リオンの投稿作品一覧
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すんすんと鼻を鳴らしながら、涙を抑えようとしているリントの丸まった背中をみて、レンカはどう声をかけたものかと、戸惑っていた。戸惑いながら、小さなマメ柴がお預けをくらってシュンとしている様なイメージが重なるのを、レンカは必死に打ち消そうとしていた。
「しゅき…って(笑」
「笑うなよ!!」
「はっ、ご...Some First Loves 26
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「レン、遅いなぁ…」
リビングのソファを独りで占拠すると、リンはつまらなそうに呟いた。
ばたばたと騒がしい足音が聞こえる。
玄関で誰かの、たのもー、という声が聞こえた。
「はいはーい」
グミが玄関を開けると、その相手が誰で、何の目的なのかを理解する前に、客はずかずかと家の中に入っていった。
...ホワイトデーとクッキー 下
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――さかのぼること、一ヶ月前。巷はバレンタインデーと言う言葉と、男女の和気藹々とした雰囲気につつまれていた。
その日、俺は、双子の姉とチョコレートを作った。
今年は固まらなかったの、と謎の言い訳をした姉は、結局、俺と一緒に作っても、まったく謎の行動しか起こさなかった。
その壱、チョコレートが...ホワイトデーとクッキー 上
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年に一度、大切な人にチョコレートを渡す日。
バレンタインデー。
それは二月十四日、今日のこと…。
「ミク姉、めー姉、ルカ姉、チョコレートどうぞ!」
リンはそういいながら、可愛らしくラッピングされたハート型のチョコレートを、三人の姉達に差し出した。
「ありがとう、リンちゃん。これ、私からね」
...鏡音とちょこ。
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目の前に母がいる。
レンカははっとして、リントとつないでいた手を解いて、少し距離を置いた。途端、リントは足を速めて、うつむき加減に家へと向かった。
家の前で笑っている親の前を素通りした。
「――リント。ただいま」
父を一睨みして、リントは無言で家のドアを開いた。
確かに、新婚旅行から帰って...Some First Loves 25
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帰り道は、元の二人ずつのペアになって帰ることになった。女子陣の提案に、男子陣が応じたのだった。
「レンきゅんは優しかったなぁー」
グミは言った。
「ふーん」
グミヤは聞き流した。
「ハンバーグ美味しかったしー」
グミは語りながら、隣を歩くグミヤに時折ちらり、ちらりと目をやったが、グミヤは特に...Some First Loves 24
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夕飯を終えると、グミは席を立って、携帯電話を開いた。
電話ではなくメールをしているようで、しばらくたって携帯電話を閉じると、グミは少しそわそわしながらソファに座った。
レンは気にしていない様子で食器を食器洗い機にキレイに並べ、慣れた手つきで操作した。
しばらくして、携帯電話が鳴って、グミはす...Some First Loves 23
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「まあ、とりあえず、夕飯にするけど…。何食べる?」
レンは既に家になじみ始めているグミに聞いた。
「ビーフストロガノフ!」
「無理。」
「えー…。最近はまってるテレビでちょくちょく出てくるんだけど…」
「その話グミヤから聞いた。もうあいつをいじめないであげて」
例の怪しい子供向け番組だ。
あの...Some First Loves 22
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「――チッ」
露骨に嫌な顔をして舌打ちをしたリントに、レンは
「やめろよ、お前人がいい気分で話してんのに」
「リントはまた自分たちが一番距離のあるカップルに舞い戻ったから気分悪いんだろ」
「破滅してしまえばよかったのに…!」
「どんだけ悔しいんだよ! 応援してくれてたじゃん! 裏でそんなこと考えて...Some First Loves 21
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走り、足が地面につくたび、水溜りから雨水が跳ねて、少し薄着の服装では、いくらジャケットを着ていると言ってもまだ寒い。
走りながらリュックから遊園地の一日フリーパスを探し出すと、レンはリュックを肩にかけなおした。元々あるほうでもない運動神経は、既に少し悲鳴を上げ始めている。
昔から、リンは運動神...Some First Loves 20
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巨大迷路の辺りを、グミ、グミヤ、リント、レンカの四人はずっとうろうろし続けていた。もうリントレンの二人が迷路に入っていってから随分たっているから、いまさら追いかけたところで迷ってしまうのが関の山だが、それでも出口の近くで張り込みを続けるような集中力や落ち着きを、この四人(特にグミ)が持っているはず...
Some First Loves 19
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「レーン! おたおめ!!」
後ろからリンが飛びついてくるのを、レンは軽く上半身を右に傾けて避けた。
「はいはい、おめっとさん」
胡坐をかいたレンの膝の上に寝転がるような状態になったリンの頭をぽんぽんとたたいて、テレビゲームの画面から目を話そうともせずに、レンは軽くあしらった。
「むー、レン、面白...おたおめってリンがいう。
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「…って、何やってんだ俺ら…」
自分たちに引き気味に、グミヤが言った。
建物と建物の間の狭い空間から、子供の初めてのお使いを見守るような気分で、リンとレンの二人を見つめる人影が、グミヤを入れて四つ。
「心配で…」
とレンカは少し笑った。
「フォローしてやら無いと」
それに合わせてリントが言っ...Some First Loves 18
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それは、今から少し――十年ほど前のクリスマス。
「…レンはぁ?」
ぷぅっと頬を膨らませて、小さなリンは不満を全面に押し出して言った。
「レン君はマスターとお仕事。レン君がんばってるから、リンちゃんもがんばって我慢して、ね」
どうにか妹をなだめようとするミクだったが、そんな理屈でハイそうですかと...リンは変わらない。
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「デート?」
グミヤとリントが声をそろえた。
こくんと頷いたレンの顔は赤く、なんだか動きもぎこちない。
「よかったじゃねーか。ぐっと距離近づいたろ」
「俺…、まともでいられる自信がねぇ…」
どうやら緊張しまくりのレンをリラックスさせようとするが、ガチガチに固まったレンは中々リラックスどころか、...Some First Loves 17
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「どうやって仲直りしたし」
呆れ気味で、リンが言った。リンに言われてはおしまいである。
「あははー。なんかいつの間にかねー」
いつに無く上機嫌で登校してきたグミは、面倒くさそうなグミヤの腕にひっついて、ニコニコと笑っていた。が、グミヤのほうも実はまんざらでもなさそうで、ぎゅうぎゅうと鬱陶しいくら...Some First Loves 16
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「…ん?」
靴箱の中に、何かが入っている。グミヤは中を探って、それを取り出した。どうやら手紙のようだ。
これは、あれだ。所謂――
「ラブレターだ」
隣からレンが言った。
それは薄桃色の封筒で、淡いブルーのペンで丸い文字が書かれていて、いかにも可愛らしい手紙だった。
まず盛り上がったのはリン...Some First Loves 15
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数日たって、リントとレンカのいちゃつきが以前ほどに戻ると、六人の関係は、また落ち着きかけていた。――が、またも問題が起こった。
グミとグミヤが喧嘩を始めたのである。
「なんでそうなるんだよ!」
「なんでもだもん! グミヤなんかもう知らない! あっちいって!」
「何で俺がお前のいうこと聞かなきゃい...Some First Loves 14
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「――で、何故俺の部屋に集まる!?」
どんどん押しかけてくる友人達に、グミヤはそう叫んだ。
「だって…なぁ」
ショートケーキを食べながら、レンが言う。
「うん。ケーキ美味しいね」
レンから言葉を受け取ったリンは、ミルフィーユを食べる。
「あ、私クッキーもって来たよ」
そういいながら鞄をごそご...Some First Loves 13
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その夜、リントは家に帰らなかった。
帰らなかったと言っても、ネットカフェで一夜を明かしたとかそういうことではなくて、レンカがそろそろ眠っただろう、と言う時間になるまで、外で時間をつぶしていたのである。
そして、リントが家に帰ると、時計は既に午前の一時半を回っていた。
レンカと顔を合わせるのが...Some First Loves 12
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「…何、え、何、何何何何何!!」
後ずさりしながら、レンが言った。辺りにはギスギスした雰囲気が漂っている。
「今日、学校にきてからずっとこんな感じなの。二人とも他人みたいに…」
他人みたいに、お互い別々に、と言うのとはなんだか違うような気が、レンにはしていた。お互いが、ではなく、寧ろリントが露骨...Some First Loves 11
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「…どうしたんだ、あいつ…」
リントは走り去って行ったレンカの後を見送って、シャーペンをペンケースにしまい、立ち上がってリンを見下ろすと、
「ごめん、帰るわ。…後はレンに教えてもらえ」
「うん…。仕方ないね。ありがと」
リントはすばやくスクールバッグをリュックのように背負うと、流石の運動神経で、...Some First Loves 10
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最近、六人でいることも増えてきた。
転校先でこんなにも早く仲のいい友達ができるとは思っていなかったし、ぽわぽわしているレンカがちゃんと友達を作っているようで良かったという気もするし、なにより、同じような境遇の仲間が二人もいることは心強い。
まあ、多少、そいつらが茶化してきたとしても…。
数学...Some First Loves 9
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ずんぐりむっくりのキャラクターが、画面の中で暴れまわっていた。最近話題の、よくわからないアニメである。
「だから何故俺の部屋に来て見る」
「いや、電波がさ」
「電波なのはお前だ。家隣同士で、電波の違いなんかねぇだろ」
言いながら、グミヤはグミが好きなクッキーを持ってきて、なんとなしに隣に腰を下ろ...Some First Loves 8
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「『どーじんし』かこーぜ!」
ある日の昼休み、グミがいった。
全員の視線が一瞬で、鋭く、あるいは睨む気力もなく、自信満々なグミにむけられていた。
「お前…、言葉って言うのは、意味を理解してないと使っちゃダメなんだぞ…」
「呆れながらいわないで! わかってるもん! ホラ、持ってきたんだから!」
...Some First Loves 7
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両親が帰ってくるという。
連絡を受けて、リントはため息をついた。やっと帰ってきてくれてほっとしたような、まだ帰ってこなくてもいいような、微妙な心境だ。大体、いつ帰るかも、行き先も告げずに、子供を家において新婚旅行に行く夫婦なんて、何処の世界にそんなものがいるというのか。
レンカにはまだ告げてい...Some First Loves 6
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次の日、リンは学校を休んだ。正確には、レンが休ませた。
朝になってみると、リンは体がだるいと訴え、仕方がないのでとりあえず休ませて、様子を見ることにした。少し過保護なように思えなくもないが、リンは風邪もひいたことがほぼないので、レンが騒ぐことが当たり前のようにも思われる。
グミヤはその日、苛立...Some First Loves 5
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妙な友達ができた。友達と言っていいのかすら怪しい、他人の恋路にああだこうだと口出ししては、茶化す嫌な奴らである。しかも、勝手に仲間にされてしまった。
リントはちらりと隣を見た。ソファのはじっこにちょこんと申し訳なさそうに座って、本を読みふけっているレンカがいる。こいつも一緒に仲間にされてしまった...Some First Loves 4
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「リント君、こっちこっち!」
リンはリントの手を引いて、小さな体で階段を二段飛ばしでぴょんぴょんと駆け上がっていった。
狭い空間に出ると、リンがドアを勢いよく開いた。
ぶわっと風が入ってきて、リントは思わず目を瞑っていた。風が消えると、目を開いた。青い空が広がっている。
屋上だった。さわやか...Some First Loves 3
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新築の家にはまだ慣れなく、リントは寝ぼけ眼をこすりながら、のそのそと段差の高い階段を下りていった。
コーヒーとバターとトーストのいい匂いがする。
リビングダイニングにリントが顔を出すと、朝食の用意をしていたエプロン姿の少女が顔をあげた。
「リント君、おはよう。今、蜂蜜も出してくるから、ちょっと...Some First Loves 2