タグ「和風ファンタジー」のついた投稿作品一覧(31)
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天鳩は、手近な窓から、身を躍らせると、そのまま、木立の中に、舞い込んだ。
自分と同じ色の影に隠れて、天鳩は、小さく、息を付いた。
それから、その息を取り戻すように、大きく、息を吸い込んだ。
胸に、体中に、緑の香りが行き渡ってゆく。
淋しいことや、哀しいこと、辛いこと、心の曇りを、陰りを、追...世界の創り方 『双子の月鏡』番外編ニ
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カップリング注意です。レンリン(双子に近い関係ですが、現在の倫理観に基づく近親相姦には当たらないかと思います)、ミクオ→ミク、それから、本編の都合上、書くことになったのですが、ほとほと、ありえなくて、申し訳ありません、ガクポ×カイコという、よくわからないカップリングが含まれます。これらのカップリング...
世界の創り方 『双子の月鏡』番外編一
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「これから、貴方たちを、あちらに送るわ。あちらは、今、ちょうど、満月が灯る頃よ」
ひとしきり、歌って、舞って、座り込んで、杯を傾けて、しばらく、寛いだ後、命炬が、何気ない調子で、そう言った。
「ええっ!? だって、私たちが、ここに来て、まだ、一日も経ってないよ!!」
その言葉の意味を認識して、目...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 終章
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「俺は……そういうのは……」
その赤い瞳が、赤い舌が、何かを、嘗(な)めるような、嘗めて溶かすような視線が、蓮の心を、妙に、ざわつかせて、蓮は、搾り出すように、そう言いながら、俯いた。
「慣れていないわよね。だから、よ」
赤い衣が乱れて、白い足が、軽やかに、孤を描き、組まれた。その足の白さも、何...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 二十八
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飛び込んだ、そこは、本当に、一面の暗闇だった。蓮と鈴のほかには、何も無い。蓮と鈴は、身を寄せ合って、辺りを見回した。
「何か、本当に、何も無いね」
「ああ……これじゃ、方角も何も無いな」
今にも、飲まれてしまいそうな暗闇を、見据えながら、蓮と鈴は、囁きあった。励ましあうように、ぎゅっと、強く、お...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 二十七
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「廻子おねえちゃんも、歌うって!!」
音を立てて、扉が開かれて、楽歩よりも、先に、鈴の声が、響き渡った。鈴の斜め後ろには、廻子が、どこか、ためらいつつも、何か、決意したような顔で、佇んでいた。
「ありがとう。鈴。だが、もう、上限の月だ。お前たちの用を聞こう」
楽歩は、そんな二人を見て、微笑んで、...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 二十六
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「お前たちと、歌舞を興じるのは、本当に、楽しいな。この一瞬、一瞬が、私の論理を証明してくれている気がする」
ひとしきり、歌い続けた頃、楽歩が、頷きながら、口を開いた。
「楽歩の論理って?」
「それって……あれか? 確か、音楽を極めることこそが、文武を両立させる、一番の近道とかっての……?」
蓮は...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 二十五
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「私は、先ほど、引いた、この“桔梗”で歌おう」
「うん……あ! 楽歩って、桔梗みたい」
楽歩の言葉に頷いて、そのまま、楽歩を見つめてから、鈴はそう言った。
「そう思うか?」
「うん。髪の色と同じだし、衣の色とも同じ。物静かで、品のある感じも、楽歩と同じ」
「そう。同じだな」
ニコニコと微笑んだ鈴...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 二十四
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「次は、蓮。お前が引くと良い」
蓮は、気のない仕草で、影鏡の前に立った。そして、そこに、ゆっくりと、手を伸ばす。水の中に、手を入れたような感覚の後、手に、何かが触れた。思ったよりも、柔らかい気すらもする、それは、チカチカと、瞬いているような気がした。その瞬きに、促されるように、蓮は、それをしっかり...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 二十三
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「廻子お姉ちゃん。忙しいんだね」
廻子の出て行った扉を、淋しそうに、見やりながら、鈴が呟いた。
「だから、楽歩も、一人で、歌を作らないといけないのかぁ……つ……ねぇ。他には、何をしているの?」
鈴が、慌てたように、言い直した。きっと、“つまらないねぇ”と言いそうになったのだろう。蓮は、ちらりと、...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 二十ニ
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「よく来たな。私が、音楽を追及する男、神威楽歩だ」
足音すらも、重々しく響く、長い廊下を、しばらく歩いて、やっと、辿り着いた、やはり、美しいけれど、厳(いかめ)しくて、奇妙な扉の向こうの広い居室(いむろ)で、椅子に腰掛け、彼らを待ち構えていた男が、そう言った。
「はじめまして。私は、鈴」
「俺は、...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 二十一
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「鈴!! 大丈夫か!?」
背後から、鈴を狙おうとした魔物を、剣でなぎ払って、蓮は叫んだ。
「ありがとう! 大丈夫!!」
鈴が、舞いながら、扇で、風を操って、数匹の魔物を払いのけた。
「それにしても、何なんだよ、こいつらは」
「うん。話が通じなくて、哀しいね」
夥(おびただ)しい数の、それこそ、...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 二十
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「あ!!」
「道が終わった」
光の道は、蓮と鈴の真上と真下で、円を描き、そのまま、消えていた。
「ここが、そうなのかな?」
「たぶんな」
光の円を覗き込みながら、そう聴いた鈴に、蓮は、光の円を見上げながら、そう答えた。
「くぐってみる?」
「空からと水から、どっちから? それとも、二人で、一遍に...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 十九
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そして、最後に残ったのは、今までの闇とは、比べようもないほど、大きくて、歪(いびつ)な形の闇だった。
蓮は、剣を構えると、歌おうとした。そのとき、憑かれたように、鈴が、その闇に、歩み寄ったのだ。
「貴方、どうして、隠しているの?」
「鈴!? 危ないから、近寄っちゃ駄目だ!!」
澄んだ声を、闇に...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 十八
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「今夜は、朔だな」
「うん。月が灯らない夜」
あの下弦の月の夜から、ちょうど、七日目の、朔の日。青い黄昏が、色濃くなってゆくのを眺めながら、蓮が言うと、鈴も歌うように、そう言った。青い横顔は、いつもとは、少し、違っているような気がした。何が、違うというわけではないのだが、どことなく、雰囲気が、この...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 十七
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「鈴。疲れただろ? 寝ていいよ。俺が、見張っているから」
疲れたのだろう。口数の少なくなった鈴に、蓮はそう言った。
「だ、大丈夫! まだ、平気」
一瞬、ぼんやりした鈴は、慌てて、そう言った。
「旅のときには、無理をしちゃ駄目だよ。本気で、疲れ果てる前に、休憩を取らなくちゃ」
「でも………」
「鈴...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 十六
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「あ!! この衣! 蓮君のだ!!」
水面近くになって、海渡が叫んだ。
巨大な岩に、金襴の刺繍の施された布(きれ)が、引っかかっていたのだ。こんなに、豪華な刺繍のものは、そうそうはないし、だいたい、今日の蓮の衣装も、持ち物も、海渡は、ありありと思いだせる。
「こっち側は、剣で、切ったんだね。蓮君の...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 十五
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「天鳩(ミク)お姉ちゃん……どうしているかな?」
ふいに、鈴が呟いた。先ほどから、遠くを見るような目をすることが多かったし、ずっと、考えていたのだろう。
もう、海は静まっているとはいえ、その気持ちは、蓮にも、痛いほど、よくわかった。
「どうだろうな」
ただ、だからこそ、安易な答えは返せなかった...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 十四
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「うん。約束」
そう言って、鈴は、小指と親指を立てた。
「ああ。約束」
そう言って、蓮は、鈴の小指に、自分の小指を絡めた。
その小指を、離した、そのときだった。
ゆっくりと、二人を、丸く、描いていた光が、溶けるように、消えていったのは。
「…………!?」
刹那、蓮の胸は、押しつぶされそうに...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 十三
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ざわつく海の中を、蓮は、鈴月に乗って、一心不乱にかけていた。
水が騒いでいる。蓮の気が騒いでいるからだけではない。水の中で、戦闘が始まっているのだ。それも、かなりの実力者同士の。
そんな実力者に、該当するのなんて、間違えようもない。
だからこそ、蓮は、さらに、高ぶっていた。信頼しているから、...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 十ニ
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とうとう、この夜が来た。
蓮は、下弦の月を見据えながら、先ほど、かったるい儀式で、賜(たまわ)ってきた、剣の束を、ぎゅっと、握った。
蓮の肩に、ポンと、手が置かれる。見やれば、“僕がいるから”とでも言うように、海渡が、微笑んでいた。
頷いて、自分も、軽く微笑む。それで、肩の力が緩んで、必要以...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 十一
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「下弦の月の夜に、守り手の海渡と二人で、出立することになっている。そのまま、鈴を迎えに行くから」
朝まで、まだ、時間があると言われて、床についた蓮は、再び、夢の中で、鈴に会い、先ほどの、海渡との話をして、力強く、そう言った。
しかし、鈴の表情は、どこか、暗く、儚い。
「蓮は良いね」
蓮が、鈴の...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 十
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目を開いても、薄暗くて、よく見えなかった。
きらきらしていないから、夢の中ではない。朝でもないだろう。
「夜明けまで、時間があるから、まだ、寝ていられるよ」
耳に慣れた声が響いて、蓮は、そちらの方を見た。予想通り、海渡が、微笑んでいた。
「ああ……海渡。寝てないのか?」
「全く、寝てないわけじ...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 九
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十五歳になれるのは……蓮と鈴の、どちらかだけ……
一人は、滅びる。
突きつけられた、残酷な事実に、蓮は、ぎゅっと、胸を押さえた。今にも、押しつぶされそうだった。
いや、いっそ、今すぐ、押しつぶされてしまったら、これ以上、苦しまなくてすむし、鈴は、平和に、十五の夜を迎えられるのかもしれなかった...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 八
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最後の楽譜を暗譜して、蓮は満足そうに、顔を上げた。そして、そのまま、凍り付いた。
そこには、何もなかった。暗くて、何も見えないのではなく、本当に、切り取られたように、何もなかった。
そして、その理由は、蓮が一番、よく知っていた。
ずっと前に、鈴月に乗っているときに、暗譜しながら、歌ってしまっ...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 七
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十枚目の楽譜を暗譜し終えた蓮は、はたと、海草が生い茂っているところを睨んだ。
「海九央(ミクオ)! そこで、何やっているんだよ」
守り帯を下げて、蓮が叫ぶと、海草の密集したところが、サワサワと掻き分けられて、その海草と同じ色の髪と瞳の少年、海九央が現れた。
「あ。神子蓮。いいもの、巻いているね」...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 六
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「蓮君。何枚、終わった?」
「七枚」
鍛錬や仕事を終えて、暗譜を始めた蓮は、海渡の声に、楽譜から、目線を上げずに、そう答えた。
「へぇ。蓮君にしては、ゆっくりだね。蓮生(はすう)みの儀式で、疲れちゃった?」
「それは、結構、好きだから、平気………気が乗らないだけ。早く、寝たい」
「蓮君って、寝るの...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 五
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朝餉(あさげ)の席へと、足早に歩む蓮は、ふと、足を止めて、ため息をついた。
海渡が、白いひげを蓄えた、上官なのだろう、男に、何やら、言われている。叱責でも、受けているのだろう。もっとも、叱責とは名ばかりの、言いがかりなのだが。
蓮は、小さく息を付くと、男のもとに、歩み寄った。
「海斗は、神子直...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 四
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心地の良い、夢のような時間。
いや、まさしく、夢の時間。
その蓮の夢を、壊すのは、いつも、間の抜けた声だった。
「れんぼ~う! 起きようよぉ! 朝だよ~!」
その声を聴くたびに、蓮は、その声の主が、少し、憎らしくなる。
人の夢を邪魔しないでほしい。
せめて、余韻にくらい、浸らせてほしい。...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 三
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鈴が、楽しそうに、軽やかに、舞うから、蓮も、それを、うつした。自然と、唇が、鈴の歌をうつし始める。
リン、リン、リンと、鳴り響く鈴の音と、一つの声のように、合わさった、蓮と鈴の声。その歌声に、薄桃色の花が、金の光をかたどるように舞い咲いてゆく。
伸ばした手が、触れそうで、触れないまま、離れ、扇...双子の月鏡 ~蓮の夢~ 二
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