ブックマークした作品
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ベッドの温もりがちょっと恋しくなる冬の朝
昨夜に降った雪が朝日を受けまぶしく煌めく
待ち合わせの場所に時間より少し早く着いて
白い息を切らせながら自販機へ向かう
作戦開始
君の驚く顔、とっても見たいの
ターゲットは君のほっぺた
上手くいくかな 今からどきどき
温かい二本の缶コーヒー この胸に抱いて
...温もり作戦
晴明桔梗
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A
そっと目を閉じて 懐かしい子守唄と
さぁおいでなさい 暖かな灯(ともしび)まで
B
散り散りに消えてゆく想いを
招くのは古(いにしえ)の深い緑
C
大樹と祈るは 翡翠の目 透ける腕(かいな)
痛みも嘆きも 包み込み土へ還す(かえす)...深緑の夢守人
フゥ
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見上げてもそこには変わらぬ色の
変わらぬ空がただ広がってる
繰り返されるのは変わり映えしない毎日
ため息漏れてしまう
広がる無風地帯は もう嫌というほど見てきたから
変革という名の風をこの地に 吹かせるため
風よ駆けろ 雲を散らし 広大な空を震わせろ
変わらぬ世をかき乱すためなら どんな犠牲もいとわ...一陣の風
晴明桔梗
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果たしていつ頃からだったろうか 私の心に現れたのは
それは希望の象徴みたいな とてもとても明るい灯火
暗闇に灯るこの光があれば 私は我が道をどこまでも行ける
それを初めて見つけた時には それを信じられたんだけどね
でもやがて知ってしまった それが力すら放たない 偽物の炎だって
実際は何も燃えちゃいな...熱の無い炎が燃える
晴明桔梗
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罪の烙印を押された者が 明かりのある街から追われ 人の寄らぬ暗がりに集う
あの時あの場の一言で
俺の道から光が消えるなんて 知り得る訳もなかっただろう
住み慣れていた地を追い出され 途方に暮れていた俺に 彼らは居場所を与えてくれた
ここが俺の新たな住処 光の無い地に生きる道があった
俺達の住まうこの...井戸の底
晴明桔梗
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沖から広がる黒い霧 世界を包み纏わり絡む
穴の空いた襤褸帆布 まるで微睡み虚ろ髑髏の目
目を凝らせば遙かなる沖に浮かび上がるあの光
セント・エルモの双火を宿す【シリウス】と言う名の幽霊船
沈没して尚 船とクルーの魂は幾百の時間を進み
夙に思い出せぬ目的地へと船を進める錆びて狂った羅針盤
”嵐を呼ぶ災...【KAITO】大海に広がり響け 蒼い光と八点鐘(はってんしょう)
taman
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「これはこれは、あなたでしたか
その節はどうも有り難うございました
して、こんなへんぴな所に何の御用です?
見学? 私の商売をですか?
面白くも何ともありませんよ?
それでも構わないとおっしゃるなら
どうぞご自由に」
町裏で店を開く、私は闇商人
お客様の顔色窺いながら
薄暗い世界を渡り歩...薄影の商人
晴明桔梗
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そびえる塔に叩きつけられる 弾丸の音を聞けば
霞のようにまどろむ街も 眠りから放たれるさ
溜めた我慢が遂に破られる 待ちに待ったその合図
娯楽に耽る指揮官共の とろい目を覚まさせるぜ
放たれろ閃光 突き抜けろ爆音
天空を飛び回る 待ち焦がれたこの感覚
俺達の爪痕を 歴史に深く刻み付ける
その時は ま...サンダーボルト
晴明桔梗
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今日も私はいつものように
叱られ蹴飛ばされ 押し込められる
この家でただ一つ私に与えられた空間
狭く暗い物置の中へ
人は皆平等なんて 一体誰が言ったのか
壊れた秤を使っても 釣り合うものも釣り合わない
事ある毎に難癖付ける 横暴な叔父を憎めばいいのか
家中の家事を押し付ける 理不尽な叔母を怒ればいい...幸せの無い物置
晴明桔梗
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ああ面倒臭い 面倒臭い
何でこんなにも 面倒臭い
考えるのすら 面倒臭い
ただただとにかく 面倒臭い
座布団の上に 片肘突いて
気だるい身体を 横にしている
やる気が出ないの ねえお願い
あたしの代わりに 働いてよ
面倒臭いと 思えば思うほど
身体が牛のように 重くなっていくの...面倒臭いです
晴明桔梗
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ふもと通り過ぎる 道行く人々
曇ったガラスの目
それを眺めるのは 憂いに満ちた
少女の淡い瞳
咲き誇る花の首を切り取り回る
残酷な鳥の鳴き声すら遠く聞こえて
誰も俯き見上げなくなった大樹 その梢の上に佇む少女は
冷たい幹の感触を覚えながら 何を思うのだろう
力感じられぬ しなった枝から
垂れ落ちる水...落ちる大樹
晴明桔梗
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休みの日の広いグラウンドに 放たれる強い夏の日差し
雲一つ無い青い空の下 走り抜けてく君の姿を
離れた木陰のベンチからそっと見守る
そろそろ足を休めて 涼しい所で休憩しようよ
そんな日に当たり過ぎちゃ いつかバテちゃうでしょう
さあこっちに来て、静かにそよぐ木陰で涼もう
熱くなった身体、冷たい水で冷...そよぐ木陰へ
晴明桔梗
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彼女を返して 今はただ寝ているだけなのに
彼女を戻して もう戻れない場所へ連れて行かないで
彼女を返して 暗く俯いてる人達よ
彼女を戻して 聞いてよ、まだ生きているんだよ
皆何を考えている 何故彼女を殺そうとするの
愛しい僕の婚約者 皆喜んでくれたじゃない
それなのにこんな事をするの
輝くようなあの...業火
晴明桔梗
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荒涼たる大地 空を突く山脈 人の侵入を拒む
小さな弱き民 打破する力無く 開拓は進まずに
「俺の出番だな」 呟き、ゆるり腰を上げる
大地を耕し 山を拓く
軟弱者は下がってろ
俺は先導者 弱き民を助ける男
俺がいなけりゃ誰も進めない
毎日汗を流し 毎日ただ働く
それが俺の役目なのだから
畑荒らす獣 牙...俺は先導者
晴明桔梗
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夜道歩く 足音が響いてる
静かな夜 耳鳴りがするほどに
何でこんなに音がしないの
痛いほどの静寂
音を欲し ただ悶える鼓膜に
微か届く か弱い虫の音色
なんて息苦しい 張り詰めたこの空気
もう我慢できない 静寂を壊したい
誰も何も音を出してはいない まるで誰も生きていないかのように
何でそんなに黙っ...沈黙破り
晴明桔梗
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前からここだと決めていた
秋の休日のドライブコース
空の機嫌を祈りながら
入念にルートをチェック
落ち葉の季節が描き出すのは
真っ赤に燃え盛るモミジの街道
君に見せたいこの光景を
自慢の車に二人を乗せて アクセルを踏み込む
延々と続く 紅のトンネルを
どこまでも どこまでも走り抜けろ...紅のトンネルを抜けて
晴明桔梗
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誰も入ってこないで 私は一人でいたいの
私だけのこの城に 他の人を入れたくない
全てのドアに鍵掛けて 門を閉ざす
ここには他の誰もいない
私だけの閉ざされた城
無機質な鋼の玉座に
私はぽつんと座ってる
裸足で歩く石の回廊
ひやりと冷たい返事だけが
誰もここにはいらない 私一人だけの世界...独りぼっちの城
晴明桔梗
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静かな心地よい歌 聴きながら眠りましょう
優しい波の揺りかごは 暖かい母の膝のように
そっと そっと
あなたを眠りに誘う
眠りなさい、可愛い子よ
幼い身体を胸に抱き 小さな額にそっと口付け
「お休み」
もぞもぞしてどうしたの 困った顔して、眠れないの?
心配しないでいいのよ あなたが眠りにつくまで
...さざ波の子守歌
晴明桔梗
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人々の暮らしが始まる
遙か以前からそこにあった
多くの生き物を迎え
多くの生き物を育む
広大なる湖沼
蛙は楽しく合唱し
水鳥は華麗に宙を舞う
水辺の生き物は全て
彼らを住まわせ育てる
その湖沼に感謝する...湖沼の涙
晴明桔梗
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拝啓 お久しぶりです
君は元気にしてますか
僕は今もこの町で
変わりなく過ごしています
君というとてもすばらしい
親友に出会えた この町で
固い絆で結ばれた二人は
仲の良い兄弟のように
いつもいつでも一緒だった
あの日々はいつまでも忘れずに...遠き友に宛てた手紙
晴明桔梗
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笑顔の中に隠れ潜む
俺の中のどす黒い俺
狂おしい衝動が狙うは
何も知らない無垢な身体
理性の仮面を捨てた時
化け物はその姿を見せる
汚れを知らない弱き獲物は
もうその牙から逃げられない
やめろと言われてもやめられない
止まらない気持ち 止まらない願望...毒牙
晴明桔梗
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信号が青く染まり 人の波が押し寄せる
スクランブル交差点 真昼の喧噪
数え切れない他人の意識に 押し込められた一人の男は
誰にも気付かれる事無く やがてそこから姿を消す
視界が移り変わり 目前に広がる黒い壁
重くきしむ轟音 扉が開く
入ればきっと戻れない そう思っているはずなのに
自分の心を置き去り...白昼の迷路
晴明桔梗
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凡庸な日々を送ってた僕は
突如目の前に現れた君に
引き寄せられたあの時から
ずっと君の背中を見つめていた
一度見かけただけなのに
それだけで僕は恋に落ちた
一目惚れしたあの横顔
最後に見たのはいつだろう
話しかけるだけの勇気
それすら僕には無いなんて...君の背中を見つめていた
晴明桔梗
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広告一杯に広がった笑みは
心の底で不満をたぎらせてる
俺と同じ
行き交う人々の顔に付いた笑みは
どれも皆同じ形の印刷物
俺もその一つ
張り付いた表情 渇いた目蓋
心など通っていない
化粧をするかのように俺は笑っていた
いつからかそこに気持ちは無くて...ドライフラワー
晴明桔梗
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満月の夜に 開かれる
それは秘密のダンスパーティ
誰も知らない舞踏会に
ねえ、来ないかい
夜行性な連中が集まる
薄闇の中のパーティ会場
目を凝らしても見えないけれど
知っている奴は知っているんだ
裏路地に隠れてる扉を開けば
そこはもう別世界だ...月夜の舞踏会
晴明桔梗
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幸せが去った今では
思い出ばかりが残ってる
人は皆消えゆくものと
気付いた時にはあなたはいない
辛い涙と共に 取り残された一言
ああいつも胸に込め
伝えたかったこの思い
でも今は遠い地へ
あなたは遠い
目を閉じて夢に入れば...届かないあなた
晴明桔梗
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空を流れる雲達は
己の行方を 知っているのかな
青く広がる空眺め
知らずこぼれた ため息が一つ
制約という鎖に縛られた私は
あの自由な雲にあこがれていた
強く力を込め大地を蹴れば
あの遠い世界へ行けるだろうか
この胸に 抱いたあこがれ
息苦しい この大地から離れ...白い風に乗って
晴明桔梗
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潮騒が静かに響き渡る 春の海岸沿い
君と二人 出会った時から歩き続けてきた
二人だけの憩いの場
昇ってくる日の温もりと共に 歩いて来る君を待つ
桜並木の街道を通うのが 君のお決まりの通い路
桜はさぞ綺麗だったのだろう 手を振りながらやって来る
彼女の顔には満面の笑顔
僕の心は日に当たるように暖まる
...青に舞う
晴明桔梗