タグ「がくルカ」のついた投稿作品一覧(85)
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眠らない街、高みを目指して競い合うスタッフたちは、裏では仲がいいとは限らない。社会勉強とバイトを兼ねてやってみよう、と俺を誘った友人はもうすっかり鮮やかな照明と名声に彩られたこの世界に馴染んでいるようだ。
一方の俺は、次々に注がれる度数も値段も高いアルコールの量に慣れず、せっかくの休憩時間を手洗...【がくルカ】拍手と喝采【がく誕】
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恋をしている。こう言うとフィクションの物語に影響を受けすぎかと笑われそうだけど、ある日突然彼のことを異性として気にするようになってしまった。
昔から同じことをやっていたくせに、たまたま触れた彼の手のひらが記憶にあるものよりもずっと大きくて男らしいなと感じて、そうなると腕まくりをしたときにうっすら...【がくルカ】拝啓、となりの君へ
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君はもういない。
君はもう、私の前から姿を消してしまった。
君が何処へ行ってしまったのか。
君がどうして消えてしまったのか。
その理由を、私は一生知ることができないのだろう。
考えても考えても変わらない。
過去も現在も未来も変わらない。
過ちも嘘も事実も、何も変わらない。
何かを変えようとしたところ...【がくルカ】Future【1】
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記憶の中の彼へ
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『空き教室で待ってる』
それだけ書かれたメモを握りしめて、私は教室の扉を開いた。カーテンの引かれた教室で、彼が背を向けて立っていた。
「来たね」
「約束ですから」
イスと机が端に寄せられた教室に、穏やかな光が差し込む。普段なら眠気が強くなるこの時間に、私は...【がくルカ】memory【31・終】
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玄関のドアが閉じた音を聞いて、眠気に閉じかけていた目を開く。ごろんと転がっていた体勢をそのままお見せするわけにはいかないので、さっと上半身を起こすと、丁度彼がリビングにやってくる。
「ただいま。寒かっただろう、体調は崩していないか?」
「おかえりなさい。大丈夫でしたよ。私は部屋で温まっていましたか...【がくルカ】ゆく年を思う
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平凡な人生を生きてきた。
映画なら、スタッフロールが流れ始めた瞬間に席を立つような。ミステリー小説なら、中盤で犯人が分かってしまうような。プラスチックのカップ一杯のコーヒーなら、飲み終わった後のカップに氷が半分以上残されているような。
他人にわざわざ語ることもないほど、特別な出来事を人生に刻ん...【がくルカ】夕映えの君
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もう自らの存在を証明する手立ては失った。
あとは生きるか死ぬかを選ぶだけだ。
そうすれば、余計なことは考えなくてもいい。
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その日から、別の誰かが俺に成り代わった。
記憶喪失になった俺は、自身のことを『神威 学』だと思い込んでいた。
それどころか、屋上から投身自殺をした記憶があっ...Memoria --『Serenade』--
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「やあ、久しぶりだね」
私は目の前の光景に目を疑った。
最後の授業を終えたその日、卒業前に一度景色を見ておきたいと屋上に行ったら、神威先生が柵にもたれかかっていたのだ。しかも白衣も着ていなければ眼鏡もしていない。それに、「久しぶり」なんて言葉はおかしい。
「……毎日授業では顔を合わせているはずな...【がくルカ】Plus memory【6】
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毎週土曜日、午後七時半。それは紫の彼と一緒にいられる唯一の時間。
いつものように各自で食材を持ち寄って、徒歩五分の距離にある彼の家に集まる。お酒が入ることもあるけど、それはどちらかの気が向いた時に限り、大抵はウーロン茶を飲んでこのひとときを過ごしている。
今日もまた、私は彼の向かいの席で、彼の...【がくルカ】グラスを満たす感情は
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光とは、決して掴み取れないもののひとつだ。物理的な話だけではなく、例えば輝かしい未来や思い描いた希望、人生の道標なども光と言っていいと思う。
僕にとっての光とは、突然僕の人生に現れた君だった。最後列の窓際の席は、片隅でひっそりと生きてきた僕の指定席だった。誰ともうまく接することができない僕には、...【がくルカ】鏡合わせの心
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私には、幼なじみがいる。
一つ年上の彼とは家が隣で、休日もよく一緒に過ごしていた。
「勉強を教えてもらう」という年下の特権を使って、彼の隣に居続けた。
彼が私のことをどう思っているのか、そんな大事なことだけはいつも聞けないままなのに。
「お願いします、勉強教えてください」
「よっし、まず先週自分が何...【がくルカ】ハニー・ミードは未だ苦く【ハロウィン】
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例えば、昨日まで隣を歩いていた君が、遠くに感じるようになった時。
例えば、久しぶりに会った君の背が、私を見下ろすくらいに変わっていた時。
どれだけ親しくても、長い年月がその関係を変えてしまうことは人生においてよくあることだ。
勿論それが悪いこととは限らない。より距離が縮まることだってあるし、会わなか...【がくルカ】黄昏のジャメヴ【ルカ誕】
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振り返れば、隣にはいつも君がいた。
楽しそうに笑う君が、僕のことをどう思っていたのか、それは本人にしかわからないけれど。
その距離感だけは、十年間ずっと変わらないものだった。
家が近所だったわけではない。
物心つく頃からの付き合いでもない。
ただ、小学四年生の春、席が近くなったことから仲良くなった。...【がくルカ】宵を待つ間、【がく誕】
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あなたに抱いた感情は、所謂初恋というやつだった。
いつのまにか目で追っていて、あなたの笑った顔が忘れられなくて。
あなたは誰にでも優しいから、私のことを特別に意識したことなんて、無いのだろうけど。
大多数のうちの一人でも良かった。あなたを見ていられるだけで十分だったから。
時々廊下ですれ違う時、いつ...【がくルカ】エンドロール
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「ねえ、この世界にさよならしちゃおうか」
彼のリクエストであるホットケーキを焼いている時、テレビを見ていた彼がそんなことを言った。
あまりに突然のことだったからびっくりして、私は手元に注意が向かないまま彼へ言葉を投げる。
「急にどうしたの。今火を使ってるから、驚かせるのはやめてよね」
「ああ、それは...【がくルカ】夜明けの約束【ルカ誕】
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“trick or treat”
それは夢の世界への合言葉。
菓子を渡すか、報復を受け入れるか。
その二択を問いかけるだけの祭は、いつしか意味を変えてしまう。
元々は秋の収穫を祝い、人に害を為す悪霊を追い出す目的のもと始まったこの行事は、年を経るにつれて民間行事となり、子どもが仮装しお菓子をもらう風...【がくルカ】ウタカタの夢【ハロウィン】
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誰か教えてください。俺には、わからないんです。
行き場のないこの想いを、どうすればいいのか。
その春も、俺は自身が通っていた高校で、教師をしていた。
母の顔を知らずに育ち、高校時代に父を亡くし、就職するまでは祖父と共に暮らしてきた。
十年ほどいるにも関わらず、俺の周囲と反してこの街並みは変わることが...【がくルカ】私の初恋と白衣の彼【side:G】
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あの日、彼が私に与えてくれたのは初恋でした。
だからこそ、得てしまったこの感情に、戸惑うことしかできないのです。
その春、私は地元から少し離れた高校に進学した。
父が二年間東京へ赴任することになり、母は父について行った。
私は東京行きの話に乗らなかったので、一人で暮らすことになった。
公私共に新しい...【がくルカ】私の初恋と白衣の彼【side:L】
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今日も私は、受話器の向こうの彼を知らない。
どんな表情をしているのか。
どんな部屋に住んでいるのか。
どんなことをして生きているのか。
当たり前のことを、私は何も知らない。
彼は昔隣に住んでいて、よく私と遊んでいた。
お互いの家に遊びに行き、勉強を教え合い、配役を決めて寸劇のようなものをしたり。
他...【がくルカ】君と僕との3分間【ルカ誕】
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夢を見た。遥か遠くに大切なものを置いてきた、そんな夢を。
目覚めた時、首元に汗が流れるのを感じた。何か恐ろしい夢を見た気がする。でもそれがどんなものだったかなど、もう思い出せそうにない。
時計を見ると、まだ深夜三時を回ったばかりだった。眠らなければ、明日の仕事に支障が出る。毛布を被り直して寝よ...【がくルカ】Plus memory【5】
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ある雪の日、俺は異世界に誘われた。
一瞬、何が起こったかわからなかった。
今日は寒いから夕飯は鍋にでもしようか、なんて考えながらスーパーから帰る途中だった。
近所の小さな神社の前を通りかかった時、「ここも数年でこんなに寂れてしまったなあ」と、なんとなく鳥居のひび割れを指でなぞった時だった。
急に目の...【がくルカ】もういいかい
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夢を見た。あなたが遠くへ行ってしまう夢を。
夢の中のあなたはとてもよそよそしくて。学校では毎日すれ違う度に「今日も頑張って」と優しく挨拶してくれていたはずなのに。
それは、彼の余命を知った日からだった。彼は私に目も向けてくれなくなった。廊下で会っても、委員会や学業に関することだけを告げて、彼は...【がくルカ】Plus memory 【4】
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その景色はいつのものだったか。
その問いは誰のものだったか。
全てが不確かな世界で俺たちは目を合わせることすらできない。
それでも花弁の舞う木の下、俺は君へと告げた。
俺の家の近所には一本の小さな桜の木があった。
その桜は俺の父が生まれるより前から植わっていたらしく、この地域に住む人は桜に見守られな...【がくルカ】埋もれ木に花が咲く【がく誕】
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嘘をついてもいい日なんて、そんな面倒なルールを誰が決めたのだろう。
そんなことをしなくても、世界は毎日優しい嘘で溢れている。
「神威さん、こんにちは」
放課後の教室で、教科書を抱えて扉を開ける。
「こんにちは。…ここは学校だから、先生って呼べよな」
「ごめんなさい。昔からの癖で…」
もう何度目かわか...【がくルカ】君への嘘、僕からの嘘
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未来の形を
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「二人、上手くいくといいけど」
教室の外で、中の様子を気にしながら呟く。
「大丈夫だとは思うよ。少なくとも今より悪化することはないだろう」
「うーん……でもなんか心配なんですよねえ」
「神威が詳しく話してないというのは予想外だった」
「おかげでルカの誤解もなかな...【がくルカ】memory【30】
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もし世界がたった五分前に始まったのだとしたら、私という人間をどうやって証明するのだろう?
それは突然のことだった。
一時間目のその授業は、普段とは別の席に座ることになっていた。
問題集をどけた机の端から目に入ってきたのは、まさに悪意そのものだった。
女子特有の丸っこい字で何の罪悪感もなく書き連なれた...【ルカ誕】世界五分前仮説
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12月24日。
街中が白い魔法に包まれる日。
街を歩く人々が、思い思いの感情を胸にその日を祝う。
息を吐けばそれは朝でも夜でも白く舞い上がり、小さく小さく分散されて静かに空中に消えていく。
ふわふわと舞い降りる粉雪は太陽の光で反射してきらきら光り、掴もうとすれば儚く溶けてしまう。
例え街でどんな事件...【がくルカ】前夜祭に抱えし夢は【舞台裏】
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『Consider my affliction and my travail. Forgive all my sins.』
「やあ、今日も元気そうで安心したよ」
もし運命なんてものがあるのなら。
敷かれたレールに歪みがないことを、祈り続けることしかできない。
七時四十五分の列車に必ず彼はいた。
平日...【がくルカ】終点:Desire
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"trick or treat"
お菓子か悪戯か。
わかりきった二択を迫り、自らの行動で幸福を満たす菓子や悪戯の『糖度』が決まる。
西洋から伝わった伝統は、やがてこの国にも楽しみな行事として根付いていく。
無邪気な子ども達は仮装してお菓子をもらい、時に可愛らしいイタズラをして帰っていく。
大人達は淡...Bitter Caramelle【ハロウィン】
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“trick or treat”
お菓子か悪戯か。
最初にその言葉を聞いたのはいつだっただろうか。
私にその言葉を教えてくれたのは誰だっただろうか。
今でこそよく聞くけど、当時の私には縁がなかったその言葉は、子どもの心をワクワクした気持ちで埋めるには十分で。
いつしか単純に繰り返されるようになった退...【がくルカ】Jackは甘き夢を見る【ハロウィン】