ブクマつながり
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今日、変な人に傘を貸してもらった。
いいのかなぁ…って思ってたけど、濡れるのは嫌だったし、
結局受け取っちゃった。
正直、すごく助かった。
すごくお礼を言いたい…。
黒髪に、包帯が印象的なあの人。
すごくきれいな顔立ちだったなぁ。
…でも、どこかで見たことがある気がする。
あれだけイケメンなんだもの...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第15話「君のそばに行くから」
アイクル
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暗闇の中で、僕は目を開けた。
輪郭さえ不確かな状態だった。
僕は勇気を出して、一歩ずつ前に出る。
途中で、わずかな光をとらえた。
僕はその光を目指して走った。
「―ッ」
一瞬だけ、雪子の声を聞いた。
なんと言っているのかは解らない。
とても楽しそうな声だった。
光がまぶしくて、僕は目を細めた。...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第14話「僕が消えていく世界」
アイクル
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「痛…」
左手首があり得ない方向にねじ曲がっていた。
さっき爆風に巻き込まれたせいだ。
受け身を取ったつもりが、かえって悪い方向に転んでしまった。
夢の中なのにひどく痛む。
雪子はその手を引きずりながら、必死に立ち上がった。
膝から血が出ていた。
奥歯をかみしめ、私は歯車に近づいた。
外で剣のはじき...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第24話「真っ赤なピエロ」
アイクル
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鏡音レンがふと、こちらを見る。
「…あなたは生存者? それとも、リンちゃんの夢?」
首を横に振る。
このとき、初めてレンの声を聞いた。
「自分の意思。俺はいたいから、ここにいる。
リンを一人にできない。…それにここなら、彼女は動ける。
自由に歩けるし、笑えるから」
自虐めいた笑みをむける彼。
そ...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第06話「絶対に助けるから!」
アイクル
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タイムスリップした先は、城内だった。
広い廊下が続いている。ひどく騒がしかった。
灰猫は窓に張り付いた。
窓からははっきりと、燃え上がる火の手が見える。
「革命だ…」
革命は起きてしまった。彼の言うとおり、避けられなかった。
落胆する雪子の頭を帯人は優しくなでた。
燃え上がる町。悲鳴をあげる人々。廊...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第21話「王女と逃亡者」
アイクル
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光の中に包まれて数秒後、私たちは地面に足をつけた。
まるで霧が晴れていくように、まぶしい光は消えていく。
やっとしっかりとした視覚を取り戻したとき、私はハッとした。
「学校だ」
そこは、クリプト学園だった。
窓の外には満月が顔を出している。
どうやら夜のようだ。
電気が一つもついていない学校は、月明...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第04話「とある少女の庭」
アイクル
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ハァ、ハァ、ハァ。
涙がとまらなかった。
怖くて足が震えた。でも、とにかく前へ。
足を止めたら、駄目だと思った。死んでしまうのは確かだ。
ほんと。…どうしてこうなっちゃったんだろう。
それは数分前。
私と帯人そして灰猫が、鏡音リンと対峙したときのことだった。
血だらけのハクちゃんとネルちゃんを紹介し...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第05話「彼女の悲劇」
アイクル
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かちかちかち。
そんな音を立てながら、懐中時計は青年の手の中で動いている。
青年はその懐中時計を差し出して、人差し指でかちゃりと開けた。
そこには、ひび割れた文字盤があった。
「少々、お時間宜しいでしょうか」
「…あなたはいったい…」
なぜか、目の前にいる《人》が人ではない気がした。
スーツの青年の...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第02話「灰色の猫」
アイクル
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狂ってる…。
みんな正気を失ってしまうの?
ミクちゃんみたいに、リンちゃんみたいに。
カイトさんも、メイコ姉さんも、みんな…。
……帯人も、灰猫さんも…?
…嫌。そんなの、
赤い道を進むと、真っ暗な森の中に牢獄を見つけた。
その牢獄には見慣れた背中があった。
メイコ姉さんだ。
「身体年齢十六歳にされ...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第10話「嫌な予感」
アイクル
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ある日、私は盗んだ音楽時計をくわえて走り出しました。
病室に忍び込み、寝ている二人の前で蓋を開けました。
静かな病室が音であふれます。
とても楽しくなります。
彼らがすてきな夢を見られるように、私はいつもこっそり音楽をかけました。
私はたまらなく二人のことが好きでした。
特にリンという少女のことが大...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第26話「すてきな夢をありがとう、さようなら」
アイクル
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全てが終わった。
けど、なんだかよくわからない終わりを迎えてしまった。
アカイトさんが犯人かよく解らないけど、あのとき教会で
確かに彼の姿を見たんだ。
なぜあの場所にいたのか聞きたかったのに、彼は書類を盗んで
失踪してしまった。
まだ彼の行方は解っていない。
初音ミクちゃんは、まだ意識不明状態だ。
...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第28話「わたしたちの未来へ」
アイクル
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カイトさんを捜そうにも、どこから捜せばいいんだろう。
見当がつかない。
灰猫も首をかしげている。
雪子はしかたなく、来た道を戻ることにした。
しかし、いくら歩いても城が見えてこない。
赤い道さえ見失ってしまった。
どうしよう。
「さて、困りましたね」
「…ごめんなさい」
「いいえ。貴女のせいではあり...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第12話「死神のささやき」
アイクル
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どうして、僕はこんなに震えているんだろう…。
こわい。
彼女は僕を救ってくれた。
僕だけを見てくれた。
僕の罪さえ受け入れてくれた。
彼女は僕の全てだった。
こわい。
でも彼女にとって僕は一部でしかない。
彼女の周りにはたくさんの人がいる。
守りたい人がいる。...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第11話「僕の一番怖いこと」
アイクル
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アコーディオン男は笑う。
あの子の歪んだ顔が見てみたいと。
アコーディオン男は笑う。
あの男の歪んだ顔が見てみたいと。
アコーディオン男は笑う。
あの猫の悲しい顔が見てみたいと。
帯人は虚ろな瞳で、ダイヤのアリスをとらえた。
口元に歪んだ笑みを浮かべながら、ゆっくりと引き金に手をかけた。
「さような...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第13話「一輪の薔薇」
アイクル
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「にゃあ」
処刑当日。
群衆の中に、まがまがしい刃を光らせてギロチンが用意された。
周囲を黒衣の者どもが囲い、民はその外側で期待のまなざしを向けている。
「王女」の死。それは自由への始まりだった。
誰かが死ねば、誰かが助かる。
誰かが死ぬことによって、誰かが喜び、誰かが救われる。
本当にそれでいいの...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第22話「君と生きたい」
アイクル
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私…どうしちゃったんだろ。
突然気絶して…それから…、ああ思い出した。
帯人が助けてくれたんだ。
うっすらと目を開ける。
帯人が微笑んでいた。…終わったんだ。よかった。
ほっとしたら、急に眠くなってきた。
私はそっと瞳を閉じた。
不思議な夢を見た。
そこは、私も帯人もいない。
そんな世界の光景だった...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第17話「銀の王様」
アイクル
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郊外は町よりも、より闇が濃かった。
暗すぎて肉眼ではよく解らない。
でも怖くはなかった。
私の手をちゃんと引いていてくれたから。
井戸が見えてきた。
ざわ、ざわ、と木々が騒ぐ。誰かが歩いている。
帯人は咄嗟にアイスピックを構えた。
「動くな…」
雲間から月の光が差し込む。光に照らされて、その輪郭がは...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第20話「悲劇の渦、終わらない歪み」
アイクル
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一閃が、黒衣の身体を斜めに引き裂いた。
目の前で黒衣の男が崩れ落ちる。
その向こうに立っていたのは、眼帯をした傷だらけの青年だった。
「僕は…君のことが好きじゃない」
声が出せなかった。
「でも…大切な人のために行動するところ……嫌いじゃない」
帯人は召使いをギロチンから解放する。
次々と襲い来る異...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第23話「対極」
アイクル
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光を抜け、帯人と雪子は地上へ降りた。
そこはなにもない海岸だった。
これが最後の悲劇の舞台なのだろうか。
「…うん…ぅ…」
雪子がやっと目を覚ます。
しばらく茫然としていたが、自分の置かれている状況を理解すると
いきなり顔を真っ赤にして暴れ出した。
「…どうしたの?」
「な、なんでもないからっ! だ...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第18話「後悔の手紙」
アイクル
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狂ったように、帯人はアイスピックをリンにむけて振りかざした。
リンはとっさに包丁でそれを防ぐ。
しかし、帯人のほうが圧倒的に強かった。
数歩、リンは下がって体勢を立て直す。
その瞬間、はじかれたように帯人が私の手を引いて走り出した。
灰猫も先頭を走る。
「雪子、怪我は!?」
「大丈夫。服が切れただけ...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第07話「みんなの声」
アイクル
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重たいまぶた。
まだ寝ていたい。すごく眠たい。
けれど、それじゃあダメだと頭の中の理性が訴える。
私はゆっくりと目を開けた。
そこは図書室ではなかった。
赤と黄色を基調としたおしゃれな部屋で、西洋のオブジェやアンティークな
小物が並んでいる。
蓄音機から流れるジャズが耳に優しい。
目の前におかれた紅...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第03話「夢の世界」
アイクル
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この物語の先を、私は知っている。
でも解らない。
ねえ、誰を助ければいいの。
王女を?
召使いを?
緑の国の町娘を?
青の国の王子様?
赤い女剣士を?
王女がいなければ、戦争は起きなかった。
町娘も、召使いも死ぬことはなかったのだから。...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第19話「if...」
アイクル
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あー、どうしよう。
いきなり道は二つに分かれてしまった。
困った。
地図なんてもっていない。
片方は真っ赤な道。
もう一方は普通の砂利道。
腕を組んで突っ立っていると、頭上から声がした。
それは木の上からだった。
「きゃvvきゃvv」
「わー、わー」...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第09話「クローバーのアリス」
アイクル
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大学病院の一室で、メイトは深いため息をついていた。
「はぁ~あ」
「どうしたんですか。ため息なんかついちゃって」
アカイトがにやにやしながら近づく。
教授にコーヒーを渡した。ブランデーのいい匂いがした。
「あ~、どうしたもこうしたも、さぁ…。
意識不明になってた患者はみんな目覚めたけど、
原因が...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第27話「暗雲」
アイクル
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翌日。
雪子と帯人は一緒に学校へ行った。
その日は休日だったから、私服で入校できた。
休日だというのに、人々は多く図書館を利用していた。
私の背の三倍もある本棚に、ぎっしりと敷き詰められた本の数々。
貴重なものまであるらしいけど、あんまり詳しくない。
彼は目をぐるぐるさせていた。
思わず笑ってしまっ...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第01話「伝言」
アイクル
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あるところに、小さな夢がありました。
誰が見たのかわからない、
それは本当に小さな夢でした。
小さな夢は思いました。
このまま消えていくのはいやだ。
どうすれば、
人に僕を見てもらえるだろう。
小さな夢は考えて考えて、
そしてついに思いつきました。
人間を自分の中に迷い込ませて、...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第08話「アリスの物語」
アイクル
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帯人は教会の前に立つ。教会は明るい光に満ちていた。
中に誰かの気配を感じる。きっとこの中にいる。
帯人は扉をゆっくりと開けた。
パイプオルガンの高らかな音色が響く。
神々しいステンドグラスから差し込む光に照らされて、
教会内は雨の日だというのに明るかった。
十字架の元、二つの人影を見つける。
「マス...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第16話「大切な人」
アイクル
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その後、数分メイコ姉さんと話した後、彼女は呼び出されて行ってしまった。
彼女は「元気な顔が見れて安心したわ」って言ってこの場を後にした。
私は彼女の後ろ姿を見送った後、
別室に押し込んでいた帯人のもとへむかおうとした。
そのはずだった。
別室への扉のドアノブを握ったとき、すごく不安な気持ちになった。...優しい傷跡 第09話「壊れ出す」
アイクル
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「…ばか言うんじゃねぇよ」
メイトは扉を蹴破り、ミクをベッドに横にした。
その部屋は今までいた病室とは違い、いろいろな機械が置いてあった。
電源を入れると、画面に不思議な曲線が表示された。
部屋の奥には、ボーカロイドのボディがガラスの箱に入れられている。
携帯で誰かに連絡を取っていた。
きっと電話の...優しい傷跡-君のために僕がいる- 第07話「それぞれの思惑」
アイクル
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「危ないッ!」
帯人はとっさに私をコートで包み込む。
そのおかげで私は降り注ぐガラス片で怪我をすることはなかった。
でも、コートの隙間からたたずむ少女の姿がしっかりと見えた。
「なんで?なんでよ」
彼女自身、ガラス片によって腕を切っていた。
不凍液がまるで血のように腕を伝っている。
「ありえないでし...優しい傷跡 第13話「わたしの決意」
アイクル
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この状況を説明するのに小一時間。
帯人を別室に押し込んで、メイコ姉さんにこれまでのことを話した。
傷だらけで倒れていたこと。
それを拾ったこと。
帯人のマスターになったこと。
そしたら、ものすごく懐かれてしまったこと。
すべてを話し終えると、メイコ姉さんは頭を抱えているようだ。
「つまり、雪子はあっ...優しい傷跡 第08話「エラー、崩れ出す音」
アイクル
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今日は日曜日。
だから目覚ましだって黙り込んでいるし、
朝日だって、無視しても怒りはしない。
いつまでも寝ていられる♪
最高だね!
…って、はずなのに。
…………めちゃくちゃ寝苦しい。
私は重いまぶたをゆっくりと開いた。
「んぅ~…」
ぼやけた視界。...優しい傷跡 第07話「おはようございます」
アイクル
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窓から差し込む光が鬱陶しかった。
すごく、すごく、嫌だった。
僕を見て、マスターは脅えた顔をした。
ちょっと震えていた。
僕はそんなマスターに手を伸ばした。
耳もとから、あごのラインをなぞって、唇にそっと触れた。
僕の唇とは全然違った。
柔らかいんだね、マスターの唇。
ちょっとだけ、泣きそうになった...優しい傷跡 第11話「告白」
アイクル
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「あれ。めーちゃん、今日はどうしたの?
毎週土曜日は一旦、帰るのに」
アイス片手にソファでくつろぐカイト。
その向かい側に、メイコは腰掛ける。
「お昼はいつも、雪子と一緒に買い物に行くんだけどね。
今日はみんなでお出かけするんだって」
ブランデー入りのチョコの封を開け、一粒だけ口に含む。
しばら...優しい傷跡-君のために僕がいる- 第04話「開戦の合図」
アイクル
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ひとりぼっちで残されて。
すごく寂しくて。
昨日、抱きしめた温もりが忘れられなくて。
人肌ってあんなに優しいんだと、やっと気づいた。
ねえ、マスター。
僕は、僕は、僕は、僕は。
あなたがここにいないと、息ができなくなりそうなんだ。
今にも泣いてしまいそうで、
苦しくて傷が疼いて。
僕は何度何度も、傷...優しい傷跡 第05話「赤い少女」
アイクル
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「あ、帯人。部活、何か入った?」
「…雪子は?」
「今のところ、入る予定はないかな」
「そう…」口元がわずかに笑む。
進級した私たちは、クリプト学園で大いに学生生活を謳歌していた。
新学期。
新しいクラスのみんな。
そして何より学園が変わろうとしている。
クリプト学園は理事長の意向により、ボーカロイ...優しい傷跡-君のために僕がいる- 第02話「噂のあの子、現る」
アイクル
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生徒自治会会議室にて。
目の前に熱い緑茶を出されるが、動くことができなかった。
静寂がちくちく肌を刺す。
そんな状況なのに、飛び級の子は鼻歌なんて歌っていた。
本音デルが、机を挟んで座る。
タバコを灰皿に押しつけると、飛び級の子は鼻歌をやめた。
「ようこそ、生徒自治会会議室へ。
さて、そろそろ話を...優しい傷跡-君のために僕がいる- 第03話「よくねるこ!」
アイクル
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私はコンビニによってアイスを買った。
なにが好きなのか、わからなかった。
だから、ちょっと高めのバニラアイスを買ってみた。
喜んでくれるかな…。
その日、私はいつもより歩幅を広げて歩いた。
でも、それだけじゃあ足りない気がした。
もっと早く帰りたい。
もっと、もっと、もーっと早く。
だから、私はルー...優しい傷跡 第06話「アイスクリーム」
アイクル
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「ダビデの竪琴? 確かにそう言ったの?」
「ああ、確かに聞いたぜ」
ルコはぶんぶん首を縦に振る。
頭を抱えるメイコを、ルコ、雪子、帯人、ハク、ルカは見ていた。
「ダビデの竪琴といったら、精神を病んでいたサウルを癒した話が有名ね。
でも、なんの関係があるのかしら…」
「………《ノイズ》」
カイトはそ...優しい傷跡-君のために僕がいる- 第05話「欠けたもの、生まれたもの」
アイクル
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「ぼくは、あなたのことを愛しています」
そう言った、彼の瞳は虚ろだった。
けれど温もりのある声だった。
だから、私はそっと手を伸ばして彼の頬をなでた。
私の行為に彼は驚いているみたいだったけど。
「帯人」
「……」
帯人の頬は暖かい。
ボーカロイドと人の境目なんて、ずっと昔から、ないのかもしれないね...優しい傷跡 第12話「家族」
アイクル
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ベランダから飛び降りた帯人と雪子を見届けて、メイコはゆっくりと
立ち上がった。
キクはベランダを見つめたまま、じっとしている。
その口だけは動き続けていて、まるでなにかを唱えているようだった。
「残念だったわね。……あんたの相手でもしてあげる」
そう言うと、ぼんやりとした瞳をこちらにむけるキク。
「...優しい傷跡 第15話「本音が知りたいから」
アイクル
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-緑-
手紙を持って保健室に戻ったレンは、早速封筒をリンに渡して自分はベッドの横のパイプ椅子に腰掛けた。
「なぁに?これ」
「靴箱に入ってた」
「ふぅん、だれから?」
「そんなこと、俺が知るかよ」
「だれだろう?」
淡い赤の封筒をとても雑に開けて中の便箋を取り出...鏡の悪魔 4
リオン
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-傀儡-
部屋の片隅でレンを包み込んだ光は次第に緩やかになってきて、その光もふっと消えてしまった。ふわりと柔らかい光に包まれていたレンは、無意識に目を瞑っていたらしく、そっと目を開いた。何が起こったのかわからず、恐る恐る目を開いたのだ。
(…?)
「…あれっ…あは、失敗...鏡の悪魔Ⅲ 12
リオン
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その日は雨だった。
雪子と帯人は、いつものようにコンビニで買い物をして帰っていた。
傘にはじかれた雨が単調なリズムを刻む。
その音はとても好きだ。
でも、帯人は「雨は苦手」だと言う。
…おそらく、あの日も雨だったから。
受け入れたはずの過去。
でも、どうしても心にわずかな傷を与える。
ときどき疼くそ...優しい傷跡-魔法の音楽時計- 第00話「プロローグ」
アイクル
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優しい色に染まる 自分に絶えられなくなる
傷つくことに慣れすぎていて ひどく怖くなった
震える手 離れないで
嫌いなわけじゃないのに
癒えない傷が 深く深く
何度も救われるような夢を見る
君の手が僕の傷を 癒すことはないけど
錯覚(ゆめ)だけでも感じていたい
闇に足を取られて 自分を見失いかけても
...はりねずみ 【帯人】
アイクル
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-悪魔-
ずるずると遅いながらもゆっくりでも、少しずつその場から離れようと、ランはレンを引きずりながら移動していた。ある程度離れた場所に用具箱を見つけると、その陰に隠れて少しだけ魔法を使ってみた。と、いっても、眠っている相手を起こす魔法など無いから、そこは、対象物の重...鏡の悪魔Ⅲ 16
リオン
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-終戦-
手が、震えてしまってどうすることもできない。
自分がしたことを理解するのに、しばらく時間を要した。
嫌な汗が背中を伝い、落ちていく感覚があった。それから何があったのかを考えていたが、自分の立っている場所から下をのぞき見て、やっと何があったのかを理解した。...鏡の悪魔Ⅲ 17
リオン
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-闇と光-
緑のショートへアーと黄色い服装から想像されるものは唯一つ。
「…パイン?」
「初対面でそれ、よく言えるね」
「いや、ごめんなさい。ただもう…そうとしか見えなくなってしまって…」
「ちょっとそこに目ぇ瞑って立っていてください。首をスパッとやっちゃいますから...鏡の悪魔Ⅲ 14
リオン
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-進入-
館へと戻り、レンはリンとランの飛びつき攻撃によって出迎えられることとなった。
「お帰り!遅かったね、レン!」
「もう、リンさんとずっと待ってたんだよ?お姉ちゃんを困らせないで」
楽しそうに言うリンとランを適当に振り払うと、レンは思い切り悪態をついて見せ...鏡の悪魔Ⅲ 2
リオン
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-WELCOME-
「ようこそいらっしゃいました」
門の前で赤黒い可笑しな色の兎が頭を下げた。
「…地獄の入り口へ」
そういった途端、兎の皮がはがれて中にいた“何か”がうごめいてきぐるみを破くと、襲い掛かってくるのだ。恐ろしく歪な何かが。黒くうねうねと動くそれはもは...鏡の悪魔Ⅱ 2
リオン