タグ「鏡音リン」のついた投稿作品一覧(236)
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ひどい目にあった次の日、わたしは、お父さんの罵声で目を覚ました。
「リン! お前、どこへ隠れた!?」
わたしは、文字通り飛び起きた。隣では、やっぱりこの声で起こされてしまったらしいハク姉さんが、驚いて目を見開いている。
「出て来い! この、ろくでなしめ!」
思わずベッドから出ようとしたわたしを...ロミオとシンデレラ 第七十六話【泣かせてください】
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注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
ルカの視点で、本編四十六話【イン・コールド・ブラッド】のサイドエピソードになります。
よって、本編をそこまで読んでから、読むことを推奨します。
【悪いのはあなた】
神威さんの家族との食事会があった次の日、私は買い物に出かけることに...ロミオとシンデレラ 外伝その二十六【悪いのはあなた】
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ずいぶんと時間が経過したように思えたけど、実際はそうでもなかったんだろう。とにかく警察がやってきて、ソウイチさんは連行された。もう大丈夫と言われたので、わたしとハク姉さんも部屋の外に出る。わたしの姿を見たお母さんは、蒼白になって駆け寄ってきた。
「リン!」
わたし、きっと、ひどい姿なんだろう。鏡...ロミオとシンデレラ 第七十五話【生と死の狭間で】後編
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その日の夕食、わたしが一階に降りて行くと、ソウイチさんとやらはまだ居た。……帰ったと思ったのに。どうしてまだいるんだろう。
わたしは不快な気分で、食卓についた。お客さんがいるからか、食事の内容が普段より凝っているし、食器も上等なものだ。……きっと、お父さんがそうしろって言ったんだろうな。そうまで...ロミオとシンデレラ 第七十五話【生と死の狭間で】前編
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お父さんがわたしに縁談を持ち込んで来てから数日、お父さんはわたしに何も言って来なかった。もっとも、何も言って来なかった、というより、ほとんど顔をあわせなかった、の方が正しいのかもしれない。例によって帰宅が遅いし……。わたしの方も、家にいても仕方がないので、一限から講義がない日でも、その時間には学校...
ロミオとシンデレラ 第七十四話【目は独りでに物を見る】
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「巡音さん、大変よくできていますよ」
大学の先生はそう言って、わたしが渡した原稿を置いた。
「ありがとうございます」
「じゃあ、これ、次の分ね」
どさっとプリントが渡される。わたしはそれを、自分の鞄に仕舞った。
「できたら来新学期が始まるまでには仕上げてもらえる?」
わたしはかかる時間を計算し...ロミオとシンデレラ 第七十三話【わたしの望みは大きすぎるの?】
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わたしが大学に入学した年の六月、ルカ姉さんはガクトさんと結婚した。こっちの家に入る形になるので、ガクトさんの方が巡音の姓を名乗ることになる。
こういう家だから仕方がないけれど、大きな式場で、かなり派手な式になった。そしてお母さんに訊いてみたのだけれど、ルカ姉さんは結局、式に対して自分の希望は全く...ロミオとシンデレラ 第七十二話【滅びにいたる門は大きく】
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ニューヨークでの新生活は、想像していたのより大変だった。幸いなのは、新学期が九月からとのことで、それまではちょっとだけ、こっちに慣れる余裕があったということ。もっとも、それでもやることは山積みだったが。
転入試験も無事合格し、九月からはこっちでの高校生活が始まった。日本とこっちでは学校のシステム...アナザー:ロミオとシンデレラ 第六十七話【どこにいても君の姿が】
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次の週から、わたしは学校に戻った。当然、レン君は登校して来なくて、わたしは淋しさを感じずにはいられなかった。いつもなら、わたしが登校してしばらくすると、レン君が登校してきて「おはよう」って声をかけてくれるの。
「リンちゃん、大丈夫?」
必死で我慢しているわたしに声をかけてくれたのは、やっぱりミク...ロミオとシンデレラ 第七十一話【別れて会えないのは辛いこと】
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レンは無事にリンちゃんに指輪を渡して、戻ってきた。……指輪以外にも色々あったみたいね。本人は語りたがらなかったけど、表情を見ていると察しがつく。ああやれやれ、私、なんでここまで気を回してるのかしら。
金曜にカイト君を呼んで食事をする旨を伝えると、母さんはかなり驚いていた。でも、反対はされなかった...ロミオとシンデレラ 外伝その二十四【母の立場】後編
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母さんと私はそれから何度も打ち合わせをして、その上でレンに話をした。当然激しい反発が返ってきたけど、最終的にはなんとか、レンにこの話を納得させることができた。
ただレンの方も条件を出してきた。それは、リンちゃんに直接、この話をすること。でなければニューヨークへは行かないというのだ。私は困って、ハ...ロミオとシンデレラ 外伝その二十四【母の立場】中編
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注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
メイコの視点で、『アナザー:ロミオとシンデレラ』第六十三話【真実が充分ではない時がある】~第六十六話【分かれた道】のサイドエピソードとなっており、また、外伝二十三【メイコの思案】の直後の話となっています。
したがって、【分かれた道】、...ロミオとシンデレラ 外伝その二十四【母の立場】前編
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ずっとリンと抱き合っていたかったけれど、そういうわけにも行かない。明るくなったら、誰かに見つかりやすくなってしまう。だから、俺は暗いうちにリンの家を出ることにした。
脱いだ服を身に着ける俺を、リンは泣きそうな表情で眺めていた。そんな顔しないでくれ。
「リン、俺はもう行くよ」
引き伸ばすと、余計...アナザー:ロミオとシンデレラ 第六十六話【分かれた道】
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夜が明ける前に、レン君は帰り支度を始めた。それは仕方がない。明るくなったら、見つかりやすくなってしまうもの。でも……やっぱり淋しい。
身支度をするレン君を眺めながら、わたしは必死で涙を堪えた。こんなところで泣いたりしたら駄目だ。そう思うものの、気持ちは治まってくれない。これから、長い間会えないん...ロミオとシンデレラ 第七十話【朝を告げるヒバリ】
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安心させたところにこんな話をして、大丈夫だろうか……。でも仕方がない。もともと、この話をするために来たんだ。
「……家族と話し合って決めたんだけど、俺、しばらく母さんとニューヨークに行くことにした」
俺の言葉を聞いたリンは、驚いた様子で顔を上げ、こっちを見つめた。
「そんなのおかしいわ。レン君は...アナザー:ロミオとシンデレラ 第六十五話【夜は恋人たちのものだから】後編
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二日後の水曜日、俺はハクさんに教えられたとおり、リンの家にやってきた。初めて見るリンの家は、初音さんの家に負けず劣らずの豪邸だった。
すごい家だけど……リンを閉じ込めている茨の城でもあるわけか。ここから、リンを出してやれないのが歯がゆい。
俺は息を大きく吐くと、家の裏手へと回った。ハクさんの言...アナザー:ロミオとシンデレラ 第六十五話【夜は恋人たちのものだから】前編
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あ、レン君の話はまだ途中だったんだ。わたしったら、自分のことにかまけてばっかり。
「ええ……ごめんなさい、遮ってしまって」
わたしがそう答えた後、レン君はまたしばらく黙っていた。言いにくい話みたい。安心したのに、また心の中に不安が広がっていく。
「……家族と話し合って決めたんだけど、俺、しばらく...ロミオとシンデレラ 第六十九話【まだ諦めてはいけない】後編
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閉じ込められてから、何日が過ぎたんだろう。毎日がほとんど同じ様子で過ぎて行ったので、わたしはだんだん、時間の感覚がわからなくなりつつあった。この部屋には、時計はあってもカレンダーは無いし。
わかったところで、意味はないのかな……。わたし、もしかしたら、もうここから出られないかもしれないんだ。こん...ロミオとシンデレラ 第六十九話【まだ諦めてはいけない】前編
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注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
外伝その七【ある日のアクシデント】の直後の話で、お手伝いさんたちの会話のみで構成されています。
なお、本編第六十五話【育ちは誰よりも上】までのネタバレを含みますので、そこまで本編を読了してから読むことを推奨します。
【スケルトン・イ...ロミオとシンデレラ 外伝その二十二【スケルトン・イン・ザ・クローゼット】
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ニューヨーク行きの話が出た翌日、俺が学校から帰ってくると、意外な人がいた。
「初めまして」
「え?」
相手の顔を見て、俺はびっくりして声をあげた。……写真で見ただけだけど、この人は知っている。リンのお姉さんだ。
「ハクさん、ですよね? 引きこもっているって、聞きましたけど」
「あ、うん。今も表向...アナザー:ロミオとシンデレラ 第六十四話【君に続く道】
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数日が経過した。俺が巻き込まれた――この場合、これでいいんだろうか――トラブルを聞いた母さんは、即座に有休を取り、日本に戻ってきた。
「何も戻って来なくても」
「息子の一大事に引っ込んでられますか。ちょうど有休も溜まっていたし。それに、向こうは『姉じゃ話にならん。母親を出せ』の一点張りだって言うし...アナザー:ロミオとシンデレラ 第六十三話【真実が充分ではない時がある】
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閉じ込められてから、数日が過ぎた。外に出してもらえないことを除けば、生活に不自由はない。食事や着替えはお母さんが運んできてくれるし、頼めば本やCDも持ってきてくれる。でも、外に出してもらいのは辛い。外に出て、レン君に会いたかった。
わたしはほとんどの時間を、例の手紙を読んで過ごしていた。
「リン...ロミオとシンデレラ 第六十八話【穢れを知らぬ心】
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注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
リンの継母であるカエさんの視点で、第六十四話【育ちは誰よりも上】のサイドエピソードになります。
したがって、『ロミオとシンデレラ』を、【育ちは誰よりも上】まで読んでから、読むことを推奨します。
【気づかないふり】
六月の最後の日曜...ロミオとシンデレラ 外伝その二十一【気づかないふり】
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月曜日。普段と同じように起きだした俺は、普段と同じように朝食を取り、学校へと出かけていった。いつもと同じ時刻に学校に着き、昇降口で靴を履き替えて、校舎に入って教室に行く。
教室に入った俺は、いつもの癖でリンの席を見てしまった。リンは大抵俺より先に来るので、俺が教室に入ると、自分の席で本を読んでい...アナザー:ロミオとシンデレラ 第六十二話【マネシツグミを殺すな】
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夢を見た。
わたしがいるのは、高い塔のてっぺんにある小さな部屋だ。窓はあるけど、ドアは無い。他に誰もいない、円い小さな部屋の中で、わたしは一人、ベッドに腰を下ろしていた。
しばらくそうしているうちに、だんだん息苦しくなってきた。部屋はそんなに広くないし、窓は一つだけ。そしてその窓はしまっている...ロミオとシンデレラ 第六十七話【わたしの髪はあなたを待って】
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クオと初音さんが昼食を薦めてくれたので、昼は初音さんのところでご馳走になった。二人とも、気が咎めているらしい。二人のせいじゃないんだが。って、今日はこんなことばかり考えているな。
昼を食べ終えると、俺は帰宅した。心の中にがらんどうの場所ができて、そこに風が吹き込んでいるような気分だ。……平たく言...アナザー:ロミオとシンデレラ 第六十一話【塔の中の姫君】
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時間が過ぎて、寝る時間になった。でも、少しも眠くなってくれない。ベッドに寝転がって、わたしはぼんやりとしていた。
その時、またドアを叩く音がした。……お父さんじゃないわよね。わたしは首だけ起こした。またドアを叩く音。わたしがそれでも返事をせずにいると、今度は声がした。
「……リン、もう寝ちゃった...ロミオとシンデレラ 第六十六話【わたしはずっと嘆いていなければならないの?】後編
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わたしはしばらく、床に座って呆然としていた。けど、いつまでも呆然としてもいられない。立ち上がると、部屋の中を見回す。
わたしの部屋と同じくらいか、少し広い部屋だ。白いシーツのかかったベッドに、戸棚と書き物机。小さなテーブルに、椅子が二脚。ベッド脇にはスタンドが立っている。家具はそれぐらいで、どち...ロミオとシンデレラ 第六十六話【わたしはずっと嘆いていなければならないの?】前編
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日曜日、わたしはクオと居間でゲームをしていた。例によって、音楽ゲームで対戦中。受験生だけど、たまには息抜きも必要だもんね。
「くそっ、また負けた」
クオがそう叫んで、コントローラーを投げた。……ふふん、連勝記録更新っと。
「そろそろ音ゲーやめて別のゲームにしようぜ」
「じゃあ、ダンスゲームを……...アナザー:ロミオとシンデレラ 第六十話【ミクの涙】
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日曜の午前、俺はミクとゲームをしていた。受験生のくせに悠長なって? 普段はちゃんと勉強しているよ。これは、勉強の合間のささやかな息抜きって奴だ。
「くそっ、また負けた」
俺はコントローラーを放り投げた。ゲームとはいえ、負けるのは悔しい。
「そろそろ音ゲーやめて別のゲームにしようぜ」
「じゃあ、ダ...ロミオとシンデレラ 第六十五話【クオの苛立ち】
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俺は電車を乗り継いで、初音さんの家に向かった。前に来たから道は憶えている。インターホンを押すと、クオが出てきた。
「レン……どうしたんだその顔」
途中で確認したが、殴られたところは腫れていた。当分目立つだろうなあ、これ。
「初音さんは?」
「奥にいるぜ、入れよ」
クオに言われるまま、奥の部屋に...アナザー:ロミオとシンデレラ 第五十九話【アモール・プロイビード】後編
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五月、六月とさほど何事もなく過ぎて行った。そして六月の最後の日曜日、この日はリンとデートをする約束をしていたので、俺はデート先の美術館に出かけた。
待ち合わせ場所につくと、リンはもう来ていた。何だか暗い表情をしている。
「……リン?」
「あ、レン君」
俺が声をかけると、リンははっと顔をあげた。...アナザー:ロミオとシンデレラ 第五十九話【アモール・プロイビード】前編
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家へと向かう車の中で、わたしはずっと泣きじゃくっていた。なんでこんなことになってしまったんだろう。どうして、気づかれてしまったんだろう。
やがて、家についた。お父さんがわたしに、車から降りろと言う。泣き続けて疲れたわたしは、言われるままにぼんやりと車を降りて、家に入った。
「リン……」
お母さ...ロミオとシンデレラ 第六十四話【育ちは誰よりも上】後編
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六月の最後の日曜日、わたしはレン君とのデートの待ち合わせ場所にいた。今日の行き先は美術館なので、お母さんには「美術館の展示を見に行ってくる」と言ってある。
もう、六月も終わり。時間が過ぎるのが、なんだか早くなったように思う。……特に、レン君と一緒にいる時間は早く過ぎるように感じてしまう。
七月...ロミオとシンデレラ 第六十四話【育ちは誰よりも上】前編
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リンと妙なことになりかけた後、俺たちは日常に戻った。戯曲の改定の残りは、学校でやることにしたし。……周りに人の気配があれば、妙なことをする気にはならないだろう。そうでないと困る。
そして、四月が終わる前に戯曲の修正は終わり、俺たちは練習に入れるようになった。学祭が終われば、俺たち三年は引退だ。否...アナザー:ロミオとシンデレラ 第五十八話【この世は辛いところ】