の変動があった時、この時代の農業は果てしなく弱かったのである。実際、昨年黄の国を襲った乾...ハルジオン④ 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
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ハルジオン③ 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
第一章 黄の国の暴君 パート2
剣の訓練を終えたレンは汗に汚れた訓練着を脱ぐと、普段召使として使用している、少年の身には少し威厳がありすぎる執事服に着替えを済ませた。そして、時刻を見る。
「もうこんな時間だ。」
時計の針は午後二時半。そろそろリン女王のお...ハルジオン③ 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
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ハルジオン② 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
第一章 黄の国の暴君 パート1
「レン!遅いわ!もうおやつの時間よ!」
その言葉が王宮内に響いたのは午後三時、ハルジオンが咲き誇る、春先のうららかな一日のことであった。この王宮では特に物珍しい光景でもない。場所はミルドガルド大陸西端に存在する黄の国の王宮。...ハルジオン② 【小説版悪ノ娘・白ノ娘】
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小説版 Re:present パート9(最終話)
卒業式だ。
まだ、雪は解けてはいない。雪解けまではまだ一カ月は待たなければならないことが北海道の高校生にとっての宿命のようなものだろう。それでも、未来に向けて一歩を踏み出す大切な日であることにはなんら変わりがない。
俺は無事、立英大学への合格を...小説版 Re:present ⑨ 【最終話】
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小説版 Re:present パート8
満からのメールの返信が来た。
『大丈夫。何時?』
それに対して、あたしは正午に自宅の最寄り駅の改札口を指定した。満に合格祈願のお守りを手渡したあの場所だ。あれはあたしのプレゼントの一つ目。もう一つ、どうしても受け取って欲しいものがある。
数ヵ月後に、満...小説版 Re:present ⑧
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小説版 Re:present パート7
北海道は十一月にもなると雪が山地を中心に降り積もり始める。最後の生命を輝かせるように木々は紅く染まり、その景色を見ながら人も冬に向けての最後の準備を始めるのだ。今年の札幌の初雪は例年よりも僅かに遅く、十一月も後半になってからになった。降り積もる雪を眺めながら...小説版 Re:present ⑦
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小説版 Re:present パート6
文化祭が終わると、途端に教室の空気が豹変した。楽しい時間はもう終わり。後はそれぞれの将来の夢を実現する為に、越えなければいけない壁に向かって走りださなければならないからだ。
あたしはそんな中、それでも不安を隠すことができなかった。あたしにとって人生初めての...小説版 Re:present ⑥
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小説版 Re:present パート5
「寺本。もう二学期だ。」
盆が過ぎ、八月も下旬を迎える頃、ドラムを叩きに来た俺に向かって山崎はそう言った。北海道の高校の夏休みは本州よりも一週間ほど短い。八月の終わりには二学期が始まるのである。その分、冬休みは降り積もる雪を考慮して本州よりも長いのだが。
...小説版 Re:present ⑤
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小説版 Re:present パート4
満が珍しく評価したそのバンドの演奏が終わり、次の団体が演奏を始めると、途端に興味を無くしたのか、満は今来た方向へ方向転換をすると再び歩き出した。
「あのバンドは上手くないの?」
あたしは僅かに目を細めながら、満にそう訊ねた。
「ああ。あれなら俺達の方が...小説版 Re:present ④
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小説版 Re:present パート3
札幌にも、短い夏がやって来た。
例年通り、よさこいソーラン祭りは大盛況の内に終了し、そしてそろそろ夏休みに突入しようとする頃、大通り公園ではさっぽろ夏まつりが盛大に開催される。何しろ、七月の下旬から八月のお盆過ぎまで、一カ月もの間ずっと祭りを開催しているの...小説版 Re:present ③
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小説版 Re:present パート2
ソメイヨシノが札幌の街を彩るのはいつもゴールデンウィークに突入してからになる。その頃になるとようやく街を覆う根雪が完全に溶け、草木が自然界の主導権を取り戻すのだ。街は緑に染まり、自然界だけではなく街の人々にも活力を与え、そしてその強い生命力をあたし達に余すと...小説版 Re:present ②
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小説版 Re:present パート1
幸せそうな人間を見ると、つい羨ましくなる。
あいつみたいに、好きな女が近くにいればいいのに。
俺はそうじゃない。
遠い北の大地に置いてきた彼女のことを思い出して、俺は一つ、溜息をついた。
「寺本、なに辛気臭い顔しているんだよ。」
いつもの音楽練習室...小説版 Re:present ①