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58件
~エンディング~ 白の娘
「生きていてごめんなさい。」
いつのまにか口癖になっていた。
弱音ばかり吐いて、つまらない人生の日々を送っていた。
街の人たちはみんな緑色の髪。
私だけ仲間はずれの白い髪。
いつしか私は森の奥で暮らしていた。
森の奥の千年樹にいつも一人で願いをかけた。
孤独で行き続け...悪ノ・ストーリー 第七幕
あき
66.ゆすらうめの花 ~白ノ娘、ハクの最終回~
初夏。緑の国が一年で一番輝く季節。
ハクは、緑の王都の港に近い、海の見える丘の上にいた。
「ミクさま。ネルちゃん。……来たよ」
ミクの墓に植えられた木は、美しい若葉を輝かせており、その下に寄り添うネルの墓には、ゆすらうめの樹が植えられていた。ユス...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 66.ゆすらうめの花 ~白ノ娘、ハクの最終回~
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65.再び、海辺の町にて ~リン~
* *
少しだけブリオッシュが上手く焼けるようになったころ、ハクは、リンをもとの緑の王都の酒場まで送ってくれた。
酒場の夫婦は心配のあまり、帰ってきたリンを怒りまくり、そして、玄関の扉を開けて抱きしめてくれた。
「君は王女、僕...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 65.再び、海辺の町にて ~リン~
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64.リグレット・メッセージ
「レン……!」
暁色の髪の青年が、飛びこんできた彼女を、立ち上がってしっかりと抱きとめた。
青年の腕の中で、リンの息を吸い込む音が、浜辺いっぱいに響いた。
「……背、伸びたね」
「うん」
「……声、変わったね」
「うん」
「ねぇ、レン」
「うん?」...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 64.リグレット・メッセージ
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63.輝きを留める者
おだやかな波が、朝の浜辺を寄せては返していく。同じ動きをくりかえしてはいるが、同じ波は二度とは来ない。
「……前は、蹴られたのに」
「今は、そんなことしないよ」
男が、手に握った短剣の柄を向けて、ハクにそれを返す。光の中で見ると刃は少し欠けていた。ハクの命を、暴徒から救っ...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 63.輝きを留める者
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62.暁
刃を前に、リンの唇がつぶやいた。
「ただの娘として生きてしまって、ごめんなさい。わたしは、悪ノ娘なのに」
……わたしに斬られたホルストやシャグナは、痛かっただろうか。刃を向けられたメイコは、怖かっただろうか。そして、死に追いやったミクやレンは、苦しかっただろうか。
ハクの刃の狙いが、わ...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 62.暁
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61.白ノ娘、悪ノ娘
星明りを頼りに、ハクはリンを散々探した。
そしてついに、まだ夜の明けきらぬ青い闇の中で、ハクは浜辺にたたずむリンを発見した。
「リン……! やっと見つけた……!」
一瞬子供たちに囲まれて笑顔をみせるリンが脳裏をよぎったが、腹の底から燃え上がる恨みと怒りの炎がそれを吹き消...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 61.白ノ娘、悪ノ娘
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60.真実と葛藤とミクの短剣
ハクは走っていた。真っ暗な夜道の石畳を、リンを追って走っていた。
戸口から駆け去る際にちらりと見えたリンの向かった先は、海の方角である。
「あの娘、あの娘、あの娘……! 」
ハクの奥歯が、ぎりりと噛みしめられる。
「あの娘、本当に、『女王リン』だ……!」
ハクの...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 60.真実と葛藤とミクの短剣
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59.巡り音の青年
ハクー、出発するよー、と、外から叫ぶリュイの声がする。
ハクは教会の脇の宿坊の、二階にある自室で、町にとまるための荷物をまとめていた。
替えの服と日用品の準備はとっくに終わっているのだが、ハクの手はあるものの前で荷物に加えるか否かを迷っている。
それは、五年前、ミクがハク...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 59.巡り音の青年
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58.ヨワネの今、ハクの今
ハクの心配に反して、リンと名乗った少女はすんなりと子供たちの輪になじんだ。
「リン! これ、あたしの刺繍だよ! きれいでしょう!」
「あー! リュイはすぐ得意な柄ばっかり見せるんだから! ハクさんには、別の柄の練習もしなさいって言われているのに」
「自分の最高の作品を見...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 58.ヨワネの今、ハクの今
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57.教会の少女
リンの目の前に、白い髪の女が居た。
そして、たくさんの子供たちが、リンをぐるりと囲んでいた。
リンの目の前には、温かな葉野菜と根野菜を煮込んだスープ、そして穀物と豆の粥がある。
食事が乗っているのは、質素な長四角のテーブルだった。しかし、大きい。長四角の卓が二つ並べられ、十...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 57.教会の少女
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56.五年後、海辺の町にて
―五年後―
* *
“まさに彼女は悪の娘”
初春の宵。柔らかな夕闇が海辺の町を包む頃、灯りの燈った酒場に、一日の仕事を終えた男たちが集まる。談笑とともに、いつものようにがなる歌が響く。
“昔々あるところに、悪逆非道の王国の、頂点に君臨...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 56. 五年後、海辺の町にて
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55.5 間章 ~リンとルカ。カイトとメイコ~
空を焦がす夕焼けが去り、夕闇が激動の黄の国にゆっくりと降りてきた。行交う人は皆興奮し、すべての通りが祭りのように沸き立っている。
人々の顔は、夏の日照りにさらされて、乾き、汚れ、やせ細ってはいたが、今や疲れ切った表情をする者はいなかった。
戸惑い...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 55.5 間章 ~リンとルカ。カイトとメイコ~
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54.囚われの女王
てっきり地下の牢屋もしくは強盗や殺人などの罪を犯した者たちの監獄へと送られると考えていたレンだったが、その予想は外れた。
メイコが女王の拘置場所に選んだのは、国教会の塔の一室であった。
とはいえ、だんだんと秋の気配の濃くなる季節に、石造りの塔の部屋に幽閉されるのは苦しかった...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 54.囚われの女王
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53. 悪の娘、悪の召使
「この、無礼者!」
レンは、自分の声が凛と響いたことに満足した。
「……よかった。間にあった。」
……自分が、彼女の身代わりになれる間に、この国は変化を成し遂げた。
顔はいくら似ていても、もうじきレンの声は太い男の声に変わる。
兆候は出ていた。だから、レンは出来るだ...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 53.悪ノ娘、悪ノ召使
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52.リンの本音、レンの告白
「これを着てお逃げなさい」
レンが自分の服を突然脱いで差し出したのを、リンは呆けたように見つめていた。
「レン。逃げるのは召使のあなたの方でしょう? あたしは女王ですもの、ちゃんと残って、王の政治の責任を取らないと」
「馬鹿野郎!」
ついにレンは怒鳴った。
「君は女...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 52.リンの本音、レンの告白
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51.レンの思い
もうすぐこの国は終わるだろう。
この朝、レンは目覚めてふと、確信した。
この日の朝も、王宮広場は日の出から大騒ぎだった。だんだんと、武具を持った人が増えてくる。王宮に武器を向けることを恐れなくなってきているのだ。
やや黄色みのかかった木の葉が、レンの目の前を風に吹かれて舞い...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 51.レンの思い
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50.誕生、紅き鎧の女騎士 ~後編~
教会の鐘が鳴り響いて一日の終わりを告げた。夜八時の、この日最後の鐘の音だ。
「じゃあ、メイコ。私、そろそろ下の食堂で歌ってくるね」
メイコが、自分の寝台に立てかけた楽器を右手に取り、菓子を食べ終えた盆に二人分の杯を左手に乗せて器用に扉を開けた。
「メイコも、...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 50.誕生、紅き鎧の女騎士 ~後編~
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50.誕生、紅き鎧の女騎士 ~前編~
夕方になっても、黄の国の王都の興奮は収まらなかった。夏の暑さはすっかり引き、涼しい風が夜と星を連れてくる。
相変わらず乾燥した満天の星空の下、秋の始まりの日の夜は、人々の熱気に包まれていた。
「いいぞー! メイコー!」
「姐さん、かっこいいよな!」
「恐怖の...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 50. 誕生、紅き鎧の女騎士 ~前編~
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49.イグニッション(点火)
「パンを寄こせ!」
「パーンをよーっこせ!」
群衆の叫びに節が乗り、さらに声が大きく広がっていく。
「……ふふ」
王宮広場に続く回廊を歩きながら、リンは薄く微笑んでいた。
「……こんなに困窮するまで、あたしたち王や諸侯に頼りきりだったくせに」
ドレスをひるがえして...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 49. イグニッション(点火)
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48.秋の月、第一日目の朝
夜明けとともに、遠くから、近くから、ざわめきが聞こえてくる。それはやがて小さなまとまりとなり、だんだん大きな塊となり、乾いた黄の大地を埋め尽くす。
昇る陽とともに、熱い人のうねりが近づいてくる……。
「リン様! リン様!」
朝一番に駆けこんできた女性の召使は、すで...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 48. 秋の月、第一日目の朝
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46.革命の萌芽 ~後編~
「……おい! 」
押し込んだ男の一人ががなる。
「なんのつもりだ、てめぇ!」
「酒なんて飲んでやがって、てめえ」
男たちがぐっとメイコに向かったそのとき、彼女はその目の前で鮮やかに薬草酒をあおった。そして、その杯を音高く彼らの足元めがけて叩きつけた。
男たちの動きが...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 46. 革命の萌芽 ~後編~
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46.革命の萌芽 ~前編~
黄の国の王都は、静まり返っていた。
いつもの夏の終わりのような、落ち着きのある静けさではない。人は居るのに扉の向こうで息をひそめているような、そんな不気味な静けさである。
とある宿の食堂で、『巡り音』のルカは歌っていた。日も暮れてから大分経ち、通りはすっかり静まり返...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 46. 革命の萌芽 ~前編~
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45.5 間章 ~カイトとハク、それぞれの帰路~
すっと陸から風が吹いた。
「……緑の国に、秋がくるな」
そうつぶやいたのは、カイトである。
カイトは、緑の港の沖合に浮かぶ船の上にいた。カイトは、緑の国まであとわずかという所で、黄の国の港から回ってきた船団に、緑の港をふさがれた。使節団として緑...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 45.5 幕間 ~カイトとハク、それぞれの帰路~
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45.海の見える場所
丘を上ったところに、緑の王族の眠る墓地がある。他の国の王族とは違い、この国の王は才能の競争の中で選ばれる。墓も平民とともに眠る。
海に開けた丘は、展望は一級だったが、その墓石は名と簡単な言葉を刻む、質素なものが多い。海を渡りゆく先祖をもつ緑の民は、大地へのこだわりは今でも薄...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 45.海の見える丘
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44.晩夏の葬列 ~後編~
「何!」
しっかりとかぶった皮の頭巾のせいで、蹄の音に気づくのが遅れた。ハクはあわてて四人の子らを集めたが、間に合わなかった。
「誰か居るな!」
男の声の呼び掛けと同時にバタンと戸が弾かれ、兵士が三人、屋敷の土間に居たハクたちの前に降り立った。ハクはとっさに腕を広げて...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 44. 晩夏の葬列 ~後編~
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44.晩夏の葬列 ~中編~
緑の国の王宮に居るリンに、ヨワネや他の職人町の自決の知らせが届いたころ。
ハクは、教会の敷地の隅に立つ、石造りの小屋の前にいた。
その小屋は、北向きの日陰に隠れるようにして立っている。緑の国の夏の太陽は、徐々に高く上り、輝きを増しつつあるが、常緑の大木に隠れるように...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 44. 晩夏の葬列 ~中編~
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44.晩夏の葬列 ~前編~
「なんですって? 」
緑の女王の玉座には、現在、黄の女王のリンが座っている。
「緑の民が、次々に自殺している?! 」
緑の各地に展開する黄の軍から次々にもたらされる情報に、リンはがたりと玉座を立ちあがった。
「織物の町ヨワネ、鉄鋼の町ククンダ、木材加工のシルガンド。住...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 44.晩夏の葬列 ~前編~
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43. ハク、新生
昔住んだ森の中に、ハクはひっそりと身を寄せた。
ヨワネの町のほうから、時折騒ぐ声が聞こえてくる。黄の兵が、ヨワネに到達したのだと気づいた。
「……」
ハクは、工芸の町ヨワネの工房に、物心ついたら住んでいた。同年代の子供たちよりもだいぶ早く針を握り、そして森の中に小さな家を与...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 43.ハク、新生
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42.罪なき逃亡者、ハク ~後編~
一軒の工房の前でハクは立ち止まった。
そこは、ハクが長い間、刺繍職人として働いた場所だった。
森の中にたった一人で住み、毎日ここへ通ってきていたのだ。
町を出た日と変わらない、長い年月に乾いた木の扉が、ハクの目の前にある。
「……どうも……」
ほかに、言...悪ノ娘と呼ばれた娘【悪ノ二次・小説】 42.罪なき逃亡者、ハク ~後編~
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