タグ:針降る都市のモノクロ少女
20件
17.
『都市の亡骸から炎は消え、燻り続けている。
静寂は全ての生命を包み込み、未来に帳を下ろす。
願いの果ての世界でも、夕焼けは鮮やかな紅い色だった。
これは愛の為に嘘を吐き続けた、ありふれた少女の物語』
彼女は丘まで歩きました。
礼拝堂でどれだけ泣いたかわかりません。
泣き疲れてしば...針降る都市のモノクロ少女 17 ※二次創作
周雷文吾
16.
わたしは復讐を果たしました。
わたしのアレックスを撃った浮浪者に。
わたしは復讐を果たしました。
わたしからアレックスを奪ったエコロジストに。
わたしは復讐を果たしました。
わたしからアレックスを奪った市長に。
……わたしは復讐を果たしました。
わたしからアレックスを奪った、...針降る都市のモノクロ少女 16 ※二次創作
周雷文吾
15.
ボロボロになった高級車の前には、閑散としたバリケードが。後には暴力と略奪と炎をまとった阿鼻叫喚の混沌が繰り広げられていた。
一番地区は無法地帯と化した。
女の破壊と扇動によって。
女の……怒りと嘆きによって。
「……」
女は高級車のボンネットから降り、背後の一番地区の惨状を眺める。...針降る都市のモノクロ少女 15 ※二次創作
周雷文吾
14.後編
細長いゴンドラの真ん中でスティーブの方を向いて腰を下ろす。
こういう小舟に乗るのは初めてだけれど、意外に揺れるな、というのが率直な感想だった。
「じゃ、お二人様ごゆっくり」
ダンが手を振るのに、わたしは微笑んでうなずき返す。
「じゃ、出すよ」
スティーブがオールを漕ぎ、ゴンドラが...針降る都市のモノクロ少女 14後編 ※二次創作
周雷文吾
14.
「ええと……その、リン?」
その声に、オレはようやくハッとする。
バリケードから暴徒と化した群衆が走り出していく……そんな頭の中の妄想が溶けて無くなり、崩壊した一番地区から七番地区のカフェへと、周囲の光景が様変わりしていく。
「あ……、その。すま……ごめんなさい。オ……わたし、ぼうっとし...針降る都市のモノクロ少女 14前編 ※二次創作
周雷文吾
13.
「ハーッハッハッハッハーッ! サイッコーだなぁ! ええ? おい!」
一番地区を駆け抜ける高級車の後部座席から身を乗り出し、女が高らかに笑っている。
車内は冷静さを崩しもしない運転手である執事と、恐怖に凍りついた警官と少年、それから一人呵々大笑している女だった。
飛行船が高層ビルを破壊し...針降る都市のモノクロ少女 13 ※二次創作
周雷文吾
12.
飛行船の船体がぐにゃりとたわむ。
破裂寸前の風船みたいになったそれは、衝突した相手が押し負けたことで辛うじて破裂を免れた。当の相手は、飛行船の衝突に窓ガラスが粉々に割れ、構造材を歪ませ外壁材が砕かれ、その巨大な体躯を傾かせる。
窓ガラスの欠片がキラキラと乱反射し、外壁材が瓦礫と化し、傾...針降る都市のモノクロ少女 12 ※二次創作
周雷文吾
11.
『市長、転落死!』
女はニヤニヤと笑みを浮かべながら、そんな見出しの新聞を広げている。
場所は富裕層の住む二番地区の端の端、三番地区との境界に建つ、二番地区にしては小ぢんまりした邸宅の執務室だった。
執務室のデスクに敷かれた厚手の絨毯、自己主張は控えめだが優雅な彫刻品の数々。建物の規模...針降る都市のモノクロ少女 11 ※二次創作
周雷文吾
10. 後編
「スパイカーズ、か。ニードルスピアにぴったりの名前じゃねーか。針よか釘の方がちっと太いけどな」
「彼らと現在敵対しているのが七番地区方面を拠点としているブルースカルズです。両者がこの都市の二大ギャングと言えるでしょう」
「さあて、どっちがオレの味方にふさわしいかねぇ。今んとこスパイカー...針降る都市のモノクロ少女 10後編 ※二次創作
周雷文吾
10. 中編
「……」
やがて廊下の途中にちょっとしたスペースのあるところにたどり着く。そこにはいくつかの放置されたロッカーと、上へと続く梯子があった。
梯子を登り、また別の室内へ。さっきの部屋よりはマシだが、それでもまだ汚い。
とはいえその汚れは先ほどまでとは違い、人の生活によって生じる汚れ...針降る都市のモノクロ少女 10中編 ※二次創作
周雷文吾
10.
「違う! 俺が指示した訳じゃない! 俺のせいにされたんだよ。殺したかったわけでも、殺そうと思っていたわけでもない!」
窓のない、コンクリートで囲われた薄汚い部屋の中央で、全身を椅子に縛られて座らされている男が絶叫する。
少しまどろんでいたオレは、夢想を止めて舌打ちする。
口にしていたロ...針降る都市のモノクロ少女 10前編 ※二次創作
周雷文吾
9.
「ギュスターヴ・ファン・デル・ローエ二世。我、ニードルスピアの名に置いて汝の罪を裁かん。己が罪を数えよ」
「は……? いったい何の冗談――」
「一つ。レオナルド・アロンソを操り、十二年前の革命もどきを引き起こした罪」
告げながら、女は市長の目の前まで悠然と歩を進める。
「待ちたまえ。誰の許可...針降る都市のモノクロ少女 09 ※二次創作
周雷文吾
8.
「彼は生前、この都市の為に良く働きました。市長と友人でもあった彼は、市長を助け、また一般市民の味方となりこの都市への貢献を忘れませんでした」
針降る都市から少し離れた郊外の墓地で、神父が聖書を片手に祈りを捧げている。
どんよりとした空からは、重苦しい雨が降っていた。いつもの霧雨と違って、雨...針降る都市のモノクロ少女 08 ※二次創作
周雷文吾
7.
女が路地裏を抜けて通りの道へと出る。
瞬間、黒い影が現れる。
「マム!」
少年が叫ぶが、黒い影は――。
「ミセス。お待たせしました」
影はそこで待っていただけで、そう女に声をかける。
「ん? ああ、ディミトリ。別に待ってねーよ。ありがとな」
女は影に――執事に声をかけ、振り返る。
「...針降る都市のモノクロ少女 07 ※二次創作
周雷文吾
6.
マスターの元にやって来てから、ずいぶん時が経った。
季節は何度も巡り、わたしはマスターの手に引かれてこの都市の酸いも甘いも見てきた。
色んな約束をした。
ゆびきりげんまんもした。
マスターに拾われるまで、わたしにはなんの価値もなかった。
けれど、今は違う気がする。
マスターの手助...針降る都市のモノクロ少女 06 ※二次創作
周雷文吾
5.
この都市は運河の河口に位置し、元々は運河と海路を使った交易で発展した都市だった。
産業が発展するまでは漁業も盛んだったが、産業の発展に伴い漁港は次々と貿易港へと作り替えられていき、あっという間に漁業は衰退した。
この都市――針降る都市は、運河で分けられた東西、そして貿易港や工場の密集する...針降る都市のモノクロ少女 05 ※二次創作
周雷文吾
4.
ぼくはとびらの外をポカンと見つめる。
すっごく高いところにきてるはずだってことはわかってたけれど、まさかそんなに高いなんて思っていなかった。
「どうした、早く入りたまえ」
「まーまーそんな焦んなって。コイツは初めて来たんだ。ビックリくらいするさ」
「ふむ、そういうものか」
「なんだよ。少年...針降る都市のモノクロ少女 04 ※二次創作
周雷文吾
3.
鋼鉄の都市の中央である一番地区。二十階を越える建造物が集まる高層ビルエリアの中でも一際高いその建物は、都市行政庁舎という名前だった。が、ここの持ち主――市長の名前から広くギュスターヴタワーと呼ばれ、市民の多くもそれが正式名称だと認識している。
仮に――ほとんどあり得ない話だろうが――市長が...針降る都市のモノクロ少女 03 ※二次創作
周雷文吾
2.
ぼくはただ空を見上げる。
きりさめがふっていたはずなのだけれど、そこかしこからでてくるじょうきや、たてものがこわれるときのほこりで、そんなのはあんまり気にならない。
ドン、ズドン。
さけびごえ、ひめい。
ズズン、ガシャン。
おたけび、ときの声。
ガラガラ、ガラガラ。
かんせい、...針降る都市のモノクロ少女 02 ※二次創作
周雷文吾
針降る都市のモノクロ少女 ※二次創作
1.
日が傾き、雲が赤く染まってゆく。
都市の至る所から蒸気機関の白煙が立ち昇り、都市の中央で一際高くそびえる鉄の塔が、その蒸気で揺らいでいた。
鋼の身体と蒸気の血液で脈動する鋼鉄の都市は、日の陰り程度でその活動を止めたりはしない。
鋼鉄の都市。
眠る...針降る都市のモノクロ少女 01 ※二次創作
周雷文吾