ブックマークした作品
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「かなりあ荘が…消える?」
そんな話をゆるりーさんから聞いたのは、確か春先だったような気がする。
各々が自分の道を歩み始めて幾年経っただろうか。
一人称が『俺』だった自分も、仕事を重ねていくうちにいつしか『私』と自分を呼称するようになった。
そんな中、時折かなりあ荘には顔を出す時はあった。
同好の士...【最後の物語】さよなら、またね、かなりあ荘
Turndog~ターンドッグ~
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「…大好きだよ、また来世」
そうして、この宇宙は救われた。
中心にいるのは、ある惑星の救世主であり、結果的に宇宙をも救った勇敢な少女。その青い目から涙を流す姿は、まるで絵画のように綺麗だった。
一一一これはとある少女の話。
世界を救った勇敢な少女の話。
恋を知ったばかりの少女の話。
人は...プロローグ
すぅ
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毎年のことながら年末寒波が日本列島を覆っている。ショッピングモールの屋上駐車場から見える街並みには薄っすらと雪が降り積もっており、まるで粉砂糖をまぶしたようだと考えたのは空腹のせいだろうか。
大晦日の日の入りが近付いた頃。やっと大学が冬期休暇に入り、バイトも納めたがくぽとルカは、最近話題の映画を...【がくルカ】大晦日【V市駅南住宅街】
Tea Cat
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海を眺めている。
青くて、大きくて、広い海。
見ているとちっぽけな自分がどうでもいいように思えて、壮大な青の中に入りたいな、なんて考える。
「…さて、帰ろうかな」
その呟きは、誰にも届かず風が攫った。
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そうだ、海に行きたい。思いついたのは早めのバスタイムを終えてリビングでアイスを食...瑠璃色に入りたくて、夏。【Lily誕生祭2020】
すぅ
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眩しすぎる、今日も。
「ねえ、今日もあんた死んだ顔してんの」
君は今日も。
真昼間に俺のような社畜が外に出たなら、そりゃあもうクラクラして。
健康のために、行き詰まりの解消のために、というか暗々とした空間から逃げたさすぎて消去法で外に出るものの、日陰のような涼しさが性に合う僕には下界が眩しすぎて。
...【カイメイ】多分それを
ayumin
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何かが変わる予感がしている、今夜。
≪silent night≫
ゆっくりとグラスを傾けながら何年か前に演じたいくつかの役柄とその関係性を思い出す。
昨年撮っていたのは、幸せにイチャイチャする男女の話でその前は確か。
俺とメイコさんは2人でカップルの役割を演じることが多い。
男女の役なんてありふれた...【カイメイ】silent night【オンザロ舞台裏シリーズ】
ayumin
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『キヨテルおめでとう~』
「せめて直で言ってくれませんかね?」
今日は師走4日目。つまり僕の誕生日。
氷山キヨテルとしては発売から10周年らしく、ネット上ではそこそこ賑わっているらしい。かく言う僕らのマスターもそのお祝いに参加するらしいけど、それより家にいる僕を祝ってくれ。
日が変わって本当に...特別ではないけれど【キヨリリ】
すぅ
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演者のエチュード / ゆるりー
思い返せば、その日は本当に「ついていない」日だった。
枕元の目覚まし時計は十五分遅れて起床時刻を知らせ、朝食に十秒で食べられる栄養ゼリーを探せばキッチンで転び、急いで履いた靴下には穴が開きかけ。駅に向かえば電車は五分遅れていて、始業時刻までになんとかデスクに着けたの...【カイメイ合同誌】とある2人のおうち事情【新刊サンプル】
Turndog~ターンドッグ~
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「カイトー、今日もお願い」
「今日もすか…ていうか先輩そのオトコいくらなんでも粘着がすごすぎな」
「だからあんたに頼んでるんじゃん〜代わりにご飯と布団は出してるし大学近いし悪くないリターンでしょ」
「まあそうですけど」
事の発端は数ヶ月前。
彼女に珍しく頼られ詳細を聞くと何でもかなり前のオトコに今更...【KAITO誕】23:49【カイメイ】
ayumin
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「やだなあ、僕がステージに立つだって?メイコさん本気で言ってる?」
『だって本当のことでしょう?あら、もしかして私を他の男と歌わせる気?』
「メイコさんと張り合う実力の持ち主ならいくらだっているでしょう」
『…今日はシングルで寝よ。』
「俺メイコさん欠乏症で死にます」
ゆっくりと手元でステアさせてグ...【カイメイ】on the rocks【自己解釈】
ayumin
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未来の形を
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「二人、上手くいくといいけど」
教室の外で、中の様子を気にしながら呟く。
「大丈夫だとは思うよ。少なくとも今より悪化することはないだろう」
「うーん……でもなんか心配なんですよねえ」
「神威が詳しく話してないというのは予想外だった」
「おかげでルカの誤解もなかな...【がくルカ】memory【30】
ゆるりー
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夕暮れ時、黒板に刻まれたその文字列を、なかなか消すことができなかった。
この場所で、優しい声で、だけど決して私だけには向けられない視線。
彼の優しい笑顔は仕事のためだと、私は知っている。
それでも。彼には、私だけを見てほしかった。
彼とは、多分他の人と変わりない出会い方をした。
四月の教室で...【カイメイ】独占欲
ゆるりー
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振り返れば、隣にはいつも君がいた。
楽しそうに笑う君が、僕のことをどう思っていたのか、それは本人にしかわからないけれど。
その距離感だけは、十年間ずっと変わらないものだった。
家が近所だったわけではない。
物心つく頃からの付き合いでもない。
ただ、小学四年生の春、席が近くなったことから仲良くなった。...【がくルカ】宵を待つ間、【がく誕】
ゆるりー
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Airport ―KAITO―
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忙しい彼女の長期休暇が始まった朝。おれは彼女の部屋を訪れて、今から南の島に行くよ。と言った。
きっと、始まったばかりの休暇の朝を満喫していたんだろうね。まだ寝間着姿の彼女は、玄関先でおれの言葉に驚いたように目を丸くしていた。だけど寝ぼけていたのか...Long Vacation~ひとり占め!summer☆girl~
sunny_m
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あれは、父さんの禁酒に付き合い始めて一週間ほど経った頃だっただろうか。私はあの日、家の壁に開いた穴の修繕をしていた。粗末な私たちの家は、ときどき修繕してやらないと住めたものじゃなかった。不満がないわけじゃなかった。でも、それ以上に誇らしさを感じていた。あの家は、民衆を第一に考える父さんの心を映し出...
ビンテージ
カンラン
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「リリィさん、リリィさん」
「・・・ん」
「もうすぐ目的の駅ですよ」
キヨテルに肩を軽く叩かれる。
「ん、悪い寝てた」
「昨日は寝てないのですか?」
「なんか、寝つき悪くて」
とアタシが言うとキヨテルは首を傾げた。
「リリィさんが?珍しいですね。人一倍寝つきがよく、週に四回は寝坊してその内二回は遅刻...キヨテル先生とリリィさん
みけねこ。
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「エルフェゴートへ?」
「そう、少し用事をね。お願いするわ」
「分かった」
「お土産に、エルフェゴートの名産品トラウベンがあれば嬉しいわね」
「ふあぁぁ」
あくびをするリリアンヌが、視界の端に見えた。
あーあ、退屈な会議ねぇ。形だけで、意味なんてない。リリアンヌじゃなくても、あくびが出るわ。
「ふぁ...化ケ物ノ襲来
亮也
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「カイル兄様が遊びに来るぞ!」
まさに喜色満面といった笑みを浮かべるリリアンヌ。
「よかったですね、リリアンヌ様」
アレンは穏やかな表情でそれに応える。純粋な祝福と、これでしばらくは上機嫌でいてくれるだろう、というほんの少しの安堵も込めて。
「遊びに、ではなくお仕事なのでは……」
「何か言ったか...Lucifenia's taiRoL!?
織奈
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「ねえ、この世界にさよならしちゃおうか」
彼のリクエストであるホットケーキを焼いている時、テレビを見ていた彼がそんなことを言った。
あまりに突然のことだったからびっくりして、私は手元に注意が向かないまま彼へ言葉を投げる。
「急にどうしたの。今火を使ってるから、驚かせるのはやめてよね」
「ああ、それは...【がくルカ】夜明けの約束【ルカ誕】
ゆるりー
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日常生活ってなんだっけ?
私たちが過ごす、当たり前のような毎日のこと?
じゃあ、私の日常って何?
私の空洞を埋めるものはどこ?
誰か。
私の日常を説明して。
私が私であることを証明して。
崩れる?
日常が?平和が?人格が?
それとも私自身なら、もうとっくの昔に崩れている。...【ミク・リリィ誕】Pygmalion Complex
ゆるりー
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駅であの人を見かけた気がした。
≪pink≫
その紫色の髪が好きだ。
その私より高い背格好が好きだ。
その私を呼ぶ声が好きだ。
そのぱっと緩む笑顔が好きだ。
その…
思い出したらきりなんてない。
あなたの欠片は、日常のふとした時にふわっと溢れ出てきてやまないからたちがわるい。
もうあの紫色を見なくな...【がくルカ】pink
ayumin
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※若干オトナな行為の残像を匂わせる描写がありますので閲覧の際はご注意ください
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『メイコさん、』
「ん?」
『俺、メイコさんと生活してみたいって最近どうしようもなく思うんですよね』
「……何、プロポーズ?」
現実に背を向けて滞在時間の限られた暖かな布団の中で微睡む。
『いつも貴女は俺より一枚上...【カイメイ】double【オンザロ設定引き継ぎ】
ayumin
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唐突。めっちゃ唐突にルカは言った。
「魔界に練習に行くよ!!」
「よーしがっくん、準備は出来た?」
開けっ放しの窓からルカが入って来た。
……何かもう、慣れてきた。
「一泊二日分の荷物で良いんだよな?」
やけに荷物が小さいルカに聞くと、「そうだよー」と気の抜けた返事が返って来た。
「バ...幼馴染とぶっ飛んだ世界【オリジナル】4
Tea Cat
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「ごめんね、待った?」
「いや、俺もさっき来たばかりだから・・・大丈夫だ、問題ない。」
「そう? なら良かったわ。」
そう言ってふわりと笑う瑠華。じいっとこちらを見上げる瑠華の笑顔は、今の時期に似合うような眩しさだった。
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初めまして・・・と言った方がいいのだろうか。とりあえず、俺は私...遠く離れる、その前に
吉川ひびき
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私にとって音楽は。
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朝目が覚める。
視界には低い天井。
割と粗末な暮らしだと思う。
狭いパーソナルスペースのこの現代には珍しい屋根裏に居住して2.3年は経つけど、当分グレードアップの予定は無いと言い切れるくらいには生活は常に切羽詰まっている。
そんなことはまあいいとして。
今の時間は果たして...【MEIKO】音楽【シリーズになりそう?】
ayumin
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世界の終わり。
テレビや新聞でそんな話題が多く取り上げられるようになったのは、一年前のことだった。
シナリオもベタなもので、隕石が普段の軌道とは違うらしく、そのままこの星に衝突するらしい。
小説やドラマ、はたまた映画でやり尽くされた題材――そう言ってもいいだろう。
事実は小説よりも奇なり、...【世界の終わりの】ワールズエンド・ダンスホール【………恋】 プロローグ
aurora
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へらっと、儚げに笑う君が好きだった。
どんなことでも楽しそうにする君が好きだった。
だから最後も、君の笑顔が見たいな。
仕事が終わり、夕飯のことを思案していたら携帯が鳴った。
表示された番号は見覚えがなかったが、何故か出なければと無意識に思った。
「もしもし、氷山です」
『先生...!?』
「......君の笑顔【連想ゲーム】
すぅ
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ある日のこと。家に帰ってみると、めーちゃんが真っ赤なドレスを着て鏡の前に立っていた。近くのソファではレンとリンが不機嫌そうな表情で、手にした本をぱらぱらめくっている。
「ただいま。めーちゃん、どうしたのその格好?」
とりあえずレンリンは後回し。僕はめーちゃんに話しかけた。
「あ、カイトお帰り。今...ボーカロイドでオペラ【カルメン】話し合い編
目白皐月
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「今から言うことは、全部がホントのことだから」
寂れたビルの屋上で、親友は私の隣で呟いた。私は彼女の顔を見つめたが、彼女は空の雲を数えるように、遠くを眺めている。
それから言うことは出鱈目ばかり。確かに彼女はひねくれ者だけど、いくら何でも砂糖はしょっぱくて塩が甘いなんて、冗談も甚だしいんじゃない...【自己解釈】eight hundred【キヨリリ】
すぅ
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夢を見た。遥か遠くに大切なものを置いてきた、そんな夢を。
目覚めた時、首元に汗が流れるのを感じた。何か恐ろしい夢を見た気がする。でもそれがどんなものだったかなど、もう思い出せそうにない。
時計を見ると、まだ深夜三時を回ったばかりだった。眠らなければ、明日の仕事に支障が出る。毛布を被り直して寝よ...【がくルカ】Plus memory【5】
ゆるりー