タグ「doriko様」のついた投稿作品一覧(43)
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13 現在:同日
頭が真っ白になった。
なんてことを。
まさか本当に言ってしまうなんて。
未来の顔を直視できない。
ありったけの罵詈雑言を“彼女”へとぶつける。が、当の“彼女”はどこ吹く風だ。
『言わなきゃいけなかった。だけど言えなかった。だからあたしが代わりに言った。ただそれだけよ。これ...私とジュリエット 13 ※二次創作
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12 現在:2日目
「……」
朝食から帰ってきて、あたしは部屋のバルコニーの安楽椅子で外を眺めていた。
昨夜の夜景とほとんど同じアングルで、山間から市街地と別府湾を見下ろす。宝石のきらめきだったそれは、蒼穹と建物群に様変わりしていて、別世界から現実へと移り変わっていた。
これはこれですごくいい...私とジュリエット 12 ※二次創作
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11 8年前:同日
ロミオとジュリエット。
シンデレラ。
白雪姫。
銀河鉄道の夜。
小さい頃、そんな物語の劇を見に行っていた。
もちろん、両親につれられてのことだ。
生前、休みがなかなか合わないパパとママが珍しく一緒に休める時は、劇を見に行く、っていうのが我が家の一大イベントだったのだ...私とジュリエット 11 ※二次創作
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10 8年前:10月21日
「あ……愛、ちゃん?」
「あれ、海斗さんじゃん。あたしの未来ならここ何日か休んでますよー」
学校が終わって帰ろうとしていた矢先、あたしは海斗さんに校門で呼び止められた。
「メールも返信来ないんで、ちょっと心配してたんですけど」
「そう……か……」
「……?」
なんだか...私とジュリエット 10 ※二次創作
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9 2ヵ月前
「あれ。愛先輩って旅行とか好きでしたっけ?」
深夜、会社のデスクで息抜きに広げていた雑誌に写っている、旅館の若女将に目を奪われていたら、後輩に声をかけられた。
「んー。たまには……いいかなって」
「ウチ、かなりブラックですしねー。休める時にそういう息抜きするって大事ですよね」
「そー...私とジュリエット 9 ※二次創作
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8 現在:2日目
「あれ、おねーさん一人? こんなところで美人に会えるなんて思ってなかったなぁ」
「はいはい。あんたみたいなのに興味ないから、ほっといてくれる?」
未来と深夜まで家族風呂に入った翌日。朝食後にロビーでくつろいでいたら、知らない男に声をかけられた。
コーヒー片手にソファに座ってぼん...私とジュリエット 8 ※二次創作
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7 8年前:10月4日
「実行委員会か……本当、忙しいんだね」
「未来、本当は実行委員会じゃなくて、生徒会なんですけどね」
学園祭のお昼過ぎ、あたしは海斗さんにおごってもらったたこ焼きの最後の一つをほお張りながら、そう告げる。
ついさっきまで未来があたしの隣に座ってて、再会した海斗さんを前にどぎ...私とジュリエット 7 ※二次創作
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6 7年前:5月11日
「ううー……」
「未来、どしたの? 海斗さんとケンカ?」
「いや、そーじゃなくて……」
教室で、そう言いながら未来が机に突っ伏す。
あたしの「海斗さん」という言葉を耳ざとく聞きつけた周囲の男子が、かすかにざわついた。
未来は未だに自分が美人だっていう自覚がない。海斗さん...私とジュリエット 6 ※二次創作
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5 現在:1日目夜
脱衣場から外に出ると、湯気の向こうに圧巻の情景が待ち受けていた。
「ホントだ。きれー……」
「でしょ?」
ちょっと自慢げな未来の言葉も、あんまり耳に入らない。
家族風呂は檜風呂で、小ぢんまりしているとはいえ、二、三人くらいならゆったり入れる大きさだ。上から楓の木も葉を繁らせ...私とジュリエット 5 ※二次創作
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4 10年前
『パパとママに対する気持ちなんて、その程度だったのかしらね』
まさかと思い、婦警さんを突き飛ばして離れようとした。けれど、婦警さんはそもそもあたしがなんで泣き出したのかもわかってなくて、きょとんとしたままだった。そこでようやく、婦警さんと違う声だって遅れて気づいて……でも、じゃあ誰の...私とジュリエット 4 ※二次創作
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3 12-10年前
あたしの両親は、あたしが中学一年の時に死んだ。
交通事故だった。
アクセルとブレーキを踏み間違えた軽自動車が歩道に乗り上げ、周囲の通行人を七人も轢いたあげく、街路樹に衝突して止まった。
七人のうち、未就学児の男の子とそのお祖母ちゃん、そしてあたしの両親の四人がこの世を去っ...私とジュリエット 3 ※二次創作
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2 8年前:10月22日
あたしは、隣で眠る未来の髪をすく。
しばらくお風呂にも入っていなかったみたいで、ついさっきあたしと一緒に入ったのが一週間ぶりくらいだったらしい。その一回くらいじゃ髪質は全然戻ってなくて、あたしが羨ましくてたまらなかったサラサラツヤツヤのストレートだったはずのそれは、今す...私とジュリエット 2 ※二次創作
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私とジュリエット ※二次創作
1 現在:1日目
『次はー、始音温泉。始音温泉でございます。お降りのお客様は、お近くのボタンでお知らせください――』
バスの車窓に流れる山林をぼんやり眺めていたあたしは、運転手のアナウンスにハッとして手近のボタンを押した。
運転手はすごく渋い声で次のバス停での停車を...私とジュリエット 1 ※二次創作
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7.
……。
……。
……。
柳隆弘君が行方不明になってから一週間後、彼は無残な姿で見つかった。
そのときのクラスの雰囲気は、正直に言って、最悪だとしか思えなかった。
クラスメイトは悲しむ様子など見せず、あまつさえ鼻で笑っていたのだ。あいつ死んだってよ、あーあ、笑えるやつがいなくなっちま...Alone 7 ※2次創作
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6.
「柳君、私が君のことを許すよ」
あのとき、柳君の背中に告げられなかった言葉。
それをつぶやいて、私はかぶりを振るしかなかった。
学校からはかなり離れたところにある、海沿いの自然公園。そんなところに、私はやってきていた。
入り江になったところには、小さいけれど砂浜がある。海に入れる時期で...Alone 6 ※2次創作
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5.
学校が終わってから塾が始まるまでの、少しだけ空いた時間。それが私にとって唯一、自由と呼べる時間だった。
図書館に行ったり買い物をしたり、買い食いをしてみたり。それは一時間もないけれど、その短い間だけはささやかな自由を満喫する。
このとき、私はいつも一人だ。誰かとそういうことをしたことなん...Alone 5 ※2次創作
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4.
「――でさ、それでね、あいつったらなに言ったと思う?」
「なに、またバカみたいなくっさいセリフ吐いたわけ?」
「そーそー。『君のことは俺が絶対守るから』だって。アホらし。誰があいつなんかと同じことするかっての」
「あははっ、キリひっど。キリの猫かぶりっぷりはホントハンパないよねー」
「ちょっと...Alone 4 ※2次創作
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3.
「……」
昼休み。
私は校舎の階段の一番上にやってきていた。
屋上の扉は施錠されている。だから、滅多なことではこんなところに人は来ない。
ここは、誰とも一緒にいたくなかった彼の逃げ場所だった。そして今では、私の逃げ場所になっている。
彼は毎日、授業が終わるたびにここへとやってきては、...Alone 3 ※2次創作
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2.
『うん……ごめん、大丈夫だから』
そんな風に言って、まるで拒絶するみたいに彼がうつむいていたのが、たった三ヶ月前のことだなんて信じられない。
あのとき、私はあきらめるべきじゃなかった。無理にでも教室の外に引っ張っていって、あんな先生やクラスメイトのいないところに連れて行くべきだったんだ。
...Alone 2 ※2次創作
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Alone ※二次創作
1.
孤独。
その言葉の本当の意味を、最近までわかっていなかった。
人とは、他者がどれだけ近くにいようとも、孤独になれる。そう、彼は結局のところ、おそらくは一番近くにいたであろう私にも、心を開いてはくれなかったのだ。
私だけは、彼の味方のつもりだった。私だけは、彼の苦...Alone 1 ※2次創作
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14
私が呆然とつぶやいてしまった言葉に、その男の人はぴくりとして動きを止める。
『……え?』
その人が反応するなんて思ってなくて、私は思わず声を上げる。そんな私の声は、呼ばれるなんて思ってなかったって感じの男の人の声と重なった。
その人が振り返る。
思い出より高くなった身長。
思い出より...茜コントラスト 14 ※2次創作
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13
「位置について、よーい」
パァンッ。
私は――高校二年生になった私は――その音とともに勢いよく走り出した。
学校からは離れたところにある、大きな競技場の四百メートルトラック。インターハイの地区予選大会だった。
トラックを四周弱する千五百メートル走は、カーブがあるせいでスタート位置はそれ...茜コントラスト 13 ※2次創作
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12
そのあとのことっていうのは、もしかしたら余談みたいなものになってしまうのかもしれない。
朝方近くまで泣いていた私は、カゼをひいて学校を休んだ。気持ち的にも、しばらく学校になんて行きたくなかった。
一週間くらい休んで、私はやっと学校に行くようになった。
悠のいない学校は色あせてて、なんに...茜コントラスト 12 ※2次創作
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10
『未来へ。
こんなお別れになってしまって、本当にごめんなさい。未来は……怒ってる、よね。
未来がこれを読んでいるとき、きっと僕はもう飛行機に乗っていると思う。父親の転勤で海外に引っ越すってこと、先生はもう伝えてくれたのかな。
引っ越しのこと、本当は、一緒に帰るようになるずいぶん前から決ま...茜コントラスト 10 ※2次創作
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9
その翌日、朝練を終えた私は憂うつな気分で教室に向かった。
どうしよう。
嫌われちゃったよね。
謝らなきゃ。
仲直りしたい。
でも……どうやって?
避けられたりしないかな。
そんな不安で、私は押しつぶされそうだった。
……けれど、その不安すらたいした問題じゃなかったなんて、このと...茜コントラスト 9 ※2次創作
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8
「……」
「悠、どうしたの?」
「う、ううん……なんでも、ないよ」
お互いに名前を呼びあうようになって数日。はじめのうちは気恥ずかしかったけれど、それだけたつと私たちは普通に名前で呼べるようになってた。
けれど、だいたいそれとおんなじくらいのタイミングで、悠はよく暗い顔をするようになった。
...茜コントラスト 8 ※2次創作
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7
そうして、めいっぱい走ったあとに悠と一緒に帰るのも、とっても幸せなひとときだった。
「ね」
「なあに?」
「私、汗臭くない?」
「え、そうかな。考えもしなかったから、そんなことないと思うけど」
「そう? いっつも汗だくになるまで走ってるから、ちょっと気になっちゃって。部室ってシャワー室もないし...茜コントラスト 7 ※2次創作
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6
それから、グラウンドのトラックを走るのがすっごく楽しかった。
傾きはじめる夕日を横目に、私が校舎を見上げると、いつも通り美術室の窓が開いていて、そこから悠の姿が見えた。
「ふふっ」
荒い呼吸の合間をぬって、ほほえみがこぼれてしまう。
悠と帰るようになって数日、私の中距離走のタイムはすごく...茜コントラスト 6 ※2次創作
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5
「なんだ……初音さんだったのかぁ」
「ごめん浅野くん……。あの、集中してるみたいだったから、邪魔しちゃ悪いと思って……。えと、その……怒った?」
ちょっと不安になってそう聞いてみると、悠は苦笑しながら「ううん、怒ってないよ」と首を横に振った。
「そっか。よかった」
ほっとして、私も笑顔がこぼ...茜コントラスト 5 ※2次創作
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4
放課後。
その日はグラウンドのトラックが使えなかったから、陸上部のみんなはグラウンドのすみっこのほうで筋力トレーニングや短距離、走り幅跳びなんかをやっていた。
私は、トレーニングのメニューをこなしたあとは、何人かの中距離走の部員と一緒に学校の敷地の外を周回するようにして走っていた。
今の...茜コントラスト 4 ※2次創作
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