タグ「神威がくぽ」のついた投稿作品一覧(191)
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その記憶に確証が持てますか?
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目覚めたのは彼の部屋だった。確か彼と話していたら首元に何かを当てられて……、それで?
——“こんなところまで来るなんて、本当に馬鹿だな”——
最後に聞いた言葉を思い出す。そうだ、それで気を失ったんだ。
「起きたんだ」
声のかけられたほうを見る。カーテン...Memoria --『Symphony』--
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眠らない街、高みを目指して競い合うスタッフたちは、裏では仲がいいとは限らない。社会勉強とバイトを兼ねてやってみよう、と俺を誘った友人はもうすっかり鮮やかな照明と名声に彩られたこの世界に馴染んでいるようだ。
一方の俺は、次々に注がれる度数も値段も高いアルコールの量に慣れず、せっかくの休憩時間を手洗...【がくルカ】拍手と喝采【がく誕】
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恋をしている。こう言うとフィクションの物語に影響を受けすぎかと笑われそうだけど、ある日突然彼のことを異性として気にするようになってしまった。
昔から同じことをやっていたくせに、たまたま触れた彼の手のひらが記憶にあるものよりもずっと大きくて男らしいなと感じて、そうなると腕まくりをしたときにうっすら...【がくルカ】拝啓、となりの君へ
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君はもういない。
君はもう、私の前から姿を消してしまった。
君が何処へ行ってしまったのか。
君がどうして消えてしまったのか。
その理由を、私は一生知ることができないのだろう。
考えても考えても変わらない。
過去も現在も未来も変わらない。
過ちも嘘も事実も、何も変わらない。
何かを変えようとしたところ...【がくルカ】Future【1】
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友人につられてその空き教室に足を踏み入れたとき、浮かび上がった光景があった。
出席番号が一つ違う彼女は、いつも前の席で笑顔で話しかけてきたんだ。
……その空き教室に入ったのは初めてなのに、なぜか茶髪の女の子の笑う姿が頭から離れない。
立ち止まるオレの意思なんてお構いなしに、フラッシュバックは続いてゆ...【カイメイ】Plus memory【7】
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記憶の中の彼へ
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『空き教室で待ってる』
それだけ書かれたメモを握りしめて、私は教室の扉を開いた。カーテンの引かれた教室で、彼が背を向けて立っていた。
「来たね」
「約束ですから」
イスと机が端に寄せられた教室に、穏やかな光が差し込む。普段なら眠気が強くなるこの時間に、私は...【がくルカ】memory【31・終】
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玄関のドアが閉じた音を聞いて、眠気に閉じかけていた目を開く。ごろんと転がっていた体勢をそのままお見せするわけにはいかないので、さっと上半身を起こすと、丁度彼がリビングにやってくる。
「ただいま。寒かっただろう、体調は崩していないか?」
「おかえりなさい。大丈夫でしたよ。私は部屋で温まっていましたか...【がくルカ】ゆく年を思う
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平凡な人生を生きてきた。
映画なら、スタッフロールが流れ始めた瞬間に席を立つような。ミステリー小説なら、中盤で犯人が分かってしまうような。プラスチックのカップ一杯のコーヒーなら、飲み終わった後のカップに氷が半分以上残されているような。
他人にわざわざ語ることもないほど、特別な出来事を人生に刻ん...【がくルカ】夕映えの君
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もう自らの存在を証明する手立ては失った。
あとは生きるか死ぬかを選ぶだけだ。
そうすれば、余計なことは考えなくてもいい。
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その日から、別の誰かが俺に成り代わった。
記憶喪失になった俺は、自身のことを『神威 学』だと思い込んでいた。
それどころか、屋上から投身自殺をした記憶があっ...Memoria --『Serenade』--
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「やあ、久しぶりだね」
私は目の前の光景に目を疑った。
最後の授業を終えたその日、卒業前に一度景色を見ておきたいと屋上に行ったら、神威先生が柵にもたれかかっていたのだ。しかも白衣も着ていなければ眼鏡もしていない。それに、「久しぶり」なんて言葉はおかしい。
「……毎日授業では顔を合わせているはずな...【がくルカ】Plus memory【6】
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その日、私は初めて一人になった。
きっかけは些細なことだった。唯一の家族である兄と口喧嘩になり、頭にきた私は部屋に戻り、リュックに荷物を詰め込んで家を飛び出した。
リュックの中身は一日分の着替えと財布くらいのもの。せめて今日一日くらいは、兄の顔を見たくないと思った。
勢いで飛び出してきたもの...【キヨリリ】わたしの居場所【Lily誕】
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「流れ星が流れている間にお願い事をすると、それは叶うんだって」
かつて彼女から聞いたその話を、今更思い出したのはどうしてだろう。
流れ星を確実に見る方法は流星群の情報を調べることで、次に大きな流星群が見られるのは、八月十二日のペルセウス座流星群。だけど、大量に夜空を流れ落ちる星屑にかける願いは、...約束の日まで【がく誕】
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毎週土曜日、午後七時半。それは紫の彼と一緒にいられる唯一の時間。
いつものように各自で食材を持ち寄って、徒歩五分の距離にある彼の家に集まる。お酒が入ることもあるけど、それはどちらかの気が向いた時に限り、大抵はウーロン茶を飲んでこのひとときを過ごしている。
今日もまた、私は彼の向かいの席で、彼の...【がくルカ】グラスを満たす感情は
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光とは、決して掴み取れないもののひとつだ。物理的な話だけではなく、例えば輝かしい未来や思い描いた希望、人生の道標なども光と言っていいと思う。
僕にとっての光とは、突然僕の人生に現れた君だった。最後列の窓際の席は、片隅でひっそりと生きてきた僕の指定席だった。誰ともうまく接することができない僕には、...【がくルカ】鏡合わせの心
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私には、幼なじみがいる。
一つ年上の彼とは家が隣で、休日もよく一緒に過ごしていた。
「勉強を教えてもらう」という年下の特権を使って、彼の隣に居続けた。
彼が私のことをどう思っているのか、そんな大事なことだけはいつも聞けないままなのに。
「お願いします、勉強教えてください」
「よっし、まず先週自分が何...【がくルカ】ハニー・ミードは未だ苦く【ハロウィン】
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例えば、昨日まで隣を歩いていた君が、遠くに感じるようになった時。
例えば、久しぶりに会った君の背が、私を見下ろすくらいに変わっていた時。
どれだけ親しくても、長い年月がその関係を変えてしまうことは人生においてよくあることだ。
勿論それが悪いこととは限らない。より距離が縮まることだってあるし、会わなか...【がくルカ】黄昏のジャメヴ【ルカ誕】
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振り返れば、隣にはいつも君がいた。
楽しそうに笑う君が、僕のことをどう思っていたのか、それは本人にしかわからないけれど。
その距離感だけは、十年間ずっと変わらないものだった。
家が近所だったわけではない。
物心つく頃からの付き合いでもない。
ただ、小学四年生の春、席が近くなったことから仲良くなった。...【がくルカ】宵を待つ間、【がく誕】
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あなたに抱いた感情は、所謂初恋というやつだった。
いつのまにか目で追っていて、あなたの笑った顔が忘れられなくて。
あなたは誰にでも優しいから、私のことを特別に意識したことなんて、無いのだろうけど。
大多数のうちの一人でも良かった。あなたを見ていられるだけで十分だったから。
時々廊下ですれ違う時、いつ...【がくルカ】エンドロール
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「ねえ、この世界にさよならしちゃおうか」
彼のリクエストであるホットケーキを焼いている時、テレビを見ていた彼がそんなことを言った。
あまりに突然のことだったからびっくりして、私は手元に注意が向かないまま彼へ言葉を投げる。
「急にどうしたの。今火を使ってるから、驚かせるのはやめてよね」
「ああ、それは...【がくルカ】夜明けの約束【ルカ誕】
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今日もベルスーズの入り口のベルが鳴る。
入ってきた人物はやはりいつも通りの冷めた表情で立っていた。
「いらっしゃい、深川さん」
「相変わらず繁盛してないのね」
「何を今更。深川さんこそ、ここのところ毎日じゃないか」
「いろいろあるのよ、いろいろとね」
深川さんは入り口から三つ目のいつものカウンター席...Distance【Ⅳ】
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“trick or treat”
それは夢の世界への合言葉。
菓子を渡すか、報復を受け入れるか。
その二択を問いかけるだけの祭は、いつしか意味を変えてしまう。
元々は秋の収穫を祝い、人に害を為す悪霊を追い出す目的のもと始まったこの行事は、年を経るにつれて民間行事となり、子どもが仮装しお菓子をもらう風...【がくルカ】ウタカタの夢【ハロウィン】
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誰か教えてください。俺には、わからないんです。
行き場のないこの想いを、どうすればいいのか。
その春も、俺は自身が通っていた高校で、教師をしていた。
母の顔を知らずに育ち、高校時代に父を亡くし、就職するまでは祖父と共に暮らしてきた。
十年ほどいるにも関わらず、俺の周囲と反してこの街並みは変わることが...【がくルカ】私の初恋と白衣の彼【side:G】
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あの日、彼が私に与えてくれたのは初恋でした。
だからこそ、得てしまったこの感情に、戸惑うことしかできないのです。
その春、私は地元から少し離れた高校に進学した。
父が二年間東京へ赴任することになり、母は父について行った。
私は東京行きの話に乗らなかったので、一人で暮らすことになった。
公私共に新しい...【がくルカ】私の初恋と白衣の彼【side:L】
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今日も私は、受話器の向こうの彼を知らない。
どんな表情をしているのか。
どんな部屋に住んでいるのか。
どんなことをして生きているのか。
当たり前のことを、私は何も知らない。
彼は昔隣に住んでいて、よく私と遊んでいた。
お互いの家に遊びに行き、勉強を教え合い、配役を決めて寸劇のようなものをしたり。
他...【がくルカ】君と僕との3分間【ルカ誕】
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すっかり日も暮れて、カラスの鳴き声さえもしない午後8時。
不思議な空間を抜け、次に目を開けた時にはアパートの小さな一室の中にいた。
「あ、おかえり!一泊するって聞いた時はびっくりしたよー」
マスターがお茶をすすりながら私たちに言った。
まさかとは思うけど、私たちが帰ってくるまでずっと201号室にいた...ヴォカロへ遊びに行こう 15(完)【コラボ・ゆ】
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夢を見た。遥か遠くに大切なものを置いてきた、そんな夢を。
目覚めた時、首元に汗が流れるのを感じた。何か恐ろしい夢を見た気がする。でもそれがどんなものだったかなど、もう思い出せそうにない。
時計を見ると、まだ深夜三時を回ったばかりだった。眠らなければ、明日の仕事に支障が出る。毛布を被り直して寝よ...【がくルカ】Plus memory【5】
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ある雪の日、俺は異世界に誘われた。
一瞬、何が起こったかわからなかった。
今日は寒いから夕飯は鍋にでもしようか、なんて考えながらスーパーから帰る途中だった。
近所の小さな神社の前を通りかかった時、「ここも数年でこんなに寂れてしまったなあ」と、なんとなく鳥居のひび割れを指でなぞった時だった。
急に目の...【がくルカ】もういいかい
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夢を見た。あなたが遠くへ行ってしまう夢を。
夢の中のあなたはとてもよそよそしくて。学校では毎日すれ違う度に「今日も頑張って」と優しく挨拶してくれていたはずなのに。
それは、彼の余命を知った日からだった。彼は私に目も向けてくれなくなった。廊下で会っても、委員会や学業に関することだけを告げて、彼は...【がくルカ】Plus memory 【4】
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その景色はいつのものだったか。
その問いは誰のものだったか。
全てが不確かな世界で俺たちは目を合わせることすらできない。
それでも花弁の舞う木の下、俺は君へと告げた。
俺の家の近所には一本の小さな桜の木があった。
その桜は俺の父が生まれるより前から植わっていたらしく、この地域に住む人は桜に見守られな...【がくルカ】埋もれ木に花が咲く【がく誕】
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嘘をついてもいい日なんて、そんな面倒なルールを誰が決めたのだろう。
そんなことをしなくても、世界は毎日優しい嘘で溢れている。
「神威さん、こんにちは」
放課後の教室で、教科書を抱えて扉を開ける。
「こんにちは。…ここは学校だから、先生って呼べよな」
「ごめんなさい。昔からの癖で…」
もう何度目かわか...【がくルカ】君への嘘、僕からの嘘