ブックマークした作品
-
「生きていてごめんなさい」
いつからだっただろう。こんな気持ちが湧いてきたのは。
いつからだっただろう。こんな弱音ばかり吐く自分が大嫌いだと思い始めたのは。つまらない人生だと思い始めたのは。
ああ……こんな私が生きていて、ごめんなさい。
「あの子、魔女なんじゃないの?」
「顔は若いのに白い髪なんて…...白ノ娘 ―1―
haruna
-
「ちょっとあんた」
ある晴れた昼下がり。
突然ノックもせずに堂々と部屋に上がりこんできたのは、隣に住む女の子だった。女の子の目は猫科の動物を彷彿とさせる瞳で、それが今は釣り上がっていて余計に怖い。女の子は腕を組んで私を見下ろす。
「あんた、緑の髪の子と仲良くしてるんでしょう?」
「はあ……」
女の子...白ノ娘 ―2―
haruna
-
私とミクちゃんは二人でこっそり村を抜け出して、街で暮らし始めた。
街は活気があって、あの私を蔑んでいた人達が住んでいた村とは違いとても居心地がよかった。誰も私を蔑まない。大切な人も隣に居る。
もちろん仕事無しでは飢え死にしてしまう。だから、私達は仕事を始めた。
不慣れな仕事と生活でも、二人なら大丈夫...白ノ娘 ―3―
haruna
-
「生きていてごめんなさい」
*
あの惨劇から数ヶ月。
私は町外れの教会で新たに暮らし始めた。
静かな教会。教会の近くには小さな港が有るが、余りそこに人は近寄らない。風が強いからだという。
そんなある日、革命で王女が死んだと風の噂で聞いた。
―当たり前だと思った。
今まで黄の国の国民を苦しめ...白ノ娘 ―4―
haruna
-
私とリンとが仲良くなって数日たったある日。
私は偶然、懺悔室の前を通りかかった。懺悔室の扉は少し開いていて、その中は幻想的でどこか厳かだ。穢れを寄せ付けない神聖さの様なものが有る。
薄暗い室内に目を凝らす。暫くそうしていると、誰かがすすり泣く声が聞こえてきた。か細く今にも消え入りそうな声。―それは紛...白ノ娘 ―5(最終話)―
haruna
-
「…レン?」
双子の弟の名前を呼びながら目を覚ます。あるはずの亜麻色が見当たらない。隣で寝ているはずのレンがいない。
「レン…?」
真夜中。外には半月。布団には私の温もりしか残っていない。
「レン…っ」
跳ね起きた。慌てて部屋を飛び出す。
着慣れないドレスの裾がまとわりついてくる。肩を露わに...思春期の歌声【リンとレン】
西の風
-
アドレサンス1.Au revoir
「…え?」
ハンマ―で後頭部をなぐられたような衝激がむねを突く。体が動かない。まるで初耳の外国語を聞いたように、ただいま聞いた言葉の意味が理解できない。頭の回転が速くならない。
原因は先程、部屋に戻って来た相手が取り出した一言。
『寝に来たんじゃないよ。お休みと言...アドレサンス1.Au revoir(上)
ファンタ
-
あのとき少年は、まばたいて問い返した。
『リンは?』
『リンはクマのぬいぐるみ。胸に抱えて寝られるほど大きいもので。いつも寝るときレンを下敷きにしちゃうから、代わりにするものが必要だって』
『……。』
いつか、"リンは寝癖が悪すぎ。おかげでオレがいつも下敷きになってちゃんと寝られないんじゃん"と流し...アドレサンス1.Au revoir(下)
ファンタ
-
…正直な話。
バレンタインデーなんてやってられない。
…と、思う。
「チョコなんてつくれるかぁぁあああああ!!!」
そういって、リンはそこにあった材料を全て投げ出すようにして、姉のメイコに泣きついた。
「メイコ姉、無理だよぉ…」
「そりゃあ、いたチョコをまるまんま鍋に放り込んだアンタには到底...双子番外、
リオン
-
ずかずかと人ごみを掻き分けてレンがリンの手を引いて進む。
「…レン」
「…」
不安そうなリンの声が聞こえていないのか、耳を貸さないだけなのか、レンは答える様子がない。
「ねえ、レン」
「…」
「レンっ…」
「リン」
いきなり口を開いたレンの声のトーンは異常に低く、まるで全く知らない人のように声...またいつか、桜の木の下で 10
リオン
-
「――ありゃ。レンとはぐれちゃった。どうしよ、レン、この辺り来た事ないんじゃ…」
レンの手からはなれ、リンが慌てだしたときにはもう遅く、リンは人のながれに乗ってレンとはぐれてしまっていた。大変だ!いや、普通なら年上でしかも男のレンを心配して後戻りまでしたりはしないのだが、どうも数年前からこの辺り、...またいつか、桜の木の下で 9
リオン
-
「レン」
「うん?」
ふと振り向いたレンの優しげな笑顔に、リンは思わず呼吸までも止めてしまった。
「どうしたの、リン?」
「あの…この間、掃除をしていたときに…見つけたの」
そう言って、小さくたたんだルーズリーフを手渡す。何なのか、理解できないレンはそれをぼけっとしたまま受け取り、ゆっくりと開い...またいつか、桜の木の下で 8
リオン
-
ふと、見上げた空は赤々と夕焼け色に染まり、そこに一筋、限りなく黒に近い灰色のラインがみえた。――黒煙?
その方向には、たしか――
「桜が…っ」
燃えている――?
「!!」
桜のところまで来て、リンは立ち尽くした。真っ赤に燃える炎の中、巨大な墨の固まりと化した桜の木が今にも折れてしまいそうにな...またいつか、桜の木の下で 7
リオン
-
強風の中、小さな花束は飛んでどこかに行ってしまいそうだ。
花束をフェンスに立てかけるようにしてしゃがみこみ、軽く手を合わせてそっと目を閉じて、心の中で呟く。
「リン、毎日あってるのにこんなときにばかりかしこまるのもおかしいけど…」
目を開く。
「…君に会いたいんだ」
今度は声に出して言った。...またいつか、桜の木の下で 6
リオン
-
大体、何が間違っていたのかといえば、初めて出会った相手に動揺してわけの分からないことを口走り、挙句の果てには泣いてしまったことだ。
「あぁぁぁあああああぁぁぁぁぁあああああああ」
わけの分からないことを口は知っただけならまだしも…。思わずレンは奇声を上げながら頭をぐしゃぐしゃと引っ掻き回し、ベッ...またいつか、桜の木の下で 5
リオン
-
「レン、大丈夫、顔色よくないよ?」
心配そうにリンがレンの顔を覗き込むと、レンは優しく微笑んで安心して、とでも言うように言った。
「うん、なんでもないから平気だよ。気にしないで」
「そう?なら、いいんだけど」
「掃除、手伝ってくれてありがとう」
「いいんだ。別に。テストが終わって暇だし、それに、こ...またいつか、桜の木の下で 4
リオン
-
「…リン」
ふと、レンがたずねた。笑顔でリンが答える。
「なぁに、レン?」
「今度、誕生日に、何かプレゼントとか、欲しいもんないの?」
今とは違う少しぶっきらぼうな言い方が、少し大人ぶった少年という風のレンの姿によく似合う。
「うーん、そうだなぁ…」
しばらく考えるように頬杖をついてみせると、...またいつか、桜の木の下で 3
リオン
-
正直、俺は『普通』じゃないと思う。
毎日何もせずにただぼうっと桜の木の下に寝転がって、綺麗に咲いた桜花と果てしなく広がり続ける青い空を眺める毎日。誰でも生きるために働き、金を稼いで汗水たらしているというのに、時折自分が何のためにここにいるかのすら忘れてしまいそうになる。
最近、毎日のように来る...またいつか、桜の木の下で 2
リオン
-
私、鏡音リンはごく普通の中学二年生である。
跳びぬけて学力が高いわけでも、超人的な運動能力があるわけでも、まして魔法が使えるわけでも、特別武術の有段者であるわけでも、相手を飛び上がらせるような凄い料理を作れるわけでもない。ごくごく普通の女子中学生。あえて言うなら、人より少し歌がうまいのと、少しだ...またいつか、桜の木の下で 1
リオン
-
-依頼者-
息が詰るような闇夜の沈黙に支配され、レンはベッドに倒れこんだ。
「なんなんだよ…」
隣の部屋にリンが戻っていったのか、ごそごそと音が聞こえてきて、レンはその音を掻き消すように思い切り布団を被った。枕を頭に押し付け、すべての音をシャットダウンする。
も...記憶屋・心屋 9
リオン
-
-終末-
まだ、意識は朦朧としたまま。
記憶の糸を手繰り寄せて、何があったのかをしっかりと思い出さなければ、と考えをめぐらす。次第に曖昧だった記憶がはっきりしてきた。
「…そうだ…」
確か、神威を呼び出して、神威がなかなかこないからってリンが見つけたという人影を確認...記憶屋・心屋 10
リオン
-
-記憶と心-
貴方の忘れたい記憶を、高値で買い取りましょう。
貴方が手に入れたい記憶を、安値でお売りしましょう。
DVDで、永遠に貴方のほしい記憶だけを。
貴方の心、鑑定します。
鑑定量は貴方の『光』の感情。
貴方の心の値段、私が鑑定いたします。
「ねえ、知っ...記憶屋・心屋 1
リオン
-
-第一依頼人-
依頼人の名は、『初音ミク』。二人と同じ学校に通う、二人より二つほど学年が上ではあるが、レンの部活の先輩と言うこともあり、それなりに面識はある。
漫画研究会――通称、漫研のアイドル的存在であり、多少腐女子であることでも有名な美少女である。一見楽観的で悩み...記憶屋・心屋 2
リオン
-
-欲望-
ふっと気がつくと、辺りは真っ暗で、人っ子一人見当たらない。どうやら、自分以外の生き物はこの辺り――少なくとも自分の視界に入る範囲内には――誰もいないようだ。
確か、自分は生徒に呼び出されて教室に行って、あのミクとか言う子供のことを言われて、それからわけ...記憶屋・心屋 3
リオン
-
-殺人者-
離れていく君は悪魔か死神か、そうでなければ気が狂ってしまったピエロ――幼いころの優しかった君はどこかに消えて、今そこにいる君は違う君。君はいつからか心から笑うことをやめ、怪しげな微笑をもって他人を蔑むことが多くなった。そんな君が怖くて、でも、君が離れて...記憶屋・心屋 4
リオン
-
-喪失-
しばらくその場に音はなかった。ヒュウ、と風が無神経に三人の間をすり抜けてどこかへながれていった。
「…制裁…」
「はい。それをこなさないと依頼完了にできないんです。それで、制裁の方法を決めていただかないといけないんですが」
「本人に選ばせるなんて、嫌なことす...記憶屋・心屋 5
リオン
-
-第三依頼人-
パソコンの前で自問自答を繰り返す。
画面がちゃんと表示されないわけでも、ペンタブが使えないわけでも、音楽が聴けないわけでもなかった。目の前に表示された画面は対して派手なわけではなく、枠の中に表示された文字は、記憶屋に向けて書かれたメッセージだった。...記憶屋・心屋 6
リオン
-
-密告者-
犯人。
犯人。
誰。
誰。
誰。
まさか、リンが?
そんな考えが脳裏をよぎり、あまりにこっけいな考えだと、レンはふっと笑いを浮かべて歩いていた。
「玩具が持ち主を裏切っていいはずがない」
玩具は裏切らない。所詮壊れる玩具は持ち主をしっかり...記憶屋・心屋 7
リオン
-
-傍観者-
例えば、物事を直接経験した当事者よりも第三者の方がうまくことを解決できるとか、実は実際よりも正しいことを考えられたり。
例えば、第三者の間違いは当事者には分からなかったり、第三者だと思っていた奴が犯人だったり。
例えば…。
これが、実は第三者ではなく身内...記憶屋・心屋 8
リオン
-
あけましておめでとう…。
堅苦しいか。
あけおめ。
馴れ馴れしい。
ことしもよろしく!
はっちゃけすぎだろうか。
ことよろっ!
もっとダメだ。
一体、なんと言って入ればいいんだ?
鏡音レンは幼馴染の鏡音リンの家の前で頭を抱えていた。...双子番外。
リオン