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テーブルを囲む様に5人がぐるりと座った。キーを叩く音がカタカタと響いていて口を開くきっかけを掴めないで居た。
「完了です。」
「判った、始めてくれ。」
「おい、この子は良いのか?聞かせて。」
「構いません、ある意味彼女も当事者ですから。」
翡翠さんはそう言うと画面に何かを打ち出した。リストの様な物が...BeastSyndrome -50.解けない糸-
安酉鵺
「木徒…!」
走っている途中で腕を捕まえられた。この涙の意味がもう自分でも判らなかった。ただとても見ていられなかった、あんなに仲が良くて、見てる方が嫉妬しちゃう位お互いを想ってて、ほんの少し前迄愛の言葉を伝えていたのに…!
「どうして…?ねぇ、何で?!スズミさんどうしちゃったの?!」
「…覚えてない...BeastSyndrome -49.見れない顔-
安酉鵺
光だけでは何も助ける事は出来ない
影だけでも誰も救う事は出来ない
ならば知らなければならない
ならば辿らなければならない
それは今迄通り過ぎてきた道
全てに通じる記憶を確かめなければならない
全てに通じる思いを知らなければならない
心の欠片を拾い集めて
記憶の中に眠る思いを
どうかこの連鎖を断ち切っ...BeastSyndrome -48.BeastSyndromeTrick-
安酉鵺
「スズミさん…!良かった~気が付いたんだぁ…。」
「木徒ちゃん?…あれ?私…?」
「倒れたんだよ、大丈夫か?」
目が覚めると自分の部屋のベッドに寝かされていた。私はどうやら倒れてしまったらしい。さっきまであんなに痛かった頭は嘘みたいにスッキリしていた。
「詩羽さん、私どの位寝てたんです?」
「半日位...BeastSyndrome -47.残酷な笑顔-
安酉鵺
コンサート襲撃の事は、ホールの被害も含めて大きな騒ぎになっていた。
「うわ…下にもマスコミ来てるみたい…。」
「大きな事故だったからな、余り窓際に寄るな、木徒。誰彼構わず写真撮ってるみたいだし。」
「ねぇ詩羽さん…この記事…どう言う事?」
『【TABOO】によるテロ行為?!コンサートが大惨事に!!』...BeastSyndrome -46.カナリア-
安酉鵺
ブラインド越しに日が差し込んで、眩しくて目が覚めた。身体を起こすけど見覚えの無い広い部屋。
「う…?どこ?ここ?」
「ん~~~…。」
「……きっ…!きにゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!」
広々としたリビングの真ん中で…。
「ごめんなさいっ!」
正座で謝る羽目になるとは…。...BeastSyndrome -45.食欲も無敵-
安酉鵺
目を開けると天井が見えた。ベッドを占領して私だけ眠ってしまったらしい。
「あ…れ…?詩羽さん…?」
詩羽さんの姿は見えなかった。ベッドから降りた瞬間、何かが割れる音がした。
「詩羽さん?」
「…げほっ…!げほっ!あ…ぐっ…!」
「詩羽さん?!詩羽さん!!」
「木…!…ごめ…そこの薬…取っ…げほげほげ...BeastSyndrome -44.宣戦布告!-
安酉鵺
「…何じゃこの高級マンション!!」
「普通だろ…デカイ声出すな使土、俺の部屋はこっち。」
階数が2桁行ってたら俺に取っては充分高級マンションです。バットに言われるままクマ女を担いで部屋にあがる。室内なのに天井高い!玄関が既に広い!家具少ないけどテレビデカい!これでワインセラーとかあったらぶん殴る!
...BeastSyndrome -43.目を逸らす-
安酉鵺
「ぶっ…くくくくっ…!そ…其処は姫抱っこじゃね?翡翠。」
「い…良いから…て…手伝って下さい…啓輔さん…。」
眠りこけてしまったリヌを背負い、ゼーゼー息を切らして、髪も服もボロボロで翡翠が帰って来た。自分の家に帰らず俺のマンション迄わざわざ連れて来る辺り、律儀なのか馬鹿なのか…。翡翠はソファにリヌを...BeastSyndrome -42.デジカメは何処だ!!-
安酉鵺
「…翡翠さん…翡翠さんっ…!ひす…きゃあっ?!」
突然バサリとカーテンが翻った。驚いたのとカーテンを被ったのとで、思わず顔を伏せた。
「風…?」
顔を上げるか上げないかで目の前が暗くなった。え…?これ…カーテン?
「…どうして貴女は私を呼ぶんですか…!」
「翡翠さ…きゃっ?!」
後ろから強く抱き締め...BeastSyndrome -41.君の虜-
安酉鵺
いきなり車に押し込められて、何処をどう走ったのか判らない、永遠にも取れる時間の後、この場所に着いた。車から引き出されると、顔も判らない白衣の人達が機械的に私達を調べ、そして、今は部屋に一人取り残された。部屋にはベッドと小さな棚と窓が一つ、テレビも無い。入った事無いけど監獄ってきっとこんな感じ。
「…...BeastSyndrome -40.声を枯らして-
安酉鵺
はい質問です、目の前に何か黒ずくめで『コフー…コフー…』とか言ってらっしゃる変な人が居たらどうしますか?①全力で逃げる、②全力で逃げる、③全力で逃げる。ダメだ、脳内選択肢ネガティブ…。
「黒ずくめにメタルアーム…報告のあった新装備BSってこいつかよ…一体どうやって倒…!」
「あれバラせば動き止るぞ。...BeastSyndrome -39.狂気の引き金-
安酉鵺
遠くで叫び声が聞こえる、目の前が赤い、これは何?口の中が鉄臭い味で一杯になる。寝てちゃダメだ、早く立ち上がらないと、あいつを倒さないといけないんだ、でないとまた俺の『家族』が傷付くんだ。あれ?どうしたんだろう?身体が動かないや、指先も全然ダメだ、声すら出せないみたいだ。
「全ては奇跡の名の下に…。」...BeastSyndrome -38.空虚な紅-
安酉鵺
「動ける人は早く外へ!こっちだ!」
「羽鉦様!各ゲートで新装備BSを確認!このままでは避難した観客が巻き込まれます!」
「冗談だろ?!このまま居たら火が…!」
会場の火と、ゲート前のBS、まずい、このままでは奴等の思う壺に…!
「おい!【MEM】研究所の救護班だ!」
「これで霊薬が使えるぞ!」
「待...BeastSyndrome -37.ただ強く、凛として-
安酉鵺
歓声は一瞬にして悲鳴に変わった。ひしめき合っていた人達が混乱し、逃げ惑う。
「リヌ…!リヌ!!しっかりしろ!!」
「リヌちゃん?!」
叫ぶ声に我に返り、もうもうと煙が残る『ステージだった場所』へ急いだ。天井の照明が地面に突き刺さる様に落ちていて、何時倒れるとも知れない不安定さだ。
「くそっ…!誰か!...BeastSyndrome -36.無情の針-
安酉鵺
「さーって!皆盛り上がってるー?!りんごはまだまだ元気だよ~!」
「ネムリも~元気なの~。」
「じゃあね、じゃあね、次はコンサート限定の即席ユニットだよ~ぉ!」
「まずは~キュートボイスのニューフェイス~薙音紫苑ちゃ~ん。」
「そしてそして!エンジェルボイスの冰音リヌちゃんでぇ~っす!」
割れんばか...BeastSyndrome -35.踏み躙られた歌-
安酉鵺
ざわつく館内、一杯の人、人、人。鼓動と共に押し寄せる背筋が凍る様な緊張感と、それを打ち消す程の高揚感。
「ユウさん!スタンバイお願いします!照明消えたらイントロ入ります。」
「OKです。」
「…見てて…騎士…。」
照明が点くと同時に嵐の様な歓声と音の波が押し寄せる。
――――――――――――――――...BeastSyndrome -34.消えない火-
安酉鵺
「はい、リハーサルOKでーす!休憩入りまーす!」
「あ…先輩!」
「リヌちゃん。」
「あの…この前は酷い事言って本当にごめんなさい!私…その…先輩に嫉妬してました!」
「…ぷっ…!ご、ごめんなさ…!り、リヌちゃん…素直過ぎ…!!あははははは!!」
「だ、だってぇ~…。」
「もう、良いよ、気にしてない...BeastSyndrome -33.野良猫?いえいえ蝙蝠です-
安酉鵺
「おはよ。」
「おはようござ…!ど、どうしたんですか?!羽鉦さん!!その顔!!先…騎士も!!」
「犬に噛まれた。」
「猫に引っ掻かれた。」
「…2人で喧嘩でもしたんですか…?」
「ま、そんなとこ。」
「あ~、すっげ痛ぇ…。」
2人は傷だらけだったけど、何故だか私はホッとしてしまった。だって2人共笑っ...BeastSyndrome -32.もう少しだけこのままで-
安酉鵺
「さぁて、ユウ!いよいよコンサートよ!今日はしっかり寝て体調を万全に整える事!」
「うん。」
私達はまだ知らなかった。
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「リヌー?早く寝なさいよ、明日大変なんだから。」
「...BeastSyndrome -31.前夜-
安酉鵺
「スズミさ~ん…。」
「木徒ちゃん、おはよ…って、どうしたの?!顔が真っ赤だよ?!」
「えっと…ちょっとだけ熱があるみたいで…。」
「熱って…。」
木徒ちゃんの額に手を当てるとかなり熱い。ちょっと所じゃない高熱じゃない!昨日お風呂に落とされたって聞いたけどそのせい?!真っ赤な顔でフラつく木徒ちゃんを...BeastSyndrome -30.何があればそうなるの?!-
安酉鵺
闇雲に走った。ただ恐くて、悲しくて、寂しくて、何処をどう走ったのかすら全然覚えていない程。気が付けば屋上前の階段に居た。ドアを開けようとしたけどカギが掛かっていて、ようやく私は走るのを止めた。
『詩羽…スズミは?』
本当は皆私の事なんてどうだって良いんだ…!ただ妹だから、可哀想だから、患者だから、ス...BeastSyndrome -29.吐息に目を瞑る-
安酉鵺
「羽鉦さん…!羽鉦さん…!」
「大丈夫…もう大丈夫だから…。」
震えて泣きじゃくる木徒を抱き締めたまま宥めた。でも同時に、何かが引っ掛かっていた。何故詩羽が此処に…?そうだ、俺は元々スズミが此処に連れて来られたから…。
「詩羽…スズミは?」
「やっと思い出したか。ちゃんと居るよ、そこに。」
指差した...BeastSyndrome -28.それでも君を選ぶから-
安酉鵺
施設に着いた時辺りはもう真っ暗になっていた。あの後『用事がある』と帰ってしまった菖蒲翡翠の代わりに冰音リヌを送り届けていたら予定より随分遅くなった。少し疲れたけど、まぁ面白い物が見れたし良いか…。
「お帰りなさいませ、あの…社長がお見えです。」
「詩羽が?」
「はい、あの…実は…。」
「スズミ連れて...BeastSyndrome -27.最善と最悪-
安酉鵺
「よし、復活!」
「食い過ぎだろ…。ゼブラの木徒思い出した…うぷっ…気持ち悪ぃ。」
「女の子にとって甘い物は別腹っ!」
「はいはい、それで?探す奴ってのは?」
私は翡翠さんの特徴を判るだけ書いてみた。似顔絵も描いたんだけど見た瞬間溜息で即却下されちゃった。書き留めたメモを見ると羽鉦さんは暫く考えてか...BeastSyndrome -26.怒らないで-
安酉鵺
無神経だって言われた。それは自覚してるつもり。好奇心で過去をほじくられても喜ぶ人なんて居ない。だけど私は悔しかったの、言いたい放題言われて、酷い事言ったのに謝る事も出来なくて悔しかった。
「せめて服返す位…良いよね…?」
捨てて良いって言われた翡翠さんの服はちゃんとクリーニングして私の手の中にある。...BeastSyndrome -25.ケーキ食べてから!-
安酉鵺
結局私はコンビニには行かなかった。重い沈黙の中翡翠さんは律儀に私を家迄送り届けてくれるつもりの様だ。そう言えばさっき弐拍さんこの人に命令っぽいのしてたよね。
「あの…菖蒲さんは弐拍さんの部下なんですか?」
「いいえ。」
「あ…そうですか…。」
即答で会話ブチ切りですか、話全然続かないじゃない!何考え...BeastSyndrome -24.悲しい雨が降る-
安酉鵺
どうしよう…タトゥーしてる人って何か恐いし、でもこのままじゃ変な所とか連れてかれて変な事とかされそうだし、どうしよう、どうしよう…あ!そうだ!警察!警察に電話して…!
「あ、携帯貸してよ、メアド入れるからさ。」
「ヤダ!返して!返して!」
「大丈夫だって。」
「ホント可愛いね~。流石アイドル。」
「...BeastSyndrome -23.どっちが泥棒?-
安酉鵺
ダメだと言われるとやりたくなる事って絶対ある。入っちゃダメって言われると入りたくなる、聞いちゃダメ、見ちゃダメ、言っちゃダメ、判ってるけど気になっちゃったの。
「リヌちゃん?どうしたの?ずっとPC見てるけど…何か調べ物?」
「あ、えっと、学校の宿題で!」
「そうなの、あんまり夜更かししちゃダメよ。」...BeastSyndrome -22.空気読んでよね!-
安酉鵺
「あ~冰音リヌちゃんだ。うわ~可愛い~♪」
「え?タレントなのか?」
「使土、女の子を羽交い絞めにする物ではありませんよ、手を放しなさい。」
その言葉に意外とあっさり手を放してくれた。強盗…じゃ、ない?でも何この怪し過ぎる集団!女装!スーツ!全身黒!思いっ切り疑いの目を向けているとまたピアノの音が聞...BeastSyndrome -21.不可侵領域-
安酉鵺